華東師範大学(上海)との研究交流・経過資料 
                            −1998〜2002−
                      
                      *中国・上海・研究交流一覧→■

<目次>
1,1998年意向書、協議・交流の記録
2,2000年協議書
3、2001〜2年の経過
(1)華東師範大学側からの提議(2月12日)
(2)TOAFAEC側からの返書(4月10日)
(3)末本・上野訪中による打ち合わせ(5月28日)
(4)日中大都市・地域社会教育共同研究計画案・日本側提案(7月7日)
(5)10月訪中日程延期の要請・継続教育学院(9月4日)
(6)同上書簡に対する返書・TOAFAEC(9月18日)
(7)華東師範大学とは別に上海側招聘による10月訪中
(8)2002年7月・中国側の訪日、同メンバー






華東師範大学キャンパス、左・呉遵民(教授)、右・小林 (2005年10月23日)



■1998年意向書

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 華東師範大学継続教育学院と日本社会教育訪中団との意向書
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 日本・中国両国間の社会教育・成人教育・継続教育の研究と交流を発展 させるため、華東師範大学と日本社会教育訪中団は、協議の結果、以下の 点についての意向を確認する。
1,双方は、互恵・平等と友好・協力の原則に基づいて、以下の活動を実施 することに努力する。
(1)共同研究の体制をつくることに努力する。
(2)共同セミナー・シンポジウムの開催に努力する。
(3)研究者の相互の訪問と交流に努力する。
(4)研究誌の交換、研究情報の交換に努力する。
2,双方は、以上の活動を実施するにあたって、今後とも誠実に協議を行う。
 次回の協議は、1999年の適切な時期に、日本において行う。
 1998年11月16日         1998年11月16日
  日本・東亜社会教育研究会     中国・華東師範大学
  代表 小林文人          成人和継続教育研究所長 解守宗

■協議・交流の記録
日 程  1998年11月12日(木)〜16日(月)
訪中団 代表 小林文人(和光大学教授 前日本社会教育学会会長)
構成員    末本 誠(神戸大学教授)
         松田武雄(九州大学助教授)
         魯 在化(韓国・聖潔大学助教授)
   秘書長 上野景三(佐賀大学助教授)
   通訳(渉外)呉遵民(神戸大学大学院博士課程、上海出身)

滞在記録(主要経過)
11/11 夜  小林・上海着(12日、上海市閘北区業余大学との交流)
 *末本(11月7日より北京師範大学講義、13日午後合流)
11/12 午後 魯、松田、上野上海着
 華東師範大学との協議(解守宗・研究所長、葉忠海・教授、小林、松田、魯、上野、呉 =通訳)
 事前に提案のあった4点について日本側の見解を説明(上野)
 留学生の交換については保留(華師大)
 意向書作成についての提案(華師大)
 公的機関相互の協定にならない問題について(日本)
 夜  歓迎夕食会、附属中学・高校見学(案内、朱琳・編集部)
11/13 午前 華東師範大学と訪中団との研究交流
 (何明宝・継続教育学院副院長、朱・副院長、解、葉、邱永明、小林、松田、魯、上野、 呉 ほか
 華師大・院生など)
 歓迎昼食会 叶駿・継続教育学院院長ほか(旧上海市第一教育学院)
 午後 浦東新区街道社区教育センター見学(街道工作委員会・段慧霞)
 夜  黄浦江畔(浦東新区側)散策
 意向書(案)作成(末本、松田、上野、呉、於西郊賓館)
11/14 午前 上海市奉賢縣洪廟鎮成人中等文化技術学院訪問、杭洲湾へ
 午後 奉城鎮成人中等文化技術学院(張桂明・校長)農民新住宅(農民城)訪問
 夜  上海雑技(蘭心大劇院)見学
11/15 午前 南京へ(昼食会、南京経済学院成人教育学院副院長・王東方)
 午後 南京大虐殺記念館見学、中山陵を経由して上海へ
      帰路、バス中にて「意向書」及び今後の取り組みについて
      協議(末本、松田、上野、呉)
  夜  日本側答礼夕食会(小南海)、解守宗・研究所長、葉忠海教授、
     周嘉方・新副所長、朱琳女史、など
     「意向書」最終案について日中双方の確認
11/16 朝  意向書調印式 
     魯在化は韓国へ、松田、上野は日本へ帰国
  午後 小林・末本、上海電視大学へ、郭伯農、顧根華、項秉健等各氏と研究協議
11/17 午前 小林、末本、帰国

