■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ TOPページ
  
2006〜2009年・小地域・自治公民館と地域づくりの動き(3)
   第46回〜第49回・社会教育研究全国集会・分科会記録
  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

        <分科会記録(旧ホームページなど)>                
        *全国集会・分科会(2002年・2004年)記録(1)→■
         
*全国集会・分科会(2004年・2005年)の記禄(2)→■

<目次T 2006年社会教育研究国集会・第18分科会記録> 箱根 
1,小地域・自治公民館を見つめる眼(小林文人)南の風1564号157号
2,公民館カフェ〜お茶でも飲んで・・・(美若忠生)南の風1600号
3,「自治公民館・小地域学習活動と地域づくり」分科会−呼びかけ
4,「自治公民館・小地域学習活動と地域づくり」分科会−討議の進め方(伊東秀明)
5,第18分科
「自治公民館・小地域学習活動と地域づくり」に参加して(星山幸男)

<目次U 2007年社会教育研究全国集会・第19分科会> 貝塚市
1,分科会「自治と連帯をきづく小地域の活動(自治公民館など)」討議の柱 
2,小地域(自治会の班・組)にサロンを作る−横浜市磯子区内5200への挑戦(伊東秀明)
3,竹富島憲章と竹富公民館(小林文人)

4,大人が育ち、子どもを育む(福井市岡保公民館・吉田晴美)*未入力
5,地域づくりと秋津野塾(前田辺市公民館長 玉井常貴)   *未入力
6,第19分科会・報告と討議の記録(星山幸男)
7,2008年1月、妻籠合宿の誘い、参考・自治公民館分科会レポート一覧

<目次V 2008年社会教育研究全国集会・第18分科会> 札幌市
1,自治と連帯をきづく小地域の活動(自治公民館など)・討議の柱(星山幸男)
2,報告(札幌):“まちせん”ってなんだろう 石山まちづくりセンター(毛利泰太)
3,18分科会(自治と連帯をきづく小地域の活動・自治公民館)報告(伊東秀明、小林文人) 

*韓国の平生教育、小地域(マウル、集落)の取り組みと学習活動−小林)→■

<目次W 2009年社会教育研究国集会・第17分科会記録>信州・阿智村 
第17分科会自治公民館など自治と連帯を築く小地域の活動討議の柱(星山幸男)
2,実践報告
 (1)松本:みんなで集い語り合い支え合うまちづくりー町内公民館のまちづくり活動
    
〜市街地を盛り上げる地域活動ー女性館長たちの奮闘(山崎寿子、三村伊津子、岩岡悦子、高山佳範)
 (2)飯田:子ども図書館のロマンー異年齢交流で育む子どもの居場所(中島正韶
3,横浜市磯子区 メール・ド磯子区自治会の実践から (伊東秀明)
4,町内公民館・地域公民館・分館という多彩な公民館と実践ー分科会・感想(山城千秋) 
5,第17分科会討議のまとめ(星山幸男)







<目次T 2006年社会教育研究国集会・第18分科会記録> 箱根 


1,小地域・自治公民館を見つめる眼

◆<小地域への関心> 
   *南の風1564号(2005年11月21日)
 ここ数年、とくに「小さな地域」(字、集落、自治公民館)について関心をもってきました。大きな広域自治体への合併の流れ、その対極にある「もうひとつの自治」への問題意識はもちろんですが、なによりも実像として小地域、集落活動、近隣自治、また新しくNPO等の存在を実感するからです。小さな地域の活動は、しっかりと見る眼をもたないと見えてこない。見えてくると、その動きは躍動的に見えてくる。
 たとえば、沖縄の字(あざ)公民館、ハンブルク・アルトナの市民活動、横浜や貝塚の市民ネットワーク、あるいは松本の「町内公民館」等に刺激を受けてきました。そして、こんどの日本公民館学会(12月3/4日、松本大学)の機会に、松本市・町内公民館の“実像”をみる見学会(風・1563号)企画が動いたことを喜んでいます。
 これまで公民館研究の世界では、その公的制度の確立や専門職制の追求のあまり、ともすると集落の住民活動や自治公民館の可能性について、正当に評価していく視点が弱かったと思います。ときには否定的な立論もありました。
 2002年の第42回社会教育研究全国集会が名護で開かれた折、字(自治)公民館をテーマにする分科会が設定され、関心をもつメンバーのネットワークが胎動。その後の岡山、磐梯、福岡と続く全国集会のなかで、自治公民館の分科会は継続されてきました。世話人の中心には美若忠生さん(岡山)。この「自治公民館・小地域の学習活動と地域づくり」分科会の拡がりが、今回の松本市「町内公民館」見学の企画に結びついたと言えましょう。
 TOAFAEC・HP に「自治公民館・小地域活動」分科会記録のページを開いています。矢久保さんご案内の松本市・徒前町会公民館(2005年度・分科会報告),および蟻ヶ崎西町内公民館(2002年度、同)等のレポートも収録されています。→こちら■ ご一読いただければ幸い。(小林文人)

◆<自治公民館をみつめる眼>
   
*南の風1572号(2005年12月8日)
 日本公民館学会(松本大学)公式プログラムの翌日(12月5日)、松本市「町内公民館見学会」が開かれました。南の風1562号(伊東秀明さんの呼びかけ)、1563号(矢久保学さんの案内)に記された企画。参加者は約20名。このメンバーにとっては、公民館学会は3日間続いたわけです。二つの町内公民館を訪問、充実した時間を過ごしました。
 松本の「町内公民館」は、いわゆる「自治公民館」。この企画の背景には、社会教育研究全国集会「自治公民館・小地域」分科会の論議がありました。日本に7万をこえる規模(全公連調査)で存在している自治公民館や、大都市を含めての「小さな地域」の住民活動・近隣自治をめぐる動きにもっと注目していこう、公的セクターの公民館論だけでなく、市民・住民の視点からの、あとひとつの公民館の実践や研究をしっかり位置づける必要があるのではないか、という主張です。この分科会4年間の報告や論議は、TOAFAEC ホームページに収録されてる通り。
 風1572号・矢久保学さんの、ほとばしるような“思い”にある「公民館にながれるもうひとつの水脈」も、この点に関連しています。今回の学会では、三多摩テーゼの評価にも関わって、毎晩の(お酒を含む)交流の席で盛んな議論が交わされました。学会の3日間が、いろんな波紋を広げていくようです。これから、どのような展開が始まるのか、興味あるところ。(小林文人)



2,小地域・自治公民館の動き−公民館カフェ〜お茶でも飲んで・・・(美若忠生)

◆<岡山・鏡野町羽出公民館『公民館カフェ』>
      **南の風第1600号、2006年2月6日
 …(略)…
 私の勤める、岡山県鏡野町羽出公民館の、『公民館カフェ』のことを報告します。
 公民館カフェは(科学カフェが世界各地で開催されているという話を聞いて名付けたのですが)、その時その時に住民が話し合っておかなければならない事を、自由に意見交換する、という目的で、昨年1月から、毎月1回開催しています。楽しかったり、深刻だったりですが、いつも15人から22人ほどの人が参加してくれます。羽出地区は185戸程度ですから、世帯数の約1割と考えれば、まずまず定着したのかなというところです。
 昨年は、高齢者の見守り、介護予防の健康体操の普及と定着、隣組か自治会単位でのミニサロン(生き生きサロンの小集落版)の開催、という地域福祉を実現する上で課題になることを一つ一つ話題にし、ゲストを招き、積み上げてきました。 
 それと同時に転倒防止体操(介護予防の体操でもある)に7名の住民の方に参加してもらって、その人達を中心にして12月から月1回集いを開いて定着とミニサロンへの持込を図ることに取り組んだりしています。
 今年1月は、集落営農組織とは何?という話題で、農業改良普及センター職員を招いて勉強会(カフェという雰囲気ではありませんでした)になりました。おじいちゃん農業も限界に来ている中で、我が家の農業・農地をどうするかが大きな課題になっていますが、町(担当職員)が何もしないので、とりあえず話題にしてみました。 
 今までで最も多い22人の参加があり、今日も昨日も公民館にやってきて、「集落で話し合いが進むように実態調査から始めたらどうか」、自治会長レベルで調査を考えるのではなく、町が本腰を入れて取り組むようにすることが大事だから役場を動かすことを考えてくれ等々と話していく人が絶えません。 
 合併して、農業委員も有名無実、職員は地域に顔も出さない、公民館カフェでこの問題で職員を派遣してくれと要望しても普及センターに振って担当職員さえ顔も出さない。そういう実態があるからこそ『公民館カフェ〜お茶でも飲んで話しませんか〜』ですが、今年は、農業と地域づくり周辺の話題が数多く登場しそうです。
 2月は「子どもの安全」が話題です。スクールバスを降りてから自宅までの安全が特に話題になりますが、スクールバス停留所付近の祖父母・高齢者に参加を呼びかけています。ゲストは校長先生。きっと良い話し合いができると思います。近況報告です。(美若忠生)


3,第46回社会教育研究全国集会(2006年8月5〜7日、箱根)
    「自治公民館・小地域学習活動と地域づくり」分科会

 
主な討議の内容;  
 自治会や町内会・連合町内会、字程度の小地域での学習活動は、隣人と共にどう暮らしを豊かにするか、隣人と支えあいながら充実した人生を築き、子育てをし、文化を培うかを自問しながら、公民館にも来れない人々を巻き込んで地域活動として展開されている。それは自治公民館であったり、公立の小公民館、NPOであったりするが、住民が主体となって、自治と自立の動きをつくりだしている。
 沖縄集会「字公民館に学ぶ」分科会から5年目、都市部からの報告を交えて、各地の実践と経験、これまでの教訓等を語り合いたい。持込みレポート大歓迎。
 世話人: 小林文人 伊東秀明 島袋正敏 松岡伸也 美若忠生、矢久保学 遠藤知恵子 
        星山幸男 山城千秋 


■4,「自治公民館・小地域学習活動と地域づくり」分科会−討議の進め方(伊東秀明)

1これまでの経過
 2002年の沖縄、名護集会で始まった字公民館の分科会は、2003年の岡山集会から、集落公民館・字公民館・町内公民館・自治公民館などを視野に入れて検討を重ねてきました。さまざまな違いはあるものの、共通した機能を持っているこれらの公民館を総称して、自治公民館と呼ぶことにします。公立公民館で行われる事業が、広い範囲を対象にしたものであるの比べ、自治公民館で行われる活動は、集落や自治会町内会など小地域を対象にしていることが特徴です。
2公立公民館と自治公民館
 教育委員会が設置をする公立公民館には、専門職員が配置をされ、公民館ならではの事業を実施しています。自治体に1つの中央公民館と中学校区やあるいは小学校区に分館が設置をされますので広い地域が対象となります。
 自治公民館の場合には、集落や自治会町内会の範囲が対象範囲となります。地域の様子が、一人ひとりの頭の中に描ける程度の小地域を対照とした活動になっていることが特徴です。
3沖縄の字公民館
 沖縄の字公民館は、行政から補助を受けているとはいえ、住民が建設をした公民館であり、運営にかかる経費も住民が出し合っています。公民館の館長は区長を兼ねており住民から選出をされます。したがって、事業も住民によって企画運営されています。集落ごとに設置をされ、使用する人たちは集落の住民です。
4松本の町内公民館
 松本の町内公民館は、住民自治組織である町会の一組織ですが、町会と町内公民館という独立した2つの組織がひとつの町会を構成しながら、住民活動の拠点としての役割を果たしています。要するに松本の町会は町会と町内公民館の2枚の看板を持っているのです。
 町会が全会一致の原則に基づき住民の意思を決定する機関としての役割を果たしているのに対し、町内公民館は活動を希望する任意の住民が、この指止まれ方式によって学習や文化、地域づくりの活動を展開しています。そして、結果として町会の活性化をはかる役割を果たしています。町会と町内公民館がうまく連携することで、町会活動への関心が高まり参加が増え、地域の課題を自分たちで解決していく仕組みが作られていきます。ほとんど、すべての住民が何らかの形で、活動に参加をしている例も出ています。
5 小地域を見つめて
 都市部でも小地域を対象にした取り組みが進められています。貝塚市で行われている小地域を対照にした活動は、地域の人たちが主体となって行われている様々な活動をダイナミックにネットワーク化していく活動で、NPO法人が中心になって進められています。横浜市磯子区では、16万人もが暮らす磯子区を小地域に区切って事業を企画していくことにより、地域の人たちが主体となって担える学び合いの活動を進めています。学びあいとまちづくりをミッションにしたNPO法人の活動や、メールを活用して人と人とのつながりを作り出す活動などもおこなわれています。
 持ち込みレポート大歓迎。
 沖縄集会から数えて5年目の節目に当たる本集会では、この間の実践を振り返りながら、当日持ち込まれた様々な事例を基に、討議を深め、まとめをしていきたいと思います。
伊東秀明さん(横浜市磯子区役所)




