ITアーキテクトのひとりごと
第69回「忘れてしまったこと、これから忘れてしまうこと」

近況1:テープ装置のスピードを最大化する方法は?

LTO6のような最近のテープ装置のストリーミング性能が良いのは分かっているが、アプリケーション、OSドライバ等を含めて考えると、どうすれば早くなるのかは意外に難しい。ノウハウっぽい話もあるが、テープ装置の経験豊富な世代はいまや少数化しつつある。

テープ装置特有のノウハウや知見はおぼろげになってしまい、思い出すのに時間がかかる。Googleっても、製品紹介のサイトばかりが見つかり、ピンとくるような情報にヒットしない。検索キーワードを変える。ダメだ。

久しぶりに、スキャナで取り込んで保存している「SCSI-2詳細解説」(CQ出版)の「第7章シーケンシャル・アクセス・デバイスのコマンド」を読んでみる。フムフム、なんとなくわかった。本当はもっとディープな、テープ装置のファームウエアはどんな動作をしているのか、OSのデバイスドライバはどうなっているのかetcを知りたいところだが、後は経験と想像で補うことにする。

OSもサーバマシンもストレージ装置も高性能化を指向して進化しているので、昔の経験が役に立たないような気がする。何もかもが高性能を発揮すると考えるよりも力ずくで解決したほうが手っ取り早い。

こんなことを感じた時は、基本に立ち返って考える。

「新しいテープ技術」 JDSF StorageMagazine翻訳記事
https://www.jdsf.gr.jp/backup/stm/201203.html

JEITAテープストレージ専門委員会コラム
https://www.jdsf.gr.jp/backup/JEITA/2012/jeita09.html

近況2:巨大なファイルサーバ群が地理的に分散している、ファイルサーバやアプリケーションの利用者が世界中に散らばっている。クラウドが隆盛になる前からたくさんの問題を抱えていた、こんなシステム構成や利用形態は、ますます盛んだ。

巨大なファイルサーバの場合、バックアップはディスクのスナップショットを使うと簡単だ。ファイルの世代管理もWindowsのVSSは簡単にやってのける。

しかし、ディザスタリカバリを考えた遠隔地バックアップや、利用者のリモートアクセスを、安く、早く、便利にしようとするとネットワークのコスト、距離の問題から発生するレスポンスタイムの問題等は無くならない。

クラウドのおかげで、ネットワークコストのメガビット単価が限りなくゼロに近づいていくはずなので、巨大ストレージの遠隔地バックアップのようなITシステムを実現するための苦労、工夫は、テープ装置の場合と同様に忘れてしまうのかもしれない。

便利になるというのは忘れてしまうことと "イコール" なんだ。


JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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