解説シリーズ

株式譲渡の低額譲渡・高額譲渡の売主・買主の課税関係

<事例>取得価格200円を

 【1】1000円(適正時価)で譲渡
 【2】700円(時価の2分の1以上の譲渡)
 【3】300円(時価の2分の1未満の譲渡)
 【4】1400円(時価より高額で譲渡)
株式譲渡益に対する税率:所得税15%、住民税5%、合計20%で計算

(1)個人(売主)→個人(買主)の場合

 【1】1000円(適正時価)で譲渡 
 売主 譲渡所得  1000ー200=800(円)
譲渡所得税 800×20%=160(円) 
 買主 課税関係なし 

 【2】700円(時価の2分の1以上の譲渡) 
 売主 譲渡所得  700ー200=500(円)
譲渡所得税 500×20%=100(円) 
 買主 時価1000ー取得価格700=300(円)
譲渡された価格と時価(相続税評価額)との差額が「みなし贈与」とされて課税されます。(相続税法7条)なお、この場合の取得価格は、実際の購入価格となります。

 【3】300円(時価の2分の1未満の譲渡) 
 売主 譲渡所得  300ー200=100円
譲渡所得税 100×20%=20円  
 買主 (1)【2】と同様に、譲渡された価格と時価(相続税評価額)との差額が「みなし贈与」とされて課税されます。          (相続税法7条) 

【4】1400円(時価より高額で譲渡)  
 売主 譲渡所得  1000ー200=800(円)、受贈益1400ー1000=400(円)
譲渡所得税 800×20%=160(円)、贈与税400×贈与税率
受贈益に贈与税が課税されます。 
 買主 課税関係なし


(2)個人(売主)→法人(買主)の場合

 【1】1000円(適正時価)で譲渡 
 売主 譲渡所得  1000ー200=800(円)
譲渡所得税 800×20%=160(円) 
 買主 課税関係なし 

 【2】700円(時価の2分の1以上の譲渡) 
 売主 譲渡所得  700ー200=500(円)
譲渡所得税 500×20%=100(円) 
通常の譲渡所得の計算となります。ただし、「同族会社等の行為又は計算の否認(所得税法157条)」の規定に該当する場合には、譲渡資産の時価に相当する金額によって譲渡所得を計算するとされる場合があります(所得税法基本通達59ー3)。
 買主 時価1000ー取得価格700=300(円)は受贈益となります。この場合の取得価格は時価となります。(*1)
(*1)法人側は全ての取引が法人税法22条により、時価により取引されたものとみなされます。

 【3】300円(時価の2分の1未満の譲渡) 
 売主 譲渡所得  1000ー200=800円
譲渡所得税 800×20%=160円
通常の譲渡所得の計算は認められず「みなし譲渡」課税とされます(所得税法59条1項2号、所得税法施行令169条)  
 買主 時価1000ー取得価格300=700(円)は受贈益となります。この場合の取得価格は時価となります。(*1)

【4】1400円(時価より高額で譲渡)  
 売主 譲渡所得  1000ー200=800(円)、一時所得1400ー1000=400(円)
譲渡所得税 800×20%=160(円)、所得税400×所得税率
時価を超える金額は一時所得として課税されます。 
 買主 寄付金課税1400ー1000=400(円) (法人法37条7項)


(3)法人(売主)→個人(買主)の場合

 【1】1000円で譲渡 
 売主 株式譲渡益  1000ー200=800(円)
法人税計算に取り込まれます。 
 買主 課税関係なし 

 【2】700円(時価の2分の1以上の譲渡) 
 売主 寄付金課税 1000ー700=300(円)  (法人税法37条7項)、
買主が役員の場合は役員賞与扱いとされ、損金不算入とされます。(法人税法基本通達9ー2ー10(2))
 買主 時価1000ー購入価格700=300(円)について
売主法人の役員であれば給与課税、第三者であれば一時所得として課税されます。

 【3】300円(時価の2分の1未満の譲渡)   (3)【2】と同じ課税です。
 売主 寄付金課税 1000ー300=700(円)  (法人税法37条7項)、
買主が役員の場合は役員賞与扱いとされ、損金不算入とされます。(法人税法基本通達9ー2ー10(2))
 買主 時価1000ー購入価格300=700(円)について
売主法人の役員であれば給与課税、第三者であれば一時所得として課税されます。 

【4】1400円(時価より高額で譲渡)  
 売主 譲渡益 1000ー200=800(円)
受贈益 1400ー1000=400(円)。どちらも法人税計算に取り込まれます。 
 買主 他の株主に贈与税が課される可能性があります。


(4)法人(売主)→法人(買主)の場合

 【1】1000円で譲渡 
 売主 株式譲渡益  1000ー200=800(円)
法人税計算に取り込まれます。 
 買主 課税関係なし 

 【2】700円(時価の2分の1以上の譲渡) 
 売主 寄付金課税 1000ー700=300(円)  (法人税法37条7項)、
 買主 時価1000ー購入価格700=300(円)は受贈益となります。

 【3】300円(時価の2分の1未満の譲渡)   (4)【2】と同じ課税です。
 売主 寄付金課税 1000ー300=700(円)  (法人税法37条7項)
 買主 時価1000ー購入価格300=700(円)は受贈益となります。 

【4】1400円(時価より高額で譲渡)  
 売主 譲渡益 1000ー200=800(円)
受贈益 1400ー1000=400(円)。どちらも法人税計算に取り込まれます。 
 買主 寄付金課税 1400ー1000=400(円)  (法人税法37条7項)