2011年「ホット」なストレージ技術

共著:Andrew Burton, Rich Castagna,
Todd Erickson, Megan Kellett,
Sonia Lelii, Dave Raffo, Carol Sliwa
Storage Magazine 2010年12月号より


ここに紹介する6つの「ホット」なストレージ技術(自動ストレージ・ティアリング、プライマリストレージのデータ削減、VMwareストレージ用API、スケールアウトNAS、マルチプロトコル・ストレージ、クラウド・ストレージ・サービス)は2011年のシステム導入計画に必ず一つは入れておきたい技術だ。もし、あなたのシステム計画にこれらの技術が一つも入っていないのであれば、一度根本的に計画を見直してみてはどうだろうか。

 

毎回「ホット」なストレージ技術の特集を組むとき、本誌の「ホット」の定義はよその解釈とは違っている、ということを必ず申し上げている。本誌では、現実のデータセンターにおける選択肢になり得るほど十分安定しているが、まだストレージの本流になっていない技術を「ホット」と呼んでいる。従って、読者が自分を先進的なユーザーであろうと芯から疑り深い人であろうと、本誌の「ホット」なストレージ技術リストには何かしら読者のお役に立つことが載っているはずだ。

 

ストレージ管理における利用効率を元のように戻す、ということは、多くの会社にとってここ数年の間おまじないのように唱えられてきた。その結果、自動ストレージ・ティアリング(階層化)が、データをあるべき場所に迅速に配置してくれるかなめ要の利用効率技術としてその地位を固めつつある。同様に、マルチプロトコル・ストレージは、得意技はたったひとつという、どこか古臭い感のあるシングルプロトコル・ストレージよりはるかにコスト効率に優れたものになる可能性がある。

 

一年間のデータ増加率が50%かそれ以上という状況で、多くの会社は無秩序に増設されたNASを全く新しいタイプのスケールアウトNASによって統合管理することに関心を持っているはずだ。また、いつも容量のことに腐心しているストレージ・マネージャーはプライマリストレージでのデータ削減を、新しい年における救いとして少なからず期待を寄せることだろう。

 

仮想サーバはシステム側の人間にとっては恩恵だったが、ストレージ・マネージャーにとっては頭痛の種だった。VMwareが先頭を切る形で、仮想化ソフトウェアベンダー各社は仮想マシン(VM)用ストレージを構築し、VMをずっと簡単に、かつ信頼性の高い形でバックアップする事を可能にする新しい仕組みを提案している。

 

新しい考え方がストレージの意識に入り込んできた。何かが必要になったとき、その必要なものを借りることができるのに何故それを買う?この考え方は、クラウド・ストレージがサービスとして成り立つ理由になっているが、われわれの調査が正しければ、クラウド・ストレージ・サービスはこれまでのストレージ基盤の選択肢に取って代わろうとしている。

 

 

 

1.自動ストレージ・ティアリング

 

全ての大手ストレージベンダーが製品をリリースしており、半導体ストレージがその必要性に拍車をかける、という状況の下で自動ストレージ・ティアリングが2011年に飛躍する条件は整っている。

 

今日まで、ファイバーチャネル(FC)とSATAディスクなどのストレージ・ティア(階層)間のデータ移動は、ほとんど手作業か半自動処理で行われてきた。今年(2010年)初めに本誌が行ったアンケートでは、54%の回答者がデータの移動を、手作業または半自動化した方法で行っており、自動ストレージ・ティアリングを使っていたのは、わずか32%だった。

 

しかし、I/Oが集中するアプリケーションのために半導体ドライブ(SSD)を採用したITの現場からは、自動ティアリングは歓呼の声で迎えられるかもしれない。その価格から、超高速のSSDは最高度のパフォーマンスが要求されるアプリケーションで使われてこそ経済的な意味がある。

 

「SSD使用の増加は、自動ティアリング普及への大きな原動力になるでしょう。」マサチューセッツ州Hopkinton のTaneja グループの創設者でありコンサルティング・アナリストでもあるArun Tanejaははこう語る。「SSDを導入したとたん、そのティアの能力、パフォーマンスはファイバーチャネルに比べて極めて高いため、SSDのティアを上手に使うには自動ティアリングが不可欠になります。」

 