■5,第18分科会「自治公民館・小地域学習活動と地域づくり」に参加して
                    (星山幸男・東北福祉大学)

 
私はこの分科会に沖縄集会の第1回目から昨年を除いて毎回出席させてもらっている。小地域での学習活動をどう支援し、発展させていくのか、この分科会のテーマであるが、これこそが住民自治を育み、住民による地域づくりを推し進めるカギであるという思いを毎回強くしている。
 今回も沖縄の字公民館についての報告で、「学級・講座方式による学習に対して、沖縄では強い反発がある。学習の基本は、住民が集まって自主的に活動する中にこそある。」という言葉が印象に残った。この字公民館はさまざまな人間関係が織りなされる場であり、そこに多様な学びがあるという。そして沖縄の状況が、集落だより的性格を合わせ持つ「公民館だより」の発行や集落誌の編纂、生産活動や文化活動との結びつきなど、私の住む東北各地の自治公民館との類似点・共通点が多いことに驚いた。地域の状況はそれぞれに大きく異なる。にもかかわらず、そこに通底する自主的活動と学びの論理が見いだせるような気がした。
 また、都市であれ農村であれ、住民の自主的活動の形態や内容の幅が拡がりを見せる中で、公民館の活動が改めて問い直される要素がたくさんあるという提起も印象深い。「学びは文化に支えられて深みを持っていく」という発言があったが、学習が地域の文化とどのような接点を持ちながら進められるのか、そして学習活動そのものが一つの文化として地域にどう根を張っていくのか、確かに公民館の役割の見直しが迫られているように思う。時に抵抗し、あるいは癒しの場にもなる小地域での住民の活動を支えていけるのか、公民館の力量が問われている時代なのではないだろうか。(仙台市)





2007年・小地域・自治公民館と地域づくりの動き
      第47回(2007年)社会教育研究全国集会・分科会
 


■1,2007年社会教育研究全国集会・第19分科会
    「自治と連帯をきづく小地域の活動(自治公民館など)」
  
  討議の柱

 この分科会では、小地域を舞台にした地域施設や組織そして住民自治の活動に着目する。地域コミュニティを作り出し住民自治を現実のものとしていこうとするとき、集落や近隣など小地域を基盤に動いている自治公民館(町内公民館、字公民館)などの地域施設と、それを支える職員や住民・ボランテイアのはたす役割から学ぶところは大きい。私たちの分科会では、これまで沖縄の字公民館や松本の町内公民館などに注目してきた。そこでは住民から選出されている役員・職員や住民ボランテイアが地域の「自治と連帯」のために大きな役割を担っており、これに自治体職員が支援・援助している関係が重要であった。最近はあたらしく委託施設の嘱託職員であったり、コミュニティセンターなどの場合は指定管理者の関係者も現れている。これらを含めて、地域コミュニティづくりと住民自治の実現のために活動する施設や職員・住民ボランテイアの役割について検討を深めていきたい。
 小地域のなかで躍動する「地を這うような」実践・活動に注目していこう。地味で誰も振り向かないような、しかし地域に密着しながらの取り組み、その地域で暮らす人たちが自ら参加していく取組みが、元気のよい地域を創り出す。
 
 沖縄では伝統的な集落共同を基盤にその地域に共通する課題を皆で協同して取り組んできたいわゆる字(あざ)公民館の事例が少なくない。日本各地には、それぞれの地域の歴史や状況に根ざして、独自の地域活動に取り組んできた多くの事例がある。地域のさまざまの生活課題、防災や防犯、福祉や健康づくり、子育てや一人暮らしの高齢者への対応などテーマはさまざまである。松本の「町内公民館」の取り組みは、地方中核都市での小地域活動として生活課題を丸ごと受け止めている事例が少なくない。

 また人口が密集する大都会でも、地域を小さな目で見ていけば、そこに暮らす人々の切実な生活の諸課題があり、同じく防災・防犯はもちろん、子どもや高齢者の問題、健康づくりを求める活動や子育て支援の取組みや活動がさまざま展開されてきている。私たちは、小さな島の事例から、過密な大都市の地域実践まで含めて、そこに共通するいまの日本の「小地域の自治と連帯」を創り出す課題と方法を考えあってみたい。

 今年の分科会では、はるか南の八重山から、シマの集落と暮らしを自治的に守りぬいてきた竹富島報告がされる。本土資本の土地買い占めに抗し公民館の組織を活用して「住民憲章」を策定し、共同・協力を合い言葉にして島の自然・伝統(祭祀・芸能)・集落を維持し発展してきている取組みである。島には新しくNPO活動も胎動している。
 さらに小地域を対象としたコミュニティづくりとして山間部での実践事例を取りあげる。また人口が密集する都市部の中で、小地域を対象としたコミュニティづくりの事例や構想なども紹介される。当日持ち込みレポートや、トークのみでの参加など、小地域を課題とする人と人とのつながりを大切にする話しあいを分科会の運営でも実現したい。

 地域のなかに人と人とのつながりをどう紡ぎ出すか。住民自治の地域的な活動をどう拡げていくか。施設とそれを担う人(職員)の役割はなにか。なによりも地域の人たちがどのように自分たちのネットワークを創り出していくか。意欲的で行動的な住民・市民の役割とそのエネルギーを小地域の「自治と連帯」にどう発展させていくか。「誰でも」望むならば人と人とのつながりの輪のなかに加わり、地域づくりを進めていく仕組みや活動づくりについて多いに語り合いましょう。


■2,小地域(自治会の班・組)にサロンを作る 
     ー
横浜市磯子区5200への挑戦ー       
                    伊東秀明(
横浜市磯子区役所)

 自治会の「班」とか「組」程度の、戸数にして15〜25戸くらいの広さをイメージします。回覧が回る範囲です。
 これくらいの範囲で、希望者が集ってダベリング会を開きます。会場は個人の家や自治会館などです。空き店舗なども可能。一人住まいの高齢者や子育て中の親や健康づくりや防災・防犯など。話題はいろいろ。高齢者と壮年層が集まれば、回想法を活用した思い出話がおもしろいかもしれません。子育てでは、世代間の話し合いが出来るでしょう。健康づくり体操の実技も出来そうです。恒常的に集まる機会を持ち続けることです。回覧板に次回のお知らせを挟んだり、行われた内容を回覧板に挟むと宣伝になります。
 職員のいる地域施設(地区センター・コミュニティハウス・地域ケアプラザなど)では、多彩な自主事業を開設して、様々なテーマ別のグループ作りを進めます。この場合の範囲は、その地域施設の範囲となります。地域施設が主催をして、その地域施設で活動しているグループ相互の交流を進める事業を行います。例えばポスターセッションや活動交流会など。活動を続けていく中でさまざまなテーマの知識・技術(スキル)を高めた人を「人材バンク名簿」を作って登録してもらいます。職員は地域活動の相談にのり、地域の人が印刷機やコピー機が使えるようにします。
 行政は班・組の活動を援助するために、スタート資金として1万円程度を補助します。5200ほど在る班・組が一斉にスタートをすると5200万円掛かりますが、そのようなことにはならないでしょう。スタート資金などなくてもスタートをしていく人たちが沢山出てくるような状況を作り出すことが期待をされます。地域施設が地域活動に対する役割を果たせるように財政的な援助をします。印刷機・コピー機の設置・メンテナンス経費。行政は様々なセクションに分かれていますので、地域ではその総合化が必要となります。その機能は行政の中にはありません。NPOに期待します。
 以上の考え方をひろめていくNPO法人が必要です。行政に働きかけ、地域施設にアドバイスをし、班・組の活動を援助する活動をします。自宅を提供する会員を育てて、実例を作る必要があります。地域施設の職員と連携し協力して自主事業を刷新しながら沢山のテーマ別グループを作ります。様々なセクションに分かれている行政の総合化に挑戦します。行政は使うものであって使われるものではありません。地域の必要にあわせて行政の関係部署から予算を引き出します。企画と運営はNPOが担い予算は行政が負担します。単体のNPOではなく、NPOの連絡組織が、この役に当たります。行政が担うべき公共的な部分を担うので、経費は行政が負担します。
 会員には、ボランティアとして行政のお手伝いをするという意識ではなく、若干の負担をしてでも、地域作りに参加もし、自分の生活も豊かで充実したものしていくという意識を広げます。

個人の動き 
 自分の家を会場にする・回覧を活用する・地域施設の職員といっしょにテーマ別のグループを作る
 イメージ (略)



■3,【第47回社会教育研究全国集会第19分科会】−2007/08/26

 竹富島憲章と竹富公民館  小林 文人

 はじめに−沖縄の字公民館
 戦後アメリカ占領下に呻吟してきた沖縄では、社会教育の歴史も日本本土の歩みと違い、公民館の形成過程もまた独特の展開であった。公民館設置についての(琉球政府)中央教育委員会の決議(1953年−本土「次官通牒」の7年後)が出されて、公民館の奨励策が始まり、(琉球)社会教育法が成立し(1958)、本土法と類似の公民館の諸条項が盛り込まれたが、実際に普及していったのは、公立公民館ではなく、いわゆる集落立の自治公民館(沖縄型の「字公民館」)であった。公立公民館が正式に登場するのは1970年(読谷村)、1972年の本土復帰以降ようやく各自治体に「中央公民館」(公立)が姿を現すようになる。しかし、最近の統計でも自治体による公立公民館の設置率は77%前後にとどまる。
 他方で、沖縄の集落(区、字、自治会)には、一部の例外を除いて、ほぼすべてに字公民館や類似の集会施設が普及している。区事務所やコミュニティセンター等を含めると沖縄県下で集落公民館は976館を数える(山城千秋、2003年調査)。名称は圧倒的に「公民館」が多いが、その規模や組織、職員体制、活動の実態等は、地区・集落によって大きく異なっている。 本報告では、琉球列島の最南端、八重山諸島の一つ、竹富島に焦点をあて、竹富公民館と「竹富島憲章」制定(1986年)そして町並み保存、集落づくりの住民運動について報告する。
 竹富島の概況
 日本の南の島々・八重山群島のなかに位置する竹富島。西表国立公園に含まれ、豊かな自然と美しい集落景観にめぐまれている。周囲9.2キロ、面積5,4平方キロ、戸数165の小さな島である。離島ながら石垣市から至近の距離、頻繁に発着する定期船に乗れば15分前後で到着する。 竹富島の人口は、戦後直後には2千人を越す時期があったが、その後次第に減少した。しかし1992年以降、下記のように人口増に転じ、過疎・少子化の流れを食い止めている。250人前後の集落はこの10年で100人余の増加、子どもの数も増え、この15年の人口は連続増加中である。

    年度  1900  1945  1960  1970  1991  1992  2000  2002  2003  2005  2006 
   人口  1080  2168   843   373   254   255   279   300   303   350   361

