
心理的安全性を高めるコミュニケーションを
(株)アドバンテッジリスクマネジメント シニアコンサルタント キティこうぞう
コロナ禍により職場環境が大きく変化した昨今,コミュニケーションに課題を感じる管理職が増えています。そこで,改めて注目されているのが「心理的安全性」です。「心理的安全性」とは,組織行動学を研究するエドモンドソンが1999年に提唱し「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり,罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。Google社が「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」との研究結果を発表したことから注目されるようになりました。心理的安全性が高い状況であれば,思いついたアイデアや考えを受け止められると信じることができ,率直に発言できます。職場のコミュニケーション活性化やエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
■心理的安全性が低い組織に潜む4つの不安
心理的安全性の低い組織で働く従業員は,以下のような4つの状態に陥っているかもしれません。
@無知だと思われる不安:「こんなことも知らないのか」と思われるのではないかという不安 (傾向例……自分の意見を発言できない,質問ができない)
A無能だと思われる不安:失敗時に「仕事ができない人だ」と思われるのではないかという不安 (傾向例……進捗の報連相ができない,ミスを報告しない)
B邪魔をしていると思われる不安:自分の発言や提案が議論の邪魔だと思われるのではないかという不安(傾向例……自発的に意見できない,多数派の意見に同調する)
Cネガティブだと思われる不安:自分の発言が否定的な意見だとネガティブな意味にとらえられるのではないかという不安(傾向例……組織の問題点を指摘できない)
これら4つの不安は組織の心理的安全性を下げ,パフォーマンスや生産性をダウンさせる要素になりかねません。逆にこれらの不安が払しょくされている組織は「心理的安全性が高い」といえます。
■コミュニケーションで有効な3つのポイント
心理的安全性は一朝一夕では築けません。管理職の方々が日々のコミュニケーションで意識したい3つのポイントををお伝えします。
@「T(アイ)」メッセージを使う:心理的安全性が低い職場では,「(あなた)もっと早くやって!」「どうしたらいいか(あなた)考えて!」と,「あなた」を主語にしたYouメッセージが飛び交います。これを「早くやってもらえると(私は)うれしい」「この企画を一緒に考えてくれると(私は)助かる」といった「私は」を主語にした「I」メッセージに変えると,相手も気持ちよく指示やお願いを受け取れるようになります。
Aオープンクエスチョンを使う:心理的安全性が低い職場では,YES / NOで答えを求めるクローズドクエスチョンになりがちです。「頼んだ仕事はできたか?」という投げかけでは「NO」と答えにくく,正確に状況を把握できない恐れもあります。「どういった状況?」「どうしたらできそう?」と,相手に委ねるオープンクエスチョンを活用しましょう。
B自分との共通点を指摘する:心理的安全性が低い職場では,指導をするときに「私だったらそのようなミスはしないよ」「何でそんなことをしたの?」などと,自分との違いばかりを指摘している可能性があります。「私もあなたと同じミスをしたことがある」「私もあなたがそうした気持ちは分かる」と自分との共通点を伝えながら指摘をすると,相手の安心感や納得感を得られやすくなります。
様々な局面でシフトチェンジが求められる昨今,自身のコミュニケーションスタイルを改めて振り返ってみてはいかがでしょうか。
(月刊 人事マネジメント 2023年4月号 HR Short Message より)
HRM Magazine.
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