恋塚正隆の連載コラム

【連載】バックアップの真実
第4回 「クライアント・バックアップ」

-バックアップしなくても良いクライアントを作る- その3

シンクライアントが脚光を浴びています。データをディスクに入れていないので万が一、盗まれても大丈夫というふれこみです。端末は家電品と同じなので故障交換も簡単。でもノートPC型シンクライアントは社外でも本当に使えるのでしょうか?営業ならよく使う無線ホットスポットを確認しておけばそこから会社へログオンして仕事ができるかも知れませんが、客先で仕事をするSEはそうはいかないでしょう。SEはデータの入ったノートPCを持ち運ぶことが多くなります。客先に常設したPCで仕事をすればデータの持ち運びを防げますが、会社へ帰って仕事をすることもあるのでデータの持ち運びは必要になります。持ち運ぶデータは暗号化しておけば良いと思っても、最近は暗号化したデータを無くした場合でも新聞沙汰になり一定の責任は免れないご時世です。そこまで言われると「どうしたらいいんだ」と声を大きくしたくなります。

VPNネットワークでデータを運ぶというのも危険です。インターネットでつながりさえすれば簡単にデータを持ち運べるとなるともっと大がかりなデータ漏洩が簡単に発生するかも知れません。個別にこのようなことを考えているときりがないので会社全体のセキュリティポリシーを決めてプロジェクト(大きくても小さくても)の実施前提条件にすることになります。個人の責任にするのは勘弁してほしい。でも営業マンが持つお客さまのコンタクト情報、SEのプロジェクト関係者のアドレス帳も保護するようになっているのでどうしたらいいんだ!ノートPCもPDAもメモ帳も駄目!暗号化したファイルも破られない保証がない、という人がいる!何だかチョット興奮してきた。

このようにクライアント・バックアップという話題はセキュリティとは切っても切れない関係になっているのは間違いありません。データ・セキュリティのためのツールはもう必須です。ホームPCでも同様でしょう。セキュリティの問題以外にも、やはりデータを失うと仕事に支障をきたします。本当に無くしてはいけないデータを毎日しっかりバックアップされているファイルサーバに格納していたとしても、インフォメーションワーカにとって仕事に必要な資料は非常に膨大です。それらの資料が自分のPCにある場合は、そのデータもバックアップしておかないと実際には仕事になりません。それらのデータがコピーで、元のデータが別のWebサイト、ファイルサーバにある場合もです。そのデータが唯一無二のデータであるかどうかに関係なく保存しておく必要があります。しかもそれらのデータの多くはセキュリティ上の問題がなくても持ち運んでいつでも見る必要があります。真のインフォメーションワーカにとって「バックアップしなくても良いクライアント」というのはあり得ないのかも知れません。

ここでちょっと脱線して、インフォメーションワーカのPCにはどんなデータがあるのか興味がわいたので、バックアップを考える前にちょっと何か面白い資料が無いかとGoogleを使って調べてみましたが、適当な調査レポートはありませんでした。う〜んと考えてみると自分のPCにインストールしているこのツールは面白そうです。”Googleデスクトップ検索”です。このツールは非常に重宝していますが、似たようなツールにはマイクロソフトのインデックスサーバやジャストシステムのConceptSearchがあります。インデックスサーバは以前使っていたことがありましたが使いにくいので気軽に使ってみる意欲が湧きませんでした。その点、Googleデスクトップ検索は非常に簡単で便利です。これらのツールはPCの中にあるメール、URL、テキストファイル、 PDFファイル、Officeファイル等の検索用インデックスを自動的に作製しています。どんなインデックス方式を採用しているのかはさておき、このインデックス情報が覗ければPCの中にどんな種類のデータが蓄えられているのかを探るツールになりそうです。このような情報はプライバシーに関わりますが、このようなツールを利用して沢山のインフォメーションワーカのデータを集めると面白い研究ができそうです。私のPCにもインターネット、メルマガ、メーリングリスト、ベンダーのWebサイト等から収集したデータが山のように蓄積されていますが、どんなに上手にファイリングしたとしても検索ツールなしでは迷子になってしまいます。情報の海で見つけた、これはという情報はどんどんキャプチャしておかないと後から探すのは非常に困難です。 WebのURLも時間がたつと消えてしまうことがあるので重要なものは必ず内容をPDF等にキャプチャしてOneNoteに貼り付けています(このコラムもマイクロソフトのOneNoteで作製しています)。情報を整理するのは時間がかかるのである程度適当にファイリングして後から検索ツールのお世話になります。製品の技術マニュアルも膨大なのでとりあえず必要そうなものは何でもかんでもPCに取り込んでおきます。似たような行動パターンのSEは多いと思います。サイトで見つけた”おっ”と思うようなテクニカルノートが後で役に立つことも多いものです。このようなデータがすべてバックアップ対象になるのです。このデータは企業にとっては無駄なデータではなく本当は宝の山かも知れないのです。

ではこのクライアント・バックアップをどのように行ったらいいでしょうか。シンクライアントやファイルサーバを利用している場合は、それらの全てがしっかりと組織的にバックアップされている前提です。インフォメーションワーカにとってはPC環境全体が仕事をするために必要な環境を含んでいるので、何かあったら、そこにインストールされているアプリケーション環境まで含めたOS全体を迅速にリカバリしたくなります。このようなリカバリをするにはそれなりのツールが必要になります。アプリケーションをインストールし直すのも大変な手間だからです。Windowsのパッチ適用が一番大変かも知れません。これらのツールは購入したPCにメーカ提供のものがバンドルされていることもありますが、バックアップ・サーバでの集中的な管理がコスト的にもセキュリティ的にも好ましいと思われます。このようなバックアップソフトは各社から出されているので選択に困ることはありませんが、クライアント・バックアップにはテープ装置ではなくバックアップ専用のディスクが必要になります。この辺の事情は次回に。




JDSF データ・マネジメント・ソリューション部会
株式会社エクサ 恋塚 正隆
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