 自然の景観だけでなく、竹富島は伝統的祭祀芸能「種子取祭」が重要無形民俗文化財の指定を受け、また町並み保存地区、伝統的産業品(上布、ミンサー織)の指定も受けている。自然環境・集落景観・伝統的文化を大事に維持し発展させてきたことが観光資源にもなって、外からの観光客が増え、雇用の場ができて、Uターン、Iターンが相次ぎ、結婚・出産も多く、高齢化率は低下しているのである。島の文化が経済を救い、集落を活性化してきている。その中心に竹富公民館の存在があり、竹富島憲章づくり運動に象徴される住民の“うつぐみ”(連帯・協力)の精神と、集落(シマ)の自治と再生をめざす活動があった。
 集落と公民館組織
 竹富島は一集落、実質的には三集落=支会(仲筋、玻座間西・東)から成る。島全体をまとめていく共同体的組織として、かって同志会(1917)があり、戦時中は部落会(1940)と称し、1963年に「公民館」制度へと変遷する。これ以降、住民自治組織としての字公民館が定着してきた。公民館は規約を整備し、館長、副館長、主事(三支会より)の役員体制をもち、幹事、顧問、衛生部、塵埃処理、等の担当を定めている。シマ意志を決定していく総会、運営・執行に関する議決を行う公民館議会(各支会3,老人会、婦人会、青年会等)、さらに各種諮問委員会、公民館運営検討委員会、集落景観保存(町並)調整委員会、財産管理委員会等が活発に機能している。施設としては各集落に「飼育場」と呼ばれる集会所があったが、1971年に公民館が落成し、2000年に国の補助も得て赤瓦と白い石造りの「竹富まちなみ館」(竹富公民館)が建設された。
 竹富島の集落財政は、1977年「種子取祭」の文化庁指定や、とくに1987年「重要伝統的建造物群保存地区」いわゆる「町並み保存」事業についての国の補助あるいは県や町の補助を得ている。しかし基本的には集落独自の賦課方式による会費徴収と観光業関係者からの「公民館協力費」によって自立的に運営されている。2004年度の場合、収入3,357,988円(内・公民館協力費1,161,000円)、支出2,902,338円(内・役員報酬1,611,000円)。他に結願祭、敬老会、種子取祭の行事にについては特別会計をもち、さらに「祭事」(766,343円)「塵埃処理」(2,580,866円)「祭壇基金」等の詳細な経理が毎年の公民館総会に報告されてきた。
 竹富島憲章と町並み保存運動
 沖縄とくに八重山は、日本復帰(1972)前後から本土資本による土地買い占め、リゾート化への跳梁があり、それに抗する住民運動があった。竹富島では「生かす会」が「竹富島の心」を訴え、「憲章案」も構想されている(1972)。その背景には本土の町並み保存運動やとくに「妻籠宿を守る住民憲章」(1971)等に学ぶところが大きかった。1982年の記録では、竹富島の6分の1が名鉄、ヤマハ、日本習字連盟等の開発資本によって買い占められていた。一方で島民の郷土意識も高く、また地元主導の観光業の取り組みもあり、東京等「竹富郷友会」の応援を得て、「竹富島を守る会」の結成や土地買い戻しの努力が始まった。その過程で「竹富島憲章」はまとめられたのである。この憲章は竹富公民館の集いのなかで提起され、公民館議会で論議され、総会の場で承認された(1986年)。憲章は次のように呼びかけている。
 「私たちは祖先から受け継いだ伝統文化と美しい自然環境を誇り『かしくさやうつぐみどぅまさる』の心で島を生かし、活力あるものとして後世へ引き継いでいくためにこの憲章を定めます。
 一、保全優先の基本理念
1、『売らない』 島の土地や家などを島外者に売ったり無秩序に貸したりしない。
2、『汚さない』  海や浜辺、集落等島全体を汚さない。
3、『乱さない』 集落内、道路、海岸等の美観、島の風紀を乱さない。
4、『壊さない』  由緒ある家や集落景観、美しい自然を壊さない。
5、『生かす』    伝統的祭事、行事を精神的支柱として、民俗芸能、地場産業を生かす。」 さらに、二、美しい島を守る、三、秩序ある島を守る、四、観光関連業者の心得、五、島を生かすために、六、外部資本から守るために、の各項目ごとに細則が定められている。  竹富島の現在と課題
 島の伝統的な祭祀と芸能、誇るべき集落景観、伝統工芸を維持しながら、新しい時代のなかで生起する課題にも挑戦していく必要がある。地元主導の観光業を、水準を落とさないで、どう発展させていくか。また、2002年創立の竹富島遺産管理型NPO法人「たきどぅん」への期待も大きい。





■4,大人が育ち、子どもを育む(福井市岡保公民館・吉田晴美)*未入力
■5,地域づくりと秋津野塾(前田辺市公民館長 玉井常貴)   *未入力




■6,第19分科会(2007/08/26、貝塚市)
 
報告と討議の記録   分科会世話人 星山幸男

 自治と連帯を築く小地域での活動(自治公民館など)

1、分科会のねらい

 この分科会では、2002年の沖縄集会で「字公民館と地域づくり」を取り上げて以来、「小地域を範域とした学習活動と地域づくり」を主テーマとして、地域施設や組織のあり方、住民の自治的活動に着目し、学習を続けてきた。地域における住民自治を現実のものにしていこうとするとき、集落や近隣など小地域を基盤に展開されている自治公民館(町内公民館、集落公民館、字公民館)活動や、そこでの学習を支える職員や住民・ボランティアは、とても重要な役割を果たしている。私たちは各地からの報告事例に学びながらその役割を確認し、各地域で「自治と連帯」を築き上げていくための取り組みや学習の発展について探ってきた。
 今年の集会では、3つの報告と3つの持ち込みレポートを踏まえて、@地域のなかに人と人のつながりをどう紡ぎ出し、住民自治による地域的な活動をどう拡げていくか、A何よりも地域の人たちがどのように自分たちのネットワークを創り出していくか、B施設とそれを担う人(職員)に求められる役割とは何か、C意欲的で行動的な住民・市民の役割とそのエネルギーを小地域の「自治と連帯」にどうつなげ発展させていくか、についてみんなで考えていくことを課題とした。そして、「誰でも」望むならば人と人とのつながりの輪の中に加わり、地域づくりを進めていける仕組みや活動づくりを追究してみた。
 参加者は、韓国から来られた4名を含めて28名で、休憩の時間も惜しんで情報を提供し合うほど、熱心で真剣な学習が行われた。

全国集会第二日・第19分科会「自治と連帯をきずく小地域の活動(自治公民館等)」
                         右端:韓国平生教育総連合会・朴仁周会長



2、報告の要旨
(1)大人が育ち、子どもを育む
 福井市岡保公民館の吉田晴美さんから報告していただいた。ここの公民館は、市役所などからの依頼業務が多く、なかなか公民館本来の仕事に専念できない状況の中で、ひたむきな実践活動が行われている。14の自治会(集落毎に組織)があり、自治会の会合には公民館長と主事も参加して自治活動を支援しているが、自治会長が毎年交代するために、研修会を開催してもなかなか自治の発展につながらないというのが現状である。
 こうした中で、「大人が育ち、子どもを育む」をすべての実践の根幹とし、団体や教育機関・行政の依頼業務との連絡調整を図りながら、課題について協同で考えてきた。具体的取り組みの一つ「子ども教室わんぱくクラブ」では、事業を通し、大人同士・大人と子ども・さまざまな人が触れ合う機会を設定し、「地域の子ども」意識の拡大や地域の教育力の向上を図っている。また、子ども安心ネットワークでは、市から求められた「見守り隊」ではなく、各世帯の有線放送を利用した見守りネットワーク活動を実施している。この有線放送は農協から公民館に運営が移管されたものだが、教育施設という観点からの運用のあり方が模索されている。
 この報告では、他の地域でもしばしばみられる行政当局からの委託業務が拡大する中で、集落の自治力を高め、公民館の「公」の立場を生かして住民主体の地域づくりを進めることの必要性と、地道にその活動を拡げていく一つの道筋が示された。と同時に、その大変さも再確認できたといえる。
(2)地域づくりと秋津野塾
 和歌山県田辺市上秋津公民館の前館長玉井常貴さんから、継続して地域課題に取り組んできた秋津野塾の活動とそこでの学習、公民館の果たしてきた役割などについて報告していただいた。ここは、ミカンや梅など多様な果樹栽培が盛んな地域だが、価格の変動(暴落)や生産調整などで地域の存続にも関わるほどの厳しい経験を経てきた。こうした地域課題に対して、住民の結束と多様な自主的創造的活動を展開してきた蓄積があり、地域で活動を実践してきた22団体によって1994年に「秋津野塾」が設立された。
「活動と潤いのある郷土づくり」を設立の趣旨として掲げ、祭り、講演会、健康増進、防災、歴史文化の継承、子供たちの体験学習など多岐にわたる活動を実施し、地域づくりに取り組んできた。また、農産物の直売所づくりから発展して農業生産法人の設立も実現させている。さらに、事業のあり方や地域づくりの実際の評価と総括を基に今後の活動を考えようと、和歌山大学の力を借りてマスタープランづくりを進めてきた。
このような活動を通じて「人と人、団体と団体をつなげることを大切にしてきたという。 そして、地域づくりの中での公民館の役割を、@大きな可能性をもたらす組織の運営をささえ、A地域づくり支援センター的な役割を重視し、B人づくりにつながっていく活動が重要となる、と捉えている。地域課題に取り組むときの基本的視点とそれにそった活動を進める際に公民館が担ってきたものを的確に整理した指摘といえよう。
(3)竹富島憲章と竹富島公民館
 この分科会ではこれまでにも沖縄の字公民館は紹介されているが、今回小林文人会員から報告いただいた竹富島は、特に注目したいすばらしい活動を実践している。
 まず昼休みを利用してDVD「うつぐみの島・竹富島」が紹介された。「うつぐみ」とは、みんなで協力・協働するという意味だそうである。貧しく過酷な条件の中で生活を強いられてきた人々が生み出した知恵である。竹富島では祭り、防災、その他あらゆるところで公民館が登場する。ここでは神への祈り(祭祀)と住民活動が一体化しており、いずれも公民館で進められるという特徴がある。
 1970年〜80年代にリゾート開発が進められ、島の1/6が開発資本によって買い占められた。この時、一部に歓迎する向きもあったが、開発は島民のためにならないと住民に働きかけたのが公民館であった。そして「重要伝統的建造物群保存地区」の指定を受け、自分たちで島を守ろうという動きが活発化した。大切なことは自分たちで決めていくことを重視し、公民館主導で進めていく。「竹富島を守る会」を結成し、土地の買い戻しの努力もしていった。そしてこの過程で「竹富島憲章」を定めたのである。この住民憲章は、公民館の集いの中で提起され、妻籠宿の住民憲章に学びながら公民館議会で議論され、まとめられた。
 報告では、この実践から学ぶ視点として、@住民の横のつながり(日常)、A課題への取り組み(NPO)、B合意形成(憲章)、C文化・芸能(祭祀と地域行事)、D集落を越える交流(内と外)、の五つが上げられている。地域課題への取り組み、学習、そして住民自治を育むという活動の過程で大切となる点が整理して示された。
(4)街の中にまちなかサロンをつくる
 横浜市の伊東秀明会員からは、小地域(自治会の班・組)にサロンを作るという実践が報告された。地縁組織とテーマ別組織の反発・対立が多く見受けられ、何とか解決できないかということで、住民が提案・実施する地域づくりの取り組みに対して助成金を出し、地域活動を奨励していこうという事業である。助成の条件は、「自治会町内会と連携・協力することにより、事業が地域へ浸透・波及していくように検討すること」と定め、地域活動のテーマを公募した。その結果、助成が決定したテーマは、防災、高齢者の仲間づくり、世代を超えた子育て支援、障がい者のノーマライゼーション、多文化交流など、多岐にわたっている。しかし、反応を示したのはテーマ別組織で、地縁組織でこれに応募したところはなかった。
横浜には民俗芸能や年中行事を行っている地域はほとんどなく、小地域の中で人と人を日常的につなげる仕組みづくりの必要性を強く感じても、現実に作り上げる際には多くの難しさのあることが浮き彫りにされたといえよう。報告では、より小範域(市内に5200ある班や組)で考えなければならないのではないかとの見解が述べられたが、大都市での助成金による団体活動・地域活動育成の課題が示されたといえよう。
(5)健康福祉の地域づくりと小地域公民館
 岡山県鏡野町羽出公民館の前館長美若忠生会員からは、過疎化と高齢化の進む地域の厳しい状況の中での地域課題解決の取り組みが報告された。
 この地区は、中国山地の山間に位置し、成人の約半数は65歳以上の高齢者で、高齢者の半数以上は高齢者のみの世帯(一人暮らしを含む)、集落を維持できないところも出てきている状況にある。この厳しい高齢化のなかで、地域をどうしたらよいのかを考えることが公民館の課題と捉えた。
 そこでまず、「福祉を考える会」という学習会から始め、地域で支え合わなければならない問題や公民館で応援できそうな課題を見出し、男の料理教室など高齢者自身の抱える問題の解決に向けてみんなで取り組み始める。福祉の諸団体との連携も着実に拡げていく。そして、住み良い地域づくりを支える公民館構想を打ち出し、「地域福祉を考える」公民館講座を発展させてきた。
 なぜ今小集落なのかを改めて問うならば、互いに支え合っていかないと生きてはいけず、そこでしか本当の力になっていかないと指摘する。それは今年地域福祉を考える集いの開催という形で具体化した。そして、今公民館に求められている役割は、地域で動いている人を集めて、共通することを考え、住民にどんな希望を示せるかということだと結んだ。
 ギリギリの状況で暮らしている住民の切実な課題に公民館はどう立ち向かうのか、一つの方向が示された。
(6)松本市安原地区のまちづくり
 松本市の大出俊次さんからは、安原地区における「地域福祉計画」の策定および「まちづくり協議会」発足の経過についての報告があった。
 ここでは地域福祉計画を市民が策定し、町会長連絡会(11町内会で組織)で決定している。そしてそこから、福祉だけではなく地域づくりにも拡げようと「まちづくり協議会」を設立した。
従来は持ち回りの町内会長で、行政の下請的な仕事しかしておらず、これではみんなで決めたことに基づいて実行していくというリーダーシップは発揮できないと指摘された。
なお、この報告については残念ながら時間がなくなってしまったため、来年改めて詳しく報告いただくということになった。