エンタープライズ・ストラテジー・グループ(ESG)のシニア・アナリストMark peters(本社、マサチューセッツ州Milford)はこう語る。「SSDを純粋に静的記憶装置として使おうとした場合、十分な容量のSSDを購入するのは非常に難しい事でした。ユーザーが少容量のSSDとティアリングを組み合わせる事が可能になったことにより、この二つはもはや切り離せないものになったと思います。」

 

現場で使ってみると、正しいタイミングで正しい場所にデータを移動することを保証する自動ストレージ・ティアリングには多数のオプションがある事が分かる。ある製品には価格がついており、またある製品はストレージ・システムに組み込まれている。製品の差別化要素には、ティア間をデータが移動するときの粒度レベルや自動化の度合い、どのユーザーがポリシーを設定できるかの権限などが含まれる。

 

「みんなが違ったやり方でやっているし、これを買う方法も多種多様だ。」Evaluator Group Inc.(本社コロラド州Broomfield)のシニア・アナリストJohn Websterはこう語る。

 

例えば、2005年にブロック・レベルの自動ティアリングを初めて世に出したCompellent Technologies Inc.はデータをユーザーのニーズに合わせて、512KB、2MB、4MBのページサイズでデータを移動できる。さらに、同社はシン・プロビジョニング、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)、ポインター型スナップショット、遠隔レプリケーションなどの機能との統合も謳っている。

 

2009年、EMCはFully Automated Storage Tiering:FAST(自動階層化技術)をハイエンドのSymmetrix V-MAX、ミッドレンジ・システムCLARiX、NASボックスCelerra向けに出荷を開始した。Symmetrixはメガバイトに準ずる大きさのチャンクでデータ移動が可能であり、CLARiXでは1GBのチャンクで、Celerraでは個々のファイル単位でこの作業を行う。EMCのシニア・プロダクト・マネージャーScott Delandyによれば、EMCの今後の計画の中には、自動ティアリングの機能を筐体内だけでなく筐体間で行う機能も含まれている、という。

 

2006年にボリューム単位での自動ティアリングを売り出した日立データシステムズ(HDS)は、最近42MBページ単位の自動ティアリング(日立ダイナミックティアリングとして知られる)を同社のバーチャルストレージプラットフォーム(VSP)向けに発表した。HDSは2011年初頭にサードパーティの外部ストレージ向けのページ単位の自動ティアリングを発売する予定である。

 

IDC(本社、マサチューセッツ州Framingham)副社長、Storage Systems & Executive StrategiesのRichard Villarsはこう語る。「われわれは初期の段階にいます。2年前、シン・プロビジョニングはある種危険なものとして見られていましたが、今では特に仮想化環境においてほとんどデファクトの要件になっています。自動ティアリングにも、今後2年程で同じようなプロセスを経て、同じことが起こるのを目にすることになると思います。」

 

 

2.プライマリストレージにおけるデータ削減

 

プライマリストレージのデータ削減は2010年「ホット」なストレージ技術リストからの再登場である。つまり、われわれの前回の予想は1年早かった訳だ。しかし、この技術を市場に供給する態勢を整えつつあるベンダーにとって、これは2010年の「ホット」な話題であったということからすれば、われわれの昨年の予測は当たらずとも遠からず、というところかもしれない。2011年にはさらに多数のプライマリ・データ削減製品の出荷を目にすることになるだろう。

 

プライマリ・データ削減は、おもに新興企業によって供給される技術から大手ベンダーが支配する技術へと変わることにより主流への大きな一歩を歩み始めた。2010年、Dellはプライマリ・データ重複排除ベンダーのOcarina Networksを買収し、IBMはプライマリ圧縮ベンダーのStorwizeを買った。EMCはミッドレンジ・ストレージ・システムのCLARiXにブロック・レベルの圧縮機能を備えた。HPは自社の重複排除ソフトStoreOnceを、バックアップ用からスケールアウトNAS製品であるX9000との組み合わせを手始めに、プライマリ・データ用に拡張すると述べた。

 

Permabit Technology Corp.は組み込み型重複排除ソフトウェアをOEM供給することでBlueArc Corp.およびXiotech Corp.と合意した。PermabitのCEO、Tom Cookによればパートナーシップはさらに増えるという。

