恋塚正隆の連載コラム

【連載】バックアップの真実
第8回 「ストレージガバナンスとは」

-- 今回のテーマ「CDP(Continuous Data Protection)」? --

いよいよストレージガバナンスの最後のテーマ「CDP」です(CDPの日本語訳は「継続的データ保護」ということになっています)。CDPは「切れ目無く常にデータの差分を限りなくリアルタイムに複製する」技術です。

これまでの、いわゆるバックアップ、アーカイブは1日に1回、1週間に1回、時には1ヶ月に1回、データをテープ、ディスクにバックアップすることを意味していました。次に、ディスクのブロックやファイルシステムの単位でスナップショットを取るような技術が出てくると、1日に何度もバックアップを取ることが簡単になりました。

CDPは一瞬の休みもなく常にデータをバックアップし続けます。同じように、データベースシステムはトランザクションログという形で常にデータベースに対する変更を記録し続けています。データベースシステムでは、とうの昔にCDPは当然の技術だったのですが、何で今更CDPと称して世の中に登場してきたのでしょうか。

約20年前にメインフレームでRDBMSを全面採用したシステムが某社から出てきましたが、そのメインフレームを使って新たなシステム開発をしているときのことです。おニューのメインフレームを2台、開発センターへ設置して開発。本番じゃあないので電源はバックアップ無し。開発作業の真っ最中の夏の暑い盛りに豪雨と落雷で何回か突然の停電に襲われましたが、何事もないように開発には影響がありませんでした。その時はちょっとビックリしましたが、開発チームに「大丈夫?」と聞くと「大丈夫」。

あらゆるものをDBとして処理しているので平気だったらしいのですが、ファイルシステムもデータベース的にトランザクションとして動作すればCDP的になります。マイクロソフトは、そのような技術に挑戦しましたが現時点ではちょっと挫折。

オラクルのようなRDBMSではなく、いわゆるファイルを保護するにはファイルシステムのレベルでのデータ整合性が必要になります。ワードが文章データを書き込んでいる最中のファイルはデータとしての意味がありません。だから、ワードのアプリ自身が、一時的にバックアップファイルを作って万が一のタイミングで発生するデータ一貫性の障害に備えています。トランザクションとしてファイルシステムが動作すれば、もっと単純な処理になったところです。

CDPがなぜ必要になってきたのか、どんな局面で真価を発揮するのかが、まだ、今ひとつわかりにくい。ということでもっと基本に立ち返ると、いわゆるバックアップも、アーカイブも、そしてCDPも何のために必要なの?という根源的な理由はリストアするため、前あったデータを見るためです。

スナップショット技術がでてくると、その取ったスナップショットの時点のデータに瞬時に切り戻すことができるようになりました。CDPは、そのスナップショットを間断なく連続的に取得する技術なので、障害があれば一秒前にでも状態を戻すことができます。CDPをつかうと、とにもかくにも直前の状態を保全しておきたいという希望を叶えることができるようになりました。 でも、1ヶ月前、半年前、3年前のデータを大事に取っておくためには、CDPは使うことができません。このような用途には、これまでのバックアップシステム、アーカイブシステムが必要になります。

それじゃあ、基幹系のシステムでは1週間前のデータに戻す、なんていうのは事実上あり得ないのでCDPが100%有効か?というと、そんなに簡単な話ではありません。複数のシステムが関連していて、全てCDPが導入されている。この場合は各サブシステムがどのタイミングで壊れても、CDPでその直前に戻れれば(本当に壊れた直前にですよ)、データ不整合は発生しないと思います。相互に関連するトランザクションを保護したいのであれば必ず2フェーズコミット等の同期が取られているからです。でも、CDPそのものが壊れたらどうなるでしょう。世の中、壊れないものは無い位に思っておかないと、システム屋としては生きた心地がしません。RAIDは壊れないと言われてバックアップしていないような心地がします。

OSだって、RAIDだって、そしてCDPにだって問題がゼロなんてことはないでしょ。こういうときは、最後の頼みの綱はバックアップ、そう、バックアップだけなんです。

最後の頼みの綱は何本くらい張っておきましょうか。1本? 2本? 3本?私は3本くらい欲しいです。1本だとショックで切れそう。2本だとミスがあったらダメかも。3本あれば、さすがに大丈夫でしょ。皆さん、最後の頼みの綱は何本もっていますか?



DSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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