仮想サーバー環境のストレージ管理

著者:Eric Siebert
Storage Magazine 2011年6号より


仮想サーバーとストレージ・システムは、別々な世界に存在しなければならないわけではない。新しいツールやプラグインは、仮想サーバー、ストレージの両方をシングル・コンソールで管理する機能を提供する。

 

 

機能別サイロ

 

どこのデータセンターでも大抵、特定の機能別にサイロが置かれており、それに対してそれぞれの専任のグループが、管理の責任を負っている。ネットワーク、サーバー、ストレージ・システム、仮想化など、データセンターのリソース毎に管理責任をもったチームが存在する。各グループは自分たちの領域の管理に専念し、グループ間でインテグレーションの項目について調整が必要になった時だけ、他グループと協業する。新規のサーバーで共有ストレージが必要になった時は、サーバー・チームはストレージ・チームと協力して、サーバーにストレージを供給する。

 

従来の物理サーバー環境であれば、ストレージ・チームはストレージと物理サーバー間の関係を簡単に管理できた。SAN上で作成された論理ユニット番号(LUN)が物理サーバーに割り当てられ、そのサーバーだけがそのLUNを使用する。ところが、サーバーの仮想化では、これらが全て変わってしまう。とはいえ、ストレージが仮想基盤にとって、おそらくは最も重要なコンポーネントである以上、ストレージは最大のパフォーマンスと信頼性を引き出すために正しく導入、管理されなければならない。サーバーの仮想化とストレージは緊密な関係にあるので、管理もそれにあわせてきちんと行われるべきなのだ。

 

 

VMがストレージを複雑にする

 

仮想化とは、多数の仮想マシン間で、共通の物理リソースセットを共有する技術の事である。VMware社のVMFSのような仮想化ファイルシステムは、多数の物理サーバーが同一のLUNを同時に読み書きすることができるようになっている。複数のホストが、共有LUNにある自分のVMを排他的にアクセスすることを保証する、特殊なロック機構がこれを可能にしている。サーバー仮想化の長所として、仮想クラスター間の高い可用性と作業負荷の分散を提供する機能がある。VMwareのvMotionやStorage vMotionは、VMが稼働している間でもホストから別なホストへ、同様に、あるストレージ・デバイスから別のストレージ・デバイスへ、と移動させる機能を持っている。

 

物事を複雑にしているのは、ストレージ・デバイス上の仮想マシンの移動が、仮想レイヤーでだけ起こるわけではない、ということだ。現在、多くのストレージ・アレイが、自動ストレージティアリングの機能を持つようになっている。プールされ、ホストに提供される半導体ディスク(SSD)やSATAディスクなど、異なるパフォーマンス特性のデバイスのティアをベースに作られた機能だ。ストレージ・アレイは、パフォーマンス要求に基づいて、ティア間で動的にデータを移動する。これら全てのことは、ストレージ・レイヤーで発生するので、仮想ホストにはこの動きが分からない。

 

VMを移動する機能は有用だが、ストレージや仮想化の管理者にとっては頭痛の種だ。なぜなら、仮想マシン、設定したホスト、仮想ディスクが常駐するストレージ・デバイス、これらの関係が全て動的なものになるからだ。これに最も影響されるのが、トラブルを起こしている案件とパフォーマンスの監視である。仮想化の管理者は、ストレージ・レイヤーで何が起こっているかが分からず、ストレージ管理者は仮想レイヤーで何が起こっているのか分からないため、誰も問題の全体像を把握できないのだ。

 

 

プラグインが管理の溝を埋める

 

ストレージ・ベンダーはストレージとサーバー仮想化間の緊密なインテグレーションの重要性を認識し、VMwareのvCenter Serverなどの既存の仮想化管理ツールと連携するソフトウェアの開発を行ってきた。VMwareは、サードパーティのベンダーが彼らの製品をvSphereと連携できるように、vSphere API一式を提供している。また、vCenter Serverは、サードパーティのプラグインがvCenter Server管理インターフェースとシームレスな連携を容易に行えるように、プラグイン・アーキテクチャーになっている。プラグインはvSphere Clientのタブのひとつとして表示され、そのふるまいや外観はカスタマイズすることが出来る。これにより、オプションやVM、ホスト、クラスターなどの固有のオブジェクトがもつ特定の情報を表示することができる。

 

プラグイン比較
ストレージベンダー vCenter Server プラグイン
Dell/Compellent vSphereクライアントプラグイン(情報のみ。2011年Q4リリース予定
EMC 複数のプラグインを説明したPDF(PowerLinkよりダウンロード可能)
HP Insight Control Storage Module for vCenter
HP/3PAR HP 3PAR Utility Storage および VMware vSphere
IBM IBM XIV/Management Console for VMware vCenter
NetApp Virtual Storage Console

 

 