 

「われわれは、全てのストレージベンダーから2011年中にデータ最適化製品を持ちたいという明確な目標を目のあたりにしている。ブロック・ストレージベンダーからもファイル・ベースのベンダーからも同じように要求が来ている。勢いはいっそう増している。」とCookは言う。

 

プライマリ・データ削減がストレージ・システムにおいてありふれたものになる以前の2011年初頭にはさらなる製品の主導権争いを見ることができるだろう。DellとIBMは、まだ自社のストレージ製品に新たなデータ削減技術を組み込んでいない。HPもおそらく2011年前半には、プライマリストレージにStoreOnceを組み合わせることはないだろう。2007年からプライマリ重複排除を販売していたNetAppは、ボリュームサイズの増加とボリュームをまたいだ重複排除というユーザーからの要望に応えるだろうと見られている。日立データシステムズやLSI、中小のストレージシステム・ベンダーはまだデータ削減についての計画を明らかにしていない。

 

データ削減のタイプや、プライマリ・データとバックアップ・データを処理する時とではどのように動きが違うのか、ということについての教育も必要だ。重複排除率や圧縮率はデータの使用状況によって異なるが、両者を組み合わせて使うこともある。

 

蓋を開ければ両者の技術はまったく違うものだ、とESG LabのBrian Garrettは言う。「圧縮はデータの大きさを減らすのにたいして、重複排除は冗長化したチャンクを 対象として動作します。結果は違ってくるでしょう。重複排除はバックアップに著しい効果があります。もし同じデータを何回も保存しているのであれば、非常に高いデータ削減が得られます。圧縮はデータベースやEメールに効果を発揮します。しかし、動画や音声ファイルなどすでに圧縮済みのデータには、期待したほどの効果は得られません。」

 

StorageIOグループ(本社、ミネソタ州Stilwater)の創設者でシニア・アナリストのGreg Schulzはデータ削減に万能のアプローチはない、と力説する。

 

「CLARiXを持つEMCやStorwizeを買収したIBMなどのベンダーは効果的なデータ占有領域の削減には様々な技術が含まれていることを示しています。」彼はこう続けた。「多くのストレージ・ティアをまたぐ多様なニーズに応えるために、圧縮保管から重複排除、さらにはシン・プロビジョニング、RAID、省スペース型スナップショットなど、様々な技術が使われています。」

 

3.VMware ストレージ用API

 

VMware vStorage API for Data Protectionは評判の悪いVMware Consolidated Backup (VCB)の後継製品だが、2009年のリリース以来バックアップ業界の話題になってきた。「VCBはいわば、つぎはぎだらけのがらくたのようなものでした。」ESGのシニア・アナリストLauren Whitehouseは語った。「VMwareはバックアップのようなI/O負荷の高いアプリケーションがどんな影響を及ぼすかも考えずにハイパーバイザを作ったため、VCBはハイパーバイザ上の腫瘍のようなものになりました。全ては後からの付け足しだったのです。」

 

VMwareサーバ製品マーケティング部門シニア・ディレクターのVenu Aravamudanは、VCBにはかなり制限があった、と言う。「それぞれの仮想マシンにエージェントを置く、という従来のアプローチではどうしてもうまくいかなかったため、VCBは何とかバックアップの機能を提供する一種の応急処置として作れました。」

 

ところで、vStorage API for Data ProtectionはVCBなどと違い、スタンドアローン製品ではない。替わりに、このAPIはサードパーティ製バックアップ・アプリケーションがスクリプトやエージェントを作らなくてもVMkernelと直接連携することを可能にする。APIは一種のベースラインを提供するのみで、それをとりまく機能の開発は各バックアップベンダーの手に委ねられる。このAPIによって、VMwareは実質的に脇役となり、バックアップ・ソフトウェアベンダーに彼らが最も得意なことをやらせることにした。

 

ESGのWhitehouseは語る。「VCBをやりだしてとんでもない問題がベンダー・パートナーのコミュニティで噴き出すと、VMwareはすぐにAPIを開発に着手しました。それはVMwareにとっても手間が省ける方法だったし、ベンダーも開発がやりやすくなりVMwareプラットフォーム採用を積極的に推進することになりました。VCBの問題は、何としても解決しなければならない重大な問題でしたが、APIは最善の解決策になりました。」

