【新連載】ITアーキテクトのひとりごと
第1回 「グリッド・コンピューティング」

グループウェアがすっかり定着してきましたが、一番使っている、ひょっとしたら、これしか使っていない、という機能は"スケジュール管理"かもしれません。コンテンツ管理や掲示板による情報共有は、使わざるを得ない状況に追い込まないと、なかなか普及しません。ほうっておくと、ぺんぺん草が生えた荒れ果てた畑のようになってしまいます。わたしもそんな畑をいくつも作ってしまいました。

会社ではスケジュール管理にサイボウズを使っていますが、個人的にはGoogleカレンダーを愛用しています。なにが便利か。WebブラウザがあればどこでもGoogleカレンダーは使えます。インターネットからVPN接続、ノートPCから携帯電話会社のデータ通信を使って、という方法で会社のグループウェアにアクセスすることもできますが、Googleカレンダーはスケジュ ールというよりも、メモ帳代わりに何でも書いておける、私の日記帳のようなものです。

日記を書くなんて、子供の頃に無理矢理押しつけられた、くらいの記憶しかありませんが、いまはなぜか、思いつきで書くという手軽さがいいな、と感じています。 

さて、このカレンダーの"わたし"の情報はどこにあるのでしょうか。ストレージに関わる仕事をしていても、そんなこと考えたことがありません。このアバウト感と妙な根拠のない安心感。最近流行ってきた(?)クラウド・コンピューティングという言葉の語感、掴めるようでつかめない、でも、そこにあるという雲を表しているような感覚を覚えます。

でも、今はまだグリッド・コンピューティング程度です。だから、きっとグリッドの交点を探すことができると思います。そのグリッドの交点にはどんなシステムがあるのか、または、どんなシステムであるべきかを追求した先にクラウド・コンピューティングが登場しそうです。

そのクラウド・コンピューティングの先駆者かもしれないGoogleのカレンダーにある私の情報は、バックアップされているのか、何年保存されるのか、私がいなくなってもズーっとあるのか、本当はどこにあるのか、なんていう疑問は(多分)野暮な疑問です。データは、圧縮され、De-dupe(重複排除)され、いつの間にか複製保存され、ユニークなIDを付与され、永久に保管されているとしても不思議な気がしません。しかもアクセスすると直ぐに出てくる。

こうなってくると、コンピュータを使うときに必ず登場する"ファイルシステム"という言葉にも疑問がわいてきます。レガシーなファイルシステムに大量の複雑な属性をもったデータを"ファイル"なんていう形でしまっておけるのか。ファイルという形にしたら、とんでもない数のファイルを扱うことになりそうで、そのうち、きっと、破綻します。サービスとして使っている人間にとってファイルシステムなんてどうでもいいことです。

もっと扱いやすい高機能なファイルシステムが欲しい、というアプリケーションの領域では、RAIDがLU(Logical Unit)のディスクブロックレベルで行うようなコピー機能のようなものは必要なくなってきたような気がします。高機能なファイルシステムで要求されるようなサービスのレベルはRAID装置が提供する機能を超えているだけでなく、アプリケーションの変化に伴って、どんどん、サービスの仕様が変化しているので、もう、アプリケーションソフトウエアとして実装していかないと追いつかない″からです。

新しいアプリケーションの世界で蓄えられるオブジェクトの数は膨大です。格納(形式はわからないけど)されるオブジェクトをユニークに識別する方式はどうなるのでしょうか。

オブジェクトという言葉を突然使った理由は、もう、データだけでは情報をうまく扱えないからです。これからはメタデータが重要な時代になりそうです。ストレージはもう装置ビジネスではなくなるかもしれません。
DSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