テープの復活!!
(というか、絶滅したことあったか?)

著者:Rich Castagna
Storage Magazine 2011 年6 号より


どこかで、テープは終わった、という噂が流れている。しかし、この尊敬すべきストレージ技術には、まだまだ命脈が残っている。

 

昨年、「レポートとは正反対になるが、テープは終わったのか?」という出だしで始まる記事を何度くらい読まれただろうか?何遍も、ではないだろうか?いつもいつも、「テープは終わった、いや、まだテープは終わっていない」の論議につきあわされるのは、うんざりするだけでなく、そもそも誰がテープは終わったと言いふらしているのか、考えなければならない。

 

誤解の無いように言っておくが、私はテープに含むところなどこれっぽっちもない。ジャーナリスト は、確立された古い技術のかわりに最新のかっこいい技術ばかりえこひいきする、と人はいつも非 難する。しかし、重複排除、仮想テープライブラリ(VTL)、ディスクにバックアップを売り込もうとして いる連中こそが、テープの心臓に杭を打ち込もうとしている犯人ではないか、と私は思う。「テープう ざっ!とっとと消えろ!」というバンパーステッカーをトレードショーで貼りだしていたのは、Data Domainではなかったか。それから、あるVTL メーカーの名前を右から左に読むと「テープいらね (no tapes)」。

 

なんにせよ、テープが終わり(死に)かけているとしたら、ずいぶん長いこと、瀕死の状態を引きずっている事になる。*訳注1

 

テープは終わったどころか、実際はいまだに発展途上にある。時には、その宿敵(ハードディスク 技術)よりさらに高速な処理を受け持っているように見える。テープの容量を考えて見て欲しい。Oracleの最新の技術の結晶、T10000 テープドライブ("C"モデル)は5TBの容量を持っている。ネイティブ、非圧縮(ネイティブ)で5TBの容量なので、T10000CはLTO-5 のもつ1.5TB(圧縮で3TB)の容量を遙かに上回っている。5TBの容量のテープが如何に驚異的か、というのは2005年11月時点でT10000 の容量は500GBだったことを思い起こせば理解できるはずだ。わずか5年弱で10倍の改良である。そして、IBMはネイティブ最大4TBのTS1140 を市場に投入したと発表したばかりだ。3TBのハードディスクを買うこともできるし、ハードディスクの技術も、同時期にほぼ同じく10 倍近い進歩をしているが、それでも依然としてテープが容量の王座を占めている。

 

我々が調べた購買アンケートを見ても、ここ数年テープが進化していることが分かる。大きな変 化は、企業がテープ装置に掛けるお金を減らしている、ということだ。ほんの4 年前、33%の企業が テープシステムに掛ける金額を増やす予定だ、と言っており、24%が減らす、と言っていた。そこか ら一気に現在に戻って見ると、この数字は逆転しており、34%がテープに掛ける費用を減らす予定 だ。これは、今日ディスクが企業のバックアップの運用において果たしている役割を考えれば、驚く にはあたらない。また、我々のアンケートには、IT担当部署が新規で購入するライブラリーは、平均 するとより小さいものになっている、という結果も示されている。2006 年には、購入されたライブラリーの平均スロット数は159 だった。現在、平均のスロット数は92になっている。これは、42%の減 少になる。とはいえ、その間にドライブの容量は数百パーセントも増えていたのだ。

 

テープ減少の原因となったのは、明らかにディスクである。そして、テープ技術は小さなことを大 きく見せている(針小棒大?)。しかし、我々の最近のアンケートでは、77%の企業がいまだに、全ての、または一部のバックアップデータをテープに格納している。その作業に、必要な装置の数がちょっと減った、ということなのだ。

 