 

VMwareのAravamudanによれば、彼の会社がサードパーティ・ソフトウェア・パートナーとAPIの開発で緊密に動いていたとき、VMwareはサードパーティ製品のテスティングや検証には関わらなかった、という。「vSphereの実際のリリースまでには山ほど共同作業がありました。」彼は語った。「しかし、これらの製品について実際に検証のようなものはありませんでした。これは非常に明確に定義されたAPIセットだったので、ハイパーバイザ・カーネルに常駐するサードパーティ製品がひとつもなかったからです。」

 

ベンダーによる統合は、これまでのところ、まちまちだ。当然のことながら、仮想サーバに特化して作られたバックアップ製品はこぞってこのAPIとの統合に飛びついたが、そうでないところはまだ完全には統合を行っていない。「今のところCA、Veem、Questがデイワンサポートを行っていることが分かっています。TSMはまだ全てのAPI機能を統合していません。」ESGのWhitehouseは語った。「ユーザーが一度APIによってより効率性が増すことに気付けば、ユーザーはベンダーにこのAPIと統合するよう迫るでしょう。」

 

vStorage API for Data Protection以外に、vSphereにはvStorage APIs for Array Integrationやマルチパス、Site Recovery Manager (SRM)といっった機能が含まれている。vStorage APIs for Array Integrationは、スナップショットやレプリケーションなどのタスクをストレージ・アレイに実行させることによりvSphereの効率性を向上する。vStorage のマルチパス用APIはアレイベースでのマルチパスを可能にし、これによりストレージのI/Oスループットを向上する。vStorage API for Site Recovery ManagerはSANやNASのアレイベースのレプリケーションとSRMを統合する。これによりSRMは復旧のとき頼みの綱となるアレイベースのレプリケーションにアクセスおよび管理することが可能になる。

 

Data Protection関連のAPIではないが、vSphereの機能として触れておく価値があるのが、Changed Block Trackingである。この機能は、仮想マシンの仮想ディスクの変更ブロックを追跡する機能で、これによりバックアップ・アプリケーションは前回のバックアップからの変更を即座に識別してこれら変更分だけをコピーすることがでるようになり、バックアップ時間とネットワークトラフィックの削減が可能になる。「これはバックアップをさらに効率的にしていく大きな動きのほんの一部です。」ESGのWhitehouseは語った。

 

ユーザーにとって、効率性と信頼性はいうまでもなく重要である。「環境を混乱に陥れたり問題を起こしたりすることなくデータ保護を導入できないのであれば、誰もハイパーバイザ上で本番のアプリケーションを稼働させようとはしないだろう。」Whitehouseは語った。サードパーティ・ベンダーが直接ハイパーバイザと連携できるようにしたことで、vStorage APIsとその他のvSphereの機能はVMwareユーザーのストレージ全般とデータ保護の状況改善に大きく役立っている。

 

4.スケールアウトNAS

 

スケールアウトNASは解決するにふさわしい問題を待ち望んできた実証済みの技術である。その問題は荒れ狂う非構造型データの増加と、従来のNASシステムの限界という最悪の状況の中から立ち現れた。容量にたいする拡張性と比較的簡易に引き出すことができるパフォーマンスをもったこの技術は、リッチメディアのデジタル情報の使用増加と法規制遵守の要件による、大量の非構造型データストレージのニーズを解決すべく取り組んでいた組織の注目を集めた。

 

Tanejaグループのシニア・アナリストで検証サービス部門ディレクターのJeff Bolesによれば、スケールアウトNAS(しばしばクラスタNASともいわれる)は多くの問題を解決できるという。「スケールアウトNASが市場に出てきてだいぶ経ちますが、明らかにシングル・ユニファイド・レポジトリ(単一ファイルシステム)だけでなく、多様なニーズに幅広く対応する能力を備えています。アーカイブ用ストレージにあてがっていたのと全く同じ容量をプライマリNASにあてがうことができるのです。」

 

スケールアウトNASの導入は増えてはいるが、まだ複数のバーティカル・マーケットで普及するには至っていない。前述のBolesは言う。「今のところユーザーがスケールアウトNASに向かわせるのは特定のケースに限られています。つまり、まだ非常にパターン化されている、ということです。今年はわれわれがこれまで見たこともない程広汎な領域での導入を目にすることになるでしょう。」