2000年協議書
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 華東師範大学継続教育学院と日本国東亜社会教育研究会(TOAFAEC)
 の科学研究及び相互訪問についての協議書 2000年12月10日調印
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 中国華東師範大学継続教育学院と日本国東亜社会教育研究会(TOAFAEC)は、1998年11月に締結した両機関の意向書に基づき、中国と日本国の社会教育・成人教育・継続教育の分野に関しての研究と交流を発展させ、相互の友好をさらに深めるために、以下の点について協定を締結する。
1,共同研究体制の確立と共同研究の推進:双方は、それぞれの機関において、共同研究体制の確立をはかるよう努力し、共同研究を推進する。
(1)中国華東師範大学継続教育学院は、関係科学研究者を組織し、日本国東亜社会教育研究会は、関係大学によびかけ研究体制の組織化に努める。
(2)共同研究のテーマについて、中日両国の地域社会(社区)教育、生涯教育、継続教育、成人教育に関する諸課題について、双方で意見交換を行いながら設定する。
(3)共同研究推進のために、相互に関係の深い研究者を組織し、相互訪問、講義、交流を行う。訪日、訪中の時期、人数、費用及び待遇については、その都度協議する。
(4)共同研究推進のために、共同セミナー・シンポジウム等を開催し、研究のとりまとめに努める。
(5)相互に研究情報及び研究資料、学術刊行物の交換を行う。
2,双方は、以上の活動を実施するにあたって今後とも誠実に協議を行う。
 次の協議は、2000年の適切な時期に、中国において行う。
 
 甲方:中国・華東師範大学継続教育学院・院長 孫建明
 乙方:日本国・東亜社会教育研究会 (TOAFAEC)・代表 小林文人

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2001年・華東師範大学(上海)継続教育学院とTOAFAEC の研究交流計画 

(1)華東師範大学・継続教育学院(孫建明院長)からの提議−2001年2月12日−
 『中国華東師範大学継続教育学院と日本東アジア社会教育研究会(TOAFAEC)との学術研究及び相互訪問についての協議書』に基づき、2001年に日本側学者を中国に招聘し、共同学術研究を行うことを下記のように提議したい。 
1、日本側学者訪中日程及び活動内容:
(1)2001年5月中旬或いは10月中旬、約5日
(2)「社区教育」に関する実地調査・研究交流
 上海に於ける2〜3の社区(地域)教育典型モデルの訪問調査
*上記提案に対する可否、回答、早めにお願いしたい。
2、双方共同による「社区教育」「社会教育」領域についての学術研究計画(案)
(1)研究課題:上海及び日本の社区教育・社会教育の構想モデル及びその実践についての実証的比較研究
(2)課題研究の主要骨子:
・上海及び日本(たとえば東京)の経済発展及び社会背景についての分析
・上海及び日本(東京)の社区建設(コミュニテイづくり)の具体的状況調査
・上海の社区建設・社区教育の主要モデルについての個別研究
・東京のコミュニテイづくり・地域社会教育の主要モデルについての個別研究
・上海及び日本(東京)の社区教育・地域社会教育についての比較研究分析
・上海及び日本(東京)の社区教育・地域社会教育研究についての成果報告
(3)課題研究成果の発表:
・上海社区教育モデルと実例分析研究(分科報告)
・日本(東京)地域社会教育モデルと実例分析研究(分科報告)
・双方の社区教育・地域社会教育の構想モデルとその実証的比較研究(全体報告)
(4)課題研究期間:2年

