ITアーキテクトのひとりごと
第36回 「デジタル記録の時代の新たなリテラシ」

 

SNIAに「100 Years Archive Task Force」なるものがある。タスクフォースの現在の活動状況はわからないが、初期のユーザ調査では、多くのユーザが数十年以上の長期データ保管を行っていることが判明している。100年保管も珍しくないという調査結果には少し驚くが、日常的な現実の業務でも10年、そして数十年の保存が必要なことは非常に多い。

 

最近増えてきた電子図書館や映像アーカイブの世界では、膨大なコストをかけて半永久的な運用を目指すが、扱うデータ量があまりに膨大なのでデータのビット障害の頻度も相当なものになるだろう。アナログ的な世界だったら、汚れや色の欠落も多少のことなら問題にならないが、デジタルの世界ではそれなりに考えておかないと大変なことになる。その辺の考えがどうなっているのかが気になるが、別の専門家がしっかりと考えているはずだ。

 

さて、我が身を振り返ると、短期保存の紙の資料やら、長期保存の雑誌記事や本をスキャナでPDF化するのは日常的になっている。この場合に紙を廃棄するタイミングは、データが2重化されたときだ。2重化されるまでは紙を温存しないといけない。紙なんかできるだけ持っていたくないので速やかに2重化を行うことになる。仕事がらみのデータなら、PCからファイルサーバに保存された時が2重化完了のタイミングなので、ファイルサーバへ未コピーファイルをコピーするためにシェアウェアのコピーソフトを直ちに手動起動する。コピータスクが完了するまではそわそわして落ち着かない。家でPDF化されたデータは、自動的にクラウドストレージにコピーされるが、これも、コピーが完了するまでは落ち着かないので、コピー状況のステータスモニタを、まだかまだかとじぃ〜っと見つめる。このクラウドストレージは削除データも一定の期間は保持されているので間違ったときのリカバリーが効くのが秀逸だ。

 

デジタルデータしか残らないような場合、2重化は最低限の要件だと自分では思っているが、紙しか無い場合の要件はなんだろう。紙をコピーして2重化しているという話は聞いたことが無い。デジタルデータは消すのも簡単、ちょっとした間違いでも永久に消えて無くなるかもしれないので、随分と注意を払うが、紙だと案外いい加減に扱っているような気がする。紙という記録媒体がタフだからなのか、それともデジタルデータが繊細すぎるのだろうか。ひょっとすると単にデジタル化されたデータ、記録という状況に慣れていないだけの話かもしれない。デジタル化されたデータ保管の時代にはそれなりのやり方があるが、それが一般化していないということだろうか。

 

完全にデジタル化され、紙が存在しない日常はもうすぐやってくる。そんな時代の作法を身につけるために残された時間は少ないが、あまりにも変化のスピードが速いのでどうやったらよいのか右往左往しているのが現実だ。こんな時代の新たなデファクトを握るのは、どんな技術、どんな製品だろうか。



JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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