 

その使用ケースとしては、マスコミ、エンターテイメント、テレコム、クラウド・サービス・プロバイダー、生命科学、エネルギー探査、シミュレーションなどが含まれる。非常に大きなデータセットでギガバイトあたりのストレージコストを下げなければならない必要に迫られている環境である。Bolesは語る。「スケールアウトNASはストレージ基盤を統合するために多くの事をやることができます(やってくれます)。スケールアウトNASは単一のビューやツールセットによって管理できるひとつの大きいストレージ基盤を作ることができるのです。」

 

StorageIOグループのSchulzは、スケールアウトNASの出現は業界のニアライン・ストレージにたいする考え方を変えた、と言う。30日後に自動的にアーカイブする替わりに、スケールアウトNASは企業に低コストの選択肢をもたらす。Schulzは語る。「これは新しいニアラインです。新しいモデルは、データをより低コストな大容量ストレージに移動して、スピードは遅くなるがアクセスは可能な状態にしておくやり方です。なぜならば、データがそこにある、ということに価値があるからです。データは高度に圧縮されているかも知れないし、高度に最適化されているかも知れない、または、重複排除が行われているかも知れない、しかしプライムストレージの貴重な資源を拘束するようなことはありません。」

 

スケールアウトNASをリードする製品を以下にいくつか挙げる。

 

・HPが2009年7月にIbrix Inc.を買収して手に入れた技術が組み込まれたHP StorageWorks X9000ストレージ・システム。

・IBMのハイパフォーマンス・コンピューティング向けGeneral Parallel File System(GPFS)が使われているIBM Scale out Network Attached Storage(SONAS)。

・メディア、エンターテイメント業界に定評のあるIsilon Systems Inc.,のSシリーズおよびXシリーズのスケールアウト・ストレージ・プラットフォーム。

・2003年にSpinnaker Networks Inc.を買収して獲得したスケーラブル・ファイルシステムを組み込んだNetAppのOntap 8ストレージ・オペレーティング・システム。

 

TanejaグループのBolesもStorageIOグループのSchulzも、DellがEqualLogicプロダクト・ラインおよび2010年2月のExanet買収により獲得したスケールアウト技術を今後どのように扱うか興味深いところだ、と語る。

 

まだホットではない

Fibre Channel over Ethernet(FCoE)

昨年も、FCoEは「まだホットではない」リストに上がっていたが、別にこのテクノロジーのあら探しをしている訳ではない。この技術がそのうちに必ず市場を席巻し、もっとも「ホットな」ストレージ・ネットワーク技術になるだろうと思っている。ただ、それがすぐに起こるだろうとは考えていないだけだ。FCoEを作り上げているほとんどのパーツはここにある。しかし、ストレージ・アレイ側のサポートは遅れている。ファイバーチャネル・ネットワークはストレージ環境におけるロドニー・デンジャーフィールド*1である。あまり構ってもらえていないし、誰もネットワークのアップグレードなんかをうきうきと待ち望んでやしない。

 

仮想ネットワーク

これはストレージ関連の新しい技術のなかでも最も斬新なものだ。この技術は、VMwareが共有、仮想のデバイスに変えたと同じことをHBAやNICにたいして行うものだ。サーバとネットワーク接続の間にひとつのレイヤーを追加することにより、このインターフェースを共有したり、動的にまたはポリシーに基づきアロケートすることができる。サーバやストレージを仮想化したのに、何故ネットワークを無視するのか?全てのI/Oの仮想化のニーズは、大手ベンダーのうちの一社が推進することによって促進されるかも知れないが、われわれはそれが2011年に起こるとは考えていない。

 

自己修復システム

ユーザー以上に自分自身のことをよく知っているストレージ・アレイというのも少し気味が悪いが、もしそれがその知識を使って延々と時間を奪うディスク障害を回避することができるのであれば、われわれは断然それを支持する。かなりの数のストレージ・ベンダーがいくつかの自己修復機能つきのシステムを販売してはいるが、今のところ、ユーザー企業のデータのための最適なツールというより科学プロジェクトのような響きがある。しかし、自己修復システムのリストが増えるのにそれほど時間はかからないだろう。これは双方が得する取引だ。ユーザーは心の平安を得、ベンダーにとってはサポート負荷の軽減に繋がる。