(2)日本・TOAFAEC 側からの返書−2001年4月10日−
中国上海市・華東師範大学・継続教育学院々長 孫建明 先生
        東京・沖縄・東アジア社会教育研究会(TOAFAEC)
         代表 小林 文人(和光大学教授、東京学芸大学名誉教授)
        訪中団事務局長 上野 景三(佐賀大学助教授)
 拝復
 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。さて、今年二月の貴学院の訪中団招聘の提案に対し、感謝申し上げるとともに、返事が遅れたことをお詫び申し上げます。私どもの研究グループは、今回の提案がこれまでの友好交流の基礎の上に、さらに研究交流と発展して具体化されたことを、一同喜びをもってって受け止めております。研究グループで協議いたしました結果、次のようにご回答申し上げます。
1,訪中日程及び活動内容
(1)訪中の日程
 2001年10月8日からの週の五日間程度を希望いたします。貴学院のご都合はいかがでしょうか。
(2)社区教育成果に関する交流
 上海における2〜3の社区教育典型モデルの参観を希望します。できましたら、今後の地域調査の対象となるような社区を選定されることを望みます。今回の訪中では、その典型的な地域の事例を,時間をかけて深く探求できるようなスケジュールにしていただければ、ありがたく存じます。
2,共同研究について
(1)研究課題の「社区教育」については、賛成いたします。しかし、日本のモデルとして東京をとりあげることについては、今後の協議課題とさせてください。
(2)研究骨子、及び、(3)課題研究の形式、(4)研究期間、については、2001年5月に末本誠、上野景三が貴学院を訪問した際に、協議することとさせてください。
 これからの研究交流の発展を願っております。王建盤 学長先生にもよろしくお伝えください。                                                             敬具

(3)2001年5月・華東師範大学継続教育学院とのうちあわせ(報告)
              *南の風第688号(上野景三、5月28日)より
 「中国華東師範大学継続教育学院と日本アジア社会教育研究会との科学研究及び相互訪問についての協議書」に基づく共同研究についてのうちあわせを下記のように行った。
 5月12日午後、ホテルにて、葉・末本・上野・呉の4名で事前うちあわせ。事前うちあわせの内容は協議の内容と重なるので省略する。
 5月14日午後、華東師範大学にて、孫・葉・周・末本・上野・呉で協議を行った。
 まず上野から、社区教育をテーマとすることについては同意すること。東京を研究対象として設定することには、問題があること。つまり地域社会教育のモデルは、例えば川崎など別に求めた方がよいこと。調査期間は、2ヵ年で短すぎ、調査2ヵ年研究、とりまとめ1年として最低3ヵ年はみておく必要があるのではないか。調査項目と内容をどうやって決定していくのか。全体的な研究のすすめかたについて検討することが必要。経費についてはどうするのか。について提案。
 次いで末本さんより小林先生は来春退官されるので、研究の実質は若い世代が中心にならざるをえないこと。東京をモデルとすることについての是非。科研申請では研究の水準が問われるので、今回の共同研究においても何を明らかにするのか、を明確にすべき。国際的な動向の中で議論するために、例えばアジア的社会教育発展のプロセスの解明といっ
た研究目標を設定することの可能性、について補足提案があった。
 これに対して、葉教授から中国側として下記の提案があった。
1.研究テーマ:中日大都市社区教育比較研究
2.研究目的:日中両国の発展、及びアジア的モデルとしての社区教育の特徴の析出
3.研究の範囲:上海市(旧市・郊外・新市)、及び近隣の都市(蘇州・杭州・無錫など)
4.研究内容:
 a.中日社区教育の内容
 b.中日社区教育の趣旨・目的
 c.中日社区教育の機能
 d.中日社区教育の授業とその内容
 e.中日社区教育の様式(模式)‐組織形態・実施形態‐
 f.中日社区教育の実施施設
 g.中日社区教育の管理体制
 h.中日社区教育の運営体制
 i.中日社区教育の職員体制
 j.中日社区教育の今後の展望
5.研究期間:3年間とする。
6.研究方法:
 a.現場の視察と文献の分析の統合
 b.現場の分析‐総合研究と個別研究の総合
7.日程
 a.お互いの調査
 b.比較研究
 c.総括報告、文書のまとめ。国際シンポの実施。
 d.10月の訪問のときに、協議書を策定し、実際の調査にはいりたい。
  そのとき三つのモデルの調査は可能である。研究のスケジュールを確定していきたい。
 e.来年は、中国側の訪日
8.研究経費
 日中合併で、科学研究費の申請をお願いしたい。自国は、自己負担で。中国側では研究費増にとりくむことで一致。国家教育部にかけあい、国家レベルの研究課題におしあげることで研究費の増額をはかっていきたい。継続教育学院としても、研究員を中心として、社区センターのメンバー及び必要であれば国家教育部のメンバーも加えて研究体制をくんでいきたい。国家教育部のメンバーをいれれば資料収集も行いやすく、研究成果の報告もしやすい。費用は調査の他、国際シンポや出版にも使う。

