2.2018・日程
2018東アジア生涯学習研究フォーラム
1.フォーラムの趣旨
最近韓国社会では、学校だけではまともな教育が難しいという問題意識から学校と地域の連携に対する関心が高まっている。学校と地域社会の関係を学校開放としてとらえていた従来の観点とは違って、地域資源の活用や相互的関係を求めるという側面から地域社会教育の役割が強調されている。
これは、学校教育と社会教育との新しい関係構築を意味することとして、多様な政策や実践が拡大されている。とくに、リベラル系の教育長が中心となって進められてきた学校の革新を地域にまで拡大しようとする戦略として、いわゆる「マウル(=地域)教育共同体」政策を導入している。韓国の独特な脈絡で新たに進められているこの政策が、学校教育と社会教育を含む生涯教育(学習)全般にどのような影響を及ぼすのかについて検討したい。
このような背景から、第4回を迎える東アジア生涯学習研究フォーラムのテーマを学校教育と社会教育の関係の再構築にした。学校を重視する儒教文化の伝統を共有し、社会教育の出発においても学校の補完機能の歴史をもつ東アジア諸国・地域が今回のテーマを通じて互いの経験と課題を共有し、相互学習の機会をもつことは、21世紀の新しい生涯学習社会を切り拓いていくのに重要な礎になると思われる。
2.フォーラムの概要
・テーマ:学校と地域の連携を通じた地域教育共同体の創造
・時期:2018年11月1日(木)−11月5日(月)
・場所:世宗市コンベンションセンター、その他
・主催:世宗特別自治市教育庁、公州大学
・主管:東アジア平生教育研究会、公州大学教育学科・平生教育院
〇 フォーラム全体の日程(11月1日(木)〜5日(月))
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11.1(木)(1日目) |
12:00-13:00 |
全員集合 |
14:00-17:50 |
・始興市平生学習政策課のマウル(地域)教育共同体事業(ABC平生学習センター)視察 |
18:00-19:30 |
始興市長による歓迎晩餐会 |
19:30-21:00 |
始興市→世宗市へ移動 |
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11.2(金)(2日目) |
09:00-12:40 |
シンポジウム 第1部 |
12:40-13:40 |
昼食 |
13:40-16:20 |
シンポジウム 第2部 |
16:20-16:40 |
休憩 |
16:40-18:00 |
シンポジウム 第3部 |
18:10- |
世宗市教育長による招聘晩餐会 |
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11.3(土)(3日目) |
10:00-13:00 |
忠清南道牙山市・松岳マウル学校の視察 |
13:00-14:00 |
牙山市→公州市へ移動 |
14:00-18:50 |
公州と扶余の見学(ユネスコ世界遺産) |
19:00- |
晩餐会 |
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11.4(日)(4日目) |
09:00-12:00 |
セミナー:東アジア生涯学習研究フォーラムの今後の課題と展望 |
12:00-13:50 |
昼食 |
14:00 |
セミナー日程の終了 |
14:20-16:20 |
公州市→仁川空港へ出発(一部の参加者) |
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11.5(月)(5日目) |
08:30-10:00 |
公州市→ソウル市へ移動 |
10:30-12:00 |
国家平生教育振興院の視察 |
12:00-13:50 |
昼食 |
14:00 |
フォーラムの終了 |
〇 シンポジウムのスケジュール(11月2日(金))
時間 |
主要内容 |
発表者 |
09:00-09:30 |
受付 |
司会 崔一先(慶熙大学) |
09:30-10:00 |
歓迎の辞 |
チェ・ギョジン(世宗市教育監) |
