書評 2025.12
スキルマネジメント 改訂新版
“改訂新版”とはいうものの,本書の内容は前作とはかなり異なる。前作は経営向けに「従業員エンゲージメント」の仕組み化を訴えていたのに対し,本書はリーダー向けに「チームのワークエンゲージメント」の仕組み化を説いている。衛生要因の充足は経営の責任だが,動機付けはリーダーの役割だという前提で,ステップを示して成長を可視化し,学習意欲を維持させる環境づくりを解説。効果が顕著な「社会人基礎力」をベースに仕組み化によって組織力強化を実現した例も紹介する。著者の提唱する「スキルマップ」の運用では,ただのスキル一覧ではなく,エース級人材の優れた知見を「ナレッジ・プラットホーム」として共有資産に変換し,属人化リスクを解消させるレベルまで計算して設計する。さらに,「スキルマップ」を「等級」と「キャリアマップ」に連動させることで,持続的な成長を促し,人材が定着するメリットを補足している。リーダー自身のスキルでは,デキるリーダーに共通する「10個の能力」が挙げられていて,こちらも必見だ。
●著者:中塚敏明 ●発行:クロスメディア・パブリッシング
●発行日:2025年11月1日 ●体裁:四六版/232頁
人事評価制度で伸びる会社,沈む会社
目標管理をベースにした成果主義人事を導入していながら業績が伴わず,社員の不満も絶えない現実を捉え,「制度のせいではなく運用の問題ではないか」と人事コンサルタントの著者は疑う。場当たりに目標が追加されたり,経営陣の気まぐれで評価がひっくり返ったりする現象が続くと,社員が組織に見切りをつけるリスクが高まり,その意味で人事評価は企業の生命線だと強調する。制度運用の見直しポイントでは,評価指標とビジョンのつながりを第一に挙げる。続けて,目標と評価の関係を整理し,ただのToDoでは達成されても変化は起きないと警告。経営と一貫性のある目標を設定し,部門間・部署間で公開・共有する緊張感が改善のカギになると述べている。また,評価面談を育成に活かす一方で,評価そのものは業績と行動の達成だけを見ればよく,総合評価による調整は止めたほうが納得感は高まるとも指摘する。最終章に12項目の「人事評価制度チェックリスト」をまとめているので,まず自社の状態を把握してから読んでもいいだろう。
●著者:長ア哲也 ●発行:合同フォレスト
●発行日:2025年11月6日 ●体裁:四六版/232頁
戦略的休暇
メンタルヘルスの専門家である著者は,休暇取得の効能を個人と組織の両面から整理し,ウェルビーイングへ発展させていくマネジメントをアドバイスする。休暇がもたらす個人のメリットでは,ストレス軽減,集中力・生産性の向上,健康維持,人間関係の充足などを挙げる。一方,組織にも業務効率の向上,離職者の軽減,職場満足度の向上,行政指導リスクの低減などのメリットがあると確認する。「でも休めない」という現実的な課題に対しては,業務マニュアルを策定し,複数担当制にして,メンバー間で支え合えるような組織運営を提案。遠慮があって休みづらい人に対しては認知行動療法を用いて罪悪感を軽減していく手法をガイドする。また,休暇の過ごし方では,疲労度が高い場合は睡眠第一,中程度なら軽い運動,低い場合はワクワクする好きなことに取り組んではどうかとヒントを示す。休暇を取得し,心身を充足させることでウェルビーイングが実現し,仕事が楽しくなってワークエンゲージメントも高まるとする好循環モデルに要注目の内容だ。
●著者:船見敏子 ●発行:ぱる出版
●発行日:2025年11月17日 ●体裁:四六版/224頁
ルポ 過労シニア
自身は氷河期世代だと語るジャーナリストが,60代から70代の働くシニア21人に取材を試みたルポ。“美談でも悲劇でもなく”というスタンスで,働く理由,職場環境,仕事と生活の実態,人生観などを聞き出していく。一般には定年後再雇用を選択するシニアが多いと推察されるが,本書では“訳アリ”の対象者が目を引く。家に引きこもる無職の子供を養うため働かざるをえない60代が複数登場。子供は独立しているが,教育ローンを返済しきれていない親が働き続けるケースもある。仕事の内容は,病院の清掃,スーパーの品出し,新聞配達などの肉体労働が大半で,通販会社の倉庫でスピードを競わされた厳しい体験を明かす人もいる。そして給料は,最低賃金スレスレが“標準”だった。シニアの働き方は多様化し,「60歳定年でカットアウト」ではなく,「70歳までのフェードアウト」に変わってきたと著者は捉える。シニアの社会問題で括るのではなく,個々人が現役時代から向き合ってきた生き方のルポとして読んだほうが腹落ちする。
●著者:若月澪子 ●発行:朝日新聞出版
●発行日:2025年11月30日 ●体裁:新書版/221頁
HRM Magazine.
|