 以上の提案に対し、日本側末本氏より以下の質問が出された。
 日本側には、中国でどのように社区教育(地域社会教育)の研究調査ができるのか、不安や疑問がある。疑問を大切にし、その交流を図ることが大切ではないか。例えば、客観的なデータの収集とその方法について、調査対象地区の歴史や社区教育の歴史について、インタビューが可能なのかといった調査の方法について、はどうか。
 この質問に対し中国側からは、時代が変わったから全体として何の問題もないとの回答があった。調査でデータは事前に収集することができるので、10月以前に要望や疑問点を提出して欲しい。調査方法としてインタビューは可能である。共通性の探求は、中国としても大切であると考えるので、社会の多元化や多様化を前提にした研究を期待している、
などの回答があった。
 この回答に対し、末本氏からさらに質問がだされた。
 葉教授の提案のように、調査項目を単純に比べることにはあまり意味がなく、むしろ相互の社会背景が多様であることを前提にしながら、共通の課題を探り相互理解をはかりながら社区教育の共通の理念や概念の構築を目指しながら、それぞれの社区教育(地域社会教育)を発展させることが重要なのではないか。日本側としては、地域社会教育の今日的な意義を国際的なレベルで考えていくことが重要と認識しており、そのためには何故、社区教育(地域社会教育)を問題とするのかという基本から、疑問や問題意識の交流をする必要があると考えている。例えば、日本では社会教育をめぐって教育の市場主義と公営主義、NPOの存在について等の議論があるが、中国側は今なぜ社区教育を問題とするのか、その点についての説明を求めた。
 この質問に対して葉教授から次のような説明があった。
 上海において社区教育が登場してくるのは1980年代半ばからのことであり、その目的は小・中学生の校外活動において道徳教育を強化するという目的から生まれてきたものであった。道徳教育の体制づくりというのが主眼であり、主体は学校でそれを家庭・社区へと拡大させようとした。社区は、学校の手伝いをするというものであった。以上が90年代までの第一段階であり、93年から第二段階に入ることになる。第二段階では、学校中心であった社区教育が、住民を中心した社区全体に主導権が移り、社区に居住する人の教育問題となる。そこでの社区教育の目的は居住している人の生活の質の向上、社区の発展の二つが掲げられた。
 今日では、社区教育の目的は、@生活の質を高める A社区の発展である。目的としては、三全教育が掲げられている。三全とは、@全員、A一生(全プロセス)、B全方向(個人の発展の全方向)、を意味している。
 この点は、アメリカのコミュニティ教育の会長が感心した。このような社区教育が登場する背景としては、@職業再教育の必要性(職業訓練‐上海だけで、100万人)、A盲流対策(知識や技術を持たない年への流入者に対する教育)、B高齢化社会の進展(90年代末で230万人、人口の15%)、C農村の都市化に伴う農村人口の近代化(農民に対する近代都市住民としての教育)、D国際化(国家を開放するために市民の資質の向上という課題、例えば10月に開催されるAPECにむけて100の英語での挨拶ができるように勉強する)、E人権の問題(障害者の教育、コンピューターを使った障害者の教育が展開)といったことある。
 なぜ社区教育を重視するのかといえば、下からの力の形成が必要であり、国は権利を下放している。地域の問題は地域で解決していくといことが求められ、国はしたから後からを利用し援助するうになったからである。
 以上の説明をうけて、日本側からは、次回の10月の訪問の際には、問題意識の共有化、概念整理の作業、調査対象地区に関する地域の特色分析を共同で行うこと、社区教育の地域調査、の三つが日程に組み込まれる必要があることを提案した。
 この提案に対して、中国側から、加えて近隣地区への研修の実施と公開講座をお願いしたいとの提案があった。

