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組織で未来対応型人財の育成を

アデコ(株) 代表取締役 平野健二

 近年,AIの急速な進化や事業環境の不確実性を背景に,企業が求める人財像は大きく変化しています。こうした変化に適応する力を持ち,積極的にスキルアップを図り,新たなテクノロジーにも柔軟に対応できる「未来対応型人財」の育成は,多くの企業に共通する課題といえます。しかし,アデコグループが実施したグローバル調査「Global Workforceof the Future 2025」では,日本の働き手は,AIの活用状況やスキル開発への姿勢において,世界平均を下回る傾向が見られました。AIへの信頼度や仕事への目的意識でも差があり,変化に備える力が十分に育っていない可能性が示されています。

■AI時代に求められるリスキリングの再設計

 同調査によれば,「12ヵ月以内にAIエージェントが業務に組み込まれる」と考える割合は世界55%に対し,日本は19%。「AIによって業務が拡張している」と回答した割合も世界76%に対し,日本は35%にとどまっています。さらに,仕事に対する目的意識や自身のスキル開発への積極性も同様の傾向があり,未来対応型人財の日本の割合は16%で,世界平均の37%を大きく下回りました。
 日本では長らく終身雇用を前提とした企業主導型のキャリア形成が一般的でした。バブル崩壊以降,成果主義の台頭などを背景に日本的雇用慣行は変化してきましたが,不確実で予測困難なAI時代を迎え,従来のキャリア形成では変化に対応しきれないことは明らかです。今後は,一人ひとりが自らの価値観や意志に基づき,主体的にキャリアを築くことが不可欠であり,この「自律的なキャリア形成」が,仕事への目的意識を高めるカギとなります。
 昨今,人手不足やスキル不足に直面する企業が増えています。しかし,人財獲得競争が激化する労働市場において社外から人財を確保することは容易ではありません。事業戦略を実現するためには,外部採用に頼るだけでなく,社内の人財のリスキリングが欠かせません。急速な環境変化に対応するためには,事業戦略に沿った人財の再配置と,注力事業に対応するための学び直しを支援する仕組みが求められます。

■リスキリングの再設計で人事が担う役割とは

 2025年は「AIエージェント元年」ともいわれ,自律型AIの活用が進みつつあります。数年後の組織のあり方を見据え,AIを単なるツールではなくチームの一員としてとらえ,共存・協働していくことを本気で考える必要があります。一方でAI導入が進むほど,人を中心に据えた組織づくりの重要性は高まります。重要なのは,未来に備えるためにどのような環境を整えるかという視点です。AI時代においては,知識の習得にとどまらず,変わり続ける戦略や役割,新たに求められるスキルに合わせて,学び続ける企業カルチャーを醸成していくことが不可欠です。その中心的な役割を担うのが人事です。まず,経営戦略と人財戦略を連動させ,必要な人財要件やスキルを明確にし,従業員のスキルに基づいた配置・評価・育成を行い,キャリアパスを再設計していく必要があります。リーダーや管理職は部下のリスキリングを積極的に支援し,リスキリングによって部下が異動を希望する場合には,組織として後押しすることも重要です。さらに,管理職の評価指標に部下の育成を組み込むことも欠かせません。
 これからの人事には,未来を見据え,組織全体で取り組む“人を中心に据えた”人財戦略が不可欠です。こうした視点こそが,未来対応型の組織をつくるうえで欠かせない要素であり,人を中心にした組織づくりこそが,AI時代における競争力の源泉となるのです。

(月刊 人事マネジメント 2026年2月号 HR Short Message より)

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1978年、栃木県生まれ。2004年にアデコ株式会社入社。2018年同社執行役員兼ジェネラル・スタッフィング COOに就任。2021年にロンドンビジネススクール修士課程(MSc)を修了。2022年、同社取締役兼Adecco Chief Operating Officerに就任。人財派遣事業およびアウトソーシング事業のブランドであるAdeccoの日本における責任者として、様々な新規事業の立ち上げ、リスキリングの推進、アウトソーシング事業の拡大等を指揮。2024年4月から現職。

>> アデコ(株)
   https://www.adeccogroup.jp/





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