
在宅勤務を成功させるメンタルヘルス対策
(株)メンタルヘルステクノロジーズ 代表取締役 刀禰真之介
新型コロナウイルス感染拡大防止のため,在宅勤務に切り替えた企業が多いと思います。その結果,「やりづらい」「チームパフォーマンスが下がった」等,社内に様々な声が出ているのではないでしょうか。在宅勤務は,うまく活用すれば「会社全体の生産性・パフォーマンス」が向上します。しかし,やり方を間違えると,生産性・パフォーマンスはかえって下がります。忘れられがちですが,在宅勤務におけるパフォーマンスは,メンタルヘルス対策と表裏一体です。当社は創業以来9年間,在宅勤務を実行し,失敗を繰り返しながら,ある解決策にたどり着きました。それは「メンタルヘルスの4つのケア」の応用です。これを実践すれば在宅勤務でもパフォーマンスが下がることはありません。具体的には,@在宅勤務のオンオフ(セルフマネジメント),A在宅勤務のコミュニケーション,B在宅勤務の仕事環境,C在宅勤務のマネジメント,D会社が用意すべきマネジャーとスタッフ支援の体制,の5つです。
■スタッフの置かれている状況を理解する
この5つのなかでも,メンタルヘルス対策に大きく関わる「在宅勤務のマネジメント」をご紹介しましょう。まずは,マネジャーがオフィスと在宅勤務の違いを理解することです。そのうえでマネジメントしなければ,スタッフはメンタル不調に陥ります。在宅勤務によって同僚や上司,お客様との交流が制限されたスタッフは“孤独や寂しさを感じやすい”状況に置かれています。これまで簡単にできていたささいな雑談や相談がしにくく,言いたいことをため込みがちです。あるいは,何か良い仕事をしても直接フィードバックを得られず,正しく評価されているのか不安になり,やる気やモチベーションを維持しにくい状況です。また,出勤組と在宅勤務組で働き方が混在している場合は,無意識のうちにも出勤組だけで物事を決め,在宅勤務組には「結論のみ共有」という壁ができ,在宅勤務組は疎外感を抱いてしまいます。こうした状況はメンタルヘルス不調を招き,ワーク・エンゲージメントは大きく損なわれてしまうでしょう。
■不信・不満・不安“3つの不”を取り除く
在宅勤務でマネジャーが取るべき基本は以下のようになります。
●スタッフの感情の理解:マネジャーは意識的に会社の動きをスタッフに伝えます。また,スタッフの変化に気づけるよう定期的に“相談時間”を設けるようにします。
●結果/数値を評価指標にする:これまで「行動」をマネジメントしてきたマネジャーは,管理対象を「結果/数値」に切り替える必要があります。@設定している「結果」にどうやってたどり着くのか,Aたどり着くのに障害はないか(サポートが必要か),B期限までにたどり着いたか……この3点のみをマネジメントするのです。「スタッフが目の前にいないと,本当に仕事をしているのか信用できない」という考えは不要です。「結果を出してくれればそれでいい」と割り切ることで,マネジャーのメンタルヘルスにもいい結果をもたらすはずです。もちろん「最終結果が出るまで放っておく」という意味ではありません。日次や週次で成果報告のミーティングを設ける,進捗や相談事項をオンライン上に残すなど,意識的なコミュニケーションが必要です。
信頼関係には,会社と本人,社長と本人,部署と本人,部長と本人,マネジャーと本人,チームと本人等,様々なケースが考えられますが,ベースは「不信・不満・不安」の除去です。スタッフの「3つの不」がどこに潜んでいるか察知し,対策を打てるかどうかが,在宅勤務成功のカギとなるでしょう。
(月刊 人事マネジメント 2020年6月号 HR Short Message より)
HRM Magazine.
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