翻訳にあたって
本訳書は、旧友中山淑氏(上智大学名誉教授、工学博士、元日本医用超音波工学会長)の 監訳を得て完成した。
原書“Implantable Electronic Medical Devices”は2014 年11 月に出版されたもので、医 用生体科学および生体工学の泰斗West London 大学教授 Dennis Fitzpatrick 博士(PhD CEng BEng(Hons))の労作である。
人間の様々な機能に生じる障害や疾病を電子工学の手法を用いて治療又は軽減するのが医 用電子工学あるいは生体工学だが、目次を一読すると分かるように、本書では心臓疾患や消 化器不全など馴染みの深い事項について、機能の仕組みから説き起こして、それらに障害が 生じる筋道を記した上で、植込みデバイスに絞っているとは言え最新の治療・補助システム について機能と仕組みを解説している。
監訳者の言を借りると、本書は「電子技術者(含む電子工学科学生)が、他の医学書を参 考にしなくても機器の本質を理解し、技術的内容にすすめるように意図して書かれ、一応成 功している」。そうして、「原書が専門辞書なしに読み進めるのに、訳書は医学辞書が必要と いう愚に陥らないようにしたい」とする方針のもと、現在の高校の物理、化学のレベルを想 定して翻訳・監訳を進めた。
医用電子工学の分野で研究・開発に関わる研究者および技術者、電気電子工学を専攻する 学生の皆さん、そして診療現場で様々な測定に関わる医師、検査技師、看護師の方々にとっ て、本書は優れた案内書になるだろう。また、高齢化社会にあって身体の不自由さに苦しめ られている方々およびその周囲の方々にとっても、本書に記されている最先端機器の解説は 最高度の参考知見になると思われる。
監訳者の中山淑博士は日本の医用電子工学における先駆者の一人だが、大学の新入生時代 から親しくして頂いている訳者の懇請を快く受けて頂き、誤訳はもとよりあやしげな文言も 数多く修正することが出来た。原書における曖昧な記述や著者の理解不足・誤解に基づくと 思われる記述を正した箇所も幾つかあった。
最後に、この翻訳の機会を提供していただいた(株)エヌ・ティー・エスの吉田隆社長と 臼井唯伸氏、および手落ちの指摘・訂正から用語の統一や校正まで多岐にわたる労を取って いただいた高橋晴美氏に心から感謝する。また、吉田隆社長のお知り合いの清水節子氏か ら、医学関係者の立場から用語等にコメントを頂いたことを付記しておく。
廣瀬 千秋
Implantable Electronic Medical Devices インプラント型電子メディカルデバイス
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