第1部 各国の政策 司会 チャン・ジウン |
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10:00-10:40 |
韓国における学校と地域連携政策の成果と限界 |
沈漢植(国家平生教育振興院) |
10:40-11:20 |
日本における学校との協働をめぐる政策動向と地域社会 |
上田孝典(筑波大学) |
11:20-12:00 |
中国における社区の青少年教育―政策的実践 |
韓民(中国教育発展戦略学会終身学習専攻委員会) |
12:00-12:40 |
台湾における地域社会と学校の連携政策 |
張徳永(台湾師範大学) |
12:40-13:40 |
昼食 |
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第2部 各国の実践 司会 オ・ミンソク(亞州大学) |
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13:40-14:20 |
日本における学校と子育てのこれからをめぐる政策動向と地域社会 |
石井山竜平(東北大学) |
14:20-15:00 |
終身学習背景下の学校と地域社会の連携に関する中国の経験 |
呉遵民(華東師範大学) |
15:00-15:40 |
学校及び地域社会の高齢社会的実践 |
劉以慧(台中科技大学助教授) |
15:40-16:20 |
世宗市マウル教育共同体の実践 |
ヒョン・ヨニム(世宗教育庁奨学士)のほか |
16:20-16:40 |
休憩 |
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第3部 総合討論 座長 鄭賢卿(慶熙大学) |
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16:40-17:00 |
東アジア観点からみた学校と地域の連携に対する展望 |
小林文人(元日本社会教育学会長) |
17:00-18:00 |
指定討論 |
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18:00 |
閉会 |
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3.2日目・シンポジウム・写真(11月2日) *関連アルバム→■
▼「学校と地域の連携を通じたマウル教育共同体の創造」国際シンポ・記念写真(世宗市、20181102)
4.東アジアフオーラム(3日目)忠南牙山(アサン)民俗村にて(20181103)
2019年
1、東アジア生涯学習研究フォーラム
<東アジアフォーラム打ち合わせの記録(Sat, 17 Aug 2019 06:19)>
石井山 竜平(東北大学、東アジア研究交流委員会(委員長)、
、みなさま 昨日(16日、風の部屋)は濃密な時間をありがとうございます。議題のメインは11月に予定されている「北京フォーラム」への対応でしたが、小林先生門下の中国からの留学生のその後、はたまた、井内慶次郎(旧文部省社会教育課、のち文部次官)の再評価や、寺中作雄氏の人物像の具体、さらには、喫緊の日韓問題をめぐる日本メディアの姿勢など、従前のものの見方を大きく変える情報が舞った、大変貴重な時間となりました。
さて、ここでは、2016上海、2017佐賀、2018公州と引き続いて、2019年度は北京で開催準備が進められている「東アジア生涯教育研究フォーラム」について、ここまでの経緯を振り返っておきます。
この東アジア・フォーラムは、一旦は(日中の)政治的な理由から途切れていたものが、3年前の上海の皆さんのご尽力と強い後押しをうけ、再開することができました。そして、当面このフォーラムは、年1回開催で各国・地域での持ち回りとしつつも、フォーラムの持ち方については、各国・地域の状況に応じたものとしないと開催・継続が困難であることから、各国主催者に委ねることを原則とする、という方針で進められてきています。また、きちんと協議ができる規模を維持すべく、参加者は少人数(各国10名)に絞る、ということもルールとされています。
