ITアーキテクトのひとりごと
第58回「ビジネスを実現するクラウド時代に必要なエンジニア」

 

クラウド・ストレージをMyPCで利用するようになったのは、もう何年前だろうか。使い始めた当初はクラウドなんていう言葉もなかった。このコラムでも話題にしたと思うが、家で抱えているほとんどのデータは、容量無制限のクラウド・ストレージ・サービスでバックアップされている。容量無制限と言ってもDVDイメージ(ISOファイル)のようなものは、エンドツーエンドのネットワークスループットが無制限というわけにもいかないのでUSBポータブルディスクにバックアップしている。

お試しであれば無料のクラウド・ストレージはたくさんある。25GB無料というSkydriveは、ちょっとした用途には十分だ。

各種のクラウド・ストレージをローカルドライブ装置のように見せる無償・有償のソフトウエアも何種類かあるので試してみようかとは思っているが、いつでもインターネットにつながる保証は無いので本格的に使うのはどうかな?と躊躇していたが、世の中はもっと進んでいるようだ。

ビジネス・アプリケーションをクラウドで利用したいという要望は当たり前になってきた。2年くらい前だと、あれがダメだから、これが心配だからとダメ出しのオンパレード(ちょっと表現が古いかな)だったが、今や「クラウドを使うのは当たり前でしょ」という強い圧力を感じる。

クラウドをどうやってコーディネイトしてお客様の要望を実現させようかと調べていると、アマゾンAWSにStorage Gatewayという機能があるのに気がついた。オンプレミスとクラウド・ストレージをつないでしまう仮想アプライアンスだ。マイクロソフトもStorSimpleというクラウド・ストレージとオンプレミスをつなぐアプライアンス装置ベンダーを2012年10月に買収している。

AWSは仮想アプライアンス、マイクロソフトはリアル・アプライアンス。このアプローチの差の理由は何だろうか、と考えてみるが、大した理由は無いのかも知れない。できることを最速の方法でやっただけ。スピードの速い時代は、多少の失敗よりも、やらなかったことによる後悔のほうが大きい。

クラウド、クラウドと言うが、世の中、そんなに単純じゃないのでオンプレミスとクラウドのハイブリッドシステムになるのは当たり前だが、2,3年前は道具不足、機能不足で苦労していたハイブリッド・システム構築が簡単になり、現実的なものになってきた。

こんなに簡単にできちゃっていいのか、本当に使い物になるのかと若干の不安もあるが、メリットも多いので、適材適所、無理なものは無理とうまく使いこなさないといけない。

あんまり簡単にできるので、システム基盤構築はプラモデル感覚だ。ハードを触れない寂しさもあるが、あんまり簡単なので楽しそうだ。ちょっとくらい間違えても壊して作り直せる。作り直すロスも少ないので、簡単に間違えてしまう、そりゃないだろ、というミスも多発しそうだ。基盤構築のモデルをしっかりと理解した上にアイデアをいつも考えていることがクラウド時代の基盤屋の仕事になりそうだ。

基盤屋も、ハードウエアを全く触らないような新しいタイプが登場する。Software Designed Infrastructure(勝手にSDIと呼ぶ) が現実的になってきたので、CAD、CAM、CAEの世界と同じようにPCで設計、シミュレーション、そして製造が可能だ。シミュレーション機能はまだまだ不足だが、CAD、CAM、CAEの歴史が辿ったように充実したシミュレーション機能で、インフラだけでなく、アプリケーションまでもがSoftware Designed されるのは時間の問題だ。

デザインパターンに不足がちなのが運用管理だが、周りを見回せば必要な部品には事欠かないので、実装に困ることはないが、複雑な高速ビジネスモデルが増えているので、運用管理までを俯瞰できる真のSDIエンジニアが必要になる。苦労の種は減らない。

JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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