 

ユニファイドコンピューティング(統合ストレージスタック)

これはワンボックスのITである。データセンターを埋め尽くすサーバとストレージ、それら全てをつなぐネットワーク、その一切合切がただひとつのSKUに入っている。ベンダーはこの考えをとても気に入り、自分たちもこの全ての製品が詰まったパッケージを販売できるように、とEMCに追随し協業している程だ。ある人達は便利、というが特定メーカによる「囲い込み」という人達もいる。「スタック・アタック」*2は以前より行われてきたが、あまり素晴らしい成果は上げていない。次回はどうなるか、とくと拝見しよう。

 

 

5.マルチプロトコル・ストレージ

マルチプロトコル・ストレージが市場に出てしばらくになるが、最近になって柔軟で費用効率のよい技術を積極的に活用しているユーザーから新たな関心を集めている。ストレージ容量の急上昇に直面して新たな効率化を求めるユーザーは、マルチプロトコル手法を使ってストレージ・システムの統合を行うのだ。

 

Enterprise Strategyグループの調査によれば、マルチプロトコル・ストレージの採用は増えている。同社のアンケートに対し300人以上の回答者が、約50%が導入を計画中、25%近くが既にマルチプロトコル・ストレージを導入済みだという。2008年に行われた同社の同様のアンケートの時は、マルチプロトコル・ストレージを導入済みだと答えたのはわずか18%だった。

 

EMCやNetAppなどのベンダーは自社のプロダクト・ラインにおいてマルチプロトコル・ストレージを高々と謳いあげている。ESGのシニア・アナリストTerri McClureによると、最近マルチプロトコル・ストレージはもはや特別なオプションではなく機能一覧表の「チェックボックス」の一項目になっているという。「おもにNetAppによって行われたユニファイド・ストレージのキャンペーンによって、期待はますます高まっています。」McClureは語った。「NetAppが向かっているところやEMCがCLARiXプラットフォームについて語っていることについて考えてみると、ユーザーは『このブロックのためにxが、このファイルのためにはxが必要だ、もし俺の予想が外れたらそれなりの罰金を払うよ』なんていうことより、もっと全体的にストレージの要件を計画しているのだと思います。」

 

マルチプロトコル・ストレージはあらゆる大きさのデータ・ストレージ環境を単純化する可能性を持っている。安定し、しかも相互の区分が明確なブロックおよびファイルストレージ基盤を持っていることが多い大規模な環境よりも、小規模な企業のほうがよりこの技術に魅力を感じるかも知れない。前述のStorageIOグループのSchulzは語る。「ブロック・ストレージかNASストレージを買いに行く替わりに、SMBはその容量を提供する単一のストレージを買うことができるのです。これらのシステムの価格が下がり機能も増えてくれば、次の段階では、より小さな環境に合わせるようになり、その環境のニーズとともに売上を伸ばしていくことになるでしょう。」

 

ファッション小売業者SpiegelのIT部門バイスプレジデントのElvis Cernjulは8種類のストレージ機器を統合するためにユニファイド・ストレージを使っている。その理由としてCernjulは、これらのシステムの管理に煩わされなくて済むことのほかに、ストレージのスペースが増え、データを三重化できる点を上げている。

 

ROEL Construction Co.(本社、サンディエゴ)のITディレクター、Kevin Fitzpatrickは自社の環境でマルチプロトコル・ストレージは使っていないが、興味は持っている。彼のクラウドストレージ・プロバイダーはNetAppからユニファイド・ストレージに変えることになった。「その変更以来、ストレージの機能が格段に良くなったのが分かった」。このパフォーマンス結果に感心して、Fitzpatrickは次回自社のストレージ容量を増やす時はマルチプロトコル・ストレージを検討する、と言う。

 

マルチプロトコル・ストレージは間違いなく「ホット」な技術である。とはいえ、自社がそれにどれほどのものを期待しているのか、正しく判断しなければならない。「もし理に適っているのであれば、…つまり、それによって利益を効果的に上げることができるのであれば、絶対検討すべきです。」「しかし何よりも先に、それがあなたのビジネスに役に立つのかを確認しなければなりません。言い方を換えると、あなたがこの技術のために仕事をするのではなく、この技術にあなたの仕事をさせなさい、ということです。」StorageIOグループのSchulzはこう言う。

