かいせつ・あらすじ

【息 子】小山内薫=作 川名あき=演出

この作品は、小山内薫がイギリスのハロルド・チャピン作「父を探すオーガスタス」を翻案したもの。初演は1923年(大正12年)六代目尾上菊五郎の金次郎、四代目尾上松助の火の番、十三代目守田勘弥の捕吏。その後も繰り返し上演されてきた、歌舞伎・近代劇の双方の性格をもつ珍しい戯曲。

 

幕末の江戸、12月の夜半過ぎ。さかんに降る雪に一面覆われている。ぽつんと火の番小屋があり、火の番の老爺(矢之輔)がいる。捕吏(藤井・新村)がやって来て、ひとしきり老爺をからかってまた探索に出てゆく。老爺には9年前に上方へ出て行った息子がいる。捕吏と入れ替わりに金次郎(臣弥・有之祐)がやって来る。寒さに難渋しているらしいのを見て老爺は火にあたるようすすめる。その男の年格好は息子と似ているが、素性は良くなさそうである。暖かな火をはさんで、二人の会話が進む。

 

そこへ先ほどの捕吏が入って来る。金次郎は出て行き、捕吏が後を追う。遠く近く呼子が聞こえる。捕吏を振り切って逃げる金次郎。  親の気持ち、子の気持ち、淡々と交わす会話の妙。静けさのなかに心が張り詰める、小山内薫の名作です。

【狂言舞踊 茶壺】小山内薫=作 川名あき=演出

岡村柿紅が狂言『茶壺』をもとに書き下ろした舞踊劇。二〇一〇年アメリカ公演では観客が爆笑のるつぼ、大好評を博しました。

 

田舎者麻估六(芳三郎)は、栂尾で買い求めた茶の入った茶壺を背負ったまま、ほろ酔い機嫌でちょっとうたた寝。そこへ現れた盗人の熊鷹太郎(宏太郎)は、茶壺の背負い紐に手を通して麻估六の隣にゴロリ。二人が「自分の茶壺」と主張するので、騒ぎを聞き駆け付けたもめ事解決役の目代(栄之丞・渡会)が茶について質問するが、熊鷹が麻估六の答えを盗み聞きして同じ答え。二人に茶のいわれを連れ舞いしろと命じるが、やはり熊鷹が麻估六の舞を盗み見て真似するのでらちが明かず、とうとう熊鷹が茶壺を奪い取って逃げていきます。熊鷹が麻估六を真似て半間ずつ遅れて踊るところは、絶妙なコンビネーションで、たっぷりご堪能いただけます。

 

 

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