全てのストレージ・ベンダーが、すぐにvCenter Serverのプラグイン開発に着手したわけではなかったが、今日、ほとんどの大手ストレージ・ベンダーが自社のストレージをvCenter Serverから監視し、管理するプラグインを提供している。各ベンダーのストレージ・プラグインは大体、特定のストレージの機種やファミリーしかサポートしない。また、プラグインの機能や特徴もベンダー毎に異なる。一般的に、ストレージ・プラグインは以下の機能を提供している。

 

 

・仮想データストアの簡易な拡張

 

LUNが作成されホストに渡されると、ホスト側ではそこからVMFSのようなデータストアを作成する。データストアのサイズを増やすには、最初に、ストレージ・アレイに内蔵されているLUNを増やさなければならない。プラグインにより、LUNとVMFS両方を同一コンソールから増やすことが可能になる。

 

  ・ストレージ・プロビジョニング
ストレージ管理者は、まとまったストレージを仮想環境にあてがうことができる。これにより、仮想化管理者は、自分たちのLUNを作成し、ストレージ構成を管理することが可能になる。

 

  ・ストレージ管理
プラグインによって、仮想化管理者は、LUNマスキング、シン・プロビジョニング、などのストレージ機能の管理、マルチパスおよびティアリング・ポリシーの設定、I/O設定の最適化、アクセス・リストの定義ができるようになる。

 

  ・VMストレージマッピングの自動化
このタイプのプラグインでは、仮想マシン、ホスト、ストレージ間の物理/仮想の関係を監視・管理できる。この機能は、仮想化管理者が、同一ディスク上の仮想化識別子 とストレージ識別子間をマッピングするのに役立つ。

 

  ・詳細なストレージ情報一覧
仮想化レイヤーとストレージ・レイヤーの情報をまとめて一覧表にする機能。仮想化コンソールの中から、物理ストレージ・レイヤーの詳細を見ることができる。

 

  ・物理ストレージのヘルスモニタリング
物理ストレージの健全性についての情報を提供する機能。これにより仮想化管理者は、物理ハードウェアの障害や劣化を知ることができる。

 

  ・VMクローニング
VMのクローニングは、基本的に単純なデータのコピーなので、ストレージ・アレイに肩代わりさせることが可能であり、その方が効率も良い。この機能は、特にVMの密度が高い仮想デスクトップ環境において有用だ。

 

  ・ストレージ・レイヤーでのバックアップと復旧
VMデータストアのストレージ上で、ある時点でのスナップショットを作成する機能。必要なときに、このスナップショットをマウントしてVMを復旧することが出来る。

 

 

プラグインを解剖する

 

ストレージと仮想化レイヤーの合体によって、仮想化管理者は、ストレージ管理の専門的なユーザー・インターフェース(UI)に権限を取ってアクセスしに行かなくても、仮想化管理UIのコンテクストの中に留まることができるようになった。ほとんどのストレージ・プラグインでは、仮想化管理コンソールからストレージの認証情報が設定できるようになっている。これにより、二つのコンソールのシームレスな統合が可能になったが、これは、仮想化管理者がストレージ管理コンソールに直接アクセスする権限を取らなくて良いため、セキュリティの観点からも良いことである。

 

vStorage API for Array Integration (VAAI)

 

VMwareのvStorage APIは、サードパーティのストレージ・アプリケーションおよびデバイスとvSphereの間で、先進的なストレージ機能の緊密な連携を可能にするために、vSphereに導入されたAPIだ。vStorage APIには、ストレージ連携の様相の違いによって、複数のカテゴリーがある。vStorage API for Array Integration (VAAI)は、vSphere側から直接ストレージの機能を使えるようにするため、特定のストレージ・ベンダー(Dell、EMC、NetAppなど)と共同で開発された。以下に、現在のVAAI機能の例を3つ示す。

 

  ・Copy Offload
仮想マシン(VM)クローニングやテンプレートをベースにしたデプロイメント配備 は、ESX/ESXiホスト側のファイル・レベルでのコピー処理より、ストレージ側でオフロード処理を行った方がより高速に処理できる。これは、Storage vMotionなどで発生する他のコピー処理 にも適用される。

 

  ・Write-Same Offload
Eager-zeroedの仮想ディスク(VMDK)を供給する時、フォーマット処理のために、ESX/ESXiホスト側からストレージに対してギガバイト単位のゼロが送られる。このWrite-Same Offloadを使えば、ストレージ側がeager-zeroedのシックディスクのVMDK のフォーマットを引き受けてくれる。

 

 

・Hardware-Assisted Locking
従来のSCSIリザベーションを使ったファイル・ロックの仕組みは、atomic (ハードウェアのみによる単一操作で処理 )という効率の良い仕組みに取って代わった。この機能により、VMFSデータストアを持った、まとまった台数のESX/ESXiホストを、追加で配備することが可能になった。

vStorage APIが成熟するにつれ、以下のような、ストレージ側でさらなるオフロード、その他の処理を行うことが見込まれている 。

UNMAPサポート(zeroed VMFSブロックを返す)
シン・プロビジョニング・スタン (シン・ボリュームに割り当てる容量が無くなったらI/Oを停止する)
NFSファイルレベル・コピー(ブロック 単位でのXCOPYに相当)
進化形NFSファイル属性(これによりvSphereがNFSストレージ上のファイルの理解を深めることができる)