 

6.クラウド・ストレージ・サービス

 

クラウド・ストレージが「ホットな」技術である証拠が必要ならば、数多くの企業がサービス・メニューや戦略とともに市場に殺到しているのを見れば分かるというものだ。しかしアマゾン、グーグル、Iron Mountain、マイクロソフトのような技術系最大手でさえも、ましてやあまた数多のホスティング・サービス・プロバイダーは、今この分野の大幅な増強の真っ最中である。今日までのところクラウド・ストレージは、ユーザーがバックアップ・アプリケーションの一部をクラウドに移して様子見している新興の技術に過ぎない。

 

Asigra Inc.のプロダクト・マーケティング・ディレクターのAshar Baigは語る。「ユーザーはセキュリティについて懸念を持っています。クラウドの導入は遅れています。もっと早まる可能性はありました。」

 

導入のペースが遅い原因として、クラウド・ストレージに最も適したデータはどのような種類のデータかという議論が未だに行われている、ということがある。さしあたり、クラウドに移されているのは非構造型データだ。大多数のユーザーはクラウド・ストレージへの先遣隊としてバックアップを選んでいる。クラウドをプライマリ・ストレージに使うよりも考えられる危険は少ないからである。

 

しかし、ユーザーがクラウドを試すことに積極的になってくると、新興企業はクラウド・ゲートウェイを販売するようになった。クラウド・ゲートウェイとは非バックアップ・データ用にクラウドのアクセス・ポイントとして動作する機器である。これらプライマリ・ストレージ・クラウド・ゲートウェイを販売しているベンダーのうちのいくつかを次に挙げる。Cirtas Systems Inc.、Nasuni Corp.、Panzura、StorSimple Inc.、TwinStrata Inc.。 いずれも昨年ハードウェアまたは仮想アプライアンスを発売した会社である。

 

さらに、本誌の調査によるとこの技術にたいする感心は高まっており、クラウドによる非バックアップサービスの導入を計画しているユーザーが増えている。数字はまだ少なめだが伸び率は著しい。2010年秋のアンケートでは約10%の回答者がデータセンターのプライマリストレージとしてクラウドを使っていると答えた。半年前はこれがわずか4%だった。また、他の10%の回答者がニアラインデータ用にクラウド・サービスを使い始めることを計画している、と答えた。

 

これに加えて、業界の専門家はコンプライアンス、レファレンス、アーカイブ・データが上記以外のクラウド・ストレージの使用用途として顕著である、という。

 

Iron Mountainはデータ保護、ガバナンス、アーカイブの周囲にすぐれたクラウド戦略を打ち立てた。「クラウドは長期間保存しなければならない情報のコストを下げてくれます。」Iron Mountain Digitalのチーフ・マーケティング・オフィサーT.M. Raviは語った。「クラウド・ストレージがたどる進化の次のステップはIaaSです。」

 

フロリダ州Bradenton市CIOのStaci Crossはクラウド・ストレージ・サービスが彼女の部署のニーズにぴったりだということを発見した。少数のITスタッフと限られた専門知識のなかで、Bradenton市はクラウドにいくつかのストレージ機能の処理を任せた。市はクラウドプロバイダーYotta280を使って、約一年間バックアップ処理を任せ、Elphant Outlookには2年間以上emailの管理を行わせてきた。さらに、市は公共のデータをドキュメント管理システムからクラウド・サービス・プロバイダーのSpringCMに移行中である。

 

「パフォーマンスとセキュリティについて、何の問題も起こっていません。私たちはずーっと予算とスタッフの制約に悩まされてきました。クラウド・サービス・プロバイダーは私が持つことのできないスケールメリットを持っています。」Crossは言う。

 

 

*1ロドニー・デンジャーフィールド:アメリカのコメディアン。「誰も構ってくれない(I don't get no respect)」が決め台詞。

*2 紙やプラスチックのコップなどを一旦ピラミッド状に積み上げてから、山を取り崩して一つの柱に積み上げ直すスピードを競うゲーム。

 

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December 2010