このたびの北京フォーラムは、テーマは「高齢者教育」とのことです。かつ、このたびの各国から参加者については、主催側から10名枠の連絡がありました。中国の関係者に信頼の厚い日本人研究者数名に、またこのフォーラムに継続的に関わってきたメンバーが加わったメンバーとなりましょう。こちらとしては現地の意向にできるだけ沿うべく、中国から提案のあった方々へご参加の依頼を重ね、メンバー確定を進めていくことになります。
一昨日の8月18日は、報告者と報告内容について協議をいたしました。実は、まだ中国からはスケジュール案の具体が示されていませんが、報告者の原稿締め切り(9月末日)のみ先んじて示されたことから、例年の枠組み(各国2本の報告、研究協議のコメンターを1人)を前提に、報告者案を協議しました。その結果をもって、私からご報告のご依頼をする、というところまで話し合ったところです。
現段階は、関係の蓄積が優先されている段階で、新たな参加を広げることが微弱なところですが、新生の「東アジア・フォーラム」の一巡をひかえたタイミングでもあり、それぞれの国・地域の社会教育・生涯学習研究を相互に刺激しうるネットワークをこれからいかに育むかをめぐって、あらためて検討する機会が北京でもてればと思っております。引き続き、この東アジアネットワークの成長を、暖かな目で見守っていただけますよう、よろしくお願いいたします。
◆2019 東アジア生涯教育北京フォーラム
日時:2019年11月22日(金曜)−25日(月曜)
主催:中国教育戦略学会生涯学習専門委員会
共催:北京市教育研究院 生涯教育と持続可能発展研究所
テーマ: 高齢者教育
費用: 中国と日本間の往復航空券は各自負担。
北京到着後の食、移動、宿泊費用は不要。
論文提出: 発表者は提出必須。提出者全員を受け入れ、論文集を出す予定。
連絡先:石井山竜平 東北大学大学院教育学研究科
〒980-8576 宮城県仙台市青葉区川内27-1 TEL/FAX 022-795-4777
E-MAIL ishiiyama@hotmail.com<mailto:ishiiyama@hotmail.com>
2、2019 北京フォ−ラム準備状況
黄 丹青(Mon, 21 Oct 2019 01:51)
みなさま 今晩、組織委員会の楊樹雨先生から準備状況に関するお知らせを送ってきましたので、訳して送付します。何かご意見、ご提案がありましたら、ご一報ください。
また、発表者と発表タイトルを知らせるようにという連絡が来ています。決まりましたでしょうか。どうかよろしくお願いいたします。空港への送迎をしてくださるようで、いまのところほぼ同じ航空券を予約してよかったです。
中日韓生涯学習フォーラム日程及び準備状況
中国教育戦略学会生涯学習専門委員会(2019年10月)
日本・韓国・中国大陸及び台湾の参加者の皆様
ニーメンハウ!
ここで2019年中日韓フォーラム(北京)の準備状況を以下の通りお知らせします。
今回のフォーラムは高齢者教育に焦点をあて、社会の高齢化という背景のもと、高齢者教育の現状と、生涯学習福祉システムにおける高齢者教育の位置づけ、並びにその試みや成果、今後の挑戦について討論し、交流を深める。
●日 程:
日時 |
内容 |
11月22日(金) |
到着・受付 |
11月23日(土) |
開会式(9:00-9:20) |
11月24日(日) |
北京市高齢者教育の実地調査と交流 |
11月25日(月) |
一部オプション、解散 |
● 出席代表
1.招待代表:日本10名、韓国10名、中国大陸8名、中国台湾3名
通訳者と実行メンバー数名
2. 内外の団体・機構の責任者、研究者及び生涯教育の実践家などの参加者(未定)
● 関連事務
1.
費用:招待代表の滞在費用(ホテル、食、移動)は主催側が負担する。空港からの送迎も主催側が負担し、アレンジをする。
2.
翻訳:三国四方の協力により主催側がアレンジする。論文とPPTは主催側が翻訳の用意をしない。中、日、ハングル、英の1?4言語のどれを投稿しても良い。
3.
ホテル:北京万商花園ホテル 石景山区銀河大街1号 ?68681199
4.
