恋塚正隆の連載コラム

【連載】バックアップの真実
第3回 「ストレージガバナンスとは」

-- 今回のテーマ「ILM」 --

企業、行政組織等の事業体にはその組織の目標に照らした活動があります。製品、サービスを開発して儲けたい、みんなの役に立ちたい、サービスを公平、効率的に提供したい。これらの目標に向けて、あるべき姿(To-Be)を描き、現状(As-Is)とのギャップを認識することで、そのギャップを埋めるための活動目標を定めることができます。これは一般的に行われている目標管理そのものですが、これが結構つらい。

実際のビジネスでは、To-Beはわかったけど無い袖は振れない、という場面にいつも遭遇します。こうなると、何が一番大事なのか、ポートフォリオも真剣に考えておかないと、あれも良いけどこれも良い、でも無いものはない、私は一体どうしたらいいの、という最悪のパターンに陥ってしまいます。もし、こういうお客様と遭遇したらどのように対応するのか、これだけでも興味深い大テーマになりそうです。

このストレージガバナンスの連載では、ITガバナンス協会*注が掲げている4つの目標管理の指標「戦略との整合性」「価値の提供」「資源の管理」「リスクの管理」を(つらいので、ほんの少しだけ)念頭に置いてストレージの大きなテーマをひとつずつ考えていきます。まずは

ILMって何。

ILMの Information は決して Knowledge でも Intelligence でもありません。 ただの断片的な情報の固まりに過ぎないところが今のストレージシステムの限界かも知れません。というか限界そのものです。今あるどんな高価なILMシステムも私たちの Knowledge を識別してくれません。コンテンツ管理システム、情報共有システムというものもありますが、Knowledgeを識別してくれている、わけではありません。

情報にも鮮度があるとすると、一般的な製品と同じように情報にもライフサイクルがあるのでしょうか。「20年前の顧客毎の販売履歴」、「20年前に XX氏が社長に就任」。これは間違いなく社長就任の情報は記録しておく必要がありますが、20年前の販売履歴は必要ない(ですよね)。

どうして販売履歴は必要ないの、と聞かれたら何と答えるのか。
「商法上、必要ない」
「データ量が大きすぎるのでディスクがもったいない」
「保存しておく意味が見つからない」
「取っておくのも大変なんだよ。。」
どうして社長就任の情報は大事なの。
「そりゃぁ、会社の歴史なんだから」
「データ量も小さいし。。」

何を消して、何を残しておくのかを考えるのも面倒なので、えぇ〜い、何でも残しておけ。ディスクも安くなったし。という時代がやってきます(現在進行形です)。こうなるとディスクが安くなっているとは言っても、結構お金がかかります。そこでInformationの意味は理解してくれないけれど、そこそこのポリシーでストレージコストを最適化してくれる、そこそこのILMシステムは便利になってきます。でも、ポリシーがハッキリしているなら、そこそこの ILMシステムでも、もっとキッチリと全体コストを最適化できます。 情報の価値、コストの妥当性を検討するマネジメントができていれば、ILMシステムを使い倒して、全部のデータを保存しておいてもコストは競争相手よりも安いかもしれません。本当にマネジメントできていれば、棄てるデータも識別できてコストはもっと安くなります。ちょっと夢みたいな感じもしますが、きっと実現できるはずです。皆さんの意志が固ければ。SIer、ハード・ソフト・ベンダはちょっとだけしかお手伝いできません。

だからこそ、ITガバナンスが大事、というのが結論。次回テーマは「コンプライアンス」です。

*注 ITガバナンスの重要性を早くから認識し、 そのためのツールや考え方などを普及させる為、 1998年にISACA(情報システムコントロール協会)が設立した団体。






DSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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