3、討論
 討論では今回の報告の中で出されたことを来年にどう引き継ぐか、論点を明確にする必要があるという指摘を受けて、さまざまな意見が出された。
 美若さんの報告にあったような地域に対して行政は、何とかなるだろうくらいの認識しかないところが少なくなく、きちっとした施策は期待できない。最前線では非常に苦しい状況にあり、今地域の中から提起して行く必要があるのではないか。自分のところのリアルな課題と向き合い、生きていくための本物の学習を築くことが大切である。
 地縁組織と目的組織の対立ではなく、どう一つのものにしていくか。課題から出発した地域づくりの新たな仕組みづくりが求められているということが明確になった。自治公民館では、「議論すること」が大切であり、合意形成を作り上げることから地域づくりにつながっていく。しかし、合意形成の曖昧さ、町内会の体質が未だ改善されていない。みんなの参加に基づく合意形成をどう作っていくのかを明らかにしていくことが求められているといえる。
 以上のように討論の中で、今回の報告を通して共通して出された実践の視点や方法・手順が確認され、また小範域での活動を進める際の課題や公民館の役割もある程度整理された。しかし、住民が地域活動に参加する蓄積の薄い地域でひととひと、団体と団体をつなぐ仕組みをどう作り合意形成していくか、など残された論点も多い。


■7,2008年1月、妻籠合宿の誘い 
    参考・自治公民館分科会レポート一覧)

    南の風1960号伊東秀明、Sat, 15 Dec 2007 15:38

 <信州・妻籠への訪問計画>
 … 私たちは … 社会教育研究全国集会・分科会として、小地域での住民の活動や自治公民館について研究をしています。とりわけ小地域での活動において公民館がはたす役割を考えています。これまで毎年の社会教育研究全国集会で分科会を開き、また沖縄の字公民館や、松本の町内公民館、愛知川町などについて訪問調査もしてきました。
 このたびは、文人先生のアドバイスもあり、妻籠の公民館と「売らない・貸さない・こわさない」の住民憲章や町並み保存運動の取組みについて、南木曾町の遠山高志(教育長)さんはじめ、皆様からお話をうかがう計画です。次のようなスケジュールを考えています。
日程:2008年1月5日(土)〜6日(日)
5日(土)昼ごろ現地集合、昼食の後 妻籠宿へ、南木曾町(妻籠)博物館で遠山高志(南木曾町)
 教育長のお話など。夜は懇親・交流会。 
6日(日) 討議※と時間が許す範囲で現地を見学 14時ごろ解散予定。             
      ※討議のたたき台を星山幸男先生(東北福祉大学)が用意してくださいました。
宿泊:「南木曽温泉 ホテル木曽路」http://www.kisojiresort.com/ を予約
    一泊16,000円程度。6日の会議室もホテル内で手配。
参加予定者:東京、貝塚、岡山、松本、仙台、京都、横浜等から7人。
連絡先:伊東秀明(横浜市磯子区役所)
    現地・南木曽町教委(生涯学習係兼公民館主事)宮川 護さん
*もし参加ご希望の方があれば、小林ぶんじんまで。

■ <参考> 小地域での住民活動と自治公民館等の役割を考える分科会
         
−これまでの全国集会分科会レポート一覧
           *各報告の主要部分はTOAFAECーHP「自治公民館」サイトに収録
2002年(第42回)沖縄−名護集会
・松本市蟻ヶ崎西町会コミュニティの再構築(松本)
・暮らしに根づいた松本市の町内公民館(同)
・分館活動のあり方〜活動は地域に根ざした遊びの文化〜(飯田市)
・地域で祭りを継承すること〜「屋部の八月踊り」の場合(名護市)
・ユイマールでできた手づくり公民館(沖縄読谷村・大添)
2003年(第43回)岡山集会
・大都市区役所で狭い地域での社会教育活動を支援する(横浜市)
・山村で少しずつ動きが始まった(岡山県奥津町・羽出)
・自治組織と町内公民館活動(松本市)
・小さな島の字(自治)公民館活動〜沖縄県今帰仁村古宇利島〜
・地域に根ざした公民館活動を進めるために〜公民館活動基礎講座の20年〜(京都府)
2004年(第44回)猪苗代集会
・松本市神田町会のボランティア活動(松本)
・岩手県川崎村における自治公民館の展開について(岩手県川崎村)
2005年(第45回)福岡大会
・町内公民館の手びき・実践集の発行(松本市)
・みんなで作り上げた七夕まつり(松本市)
・「小倉東地区はひとつの家族です」〜マンションでの“まちづくり”〜(福岡県春日市)
2006年(第46回)箱根大会
・自治を担う沖縄の集落(字)公民館(山城千秋報告)
・大都市の小地域を対象とした人と人を結びつける取り組み(横浜市)
・大阪府貝塚市の取り組み(松岡伸也報告)
2007年(第47回)阪奈和大会
・竹富島憲章と竹富公民館(沖縄県竹富町)
・大人が育ち、子どもを育む(福井市公民館)
・地域づくりと秋津野塾(和歌山県田辺市上秋津公民館)






2008年・小地域・自治公民館と地域づくりの動き
        −第48回社会教育研究全国集会・分科会

                             会場:北海学園大学


■1,2008年社会教育研究全国集会・第18分科会:討議の柱
    「自治と連帯をきづく小地域の活動(自治公民館など)」
  
主な討議の内容
 小地域(集落、町内・字・近隣)で行われる活動に注目します。格差社会がもたらす生活の破壊に抗し、日常的な小地域での人と人とのつながり生み出し、暮らしを充実したものにする住民自身の新しい地域活動は、「生き方の文化」を創りあげようとする地域活動といえます。一人暮らしの高齢者の生活支援・防災や防犯の取り組み、子育て支援・健康づくりなどの事例をとりあげます。地域に密着した自治公民館のはたす役割について討議したいと考えています。

分科会世話人:
     小林文人、美若忠生、松岡伸也、星山幸男、伊東秀明、山城千秋、内田浩一
ほか


討議の柱
 この分科会では、小地域で自治公民館・字公民館・町内公民館などの地域に密着した施設を基盤に行われている住民の活動に着目し、各地の実践例に学びながら社会教育の役割と可能性を考えていきたいと思います。
1、今なぜ小地域なのか?
 現代の日本社会では格差の拡大が指摘され、大都市・地方中小都市・中山間地・諸島部、いずれの地域でもこれまでの生活を維持することの難しさが増大し、人々のつながりの希薄化が一層進むなど、日常の暮らしに大きな困難が立ち現れています。こうした状況に立ち向かおうとするとき、小地域での活動が大きな役割を果たしていることが、これまでのこの分科会の学習を通して確かめられてきました。それは、@住民の日常的な横のつながりを作り、その維持・発展に結びついていくこと、A人々の生活課題に取り組みやすく、継続的な学習が行いやすいこと、B住民の合意形成を作り上げる基盤となっていること、C地域の文化と深く関わりながら学習を展開する場が形作られること、D本当の自治を育む場となること、に整理されます。今年の集会では、こうした蓄積を踏まえて、各地域からの事例報告や参加者それぞれの地域の活動紹介に基づき、議論を深めていきたいと思います。
2、討論のポイント
 地元札幌市から「石山まちづくりセンター」の取り組みについて、「まちづくりセンター」のこれまでの市民自治を意識したあゆみと可能性を紹介していただきます。
横浜市からは、「地域施設の住民活動への関わり方が住民活動を地域社会に貢献するものに変えていく」という基本視点に立って、地域施設と地域活動の関係について、地域福祉活動の側面から紹介していただきます。
 そしてこの他のレポートも含めて、次のような点を軸に検討します。
(1)高齢者の生活支援・防災や防犯の取り組み・子育て支援・健康づくりなどの取り組みを、地域福祉計画の進め方と関わらせて、小地域での活動と学習がどのように展開し、どんな力を発揮しているのか、
(2)住民の知恵と力を集めて地域づくり(地域の自立)を築き上げていくという「生き方の文化」をどう作り上げ、共有できるようにしていくのか、その時地域施設はどのような役割を果たすのか、
(3)今、上述のような活動を地域で担おうとするとき、人と人とのつながりをどのような道筋で再構築していけばよいのか、
(4)担い手の負担を軽減しつつ、地域課題の解決に向けた活動を展開していくとき、社会教育は何ができるのか、求められる具体的支援とはどのようなものか、
 こうした点について事例を通して確かめながら、その論理を明らかにしていきたいと思います。          (世話人 星山幸男)

■2,札幌からの報告:“まちせん”ってなんだろう 
              石山まちづくりセンター 毛利泰太

1 出張所から連絡所、そして"まちセン"へ
 1972年(昭和47年)、冬季オリンピックで日の丸飛行隊が札幌の空を羽ばたいたその年、札幌市は政令指定都市の仲間入りを果たし、大都市としての新たな一歩を踏み出した。全国屈指の広大な市域は7つの「区」に分けられ、それぞれの区には総合出先機関としての「区役所」が設けられた。それまで住民サービスの観点から市内43ヶ所に置かれていた出張所(※1)は、基本的に区役所に吸収されてしかるべきではあったが、名前を「連絡所」(※2)と変えて残されることとなった。この連絡所時代はその後32年間続く。
 そして、アテネオリンピックが開かれた2004年(平成16年)、連絡所は"まちセン"に生まれ変わった。"まちセン"とは、まちづくりセンターの略称である。現在、札幌には87のまちセンがあり、基本的に地域ごと(町内会の連合体組織とほとんど同じ単位で、概ね中学校区程度)に置かれている。そこには、所長(課長職)1人と非常勤職員(1週29時間勤務の職員)2人の計3人(例外あり)がおり、いわゆる窓口業務から市民のまちづくり活動のサポートまで様々な業務を幅広く担っている。

2 なぜ「連絡所」は残ったのか
 政令指定都市への移行に伴い、出張所の機能は区役所に吸収されるはずであった。それがなぜ「連絡所」と名前を変えて残ったのか。それが現在のまちセンにつながっている。まずは、まちセンの前身である出張所と連絡所の関係を見てみたい。
 出張所とは、地方自治法に規定されている市町村の出先機関であり、その位置・名称・所轄区域は条例で定めることとされている。札幌市に出張所が置かれたのは、戦後間もない1947年(昭和22年)。当時の市の人口・面積はそれぞれ現在(190万人・1,121ku)の7分の1、15分の1に過ぎない26万人、76 kuだったが、そこに21ヶ所の出張所が誕生した。その後札幌は近隣町村との幾度にも及ぶ合併を経て、急激な拡大路線を歩んだ。1967年(昭和42年)の手稲町(ていねちょう)との合併により、ほぼ現在の市域となるが、直後の1970年(昭和45年)の国勢調査で人口が100万人を突破し、冒頭記したように政令指定都市の仲間入りを果たしたのである。
 この間出張所は、市の出先機関としての機能を担うとともに、市政と地区住民とのパイプ役として住民との間に緊密な関係を築き、自ら新たな機能をも培ってきた。町内会など住民組織の連絡調整の場として、また住民活動の拠点として地域住民の意識に定着してきたのである。
区役所の誕生に伴い、出張所を廃止することは、単に住民サービスの低下につながるというだけではなく、この培われてきた機能をも放棄することになる。当時の資料からは詳しい状況は読み取れず、あくまでも私見ではあるが、もはや当時の出張所は、単なる出先機関ではなく、地域コミュニティの醸成という観点からは欠くことのできない存在になっていたのではないだろうか。

