
社員が生き活き考働する組織を創る
AMWコンサルティング(株) 代表取締役社長 横塚雅章
■自分たちの組織が目指す姿は何か
私が1987年にコンサルティングファームに足を踏み入れて今年で30年となります。13年間の営業時代を含めて1万人以上の経営者や経営企画部門スタッフ,人事部門スタッフにお会いし,1つの共通するミッション(目的)を見つけました。それは「社員が生き活き考働する組織創り」です。
「社員をイキイキ行動させる組織作り」ではありません。「社員を〜させる」とした時点で主体は上位者になってしまいます。社員を主語に置くことで自主性・主体性を促しているのです。「イキイキ」の漢字は「生き生き(生気があってみずみずしいさま)」でも「活き活き(活気があふれていて勢いのよいさま)」でもなく,両方の意味を含めた「生き活き」です。平仮名を抜くと「生活」となり,ワーク・ライフ・バランスも意味しています。また,「行って動く」だけではコストになりかねません。全社員が「考えて働く」ことで付加価値は生み出されます。さらに,「組織作り」ではなく,大きな青写真を描いて創造していく意味から「組織創り」と表現しています。
このような理想的な組織を実現していくために大事なポイントがあります。
■人財育成はミッション・ビジョンを前提に
金融業界では,営業店をサポートすべき本部の本質的な機能変革には着手せず,営業店対象の業務スキル研修ばかり実施しているケースが目につきます。その結果,現場には被害者意識が蔓延しています。また,ここ数年の大量採用により営業店運営は若年層化し,コミュニケーションギャップに悩む上位者は疲れ果て,そうした姿を見ている下位者には“支店長になりたくない症候群”が広がっています。
今日,セミナーやビジネス書には様々な人材育成手法が紹介され,熱心な方々は新しい手法をたくさん勉強して次々に導入を試みていらっしゃいます。しかし,前提となる「組織をどこに導きたいのか」というミッションやビジョンが欠落している状態で,手法の研修ばかり実施しても現場はうんざりするだけでしょう。
戦略上位概念(ミッション・ビジョン)に基づき,トップ方針や中期経営計画を具現化するための人財戦略を大きく描き,そのために必要な手法を効果的に組み込んだ社員目線・現場目線の展開が肝要です。
■「ライフスキル」の向上が不可欠
社員教育では,業務スキル,ビジネススキルのインプットも必要ですが,まずは「ライフスキル」の向上に焦点を当てる必要があると考えます。
ライフスキルとは,世界保健機構(WHO)が定義した「個人が日常生活の欲求や難しい問題に対して,より建設的,前向きにかつ効果的に対処するために必要不可欠な能力」のことです。「生きる力」「心の力」「命の力」「生き方の技術」であり,性格を変えようとするものではなく,よりよく生きるために「なにを,どうするのか」という選択の場面で役に立つ技術,自己実現に欠かせない能力とされます。具体的には以下の10項目が挙げられています。
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@自己認識力
A共感力
B効果的コミュニケーション力
C対人関係構築力
D意思決定力
E問題解決力
F創造的思考力
G本質追求思考力(クリティカル思考)
H感情対処力
Iストレス対処力
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「社員が生き活き考働する組織創り」には,リーダーは当然のことながら,構成員のライフスキルの底上げが欠かせません。組織の構成員の現有能力を把握し,人材育成のポイントを絞って啓発していくことになります。
(月刊 人事マネジメント 2017年3月号 HR Short Message より)
HRM Magazine.
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