連絡先:電話 @韓民 136-61135444、A楊樹雨 135-20374991、B朱鳳霊 130-51554244
e-mail: yangshuyu@cuc.edu.cn
5. 組織者
主催:中国教育戦略学会生涯学習専門委員会
共催:北京教育科学研究院生涯教育と持続発展研究所
北京市石景山区社区学院
■プログラムその2(黄 丹青、Mon, 4 Nov 2019 00:19:19)
みなさま;今日北京から2019中日韓生涯学習フォーラの新しい日程が送られてきました。先日の日程案(南の風4097号収録)から、大分調整したようです。その日訳と航空券情報の両方を添付します。(*航空券情報・略)
どうぞよろしくお願いいたします。
◆2019中日韓生涯学習フォーラム 日程・内容
〇11月22日(金)到着 北京万商花園ホテル(石景山区銀河大街1号) 電話68681199
〇11月23日(土)開会式(09:00〜)司会:呉暁川(生涯学習専門委員会常務副理事長)
歓迎の言葉:韓民(中国教育発展戦略学会副会長・生涯学習専門委員会理事長)
ご挨拶:小林文人(日本社会教育学会元会長・中日韓生涯学習フォーラム発起人)
第一部(09:30-12:00)生涯学習システムにおける高齢者教育
楊樹雨(生涯学習専門委員会副理事長兼秘書長・中国メディア大学教授)
「中国大陸における高齢者教育政策の展開」
石井山竜平(東北大学准教授)「要介護者を支える仕組みづくりの新展開」
崔一先(韓国慶熙大学教授・韓国高齢者教育学会会長)
「韓国の高齢者教育の制度、政策と現状」
劉以慧(台中科技大学老人福祉事業管理学部華語教学センター主任)
「台湾の高齢者教育概況」
昼食(12:00-13:00)
第二部(13:00-15:50) 高齢者教育の展開と趨勢 司会:黄健
鄭賢卿(韓国慶熙大学教授・東アジア生涯教育研究会会長)・朴志淑(ソウル国立大学教育研究所研究員)
「高齢化時代における死の教育としての公共葬式」
江頭晃子(首都大学東京講師)「東京多摩地域の高齢者学級と市民力の形成」
呉遵民(華東師範大学教授・博士指導教員)「中国大陸の高齢者教育の成果・問題と展望」
楊碧雲(元台北市教育局生涯教育専門官)「台湾高齢者教育の新しい傾向と優れた実践例」
質疑応答と討論 ティータイム
石景山社区学院の見学と交流(16:00-18:00)院長(楊文霞)による高齢者教育の紹介、見学
首都鋼鉄文化創造区の見学
夕食(18:00-19:30)
フォーラム運営会議(20:00-21:30、石景山社区学院会議ホール) 今後と未来について
〇11月24日(日)司会:米淑蘭(生涯学習専門委員会副秘書長)
第三部(09:00-11:30)高齢者教育の新しい傾向とすぐれた実践例
司会:米淑蘭(生涯学習専門委員会副秘書長)
牧野篤(東京大学教授)「「高齢者」概念の革新:高度消費超高齢社会の新しい「存在」」
姜大仲(ソウル国立大学教育学院教授)・黄霞(ソウル国立大学教育学院大学院博士課程)
「黄昏時の美しい夕日-みんなの学校「花じいちゃん」のカリキュラム」
史楓(北京教育科学研究院 生涯学習と持続発展教育研究所所長)
「北京市高齢者教育の転換と展望」
質疑応答と討論
パネルディスカッション(11:30-12:30)テーマ:社会高齢化と高齢者教育の創造と挑戦
黄健(華東師範大学教授)、上田孝典(筑波大学准教授)、李熙洙・洪叔希(韓国)
昼食(12:30-13:10)
郊外へ移動(13:20-14:30) 順義区社区の高齢者教育の見学と座談(14:30-18:00)
夕食(18:00-19:30)ホテルへ
〇11月25日(月)一部オプション、解散
*発表時間は通訳を入れた時間
●連絡先:電話@韓民136-61135444、A楊樹雨135-20374991、B朱鳳霊 130-51554244
e-mail: yangshuyu@cuc.edu.cn
●組織者:主催:中国教育戦略学会生涯学習専門委員会
共催:北京教育科学研究院生涯教育と持続発展研究所、北京市石景山区社区学院
