【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第6回「浸透するクラウド・コンピューティング」

銀行の貸金庫。貸金庫を借りている人は多いと思うが、この貸金庫は、一日に何回出し入れしても手数料は同じだ(少なくとも私が契約している銀行は)。だから、という訳ではないが、うちの奥さんは貸金庫に一日に2回,3回と出たり入ったり。貸金庫には、確かに少しは大事なものも預けてあるが、大事ではないものも沢山入っている。生命保険の証書の類は盗まれても、たとえ燃えてしまっても大事じゃない。どんな生命保険に入っていたのかなんて、たった数行のリストさえあれば何とかなる。どんなにたくさんの保険に入っていたとしても、A4の紙、1ページに入ってしまうことが多いだろう。大抵はそのリストすら必要がない。まあ、その"何とかなる"ような事態には遭いたくはないが。

生命保険会社、損害保険会社が顧客の契約情報を無くしてしまう、なんていうことは、厚生年金、国民年金の話じゃあるまいし、聞いたことがない。保険会社や銀行の顧客管理を行っているシステムは非常にしっかりとできているので、自分の契約情報が失われる、という心配をしたこともない。だから、送られてくる保険会社の契約書は、万が一なくなっても、保険会社は間違いなく、それを保管している。それをほぼ確信しているので、自分の保険の加入状況はリスト1枚さえあれば何とかなる、場合によっては、そのリストすら必要ないと "高をくくって" いられるのだ。

自分と家族の命と健康の次に大事なものは意外と安全に管理されているらしいが、次に大事なモノは何だろうと自分なりに考えてみると、"マイドキュメント" フォルダの中にある"マイピクチャ"フォルダに、デジカメで撮った沢山の写真がある。写真は撮り直しが効かないし、家族の記録なので無くしたら非常に辛いことになる。写真データはDVD-RWに定期的にバックアップしているが、それでも安心できない。火事や地震にあったらロストする確率は非常に高いからだ。

DVD-RWにバックアップして、それを貸金庫に預けるという方法もある。これは、企業の情報システムでも行われる、バックアップ・テープのオフサイト保管そのものだ。最近は、ネットワークを使ってデータをオフサイト保管する方法がいろいろとあるので、我が家のデータ保管は、某社のネットワークドライブを併用することにした。このネットワークで提供されるドライブ装置は無償で5GBの容量があるので、写真のデータだけなら十分すぎる容量だ。

さて、次に大事なものはと身の回りを見回してみると、日常的に仕事で使っているデータは、意外と複製が何カ所にもあるので大丈夫そうだが、私の周りの本棚にはたくさんの本がある。小説以外の本は終わりまで全部読んだ本は意外と少ないのだが、資料的には無くなると困りそうなモノが沢山ある。本も本当になくなって困る、2度と見ることが出来ないようなものは滅多にない。少なくとも国会図書館に行けば見ることはできるが、本の題名くらいは覚えていないと探すことができない。

でも意外と安心。雑誌の類を除くと、私はほとんどの本をAmazonで買っているからだ。Amazonのアカウントサービスの購入履歴にはこれまで私が購入した全ての記録が残っている。これさえあれば、もう一度、同じ本を買うことも簡単だ。Amazonで本を購入することで、Amazonは私の代わりに本のリストを作ってくれていることになる。

シェアウェアやオンラインソフトを某社のウェブサイトで購入することも多いが、このサイトでは私の購入履歴を管理して、ライセンスキーの再発行サービスも提供している。使ったことがないので分からないが、Apple Storeではどうだろうか。ソフトウエアや音楽の類は使用権、サブスクリプションを購入しているのだから、適切な顧客管理ができれば、CD-ROMのようなモノは重要ではなくなるだろう。マイクロソフトのTechNetPlusのような開発者向けのソフトウエアダウンロードサービスもモノを買うのではなく、使用権を買うので、人はモノとはバインドされなくて済む。Microsoft Officeだって大事なのは使用権で、CD-ROMで提供されるモノではない。

私たちの身の回りで形あるモノとして存在しないといけない本当に大事なモノは意外と少ないのかも知れないと思えてきた。
JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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