バックアップはおそらく、「テープの未来」物語における主要部分ではない。ここ数年、テープに 関して二つの領域がヒートアップしてきた。テープは、一方の領域では中心的な役割を、もう一方 の領域では、ほぼそれに近い役割を担っている。その領域の一つ目は、メディアと娯楽産業、とり わけ映像制作の分野だ。デジタル化された映画は、生の映像の処理、―― 映像をそぎ落とし、編 集し、商品に仕立てる――を行うために山ほどストレージ・スペースを必要とする。国中の(大小を 問わず)何百というテレビ局が、再生時間でいえば数年分に相当する映像を保存する膨大な容量 を必要としている。多くの場合、これらメディア企業は、テープを「サブ・プライマリ」ティアとして使っ ている。ふだんは、そこに大容量ファイルを置いておき、必要なときにディスクに戻すためのティア である。テープは、たっぷり余裕のある容量、可搬性、運用費用の低さを持ち、このような用途には ぴったりだ。(ん?これは、テープが、その初期にバックアップで大きくなったのと同じじゃない か?)ゲノミクス(ゲノム科学)、地質学調査、ヘルス・ケアなど大容量のファイルを使って仕事をしな ければならない分野では、最近テープを新たな熱い視点で見始めている。

 

もうひとつの領域、そして、おそらく、テープにとって最高のアプリケーションは、昔から頼りがいのある仲間、アーカイブだ。IT 部門が山ほどある新規データを扱うのと同時に、ストレージ・システ ムの効率的使用のために、既存データのクリーニングを行わなければならない、という状況の中で、 アーカイブは新たな関心を集めつつある。テープは、アーカイブの仕組みに非常に適している。 テープに入れられた大量のデータはアクセスが容易で、必要なときいつでも使える。もちろん、プラ イマリ・ストレージが提供するような即時性は持ち合わせていないが、アーカイブ・データなのだから、それでOK だ。

 

ここまでのお話は、さほど耳新しいものではない。しかし、テープの容量とスループットの成長ぶ りにより、これらの話が本当になる可能性が高まっている。ところで、ここ数十年のテープ技術の中 で、最大の新技術になるかも知れないものが、リリースされてから一年ほどになるが、大きな期待の星と目されている。IBMによるLTO コンソーシアムへの取り組みとして開発されたリニア・テープ・ ファイル・システム(LTFS)だ。これは、テープを全く対極にあるものに変身させようとしている。ディス クだ。まあ、実際のところは、ディスクのように見えるもの、という意味だが。

 

LTFS は、LTO-5 テープカートリッジの容量をほんのちょっと切り出して、ファイルシステムとテー プの内容のインデックスに割り当てている。この部分によって、ファイルシステムをもつディスクに非常に似ているように見える。実際、NAS ストレージを探しているアプリケーションは、その代わりとして、LTFS モードになったテープと簡単に接続できる。用意しなければならないものは、LTO-5のドライブとメディア以外は、IBM のサイトからフリーで入手できる、ちょっとしたクライアントソフトウェアだ。このソフトウェアを使って、LTFSモードになったLTO-5 のマウント、インデックスの閲覧、テープからドラッグ&ドロップで特定のファイル(単数または複数)を必要に応じて戻すことができる。

 

話をもう一歩進める。もし、バックアップ・アプリのベンダーがLTFS インターフェースの採用を決 定すれば、テープは、異なるアプリケーション間で交換可能になる。別な言い方をしてみよう。あな たは明日にでも現行のバックアップ・アプリを別なものに変えても、以前のバックアップ・アプリで テープに格納した全てのデータに簡単にアクセスできる、ということなのだ。この手の交換可能性に たいして、バックアップ・ベンダーは神経質になるものなので、彼らがLTFSに飛びつくのを今すぐ 見ることはないだろう。しかし、アーカイブ・ベンダーは積極的にLTFSの長所を利用している。

 

さて、こういうことなので、もしテープは終わったという噂が本当なら、テープはディスクやバック アップ・ベンダーのところに幽霊として出没し、しかもすごくイケてる仕事をしていることになる。

 

著者略歴:Rich Castagna (rcastagna@storagemagazine.com)は、Storage Media Groupの論説員。

訳注1:原文では、「今を去る1975年に、スペインのフランコ大元帥が大往生を遂げるまでの時間 より長く、瀕死の状態を引きずっている事になる。」となっている。健康状態が悪化した1969年、前国王アルフォンソ13 世の孫フアン・カルロスを後継者に指名してから、1975年に病没するまでの闘病期間を指しているものと思われる。

 

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