書評 2026.1
リスキリング【人材戦略編】
エドテック市場が勃興した1.0,スキルテックが登場した2.0に続け,今は「スキルベース組織」への変革に向き合うリスキリング3.0の局面だと著者は俯瞰する。「スキルベース組織」とは,採用補充ではなく今いるメンバーの人材開発を通じたスキル活用を意味し,一人ひとりの持てるスキルを必要に応じて所属にこだわらず一定期間・割合で発揮してもらうような細分化した展開イメージが想定されている。スキル需要が短サイクルで変化する事業環境に対応する狙いがあり,前提として場面ごとに浮上するジョブとスキルの関係をプラットフォーム上で管理するマネジメントの整備が必要だと解説。その仕組みを支えるスキル分類のやり方について本書は科学的で専門的な設計に踏み込んでいく。スキルの可視化はAIの進化による技術的失業を防ぎ,失業なき労働移動を実現するカギになると提起し,企業の対応では組織内リスキリング推進責任者(CRO)のアサインを提案して,実行すべきアクションを体系づける。先見性と内容密度の濃さに圧倒される1冊だ。
●著者:後藤宗明 ●発行:日本能率協会マネジメントセンター
●発行日:2025年9月30日 ●体裁:四六版/312頁
選ばない仕事選び
本書は進路選択を迫られている中高生を読者に想定しているものの,仕事・働き方・お金を巡る多角的な考察は現役の社会人にも深い示唆を与えてくれそう。様々な職業体験を経て作家として活躍する著者は,人に言われるまま何事も「あ,そうかも」と受け入れて来たと半生をを振り返り,それがペンネームの由来だと明かす。仕事選びには正解がなく,なりたい職業を先に決める無理を語り,「ちょっとやってみないか」「手伝ってほしい」と,仕事は向こうからやってくるものだと自らの体験を頼りに偶然の効力を説明する。誰がやっても変わらない「作業」と,自分の動き次第で世の中がわずかでも変わる「仕事」の違いを指摘しつつ,無理に抱え込まずに「責任」なんか放り出してもいいと逃げ道も用意。どんな仕事をするかより,どんな人生を送りたいかを優先すべきだと哲学的なメッセージを投げかける。終始記述スタンスはひねくれているが,苦手でも不得意でも目の前に転がってきた仕事は面白がってやってみてはどうかと諭す眼差しには温もりを感じる。
●著者:浅生 鴨 ●発行:筑摩書房
●発行日:2025年10月10日 ●体裁:新書版/192頁
freee 成長しまくる組織のつくりかた
著者はフリー(株)のCHRO。入社時100名程度だった会社を上場に導き,2,000名規模に急拡大させた当事者の1人だ。本書では,組織づくりを投資と捉えるエッジの効いた経営スタイルをミッション・ビジョン・カルチャーの関係から説き起こしている。まず,同社では活動のすべてがミッションに矛盾なく展開されている徹底ぶりに驚く。人事面では,カルチャーフィットを妥協せず,ミッションに共感できない人は採用しないと断言。報酬では当事者意識を持ってもらうため新卒の段階から自社株制度の対象にしている。また,評価制度では成果ではなく,カルチャーに則った成長を基準に職務グレードを決める仕組みを運用。ミッションに共感した仲間たちによる自律的なアクションを求め,超フラット組織の具現化に当たっては,部下を管理する「マネージャー」ではなく,タレントを支援する意味から「ジャーマネ」という呼称を社内共通語にするなど,遊び心もにじませる。自由と責任にウェイトを置く権限委譲の進んだ組織運営の実態がうかがえて興味深い。
●著者:川西康之 ●発行:大和書房
●発行日:2025年12月1日 ●体裁:四六版/256頁
人的資本経営時代に働く人が持っておきたい「じぶん資産」
人的資本経営を個人の視点に置き換え,勤労者自身の強み「じぶん資産」(著者の造語)を高めていく方策をガイドする1冊。「じぶん資産」とは「いつでも,どこでも成果を出せる力」とシンプルに定義され,他部署へ行っても,他社に転職しても,状況にうまく適応し価値あるアウトプットを創出できる“再現性”がカギだとされる。知識・スキル・経験は「じぶん資本」ではあるが,使わなければ埋もれたまま。これらを使って,具体的な成果を出せる力が「じぶん資産」だと説明する。例えば,データ処理能力という資本を持っている場合に,集計作業で終わるか,業務改善に活かし成約率向上といった成果まで導けるかの差,一般化すると“思考と行動の差”に行きつくと述べている。働く個人には,「じぶん資産」を育てる10のセルフアクションを整理してアドバイス。転じて,企業には社員の「じぶん資産」を育てる側だとして,@思考と行動を広げる,A人とつながる,B価値を生み出す,という3つの仕組みを掘り下げて有効な打ち手を提案している。
●著者:佐藤美和 ●発行:同友館
●発行日:2025年12月5日 ●体裁:四六版/216頁
HRM Magazine.
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