第45回 昨今の「迷惑動画」騒動に関して

コンビニでのバイト学生による悪ふざけや回転寿司店の寿司ネタや醤油さし、湯呑に対する不衛生極まるイタズラに端を発した、今年になってからの「迷惑動画」が、カレー店や牛丼での同様のイタズラに広まり、さらにカラオケ店やコンビニでの火遊び、そしてもうイタズラで済ますことができない線路上への棒(樹脂製のコーンバー)の投入動画までに広まっています。なぜこのようなことが繰り返されるのでしょうか?

一罰百戒。バカッター、バイトテロと呼ばれる同様の犯罪相当の行為(以降あえて、イタズラとは呼ばない)はSNSの隆盛初期から問題視され、特に2013年、2019年にはその件数とともに大きな社会問題となっています。にもかかわらず4,5年毎に過去の事件が忘れ去られたように再犯される理由はその犯罪の、そして罪の重さがあまりにも軽く扱われているからです。実際、未成年者の犯行の場合も多く、重い罪に問われることなく、民事としてもその賠償金について、事後にマスコミ等で触れられることはありません。刑事、民事とともに大きな罪、そして膨大な賠償金を課されるということをしっかりと公示、伝えることが大事です。海外では同様のことが必ずしも多くない一つの理由として、莫大な賠償金を課されるということが物心ついた子供でも認識していることも大きいでしょう。その被害の大きさを鑑みて、イタズラで済むものでは決してありません。

バカッター

冒頭で述べたように大きな話題になり、かつ社会的にも大きな批判にさらされてからも、雨後の筍のように、同様の行為が明らかになる、あるいはその行為が続いています。これはどういうことでしょうか。回転寿司店等、話題となっている事件を知った上で犯行を行う輩は少ないでしょう。回転寿司店が話題になる前にSNS等へ投稿された内容が発掘され炎上しているものと考えられます。明らかに迷惑動画と判定されない、見方によっては迷惑動画とみなされる動画もあり得ます。その疑いのある投稿者は慌てて削除しているでしょうが、必ずしも削除されず、別なSNSで取り上げられ、炎上する可能性もあり、投稿者は恐れおののいていることでしょう。これから過去の迷惑動画が探し出され、悪意を持って晒す人も現れることは必然です。10年以上前にツイッターが浸透し始めた頃、悪ふざけ自慢が流行り、それを叩いた炎上が問題となりました。当時と同様、これから一見、迷惑行為に見える動画、画像が過去現在にとらわれず発掘され、煽るような言葉で炎上させようとする投稿者が出て来ると考えられます。行き過ぎる炎上はやがてプライバシーの侵害だけに止まらず、まわりの人や組織を巻き込んだ誹謗中傷に発展していきます。

報道する側も難しいところです。報道すればするほど話題となって、同様の行為を行う輩が湧き出てくるからです。彼らにとっては、その行為が如何に許されざる行為、犯罪行為であるかということが理解できないのです。もちろん、咎められてから反省することはあるでしょう。その反省はその行為の本質にいたる反省ではなく、咎められたことに対する反省であって、話題になったことの優越感が勝っているのです。彼らにとっての評価基準はSNS等への閲覧数、反応であって、その良し悪しではありません。行為に対する代償が想像できないのです。「掲示や民事で対処」と言われても具体的にどのような処罰、そして自分にとって将来にわたり大きな不利益を被るかということが想像できないのです。想像できないのであれば、処罰の具体例を含めて、どれだけ不利益を被るのかということを確実に自覚させるためにも、報道でもしっかりと解説すべきでしょう。