3 まちセン誕生
 指定都市への移行と同時に45ヶ所からなる連絡所体制がスタートした (※3) 。連絡所は出張所とは異なり、地方自治法などの法律で定められているものではなく、完全な札幌市のオリジナルである。市職員である所長は、当初係長職が充てられていたが、1978年(昭和53年)から課長職が充てられるようになった。7区45連絡所でスタートした体制は、数度の分区と幾度にもわたる連絡所の新設を経て、1998年(平成10年)には10区85連絡所(※4)体制となった。
 そして、2004年(平成16年)、まちセンが誕生する。まちセンも法定のものではなく、札幌市のオリジナル作品である。ではまちセンは、連絡所とどこが違うのか。

4 市民自治を意識して
 連絡所とまちセンの事務分掌を見比べれば、その違いは字面の上ではわかる。ただ、これはあまり意味のあることではないので、ここでは私見も交え、連絡所とまちセンとの違いを感じるままに書き記してみたい。
 まちセンは、大きく2つの仕事を持っている。一つは市の出先機関としての仕事(住民票の交付、市からの連絡事項の周知、地域要望の取り次ぎなど)であり、もう一つが地域のまちづくりの支援の仕事だ。濃淡はあるものの、これは出張所時代から変わっていないだろう。
 変わったのはそのウェイトと質だろうか。まちセンにおける業務のウェイトは、後者(地域のまちづくりの支援の仕事)に大きくシフトしている。また、その内容(質)も、市民自治を意識したものへと変容している。市民自治とは「自分たちのまちのことは、自分たちで考え決めていくこと」である。言い換えると、まちセンは、これまでの行政のように答えを地域に示してはいけないのだ。答えを探すのは地域であり、それを支えるのがまちセンなのだろう。今はやりのコーチングを地域を対象にして行う・・・それがまちセンの大きな役割になってきている。
 強い選手を育てるのがスポーツの世界でのコーチであるなら、強い地域を育てるのがまちセンなのである。

5 次のステップ『まちセンの地域自主運営』
 戦後間もなく市の出先機関として誕生した「出張所」は、指定都市移行までの25年の間に、いわゆる窓口業務を担当するだけではなく、"住民とのあうんの呼吸"をも覚え、住民活動の拠点との位置づけを獲得した。指定都市移行後も、「連絡所」はその血筋を引き継ぎ、32年間に及ぶ役割を果たしてきた。そして、連絡所が「まちセン」になり、数年が経過した。この間、実に500にも上る地域での自主的なまちづくり活動が新たに生まれたと報告されている。
このまちセンの次のステップが既に用意されている。まちセンの地域自主運営である。まちセンを市の職員ではなく、地域で運営していこうという試みだ。
地域が人材ならぬ「人財」を育て、「地域力」を高めていくことにつながっていくのであれば、大いに進められるべきことであろう。もちろん、このステップに挑戦する勇気ある地域に対しては、札幌市が手厚いサポートをしっかりと講じていかなければならないことは言うまでもあるまい。

※1 正確には支所2ヶ所、出張所38ヶ所、派出所3ヶ所だが、まとめて「出張所」とする。
※2 一部出張所のままで残ったものもある。
※3 このほか出張所が5ヶ所置かれた。なお、このうち3ヶ所は、その後の分区により、その機能が
 区役所に統合されることになる。
※4 このほかに出張所が2ヶ所。なお、連絡所がまちセンとなった際には、これら出張所も(法律上
 の出張所のまま)まちセンとして位置づけられ、まちセンは87ヶ所となった。



■3,2008年度全国集会・第18分科会報告
   「自治と連帯をきづく小地域の活動(自治公民館など)」(2008年8月24日)
                   
 *記録:伊東秀明、小林文人(3韓国、4竹富島のみ)

 

 2002年の沖縄集会で設置された「小地域の活動」を深める当分科会も今年で7回目を迎えることとなった。今年は、大都市の中で小地域を対象に進められてる自治体からの報告が2本、韓国からの報告、そして竹富島からの報告が行われた。参加者は指定管理者になっているNPO法人3名の参加者を始め、韓国から6名、総勢24名の参加者であった。

1 札幌市南区石山地区の「まちづくりセンター」からの報告
(1)支所から発展
 まちづくりセンターは札幌市の施策で市内に87箇所設置されている。一つの区に平均9箇所である。単位自治会町内会の連合体の範囲、中学校区の範囲を対象にしている。市の出先機関として住民票の事務や、情報提供・住民要望の取次ぎを行っている。もう一つの仕事は、町づくりを支援する仕事で、地域の人が発行するニュース作りの手伝いなどをしている。この二つの仕事は非常勤職員2人で担当。しかし、大切な役割は「まちづくり」コーチとしての役割である。活力ある地域を作るために何をするのかを考えることが重要になってくる。この仕事は課長職である所長の役割である。
(2)地域とのつながりは複雑
 まちづくりセンターと地域との関わり方は複雑で、センターによって異なる。地域諸団体の通帳を預かり、会計の業務を担っている職員も居る。
(3)活力ある地域を作るため課長職を配置
 課長職を配置しているのは、活力ある地域を作るために、まちづくりセンターは何をする必要があるか、その役割を果たすためである。まちづくりセンターが役割を果たすためには、何をなすべきか、その目的や方向を考える熱心な職員の配置が必要だという市の施策が、課長職を配置することになった。マニュアルはないので、配置された地域の状況を把握しながら、強い地域づくりのコーチ役を果たすのである。
(4) 地域の自主運営に任せる方向を目指して
 まちづくりセンターを町づくり協議会の自主運営に任せる方向が模索されている。地域づくりは地域の人たちが担うことが理想である。もちろん、センターを運営するために必要となる職員の人件費は札幌市が負担をする。町づくり協議会は、自治会町内会の役員(石山地区の自治会町内会数は27、人口は12000人、自治会町内会の会館を所有する自治会町内会は5)や、PTAのその他、地域の活動グループの代表によって構成される。地域活動は地域の人が担うという住民自治の方向をめざしている。

2 横浜市の磯子区の根岸地区のしあわせバンクの取組み
 区内の行政水準はどの地区でも同じでなければならないという考え方から、地域の実情に合わせて地区による違いを認めようという方向で、しあわせバンク作りを行政が支援している。地域の実情は、地区の広さよりにもよるが、単位自治会町内会の状況にもっとよく表われてくるのではないか。人と人とのつながりは、班とか組と呼ばれる回覧板が回る範囲に作り出すことが必要なのではないか。そのためには回覧板の利用方法を積極的に考えていくことが必要になってくる。


3 韓国の平生教育、小地域(マウル、集落)の取り組みと学習活動(小林文人)
 韓国から参加のキム・ナムソン(韓国平生教育学会長、大邱大学校教授)、ヤン・ビョンチャン(韓国平生教育連合会事務総長、公州大学校教授)両氏から、韓国の最近の動きについて貴重な報告をいただいた。通訳は李正連さん(名古屋大学)。
(1)地方自治体と住民自治センター:
 韓国は、特別市(1)、広域市(6)、道(8)、特別自治道(1)、合計16の市・道から成り、基礎自治団体237(市・郡・自治区)、その下部行政組織として約3500の邑・面・洞(ウン・ミョン・ドン)がある。従来の地方行政の末端組織(事務所)であった邑・面・洞は、1999年前後から「住民自治センター」としての転換が進められたきた。現在、約90%に住民自治センターが設置され、行政末端サービスの機能とともに、住民自治の拠点としての役割も担うようになってきている。
(2)住民自治委員会:
 各センターには住民自治組織として20〜25人の「住民自治委員会」がおかれている。地域の有識者、企業、自営業、ボランテイア団体など各層から構成され、年令構成は20代〜60才代にわたる。委員会は、住民自治センターの運営について審議するとともに、自治活動や地域づくりの活動を担い、とくに住民のための平生学習プログラムを推進する方向がめざされている。利川(リチョン)では住民自治センターを「住民学習センター」と呼んでいる。
(3)平生学習都市の施策(略)
(4)小地域の生涯学習:
 平生学習を地域に密着して推進していくため、邑・面・洞レベルの平生学習を実践していく方向が求められてきた。さらにその下部地域において、近隣の里や班のつながりによる50世帯前後のマウル(ムラ、集落)ごとに平生学習のリーダー養成が始められている。また、マウル平生学習リーダーとともに、かっての「セマウル(新しいムラ)運動」でつくられた「マウル会館」を活用していく。都市部では団地・マンションの会議室や会館があてられる。マウルのリーダー養成・研修がいま7自治体で積極的に始まっている。これからが注目される。
(5)マウル平生学習の新しい展開
 「ウン・ミョン・ドン」レベルの地域づくりや平生学習から、いま50世帯前後の「マウル」レベルのリーダー養成など小地域での新しい取り組みが提言されている。必要な経費は行政が負担する。その運営方式は、@すべてを住民委員会が取り組む、行政がサポート、A住民委員会が運営するが、行政側から幹事をおく、B先進的な市民団体に委託する、C平生教育法下における平生学習都市と連携する、など4つの方式がみられる。
(6)背景としての地域・住民自治の運動
 1987年「民主化宣言」を実現するいたる大規模な社会運動、民主化抗争、国レベルの課題に立ち向かった市民運動は、1990年代以降には、地域に入り、住民自治の運動へと展開していった。軍事政権と闘ってきた世代的経験や市民意識は、草の根の市民運動として地域課題に取り組み、イデオロギー闘争から脱皮して、住民の生活世界に関わる政策提言を含む地域づくり運動へという潮流。「マウル平生学習」の流れは、このような市民運動の時代的背景がある。
(7)市民運動と平生学習との結合(略)

*韓国からの報告(省略部分)については、関連サイトに収録している。→こちら■


4 2007〜2008年・竹富島の動き(小林文人)
 竹富島は沖縄・八重山群島の一つ、人口360人、世帯160前後の離島。集落の共同と連帯の積み重ね、注目すべき集落活動・祭祀・地域文化を蓄積してきた。1980年代に外部リゾート資本による土地買い占めに抗して、島民による「竹富島住民憲章」づくり、町並み保存運動が取り組まれ、その中心に集落の「竹富公民館」の役割があった。いまさらに外部資本に関わる新たな動きと「新・宿泊施設」建設があり、観光水牛車施設移転をめぐる騒動などと重なり、2008年初頭より、島内の大きな検討課題となっている。2007年報告に引き続き、その後の動向の概略がレポートされた。

 
水牛車施設移転問題をめぐって「反対!」の立て看板(東、20080225)


5 今後の課題、来年に向けて
(1) 市民活動団体(NPO法人など)と地縁団体の連携をどうつくっていくか、連携が実現している具体的事例を見つける
(2) 自治公民館だけでなく、コミュニティーセンターなど多様な地域施設を対象に検討をふかめる
(3) 住民の立場から小地域で取り組まれている地域活動・実践事例の具体的な展開をレポートする
(4) 韓国の小地域(マルル、集落)活動と生涯学習の取り組みとの交流を考える















2009年・小地域・自治公民館と地域づくりの動き
     −第49回社会教育研究全国集会・分科会

                                     会場:信州・阿智村



1,第17分科会・討議の柱

  
自治公民館などによる自治と連帯を築く小地域の活動

 この分科会では、これまで自治公民館・字公民館・公民館分館・町内公民館などと呼ばれる小地域を基盤とした住民の活動に着目し、地域活動の展開と学習、住民の連帯を築く取り組みなどについて議論を深めてきました。そして、7回目となった昨年の総括で次のような課題が示されました。
(1)市民活動団体(NPO法人など)と地縁団体の連携をどう作っていくか、連携が実現している具体的事例を見つける。
(2)自治公民館だけでなく、コミュニティーセンターなど多様な地域施設を対象に検討を深める。
(3)住民の立場から小地域で取り組まれている地域活動・実践事例の具体的な展開をレポートする
(4)韓国の小地域(マルル、集落)活動と生涯学習の取り組みとの交流を考える。 
 小地域の重要性は、各地の事例を基に確かめられ、この分科会に蓄積されてきました。しかし、これまでの議論は「小地域が大切」という段階にとどまっているという厳しい指摘もあります。今年度は、こうした指摘や昨年示された上述の課題を踏まえて、住民の連帯と自治にどうつなげていくのか、さらなる発展を目指したいと思います。
そこで、今年の討議の柱を次のように立ててみました。
(1)地域の諸団体やNPOをはじめとする市民の活動組織との新たなネットワークをどう構築するのか。
(2)その中心に位置付けられる公民館が果たす役割、諸機関との連携をどう作っていくのか。
(3)今据えられなければならない地域課題とは何か。
(4)自治を育む小地域での活動を公民館は、今、どう位置づけるのか。
(5)韓国の小地域活動や平生(生涯)教育の取り組みからなにを学ぶのか。
 当日は、飯田市の地域連携による「子ども図書館」作りの事例報告、長野県松本市の町内公民館活動から女性館長を軸に進められている3つの地域づくり事例の報告が予定されています。これら現地からの報告に参加者による全国の動きを踏まえながら、上記の論点を深めていきたいと思います。