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(4@)日中大都市地域社会教育共同研究計画案(日本側提案)
                              2001年7月7日
1.趣旨:日本と中国の社会教育および社区教育の理論的、実践的課題に関する共同研究。
2.目的:日中の社会教育研究者が、日本の社会教育と中国の社区教育の比較研究をする ことにより、社会教育・社区教育相互の理論と実践の発展を目指す。
3.方法:日本と中国双方での実地調査と討議による。
4.研究活動の内容:
 @ 日中双方の理念の、比較検討(中国側提案のa〜b )。
 A 日中双方の歴史、社会的な背景の比較検討(中国側提案のc )。
 B 典型的な地域、及び施設の実地調査(中国側提案のd〜h )。
 C 日中双方の、基本的な用語集の作成。
 D 日中共通の基本概念の明確化(中国側提案のc )。
 E 日中共通の理論的・実践的課題の明確化とその解決のための取り組み(中国側提案のj )。
 F 日中共通理解の普遍化。例えば、用語集の他のアジアの国々への範囲の拡大。
5.共同研究の進め方:
 @ 基本資料の交換。
 A 双方の理念、歴史・社会的な背景の紹介と交流。
 B 課題の明確化と交流。
 C 用語の集約。
 D 調査地の特定と、その典型性の明確化。
 E 実地調査の実施。
 F 調査地の資料の共同での分析。
6.期間:2001年〜2003年度の3年間とする。
7.日程:2001年には10月に日本側が訪中して調査を行い、2002年には中国側が日本で 実地の調査を行う。2003年度は、まとめの年度とする。
8.成果のまとめ方:
 @ 報告書の作成。
 A 報告会の開催。
 C 国際シンポジウムの開催。
 D 日中共同研究者による、共著の刊行。
9.経費:
 研究にかかる経費は、自国は自己負担で行う。それぞれの国での実地調査にかかる費用については今後協議する。日本側は、文部科学章の科学研究費への申請に努力し、中国側は研究費増にとりくむ。

(4A)日中大都市地域社会教育共同研究に関する補足
1.研究に至る動機の部分で日中双方に隔たりがあることを確認することは、共同研究にとって大切なことである。中国側は現実・実践的であり、日本側は研究・実践的である。これれらの違いを違いとして相互に認め合いながら、共通する問題の共有と解決にあたることが課題である。
2.比較研究を行う場合、それが形式的・静態的である場合には双方の相違点が強調されすぎる可能性が強い。相違点よりも共通性の探求を重視し、相違の中の共通性の探求とその発展のための実践的な理論の探求が、必要である。それぞれの国で使われている社会教育関連の用語をもちより、共通の理念や概念構築を試みる材料として活用することなどの、試みをする必要がある。
3.日本側は、研究交流の焦点として中国の社区教育センターでの文化活動の前提に、住民の強い学習要求が存在し、さらには人権の問題として障害者の学習機会の保障などが問題になっていることに、関心を持つ。
4.日本側の中国での調査地としては、上海市の開発の進んだ社区教育のモデル地区だけでなく、現在は整備が進んでいないが今後にその発展が期待される地域や伝統的な旧市内、
および上海とは違った形での進捗を見せている近郊の別の都市などを対象とし、形式的・表面的な視察に終わらない実質的な調査を希望する。
5.事前の資料として、日本側は以下の資料を希望する。
 @ 調査対象地域の地図。
 A 人口構造を知るための統計資料。
 B 産業構造の概略を知るための統計資料。
 C 対象地域の歴史的概観。
 D 行政組織。
 E 社区教育に関する行政関連の資料。規則・決定等。
 F 社会的・文化的関連施設の資料。
 G 地域の団体・組織の概観。
 H 地域課題の概観。
 I 社区教育実践の概観と特徴。
6.日本側訪中研究組織(10月9日〜13日)
 団長     小林文人(和光大学、TOAFAEC 代表)
 副団長    末本 誠(神戸大学)
 事務局長  上野景三(佐賀大学)
 団員     松田武雄(九州大学)
 団員     内田純一(東京都立教育研究所)
 随行員    小林平造(鹿児島大学)
 随行員    内田和宏(北海道教育大学)
 随行員    金子 満(九州大学大学院生)
 通訳     黄 丹青(華東師範大学出身、東京大学大学院修了生)
  ※ 中国からの正式の招待には、随行員および通訳は含まない。

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(5)10月日程延期についての意向打診(継続教育学院)9月4日

