ITアーキテクトのひとりごと
第38回 「ビッグデータはとうの昔から当たり前だったストレージ業界の悩み」

 

各種のメールマガジンを購読しているが、最近とみに"ビッグデータ"という言葉がうるさいくらい飛び交っている。ストレージ業界にいる身としては、何を今更、そんなに新鮮なことはないんじゃない、と淡々と見ているが、そんなクールな態度だと世の中から見放されてしまうので、何とかトレンドに載らないといけない。

 

データ量の桁が1桁、2桁、いや3桁くらい多いアマゾンやグーグルのようなところは別格としても、大量のデータを高速で処理しなければいけない業務は意外と多いので今更ビッグデータと言われても少しも驚かないが、これまで裏方として苦労も多いビッグデータに取り組んできた我々ストレージ業界が日の目を見るチャンスが到来したと考えるとうれしい。

 

テレビで放映される、工場で大量の製品が整然と生産されている様子を見ると感動してしまうように、大量のデータがリアルタイムで処理されている様子がビジュアル化できれば(できることなら手に取れるようになれば)誰しもがきっと感動するに違いないが、残念ながらビジュアル化には全く向かないITシステムなので誰も理解してくれることはない(せめて超大型のテープライブラリ装置が忙しそうに動いていると何となく、そのビジュアルにだまされて分かった気にもなるのだが)。身内だけの苦労話が弾むことはあっても、それを聞いている知らない人から見れば、ただの内輪話になってしまうので、家族から「お父さんの仕事は何?」と聞かれたときには、わかりやすい答えが必要だ。

 

表だって多くの人がビッグデータの直接的な恩恵、サービスに浴するようにはなったが、そのビッグデータを扱うための苦労は、これまでと同じように、これからも多くの人に知られることはきっと無いので、電車の中で"ビッグデータ"と呟くのは止めよう。スーツを着た変なオタクがいるとしか思われないから。

 

それにしても、これからもデータが増え続ける(どこまで増え続けるのかも想像出来ないが)としたら、データの保存、取り出し方法や処理方式等の検討のために、もっと数学的なアプローチで取り組む必要性が生じてくるだろう。安易なアプローチで取り組むと、そのうち、つまりデータ量がある臨界点を超えた途端にシステムが止まるかも知れないからだ。

 

サーバ屋、ストレージ屋に数学的な知識を備えたスペシャリストが必要になるのはもうすぐだ。大学で学んだけれど、これまで何の役にも立たなかった数学が必要になるときが来た。でも、これまで何十年も、確率、統計以外に役に立たなかった数学の教科書は捨ててしまった。今更、教科書を買って勉強し直すのも大変なので、大学を卒業したばかりの新人に期待することにしよう。

 



JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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