2,第17分科会・実践報告

(1)市街地を盛り上げる小さな活動 〜女性館長たちの奮闘から〜
  
              松本市 井川城下区町会(町内公民館長) 山崎  寿子
                     
御徒町町会(町内公民館長) 三村伊津子
                     
上土町会  (町内公民館長) 岩岡  悦子
                     
松本市役所市民課       高山  佳範


はじめに
 
松本市には、460以上の町内公民館と呼ばれる自治公民館が設置されており、設置・維持・管理の全てが「町会」という自治会で行われ、それぞれ地域の特色を生かした活動が活発に行われています。今回は特に地域意識が希薄になりがちな市街地における女性館長たちの活躍にスポットをあて、街の活気につながる小さな活動を検証します。

1,お母さんの悩み相談「子供と教育を語る会」
                          井川城下区町会(町内公民館長) 山崎  寿子
(1)町会の概容

 世帯数約250戸のうち一戸建てが123戸、集合住宅127戸。人口631名うち小学生49名、中学生16名合計65名。1330年代に城を中心に開けた鎌田地区最古の地域で南北に長く南に集合住宅が集中しています。町会の1/2を占める集合住宅の全世帯が町会に加入しています。この住民は殆どが転勤でこられ、34年程で他の地に移って行かれます。
(2)「子供と教育を語る会」発足の経緯
 平成139月に公民館が竣工されました。それまでは館≠ェないために公民館活動も町会行事もできませんでした。町会としてのまとまりは無く、ましてや古くからの住民と集合住宅の住民との交流は全くありませんでした。平成144月に町会長が交代され、いままでの考え方からの脱皮を目指されました。たとえ1年でもこの町会に住んで良かったと思ってほしい、そして沢山の思い出を作って他の地へ移って行って欲しいとの思いがあります。今まで無かった公民館の行事への参加を集合住宅の住民にも呼びかけをするようにしました。公民館活動の1つとして、町会の誰もが参加できる「ふれあいイベント」を考え子供達とその保護者の参加をPTAと共に計画し実行しました。
 平成166月に第1回「ふれあいイベント」の開催では、参加者82名、バス2台で乗鞍高原一ノ瀬牧場へ行きました。その過程の会議の折々に多くのお母さんから子供の成長に伴う様々な悩みや、苦しみを相談されました。中には相談する人が無くストレスが溜まり、ついつい子供に当たってしまうと云う話を多く聞きました。また、乳幼児期の子育て相談をする所は沢山あるけれど小学生や中学生の子供を持つ親の悩みを相談できる場所が無いと言う声もあります。そんな話の中から「こんな事を気軽に話せる会があれば良いね」との意見が出されました。そこで教職経験者(町会長)に会の舵取りをお願いすることにし、公民館活動の同好会として発足することに致しました。
 平成17414日に第1回を開き、そこで月1回平日の10時から2時間と決めました。平成19年度からは働いているお母さんの声に応えて、土曜日も月1回開くことにしました。
(3)会で心がけていること
 子供が育つ過程では、それがどんなに小さな事でも親は気に掛かります。その上家庭内のある種の秘密を話すことになりますので、こうした会での発言は大変しにくくなると考えられます。そこでこの会の大前提として「安心して話せる場所であること」「お互いに聞きあうことを大事にする会であること」を掲げました。
 この3点は特に心掛けること
1)会で話された内容を他の場所で話題にしない。秘密厳守≠徹底すること。
2)話された事を批判したり、中傷したり、文句をつけないこと。
3)話したく無ければ黙っている自由が保障される事。また都合で出てこられない人を決して責めないことも忘れてはいけないことだと考えています。
(4)会の内容
1)子供の躾の事。
2)学校へ行きたくないと云われた時の子供への接し方。
3)学校で先生や友達に気持ちを理解してもらえなかった悩み、苦しみ
4)いじめ≠ノどう向き合ったら良いか。
5)先生方に対する要望の伝え方など内容は種々雑多です。
いじめ≠ノついての実例秘密厳守が大前提ですが、私の身内に起きた事で本人にも了解を得ています(少しでも役に立つならとのこと)ー詳細略ー
 高校入試のこと
 3月までの対処の仕方
 親の気持ちのもって行き方など細かい事までアドバイスを頂きました。 
 相談の後母親は「背中を押して頂き、トンネルの先に光が見えたような気持ちになった」と感謝の言葉を言っていました。その年の入試には失敗しましたが、今は元気に高校生活を送っています。
 この会でこの様な話が出ることで参加された方々は自分だけが悩んでいるのでは無いこと、また色々の事を知ることが出来て参考になるとの話も聞きます。また問題があってそこに参加された保護者の方からは相談することで自分の気持ちの整理がつき、我が事の様に一緒に考えてくれた方々に感謝を申しあげたいとの感想も頂きました。
 また昨年からは河合はやお先生の「QアンドAこころの子育て」≠フ読み合わせも行っています。はじめの1時間くらいは各自の問題を出しあっています。その後読みたい所を選んで読み、それについて話し合いをするようにしています。自分たちが気づかずにいたことをこの本によって教えられる事は沢山あります。
(5)終わりに
 最近は町内の方だけでなく、鎌田地区の他の町会の方も参加されたり、孫への対応がこれで良いのかと考えている年配の方が顔を見せたり、少しずつですが輪が広がって来ています。嬉しく思います。会が発足してまもなく4年が過ぎますが子供を取り巻く環境が多様化し、ある面では悪化してきている状況です。教育や子供の育ちに不安や疑問を持つ保護者が大勢いることを感じます。「どこかで聞いてもらいたい」「誰かに相談したい」この思いが募っているようにも思います。
 それらの問題の糸口として公民館活動に位置づけている小さな同好会が役に立つとしたら大変嬉しく思っています。



2,できる人が・できる時に・できる事を
  ーみんなで作りあげたり七夕まつりー
 徒士町町内公民館長、三村伊津子

はじめに
 松本市徒士町町会は、松本城の北西に位置する90戸足らずの小さな自治会です。町会は高齢化と少子化でやや元気がなくなり、住民の関係も希薄になっていました。そこで、子どもと大人が一緒になって「七夕様」を楽しもうと、町内公民館主催で「おかち町七夕まつり」を開催しました。まつりのテーマを「町・人・そこに愛」とし、平成15年7月、第1土曜日から1週間、町内の通りに22本の七夕飾りを立て、まつり当日には、新鮮市や子ども広場を開設しました。これをきっかけにして町内が一体化し、「まちの人の輪」が広がり他の取組みにも発展しています。

1,まつりのきっかけ ―新鮮市からの発展
 かつて、当町会でも、運動会や球技大会等が行われていましたが、高齢化が進み自然消滅に至っています。その後、町内の行事は、8月の「青山様」と「ぼんぼん」だけとなり、住民同士の交流が減ってしまいました。そのため、13年7月末に「おかち町新鮮市」を開催しました。市で売る品物は、有志による手作り品と町内の漬物店の協力による商品等というささやかなものでしたが、珍しさもあってか、意外に大勢の方々に来ていただき、話の輪がいくつもできて、楽しいひとときとなりました。
 これに勢いを得て、翌14年には、農家直売の野菜やだんごを商品に加えてみました。市の雰囲気も膨らみ、子どもや通りがかりの人も加わって、一段と盛況なものとなりました。しかし、子どもから大人まで一緒に交流でき、町内の力を持ち寄って企画・運営していくという点では、さらに工夫が必要だと感じていました。すると、町内の男性の集まりである「徒睦会」から、「町内通りに七夕飾りを立てたらどうか」という提案がありました。「竹は用意できるし、飾り付けも手伝う」というありがたいものでした。早速、子ども会育成会や町内の女性の集まりである「花寄り会」に相談したところ、「やってみたい」「精一杯協力する」という力強いことばをいただけたので、「新鮮市」と公民館とPTA共催の「七夕会」を一体化した企画を考えることになりました。

2,まつりをみんなの手で ―町内の絆を深める組織づくり―
 まつりは、何らかの形でみんなが参画できるように心掛けました。大勢が参加することで公民館活動が活発になり、町内の仲間づくりが進むと考えたからです。そこで、地域の様々な組織が協力してまつりの準備・運営に関わるようにお願いしました。

       <担当者>      <仕事の内容>
○企画委員会 町内公民館長     企画 広報 安全対策等
       町会(正副町会長・  当日の運営
         庶務・交通部長等)
       徒睦会 花寄り会    庶務・会計

○実行委員会 育成部 PTA     ポスター・チラシづくり 七夕の飾りづくり
       町会評議員       各戸へ短冊を配布・回収 飾り付け
       徒睦会         笹竹の用意 飾り付け 会場づくり 交通整理
       花寄り会        出店の準備・販売 七夕の飾りづくり

3まつり準備の実際 ―ふれあいの広がりを願って―
(1)周知活動
 町内への案内として回覧板を有効に機能しました。町会長が作成した案内には準備の様子が何回かカラー写真で紹介されていました。これを町内に回覧してまつりへのムードを盛り上げていきました。ポスターはPTAの方に専門職の方がいますので、その方に作成を依頼し、6月上旬から町内に掲示しました。すっきりしたデザインで、大好評でした。さらに、チラシはポスターより詳しい内容にして全戸配布。又近隣の町会へもポスター・チラシを配布。多勢の人に知ってもらうよう徹底しました。
(2)飾りづくり
 七夕飾りづくりは町内住民の思いが伝わるように心掛けました。短冊づくりは、願いごとや短歌、俳句、川柳など、子どもも大人も寝たきりの方も含めて町内のみんなで書き上げました。「どちらのお子さん?」「おばちゃん、ここわからない」などの小さな会話から大きなふれあいが生まれていました。
 松本地方には「押し絵雛」という独特の飾り雛が伝わっているのですが、最近では見ることが少なくなりました。「おかち町オリジナル飾り雛」が次々と生まれました。
 新鮮市の前日には、子どもや大人が総出で、22本の七夕飾りを電柱に取り付け、町内の通りは、一気にまつり気分が高まりました。青竹は町内の親戚の竹林から、22本をいただきました。
(3)大新鮮市
 出店の準備は販売するものにあわせて行いました。@新鮮野菜は、しののめの道で開いている野菜市の方に、特別出店を依頼、A漬物葉、町内の漬物製造会社に家庭向け商品の準備を依頼、B手作り品は、町内に手芸品・木工品等の出品を呼びかけ、C作業所製品は、地区内にある「共同作業所パノラマ」「北ふれあいホーム」へ出品を依頼、Dだんご等は、これまでの出品で評判のよかった物を中心に注文、Eラーメン店は、トラックで営業しているラーメン店に出店を依頼、F子ども広場は、ポップコーン・金魚すくい・ぼんぼん釣り・くじ引き等の材料や器具を準備、という具合に特設の市が準備されました。

4まつり当日の様子
 
まつり当日は好天に恵まれ、この小さな町会にこんなにも大勢の人がいたのかと思うほどの人出に驚きました。
 新鮮市は、どの売り場にも行列が出来るほどの賑わいで、たちまち売り切れてしまう品物が多く、直接やりとりして買う楽しさを味わえました。新鮮野菜も好評で、農家の方との話も弾んでいました。また、ラーメン店は、子ども向けに小盛りを用意するなどの工夫もあり、炎天下でしたが開店以来ずっと盛況で、和やかな語り合いの場となりました。真中のメイン会場に「お休み処」をつくりお茶やビールを飲み大きなふれ愛の場になりました。
子ども広場は、どこの祭りへ行ってもあるような出し物でしたが、町内の仲間と安心して遊べる場が確保されたことで、無邪気に楽しんでいました。