 TOAFAEC代表・小林文人宛:
 にんはお!
 お手紙を拝受し、研究計画を拝読しました。葉忠海先生ほかの皆さんにも伝えました。皆さんのご計画は、私たちの意向も充分に考慮し、具体的かつ詳細、実践的で見通しもあります。社区成人教育の研究を推進しようとする計画実の実施にあたって、明確な役割を果たすと思います。
 これらの項目を実行していく時期について、私たちの意見は若干の変化があります。最近、我が大学は機構及び人事制度の改革を進めています。大学本部は継続教育学院についても調整中で、具体的な方策を検討している最中です。9、10月には、成人教育研究所は変動の可能性が大きいです。私は、これが課題研究に影響をもたらすことを憂慮し、課題研究計画をしばし延期し、2002年に開始することを提案したいと思います。その方が私たちの研究経費の調達にも有利で、課題研究の条件を確保していく上でも好都合と考えます。
 先生はこの提案にご同意いただけますでしょうか?
 王学長から、私たちを代表して、貴研究会の皆様にどうぞよろしく伝えてほしいとのことです。                                                            敬具
      華東師範大学継続教育学院、孫建明 (2001年9月4日)

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(6)同上書簡に対する返書(TOAFAEC)9月18日

 華東師範大学継続教育学院         2001年9月18日
 院長  孫 建 明 先生
          東京・沖縄・東アジア社会教育研究会
          代表  小 林 文 人(和光大学教授)
 拝復
 9月4日付の和光大学宛貴書簡、9月13日に拝受しました。
10月予定の研究交流活動を来年2002年に延期したいとのご意向、早速私たち研究会の上海訪問予定関係者に伝え、相談いたしました。
 10月訪問日程については本年4月に確定し、5月には末本誠(神戸大学)、上野景三(佐賀大学)の両名が、上海滞在中に事前打ち合わせをした経過もあり、関係者一同、貴学訪問を楽しみにしておりました。すでに航空券も用意し、中国側の査証も取得した段階での変更については、正直のところ、困惑しています。
 しかし貴学院内の機構改革もおありのご様子、さらに来年に延期した方が「也有利干我方争取立項経費、為課題研究提供更好的条件保証」というご判断も拝読しました。たしかに研究活動を推進していく条件を保証していただくことは何よりも重要と考えます。
 本年の上海訪問が実現しないことは誠に残念ですが、来年に期待をかけて、共同研究計画を延期し2002年から開始したいという貴提案に同意したいと思います。
 具体的に来年のどの時期に研究交流日程を設定するか、貴学院からの次のご提案をお待ちいたします。あわせて「社区教育」等の研究課題について必要な資料・文献などご恵送いただければ幸甚です。
 1999年秋、東京でお迎えした王建磐学長、羅国振学長補佐、ならびに葉忠海先生ほか貴学院関係各位にどうぞよろしくお伝え下さい。皆さまのご健勝を祈ります。    敬具

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(7)その後の経過
 2001年10月9日〜10月14日
華東師範大学とは別に、上海・社区教育関係者(葉忠海・代表)の招聘により、上海訪問。
参加メンバー:小林文人、末本誠、松田武雄、上野景三、小林平造、内田和浩、金子満、
末本やすみ、黄丹青。
 *報告書『中国上海・無錫・蘇州「社区教育」調査報告書』(2002年11月、佐賀大学文化教育学部)を発行。

(8)2002年7月、上海からの訪日
 2002年7月1日〜4日(関西)〜8日(関東)に日程で次の上海メンバーが来日した。
上海・日本訪問(社会教育調査)団メンバー一覧
1,葉忠海(YE ZHONG HAI)男 1939年9月6日生 62歳 上海市成人教育協会副会長 
2,周月琴(ZHOU YUE JIN)女 1936年8月8日生 65歳 華東師範大学 研究館員
3,呉遵民(WU ZUN MIN ) 男 1952年4月23日生 49歳 華東師範大学教育学部 副教授 
4,候全宝(HOU QUAN BAO)男1947年3月8日生 55歳 上海普陀区桃浦鎮社区学校副校長
5,汪月妹(WANG YUE MEI)女 1951年9月16日生 50歳 上海市宝山区業余大学 副校長
6,袁建平(YUAN JIAN PING)男1958年8月26日生 43歳 上海市成人教育協会 理事
7,王純玉(WANG CHUN YU)女 1962年2月6日生 40歳 上海市震旦進修学院 院長助理
8,兪勇彪(YU YONG BIAO)男 1964年2月23日生 38歳 上海市成人教育協会 理事
<日本側招聘者>東京学芸大学・名誉教授、東京・沖縄・東アジア社会教育研究会(TOAFAEC)代表                                                小林 文人
*関連記事として「上海の風」(1〜7号)、続編・2003年3月上海訪問記録を参照して頂きたい。

2002年7月・訪日団一行(浅草・雷門にて)



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