【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第27回 「ファイルサーバの『見える化』 〜「見える化」を推進するエバンジェリスト〜」

Netware、いまでもどこかで使われているという噂が流れる伝説のファイルサーバだ。DOSから起動して、徹底したチューニングを施した産業用組込ソフトウエアのようなカリカリのソフトウエアで稼働する。UNIXやWindowsのようなオペレーティングシステムとは隔絶した世界だが、当時のハードウエア、ネットワーク環境で性能を追求するとこうなります、という見本のようなシステムだ。

米国と比べて日本ではオフィスへのファイルサーバ導入が遅れていたが、日本で本格的にオフィスへ導入が始まったのはいつ頃だろうか。NASサーバ大手のNetApp社が1992年設立、日本では1998年設立だから、WindowsNTが登場した頃から普及が始まったのかも知れない。最初の頃は、ファイルサーバがあるというだけで十分だったが、ほぼ同時にWebベースのグループウエアが登場したので、利便性の点で、情報共有のための足場がグループウエアに向いてしまった。共有すべき情報をグルーピングして視覚的に理解したり、意見交換を行い、後から情報を追記したりという情報共有を促進する仕組みが優れていたからだ。

今では、コンテンツ管理や情報共有を実現する技術領域がオーバラップし、社内ブログのように情報共有する手段も豊富になってきて利便性は向上したが、本当に欲しい知識、経験が共有されているかは疑問だ。

ファイルサーバを統合し、あらゆるデータを整理、統合し、高度な検索システムを整備したら、重要な知識、経験がそこから出てくる、なんていうことは無い。ファイルサーバにどんな知識、経験が格納されているのか知っている人だけが、そこから知識を取り出すことができる。そこに大事なデータを格納した本人でも、時間が経つとファイルサーバから自分のファイルを見つけることが出来ない、なんてことは日常茶飯事だと思うが、その時は、検索システムで、あれやこれやと検索キーワードを替えながら発見する。時間が経つと自分の中でもキーワードが変化していくので、過去を振り返って、その時の自分を想像しながらキーワードを組み立てることになる。

セマンティクスやシソーラスが重要だと思われるが、思わぬところに大事な知識、経験が転がっている、なんていう偶然を見つけ出せるのは人間だけだ。人と人のつながりを辿ると、世界中の人と10人前後(?)でつながってしまう、という話があるが、本当に重要な知見を探し出すためには人のつながりを効果的に促進することが重要だ。

ファイルサーバを作る、ファイルサーバを統合するのは、ITガバナンス、情報共有の基本だが、これで何が良くなったのか、良くしたいのか、よ〜く考えないと、次の一手を間違えてしまう。単純明快、誰がやってもそうなるような目標もまだまだたくさん残っているので、取りあえず、それで予算を引き出しておく。でも、会社としての本当の目標が到達できているのか、どうしたら到達できるか。。。こんな提案はちょっと度胸がいる。

外部のSIerやベンダーが保証できるのは製品機能やシステム機能だけなので、効果を保証することはできない。効果を保証するための活動ができるのは利用者自身だけだ。

それなりの投資が必要なファイルサーバ統合や、情報共有を目指すプロジェクトに必要なのはエバンジェリストかも知れない。


JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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