 

 

 

HP社によるvCenter Serverへのストレージ管理統合の取り組みは、自社のInsight Control管理コンソールの活用と、vCenter Serverにこの製品の一部をプラグインとして組み込む、という形で行われた。プラグインには、 HPストレージを管理するモジュールの他、HPサーバーのハードウェアを管理するモジュールも加えられた。これによって、サーバーもストレージも同じ一つのコンソールから管理できるようになった。プラグインがインストールされると、vCenter Server内にHP専用のストレージ特権が作成され、HPストレージ・プラグインへのアクセスが可能になる。このプラグインによって、ストレージ管理が仮想化の画面上で行えるようになるが、逆はできない。vCenter Serverは非常にきめ細かいアクセス権 を持っており、ストレージ管理者がストレージ関連の情報にアクセスできるように役割に基づいた権限の設定ができる。これにより、ストレージ管理者はvCenter Serverと連携している全てのストレージを一つのコンソールから操作可能だ。

 

HPのInsight Control Storage Module for vCenter Serverは、現在、同社のEVA P4000、P9000/XP、P2000/MSAストレージ・アレイをサポートしている。プラグインはvCenter Server にHP Insight Softwareというタブを作り、VM、ホスト、クラスターが選択されるとそのタブが表示される。このプラグインはまた、仮想マシンのクローニング/作成やデータストアの作成などの実行アクション のために、メニュー・オプションメニュー を提供している。タブは選択された対象のストレージの概要、すなわち、ホストに供給されたストレージ、ホストから供給されたストレージ、ホストが接続しているストレージなどの情報を表示する。また、ストレージ管理コンソールを直接起動するためのリンクも提供している。ストレージ・ディスク、ホスト・バス・アダプター(HBA)、パス、などビュー を選択して様々な情報を見ることができる。さらに、欄(コラム)をカストマイズして、ストレージ側が提供している詳細な情報を選択することもできる。 セクションのコーナーでは 、仮想マシン、ホスト、データストアなど、選択した対象に関連する特定のストレージについての情報を見ることができる。

 

 

シングル・コンソールによる操作

 

ストレージについての情報を得る他に、ストレージ関連ツールを起動することにより、ストレージ側のレプリケーションを利用した仮想マシンのクローニング、新規仮想マシンのバッチ作成、ストレージの供給、VMFSボリュームの作成、などの作業が実行可能だ。これらのタスクはvCenter Server内から実行可能だが、HPプラグインは、その背後で 、自動化と効率よく処理を行うストレージ側へのオフロードを提供している。

 

シングル・コンソールでのストレージと仮想化の統合は、システム管理のより緊密な連携を実現した。それによって仮想化管理者は大いに助かったが、ストレージ管理者にとってはそれほどでもなかった。仮想化管理者は、ストレージ関連の機能により深く関与することができるようになったが、従来これらの機能はストレージ管理者が扱ってきたものであり、一方、ストレージ管理者は、ストレージのリソースを供給したり管理したりする権限を明け渡すのは嫌なのだ。プラグインによる、ストレージと仮想化双方の連携とその機能をデモ(実演)で示し、ストレージ管理者が仮想化コンソールへアクセスできるようにすれば、仮想化管理者がストレージ管理の基本機能の一部を実行する権限を持つことを、彼らも納得するかも知れない。もし、仮想化管理者がストレージ・リソースを管理する事を許されなかったとしても、プラグインによって詳細なストレージの情報を見ることができるのは、それだけで仮想化管理者にとって 十分メリットがある。

 

VMwareと連携する管理アプリケーションは沢山あるが、EMCのVirtual Storage Integrator for Hyper-V のように他のハイパーバイザ向けの製品もある。この製品は、System Center Virtual Machine Manager (SCVMM)と連携する。VMwareの人気の高さと、同社が技術的な深みと成熟度の高いAPIやSDKを持っていることも相まって、ベンダー各社はVMwareに焦点を合わせてきた。 仮想化環境に対応したストレージ・プラグインは、比較的歴史が浅く、ベンダーが提供する製品も機能増強と連携深化の途上にある。どんなハイパーバイザを使っていようと、あらゆる仮想化環境においてプラグインは是非おいて置きたいコンポーネントである。なぜならば、プラグインは優れた可視性と連携を提供し、非常に重要なストレージ・リソースのモニタリング、管理、トラブルシューティング能力を広げてくれるからだ。

 

 

著者略歴:Eric SiebertはIT業界で25年以上の経験を持つベテラン。現在はサーバー管理と仮想化を集中的に取り上げている。VMware VI3 Implementation and Administration(Prentice Hall, 2009)およびMaximum vSphere (Prentice Hall, 2010)の著者。

 

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