5まつりを終えて
 まつり広場に集まった子どもの顔も大人の顔も、生き生きとしていました。日ごろは行き来が少なくても、旧知の間柄のように顔をほころばせて談笑する姿が、とても印象的でした。参加した人たちに、「とにかく、やってよかった」という喜びが湧き上がり、まとめの会では、次のようなことが話されました。
@ 町内総出による短冊書き、手間ひまを惜しまないで声を掛け合って進めた飾りづくりにとても大きな意義があった。
A あちこちで元気な声が沸き、話が弾んでいた。隣りの町内の方々も訪ねて来て、即席のテーブルに何組もの家族が一緒にラーメンを食べているのが印象的であった。
B 町内の方々の気持ちや力を寄せ合うことができました。
新鮮市と七夕まつりを一体化したことで、仕事量が増え、まつりの場所づくりに手がかかりましたが、その分、自然に大勢の人がかかわりやすくなり、ふれ愛の輪もあちこちに生まれました。こうしたことが、年毎に広まれば、町内に「挨拶の声」や「助け合いの輪」が一層大きく育つことが期待できます。
 準備や当日の活動を通じて、町内におられる多様な特技や技術を持った素晴らしい方々とも出会うことができ、町内の宝さがしができました。年にたった一度の行事ですが、町内のみなさんの智恵や力、さらには近隣愛をもっと出し合えるように工夫を重ね、さらに誰もが心待ちにするような行事に膨らむようにしていきたいと考えています。まつりを通じて本当によく町会が見えました。これからも暮らしの原点である町会を住みよいまちにするため、努力していきたいと思います。        
(1)平成20年度 第6回おかち町七夕まつり
☆七夕まつり 7月1日〜8日
◎飾りつけ   7月1日 6時〜 22本500メートルの通り
◎大新鮮市  7月1日10時〜14時
・キッズコーナーの充実:若いお母さん方の企画でゲームを行ったり景品を配ったりおよそ100名の子どもたちが遊びました。
・北ふれあいホーム(精神障害者の施設)のメンバー5名と職員3名で焼きたてパンが商品に加わりました。
・買物客は300名を超え徒士町名物になりました。
◎大人の七夕ロマン 7月7日19時〜
 子ども達が絵を描き、手作りの灯ろう35個が各家々の前でおかち町通りを飾ります。ローソクの火がゆれて幻想的でした。遠くから車で訪れる方も多く町内の通りに入ると皆さんライトを消してとおります。増々まつりを盛り上げます。
◎子どもの花火大会 7月8日19時〜
 近くの公園でPTAのお父さん、お母さん方で運営。近隣町会の子ども達も多数参加してくれました。
☆まつりを終えて
 毎年思うことですが、町内にこんなに大勢の人がいたのかと思うほどの人出におどろきます。6回ともなると様々な準備が「あ・うん」の呼吸で取り組みます。ことに今年は今までで最高の飾りでした。笹が風に揺れるたびに一週間、おかち町通りは、誇りに満ちています。こうした充実感が人々に生きがいをふくらませ町内の「ふれあい」を大きなものにしていけると思います。そして、たくましく生きていく力や思いやりの輪が広がっていくと思います。

(2)七夕まつりをきっかけとして新しい事業に発展しました
@楽農クラブ(H17〜会員35名)
 筑北旧西条村に使っていない1000坪の畑と母屋を借りて野菜を作っています。
一ヶ月に一度作業に行き、青空の下、取れた野菜をもとにお昼を作ってみんなで食べています。又そばを育てて実を取り、昔ながらのやり方で粉にし、12月には10割そばを味わう「新そばまつり」を行う、充実感を味わえる一年になります。
 又現地で、四季に合わせ「流しソーメン、焼いも大会、いも煮会」など行い、子ども達も参加します。
Aおかち町市場(H20、10月〜)
 今年7月末近くにあった「アップルランド」が撤退し8月から周辺の住民は買物には不便になりました。
 特にお年寄りは「買物に行く」意味は物を買うというだけでなく
◎人と接することができ、知り合いや店員さんとのふれ合いができる。
◎お互いに元気な姿を確認できる、という意味もあります。 
【自己策として】
(1)宅配をつかう
(2)往復タクシーをつかう
(3)家族に気を使いながら休みの日に乗せて行ってもらう
 いずれも好きな時に好きな物が手に入らず困っていました。そこで市場の青果会社より申し出があったのを機に有志で立ち上がりました。「やってみなきゃ分からんじゃん」をいつものように言って決意したわけです。
 そして、目的を2つ持つようにしました。
(1)買物に出てきてもらう。買ってもらう。
(2)少しきれいにして来てもらいお茶を飲み、話してもらう。
 世間話、昔のこと、老・老介護のことなど
【4回実施で分かったこと】
・お年寄りだけでなく、若い人も来てもらえる。
・お休み処が好評、ふれ(愛)がもてる。ありがたいと手を合わせるお年寄りもいる。
・来なかった方の安否が気になる。
       ↓
 電話をすると忘れていたと喜んでくれる。もしもの場合役に立つと思う。又体調を崩したとのことで希望の品を配達できた。
・報道を見て業者から申し出が多く頂ける事はうれしい。
・一生懸命取り組むことで協力者の輪が広がる。
【売り方(現在)】
※1〜4は委託販売
1、野菜、果物・・・・40品位   2、豆腐類  ・・・・10品  
3、漬 物  ・・・・20種類   4、パ ン  ・・・・ 8種類
                   精神障害者施設(北ふれあいホーム)
5、玉 子  ・・・・買い取り   6、魚   ・・・・5種類
7、 肉   ・・・・8種類    8、シフォンケーキ  ・・・隔週2回10コほど
9、菓 子  ・・・・10種類  10、楽農クラブ惣菜・3〜4種類 
【今 後】
 ずっと続けてゆくつもりですが、一町会だけでなく地域で考えてゆかなければならないと思っています。もう一ヶ所でやってくれる町会があればと思うし、又地区公民館を拠点にできたらと思います。


3,上土町会の活性化   
                       上土町会(町内公民館長) 岩岡  悦子

1 町内公民館活動のきっかけ
 上土町会は、一昨年まで町会長が町内公民館長を兼務だったことも有り、公民館活動は行っていませんでした。「私に」と言われても何をしていいのか全く分からないままスタートしたものです。町内公民館長会や、女性部会に出席してから、少しずつ公民館のあり方が分かって来ました。
 町会には、公民館活動の前例がない上に、女性に何ができるのか始めは困ってしまった時期もありました。
 しかしそこで、女性ならではの細やかな心遣いと感性を生かして、公民館活動を進めよう考えたのです。折りしも不況の中、特に上土町会は個人商店が多く、商店主は生き残れる商店目指して努力している最中、゛少しでも一息付いて頂きたい゛゛少しでも明日への英気を養って頂きたい゛そんな思いと、店番等でなかなか外に出る機会のない商店の親睦と勉強会等、私のできる限りお力になりたいと、町内公民館長を引き受ける事にしました。 

2 町内公民館活動を進める上の経過
(1)町内講師を探す
 上土町会は、個人商店街の町であることから、いろいろな分野の専門家が大勢おいでになることから、講師は町内で十分探すことができると思いました。
(2)
講演会、講習会は話だけで終わらせないようにする
 講演会等の終了後は、お茶を飲みながら参加者で座談する時間を設けます。
(3)参加者を探す
 町内の人に私が直接声を掛けて、1人でも多くの人に出席いただくように努力をしました。
(4)活動を通して女性会を発足させた

 公民館活動を通して「゛大正ロマンの街上土・こんな街になったらいいな゛」との思いから、上土女性会を発足させました。

3 活動内容(この1年間)

(1)公民館で実施した講座
 1月「お正月コンサート」尺八と琴の演奏会
 3月「薬の正しい使い方と健康」(講演会)
 5月「チャイナペイント」(陶器に絵付け)
 6月「スキンケア」(お肌のお手入れ)
 7月「ブローチ作り」
 10月「温泉の日帰り旅行」(ゆっくり安曇野散策)
 11月「肩・腰・膝の痛みと健康」(講演会)
(2)毎月2回 上土健康体操を実施
(3)女性会の活動(事業)
・「よいまちクラブ」童謡を楽しむ会(6月:研修旅行、12月:クリスマス会)
  月1回第3日曜日PM2:00
・「クリーン活動」・・・毎月1回の掃除
・「グリーン活動」・・・5月、11月プランターの花植え
・「上土元気市」・・・・月第1第3木曜日に生坂の方々と食品販売
            ・・・・10月生坂赤とんぼフェスティバル参加
・「上土女性部市民祭」・歩行者天国に参加、バザーや食べ物販売
・松本大学「白戸ゼミ」の学生たちと年数回交流 
・他地域との交流

4 活動を通しての成果
 人集めから始まった公民館活動も、共通のシンボル「大正ロマンの街上土」の上町会住民の意識と課題が共用されていたことが、上土町会活性化の推進の原動力となって、徐々にではありますが、上土町会も変わっていくのではないかと思いました。私1人の力は少しでも、皆で一つの気持ちになれば、潤いと活気のある商店街になると期待したいです。

5 町名の由来
 上土町は、松本城の東側東門前の馬出し郭の堀の土を上げたところから町名となりました。総堀の外の武家屋敷地です。

4,おわりに
 
今回取り上げた三事例の成功に共通する要因は何でしょうか。
それは、もしかしたら子どもを見守る母親の心かもしれません。地域のニーズや課題を繊細な感性で感じとり、粘り強く取り組む姿勢、無償の愛とも取れる地域への思い。
 地域を盛り上げるのは多くの住民であることは言うまでもありません。しかし、時に無機質、時に無関心な住民の力を引き出すためには、今回の三館長に共通するような地域への思いが不可欠です。その思いが人々の心に響いた時、何かを動かす大きなうねりとなる可能性が生まれます。コンクリートジャングルに咲いた三輪の花に乾杯!



2,第17分科会・実践報告ー飯田市からのレポート
(2)子ども図書館のロマン ―異年齢交流で育む子どもの心の居場所づくり―
                       下黒田東子ども図書館長 中島正韶

1.子ども図書館への私たちの願い
 (1)(館則第3条:図書館の目的)当館は、地域の子どもの居場所の一つとして、自由に本を楽しめる場と、子ども相互の交流の場を供することを目的とする。あわせて地域の大人が地域の子育てにかかわりながら、ともに心身の健やかな成長の一助となることをめざす。
 (2)分館事業での異年齢交流や集団活動により子どもは逞しく育っている。更なる自主的自発的な育ちを期待し支援したい。子どもの居場所はそのまま大人の交流憩いの場でありたい。図書館は地域諸団体が連帯協働する“地域づくりのコミュニティーセンター”として機能したい。
2.地域諸団体と協議を重ねて「子ども図書館」の設立へ

 (1)構想発案と限定試行 @図書館構想提案(平成16年夏)A分館長・自治会長・環境衛生組合長の三者会談(同年秋)B分館・自治会役員会、具体化への研究に入る(12月)C172以降、子ども参加の分館事業日に分館役員寄贈の絵本30冊余閲覧、及び貸出の試行。
 (2)経過 ?設立準備会(分館長・自治会長・育成会長・PTA支会長)(1782) ?設立検討委員会(上記団体代表数名)(17910) ?設立準備委員会(17.12.17館則を承認し館発足。 (3)発足 @企画・運営委員会の始動 A開館式(18321) 式典・人形劇・ひがし太鼓・工作教室・おやつの会 95人余 B第1回開館(414)以後、原則として毎週金曜・午後2:005:30
3.地域立「子ども図書館」をめざして−図書館の組織の工夫−
1)企画委員会:館の主宰・企画運営の大綱決定・通常活動支援(構成:自治会・分館・育成会・環境衛生・PTA・防火防犯・交通安全・熟年の会など地区内の諸組織の代表)
2)運営委員会:通常の図書館運営に当たる機関(正副館長・主事・館サポータ)
4.開館の状況
1)施設:70畳の大広間 蔵書:2500冊余、児童遊具、囲碁将棋・囲碁ボール他
2来館者、及び貸出冊数
 初年度(18年度)延べ847人 貸出371冊 年間42回開館
 2年目(19年度) 延べ907人 貸出379冊 年間41回開館
 3年目(20年度) 延べ969人 貸出856冊 年間43回開館
3)来館児童園児の姿
 地元児童・園児を中心に中学生や他地区の児童が来館。宿題・読書・絵描きや紙工作・剣玉やお手玉・ゲーム・囲碁将棋・囲碁ボールなど。熟年会の方、赤ちゃん抱えた母親、父母や祖父母が、本を読んだり子ども話しをしたり、囲碁・将棋や囲碁ボールで一緒に遊んだりする。時に中学生・小学校教員やUSA留学生らの来館あり。お茶会やさよなら集会など。5.総括と展望
(1)子どもの地域の活動への継続的参加や父母・祖父母の地域活動への参加を促している。
(2)館を軸にした子どもにかかわる多様な営みが異年齢交流を確実に育み元気を生んでいる。
(3)読書目的のみの来館は殆どいない。学習(宿題等)・読書・遊びなど多様な営みが可能な場所こそが心の居場所と考え、「図書館」の枠を超えた子どもの居場所づくりに心がける。
(4)図書館活動は期限のない息の長い事業である。気張らずに子どもとともに歩み、子どもにも大人にも、互いに楽しい居場所としての魅力のある図書館でありたい。また地域立下黒田東小学校設立準備事業と連動して、多世代交流による地域づくりの基盤を構築し続けたい。