▼“中日韓”生涯学習研究フォーラム参加者、会場・石景山区社区学院にて集合写真(20191124)
3、北京フォーラムから帰国、上海・北京の皆様に感謝・御礼 (小林) 南の風4105号
<無事帰国・ありがとうございました>
昨夜(11月26日2 1:00)、上海(20〜22日)から北京(23〜25日、中日韓フォーラム)の日程を終え、予定通りの便で無事帰国いたしました。旧知・旧友と久しぶりの再会、新しい友人との出会いも少なからず、実り多い旅となりました。この間には11月21日の誕生日と重なり、日本だけでなく中国・韓国の皆様から88歳・米寿を祝っていただく幸運、しみじみと我が身の果報をかみしめる日々でした。上海ではとくに張・朱夫妻(風・前号に写真)や呉遵民さん(華東師範大学)、北京では韓民・高夫妻(本号ぶ欄に写真)はじめ「中国教育戦略学会生涯学習専門委員会」など、お世話になった各位に心からの御礼を申し上げます。教師冥利に尽きるとはこのこと、また国をこえての「桃杏満天下」の喜びもあり、素晴らしい中国への旅、皆さん有難うございました。
韓国からご参加の旧知の皆さま(李熙洙、鄭賢卿、梁炳贊、崔一先ほか各位)には、昨年の東アジアフォーラム以来、1年ぶりの再会でした。久しぶりに崔一先さん(慶煕大学 )の「珍島アリラン」の名調子、北京の夜では中日韓みんな(約40人)での手拍子・合唱となり、ひそかに夢に見ていた願がかないました。高井戸でも辺野古でも歌っていただいた歌、今や“東アジアの音頭”となった感じでした。
杖をつき、空港や高鉄(上海→北京)では車椅子の利用、同行の皆さんの足手まといににならないようにとの思い。しかし私のために多くの気遣い、とくに江頭晃子・山口真理子のお二人にはたいへんお世話になりました。帰国のフライトでは乗る前からビール、持ち込みのビール、機内食でワインのお代わりも成功し、年甲斐もなく高揚して、隣の江頭さんと大声で三多摩の住民運動史など語りづめで羽田着。頂いた本(呉遵民編『中国終身学習ハンドブック』上海・新刊)など持ち切れず、山口さんに永福まの家まで運んでいただきました。
ご参加のの皆さん、今回の「北京フオーラム」についての感想やエピソードなど風にお寄せください。来年の日本開催のことを含め、とくに石井山竜平さんにまずは全体的なフォーラム報告(ホームページ記録用、短文歓迎)をいただければ幸いです。お待ちしています。本記事は、直前に参加断念した黄丹青さんへの(ぶんじんも無事帰国)のご報告を兼ねました。ご快癒を祈ります。
▼二日目午後のエクスカ―ション:北京郊外・順義区社区センターにて、子どもたちの歓迎を受けながら (20191124)
4,総括討議の内容(石井山メモ) 南の風4106号
石井山竜平、(Fri, 29 Nov 2019 03:56)
<北京フォーラム・研究討議の内容>
石井山です。フォーラム後、孫冬梅さんと数日北京を堪能し、帰国しました。
北京フォーラム、始まるまでは様々に不安要素がありましたが,始まってしまえば、忘れがたき思い出と、研究的な刺激に満ちた、充実した日々でした。
それぞれの報告、訪問した二箇所(石景山社区、順義区社区)の社区学院・センター、合間で訪れた「首都鋼鉄文化創造区」の巨大廃墟の迫力、またできたて燕京ビールの旨さ、韓民さん夫妻による小林先生の米寿・誕生日パーティー(確か山東料理)の時間の豊かさ、そして、フォーラム全体をとおして一番お世話になった楊樹雨先生(中国・生涯学習専門委員会・副理事長兼秘書長)の深いホスピタリティなど、触れたいことは多々です。
ただ、旅としての思い出よりも、研究協議の具体の一端をご紹介したほうが良いかと思い、フォーラム二日目(11月24日(日))の研究協議での各人の発言をめぐる私のメモを紹介いたします。(呉さんも発言されましたが、こちらの聞き取りが追いつかず、メモが未熟で省かれていますこと、ご容赦ください)。かなり圧縮しましたが、それでも「風」になじまない長文、お許しください。
*北京フオーラム・全体テーマは「高齢者教育」
