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「プロアクティブ人材」を育てよう

(株)日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門
マネジメント&インディビジュアルデザイングループ部長 下野雄介

■人的資本経営推進に,今必要な人材とは?

 人材が活躍できる組織・環境に積極的に投資し,企業価値向上を図る「人的資本経営」が市民権を得て,はや3年が経過しました。企業は経営戦略を推進するために必要な人材像とその人数について目標設定し,従業員がスキル・経験を積み重ねられる支援施策を積極的に打ち出しています。ここまでを振り返れば,エンゲージメントや職場・職務に対する充足感といった「この会社にいたい,この会社で前向きに働こう」という意向の醸成については一定の成果が出始めている実感があります。一方,「エンゲージメントや満足度向上が,リスキリングや新たな職務への挑戦といった行動につながらない」といった課題感も生じています。経営の意図する人材像と,定着意向,活力や熱意といった基盤をつなぐラストワンマイルが求められています。さらに解像度を高めれば,「自律的に新たな挑戦を通じ貢献しようとする行動を活性化する」ことが必要です。
 今,これまでの人材投資を企業価値に結びつけるべく,「プロアクティブ行動」に注目が集まっています。学術研究から生まれたコンセプトですが,日本総研では日本のビジネスに適合する形で4つの行動に展開しています(図表)。筆者らはこうした人材を「プロアクティブ人材」と呼称し,人的資本経営の成果結実に向けたラストピースと位置づけ,コンサルテーションを推進しています。


 日本総研が実施した2万人の労働者を対象にした調査から,プロアクティブ人材を育成するためには,本人の自己効力感を高めたり,仕事の与え方を工夫したりすることが重要であり,またプロアクティブな行動を個人やチームの成果に結びつけていくためには,上司のリーダーシップ行動が重要な要因となることが分かっています。管理職が部下一人ひとりの状況を理解したうえで個々に配慮した対応を取るという極めて当たり前のことが,プロアクティブ人材を育成し,プロアクティブ行動を成果に結びつける一丁目一番地なのです。

■「プロアクティブ人材」育成のヒント

 この状態を実現するために,本社人事部門ができることは管理職がリーダーシップを発揮できる環境を整えることです。日本の企業では,ビジョンを示して人々を鼓舞するリーダーよりも,物事をそつなくこなすマネジャーが多いという指摘もあります。プロアクティブ人材を育成し,成果に結びつけるためには,管理職にリーダーの役割発揮が求められます。本社人事部門としては,管理職に対し,リーダーとしての役割を具体的な行動ベースで理解してもらう研修などを実施するとよいでしょう。その際,重要なのは引き算の発想です。組織管理業務に追われ時間がない管理職に新たな役割を付加するだけでは,持続可能性が危ぶまれます。マネジャー業務を減らし,リーダーとしての役割を発揮する時間を確保するために,本社人事部門が旗を振り,経営陣も巻き込んだ検討を行う必要があります。

(月刊 人事マネジメント 2025年7月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
大阪大学経済学部卒。金融機関を経て日本総合研究所入社。以来、経営戦略に基づいた組織改革経営管理システム改革、Business Process Reengineering、多様な資本に係る制度の構築・運用など、幅広いテーマに従事。その後、縮小社会における人的資本の価値向上をクリティカルイシューと捉え、人的資本経営に関するコンサルティングサービスの開発・提供及びその概念・手法等の情報発信に尽力。現在、人的資本経営をより持続可能なものとするべく、「プロアクティブ行動を促進するマネジメントソリューション」の研究開発における責任者も務める。

>> (株)日本総合研究所
   https://www.jri.co.jp/





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