3,
横浜市磯子区 メール・ド磯子自治会の実践から
   自治会館を拠点とした近隣の支えあい・助け合い・子育て・防災・防犯活動の事例
                          2009H21,8,23
                          横浜市磯子区役所福祉保健課 伊東秀明

 地域の広さは、市域でもなく、区域でもなく、中学校区でもなく、小学校区でもない小地域を対象とする地域。
 範域の決められた地域活動、定められた地域の範囲を対象地域とする。
 役員は行政が決めるのではなく、会員の互選による。
 隣り近所の繋がりを基盤にする。
 近所の人と一緒に行動することから得られる安心感。

 
メール・ド磯子自治会は285世帯。人口800人弱。高齢化率29%。戦後一戸建てを中心に造成。住民をつなげるさまざまな団体作り。団体作りの動機は身近な困りごとを隣り近所で解決する支えあい・助け合い活動・高齢者家庭の訪問、子育て支援、防災、防犯。活動に参加する住民の仲間化。孤立・孤独が一番怖い。孤立した個人では地域自治の力が発揮できない。地域の課題を地域で解決する地域自治。課題は相互に関連があるので、団体と団体との連携作り。今後、団体活動の有機的・組織的な関係作りが課題になるのではないか。

  活動の拠点として建設される自治会館。住民の寄付。行政の補助。建設時にはさまざまなドラマが生まれる。配食サービスが盛んな自治会は厨房を大きくした。100人が入れるホールを作った団地自治会。機材の出し入れを考えて吐き出しの倉庫を作った町内会。借りる必要の無いこと、自分のものという意識。自分達の自治会館で打合せができる安堵感。格安の懇親会。管理する人がいないから管理が行き届く。自分達のものを置いておける。
自治会館は地域自治の基盤



4,町内公民館・地域公民館・分館という多彩な公民館と実践
              
ー分科会に参加して・感想ー      
                                  熊本大学・山城千秋

                       
  (南の風2284号、Mon, 31 Aug 2009 23:33)
 
 
私が初めてこの分科会に携わった2005年の福岡集会では、 松本市の『町内公民館活動のてびき』と『町内公民館活動実践集』が紹介され、小地域公民館における実践の豊かさと個性を学ばせて頂きました。 そして、このたび本分科会が始まった2002年の名護集会以来、継続的に町内公民館の実践をご報告いただいた長野の地にようやく来ることが叶いました。残暑厳し九州とは違い、既に初秋の風が吹く阿智中学校の教室で、松本市の町内公民館と飯田市の分館活動について、活発な議論がなされました。
 分科会発足当初から、本分科会は自治公民館などの主体的な活動に注目し、社会教育の中に積極的に位置づけていこうと試みてきました。今回の議論を経て、小地域ならではの活動に共通する視角が明確になったのではないかと考えています。以下、私見ですが、考えをまとめてました。
 まず一つに、身近に公民館があることで地域課題を自ら解決することが可能であるということです。井川城下区町会では、子どもの悩みを相談できる場がないという声を受けて「子供と教育を語る会」が発足し、地域ぐるみで子育ての問題を解決する取り組みを行っています。また徒士町町会の「おかち町市場」は、近所のスーパーマーケットの撤退で、買い物に困っている住民のために、公民館が中心となって地域の課題を解決する実践であると言えます。
 二つめには、人々が集まることによって生まれる学びについてです。公民館が人をつなげる拠点となることで、上土町会のように女性会が生まれたり、さらには商店街と大学をつなげ、新しい発想による地域づくりが実践されています。学び・学習というと、講座や講演などのような定式化した学習を想定しますが、自治公民館では人との出会いの間に、つまり語り合いの中に学びがあると捉え、自治公民館型学習論として見直す必要があると思います。 
 そして三つめは、「世代間連帯」とも言える総世代対象の公民館実践であるということです。飯田市下黒田東分館では、「こども図書館」を設置し、公民館に大人だけでなく子どもも集えるよう、図書を手がかりに個性的な分館づくりを行っています。また大人が子どもに「してあげる」のではなく、子どもも地域の一員として公民館を利用しています。
 最後に、松本市の女性館長ならではの視点と活動です。女性館長としての不安や悩みを解決するために町内館長会に女性部を設け、セルフヘルプの学習実践を行っていることです。彼女たちは、女性部の活動を通して地域で「お茶のみ会」を始め、地域とつながる中で自信をつけていったと言います。また、お互いにライバルでありながらも、情報交換や励まし合いながら活動しています。
 以上のように、多様で多彩な自治公民館の実践は、小地域を単位につながり合う人々によって織りなされています。土着性から普遍性を導くには、まだまだ丁寧な議論が必要ですが、今回、長野の小地域における公民館実践には、文化や生産、子育て、福祉、世代間交流という今日の日本社会が抱えている関係不全の問題に対し、一つの手立てを示していると思います。さらには、会場となった阿智村の公民館活動はどうなのか、興味は尽きません。






松本市「市街地を盛り上げる町内公民館」レポート 女性館長“三輪の花” (阿智村・090823)



4,分科会討議のまとめ自治公民館などによる自治と連帯を築く小地域での活動

               
第17分科会・世話人  星山幸男(東北福祉大学)

1、 本分科会のねらい

 2002年の沖縄集会から数えて8回目となる今回は、これまでの蓄積を踏まえて、小地域での活動の重要性を再確認しながら、さらにそれを住民の連帯と自治にどうつなげていくかという課題について検討した。長野県松本市の町内公民館の活動、地元飯田市の公民館分館の取り組みの報告を基に、持ち込みレポートも加えて、活発な議論が展開された。

2、報告の要旨
(1)長野県の公民館分館について

 まず、長野県の公民館分館の概況について、柄沢清太郎さんに報告をお願いした。長野県では集落単位に町内公民館・地域公民館・分館などと呼ばれる公民館が、条例設置によるものあるいはよらないものも含めて、各市町村に設置されている。そして「分館は公民館活動の原点である」という見解が示された。
(2)みんなで集い語り合い支え合うまちづくり(松本市)
   〜身近にある小さな町内公民館のまちづくり活動〜
 松本市の町内公民館の活動状況について、3名の女性館長から報告があった。町内公民館の三つの機能・役割(@身近な交流の場、A団体やグループの活動の場、B学習の場)、組織体系、町内公民館館長会の活動とそこでの女性部の取り組みなど概要が説明された後、3地区の事例が紹介された。
 @井川城下区町会(報告:山崎壽子さん)
 集合住宅が全世帯の半数を占め転勤族も多い地域で、町内公民館活動の一つとして「子どもと教育を語る会」を発足させ、親が本音で語れる場を提供してきた。参加の輪は少しずつ広がり、子どもを取り巻く環境が変化するなかで、地域の人びとの不安や疑問を解決するのに役立っている。
 A上土町会(報告:岩岡悦子さん)
 個人商店が多い地区で、町内公民館の事業の講師は町内から探し、講演会の後に座談の場を設けるなど地道な活動を継続してきた。さらに女性会を発足させ、その多様な活動(公民館事業)の過程で地区内のいろいろなつながりを掘り起こしてきた。そして地域住民としての意識と課題が共有され、活性化の原動力となっている。
 B徒士町町会(報告:三村伊津子さん)
 スーパーの撤退や高齢化が進展するなかで、住民参画による市場や七夕まつりを開催し、地域のふれあいの場を提供している。みんなの手で準備から運営までを担い、大人も子どもも楽しむことを通して町内が一体化し、地域の絆を甦らせ、さらには新しい事業活動も生まれている。
 C三つの事例に学ぶもの
 いずれの地区も女性が館長を勤めているという共通点がある。どの活動も女性だから気づく身近な生活の部分から出発して、少しずつ活動を広げながら継続し、今日に至っている。そして、学習を前面に出すのではなく、みんなで交流し、語り合う場を作り上げながら信頼関係を築き、その過程で学習が展開されているというのも特徴といえる。
 町内公民館は職員配置の地区公民館と並列に置かれ、上下関係はないが、今回の報告では、町内公民館の活動を進めながら、その時々で職員(主事)の支援が大きな力となったことが紹介された。また、町内公民館館長会および女性部の下支え、「松本市町内公民館活動のてびき」の活用も大きな力となったと報告された。さらに、町内会の旧慣習への反発も、住民が連携して新しいことに取り組み、継続させる原動力となった事実が語られた。
(3)子ども図書館のロマンとビジョン〜異年齢交流で育む子どもと大人の居場所づくり〜
 飯田市下黒田東子ども図書館の中島正韶さんから、子どもの居場所として公民館分館内に住民の発案による地域立の子ども図書館を設立し、子どもだけでなく、多世代間交流の場づくりの基盤を構築しようという活動の報告があった。子ども図書館づくりの過程で分館・自治会・PTAなど多くの大人たちが関わり、運営の面でもいろいろな住民が関わることで、子ども図書館を軸に地域の人々の交流や連携が広がってきた。
分館活動の後の懇親会に大人も子どもも参加するような状況が生まれている。そして分館が子どもたちの学習・読書・遊びの場になっており、この取り組みは分館を核にしながら地域の大人と子どもの居場所を作っている。また飯田では分館が地区館を支える側面をもち、分館活動の活性化が居場所づくりと同時に社会教育全体の拡がりにつながっている。

3、持ち込みレポート
(1)自治と文化を育む字公民館活動
〜沖縄県西原町〜
 山城千秋さんから沖縄県の字公民館の現状について、小那覇自治会の事例が紹介された。ここでは自治会活動に一環として、子ども事業に取り組んでいる様子が紹介された。子どもの居場所事業として、毎週土曜日に字公民館で伝統文化の伝承活動を行っている。「子どものうちに伝えておかないと、40代・50代で地域文化の良さに気づいても伝承者にはなれない。子どもを地域活動に巻き込んでいくことが重要で、小那覇がこのことを教えてくれる」という指摘がなされた。
(2)自治会館を拠点とした近隣の支えあい・助け合い・子育て・防災・防犯活動の事例
  
〜横浜市磯子区メール・ド磯子自治会の実践から〜
 367万の人口を抱える大都市横浜で取り組まれている小地域(=自治会町内会範域)の活動の可能性と意義について、伊東秀明さんから報告があった。昨年までは人口1万人の範囲で取り組んできた活動を、今年から一自治会にまで絞り込んだ。そして、自治会が関わって住民主導の活動が展開され、地域の人々が繋がるための活動手引書を作成するなどした結果、自治会館が地域自治の基盤となることが明らかとなり、「地域を狭く捉える大切さ」が再確認できた。しかし、地域の人には受け入れられるものの、この視点を役所の中にどう浸透させていくかが問題であるとの指摘もなされた。

4、討論とまとめ
 総括討論では、町内公民館・分館を支える職員の役割と労働条件の問題が取り上げられた。そして、小地域での活動を活発化し自治を育むためには住民同士のネットワークづくりが進められなければならないが、そのためには分館活動を担う住民と職員のネットワークづくりが重要であり、今回報告されたような職員も含めたネットワークづくりがポイントになるという指摘がなされた。
 今年は、地方ばかりでなく都市でも小範域の活動は大きな意味を持つこと、それをどう住民自治につなげるかという課題に対しては、職員の支援がポイントになることが実践的に明らかにされた。社会教育行政自体が教育委員会から首長部局に移されつつある現実を踏まえるならば、職員による住民の自主的活動への関わりは両刃の剣でもあるが、小範域の活動の意義の確認にとどまらず、職員問題にまで踏み込んで住民同士・住民と社会教育職員のネットワークづくりが住民自治につながっていくことが確認されたことは、この分科会が新たな領域に踏み込んだといえよう。
(星山幸男)


自治公民館1(2002〜2004年)→■
自治公民館2 (2002〜2004年)→■
自治公民館3・・・本ページ
     

            
TOP