◆上田孝典(日本・筑波大):中国・台湾からの報告は「元気な高齢者像」を前提としていた。たとえば台湾からは、旅行を通じて生きがいを見つけていくという報告。中国からも、学歴型、非学歴型問わず「非常に元気に学んでいる」という印象をもった。
一方で、日本からは、認知症など、老化の深刻さをいかに地域で支えていくのかといった、高齢者の貧困等の「問題」にいかなる学習が必要か、というアプローチからの報告だった。韓国からは、死とどう向き合うかという重要課題が提起された。さらに牧野氏からは「主体がどう形成されていくのか」をめぐる従来型前提が壊れている、という、大きな
問題提起があった。
このように、国によって異なる文脈でからあっても、そこから生み出された実践の質は、国を超えて参考になる。日本にとっても、韓国の自分史学習、中国の豊富で充実した生きがいづくりのメニューなど、学ぶべき内容が多く含まれていた。
李熙洙氏(韓国):lifelong educationといっても、中国では「終身」、日本では「生涯」、韓国では「平生」と、概念は異なっている。そうした違いを克服して共同体を作る。私たちのなかでもコミュニケーションを通じて、コミュニティを作っていく必要を感じる。
今回の報告で私が学んだのは、中国からは、国家が主導しているシステムであった。日本からは市民実践の力であった。台湾からはプログラムの洗練性と専門性の高さであった。 これを機に共有したいのは、高齢化の問題は一個人、一国家を越え、人類社会全体で考えるべきことであるという認識である。なぜなら、これほど人類が長く生きる時代は初めて迎えた。参考にすべき経験というものはないからである。4つの国・地域が集まって協働的で生産的な対話ができたことに感謝している。
◆洪叔希氏(韓国):韓国の政策について追加情報がある。近頃「老後準備支援法」という法が生まれた。その中には教育的支援も含まれている。老人になる前に教育を受ける機会を用意する、そういう政策的が立ち上がっている。老年への準備、社会の変化に合わせた人生の全うのしかたを、長い目で見られるようになった。
その検討の上で一番大きなポイントは、人間の生き方を、「経済活動」を中心で見るのか、それとも「暮らし」から見るのか、ということ。「はたらく」ということの意味をどう捉えるかで、政策の性格も変わってくる。歳を取ると、経済活動も大事だけど、地域社会の一員として、意味のある生き方ができるか、そこが重要。そのことをめぐって、引き
続き協働で検討していきたい。
◆韓民氏(中国):中国における高齢者教育は国家主導型で初期段階。この段階でしてきたことは、条件整備とネットワークとカリキュラム整備。発展の進度は、日本、韓国、台湾、中国の順番にあると感じた。日本は「超高齢化社会」「ポスト公共社会」という、2つの社会背景との関わりのなかで、事態が先に進んでいる。
中国を全体的にみると、北京は進んではいるが、高齢者の学習への参加は上がっていない。まだ本気で彼らを応援できていない。量の問題だけでなく、これからの問題は質。日本では、社会の発展(高齢社会の発展)から生じた問題の解決、という視点から、学習が創られている。対して中国は、社会問題とは一切無縁なかたちでここまでいる。日本だけでなく韓国でも、孤独死の問題や、いかに終うかという課題からの実践が報告された。これらを参考に、直面している問題について考えていきたい。
中国における高齢者教育のこれからの方向性としては、教育から学習、自主的な学習型にシフトさせていく、という方向性ですすめていくべきであることが確認できた。
小林文人氏(日本):日本の年寄りが、こんなこ言葉を語ったことを思い出している。「子ども叱るな、来た道じゃ。年寄り笑うな、行く道じゃ」。つまり,年寄りの問題は年寄りだけの問題ではない。みんなの問題である。
牧野篤氏(日本・東京大学):高齢化から、社会全体の構造の問題を考えなければならないと思う。例えば「若者が高齢者を尊重、尊敬しているか」という調査があり、一番低いのは日本、という結果(一番高いのはイギリス、フランス)がある。「高齢者のことをよく知らない」のも日本の若者が一番(知っているが高いのはイギリス、アメリカ)。経済的な発展速度と、高齢者と若者の交流の問題は絡んでいるかも知れない。
高齢化社会から高齢社会まで、イギリスで100年かかっていたところが、日本では24年で到達した。その速さはいわゆる後発効果によるものだった。台湾、韓国にも後発効果が現れていて、高齢化の速度も追い越す可能性がある。
そうなっていく場合、日本の高齢化問題は、日本が豊かになった後に現れた問題だが、近隣の国では、豊かになる前にその問題が起こる可能性がある。そのときに、どういう社会を作るか。人類的な課題である長寿化のさきに、どういう社会を作るかが問われている。
▼石井山報告「介護者を支える仕組みづくりの新展開」左・孫冬梅(通訳)(20191123)小田切・撮影
■≪追伸:石井山竜平、Fri, 29 Nov 2019 04:57≫
< 北京フォーラム・研究討議の内容(2)―次年度は日本開催>
続文です。更に長文、申し訳ありません・・・。
なお、2020年度のフォーラムは、結論からすれば日本で開催することになりました。このフォーラムではこのかん、中韓日に加えて台湾の参加にこだわってきており上海(2016)、佐賀(2017)、公州(2018)、北京(2019)の次は、ローテーションからすると台湾となります。しかし、現地でこのフォーラムを受けきれるチーム形成が未成熟であることや、中・台の政治的な関係性に配慮せざるを得ないという事情から、話し合いの末、次年度の台湾開催は、無理はしない、ということになりました。また、フォーラム準備はかなりの労力を要することから、負担を減らして継続すべく、毎年ではなく隔年開催はいかがかという提案をいたしました。しかし、中国・韓国とも、それは望ましくないとの意見で、毎年開催することで、できるだけ頻繁に交流することを望まれました。
以上に鑑み、2020年度は日本での開催となります。会場や日程、テーマは未定で、これから定めていくこととなります。このたびの北京フォーラムについては、参加メンバーは中国からの指名があったため、参加の裾野を広げることができませんでしたが、次年度はそこを少しでも広げたいと思います。ただ、このフォーラムは、フィールドワークの位置
づけが必須であり、フィールドや移動手段の関係で、どうしても参加人数を制限をせざるを得ません。そうした制約もありながらの取り組みであることもご了解頂きながら、しかし、これまでより広げられた関係で準備ができればと思います。皆様方のご加担、ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。(石井山竜平 東北大学大学院教育学研究科)
▼北京フオーラム・総括討議へ(石景山社区学院、20191124)
▼上掲写真・窓際の4人(左より牧野篤・韓民・小林文人・呉遵民) 馬麗華・撮影
▼開会式・小林挨拶 左は通訳・呉遵民 (北京、20191123)
▼江頭報告「多摩・高齢者と市民力形成」(北京・20191123)
▼韓国から参加、左より梁炳贊、崔一先、李熙洙、鄭賢卿の皆さん、通訳中は小田切さん(北京、20191122)
▼東アジアの交流(北京フォーラム初日の晩餐会、20191123)
▼23日夜の歓迎祝宴、左より秘書長・楊樹雨、牧野、韓民、小林、学院長・楊文霞、呉遵民の皆さん
▼24日夜、終りの晩餐会、日本側より上野景三(日本社会教育学会長)挨拶・謝辞
▼二人の楊さん、左・秘書長の楊樹雨、右・学院長の楊文霞、のお二人にはさまれて・・・(北京、20191123)
◆関連写真(上海・北京)88歳祝い→■
◆上海市教育科学研究院・訪問(20191121)
▼上海市教育科学研究院、中央に桑標院長、右に張副院長、「職業と成人教育研究所」スタッフ
(同研究院、191121)
2020年 以降・・・・・(3)東アジア生涯学習研究フォーラム(松本開催に向けて)→■
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