上海・社区教育・生涯学習・研究報告（2007年〜）
　　　　　　　　　　　TOAFAEC「東アジア社会教育研究」収録レポート


＊中国生涯学習研究・上海調査記録→■
＊中国生涯学習研究フオーラム→■


＜目次＞
１，学習の生活習慣化に向けて−上海閘北区社区教育の過去と今ｰ
　　　（「東アジア社会教育研究」第１２号、2007年）王鋼・江蕾、　訳：楊凡・陶涛
２，2007年上海市徐匯区徐家匯街道・社区教育における実践報告
　　　（「東アジア社会教育研究」第１３号、2008年）
　　顧錫培・趙信□（火偏に韋）・符湘林　　訳：�･萍
３，２１世紀初期における中国社区教育発展の目標、重点及び特色
　　　　（「東アジア社会教育研究」第１３号、2008年）　　葉忠海　訳：呉迪
４，上海市生涯教育推進の道筋とメカニズムに関する研究
　　　　（「東アジア社会教育研究」第１３号、2008年）　呉遵民　　訳：千野陽一
５，上海市閘北区「社区教育」関係資料（2001調査） 記録・翻訳：黄丹青
　　　　　【出典】 東京・沖縄・東アジア社会教育研究会（TOAFAEC） 発行
　　　　　『中国上海・無錫・蘇州「社区教育」調査報告書』（2002年11月、佐賀大学）
　　(1)上海市閘北区・社区教育の実践と模索（上海市閘北区人民政府）
　　(2)学習型社区の建設（抄訳）−上海市閘北区・し江西路街道の回顧と展望
　　(3)上海市閘北区・し江西路街道社区学校規約
  　(4)上海市閘北区・し江西路街道社区教育の発展概況
　　(5)上海市閘北区の社区実務従事者に対する職務資格訓練に関する意見

６，




１，学習の生活習慣化に向けて　―上海閘北区社区教育の過去と今―
　　　　（「東アジア社会教育研究」第１２号、2007年）
　　　　　王鋼（上海市閘北区教師進修学院）、 江蕾（上海市閘北区教育局）
　　　　　訳：楊凡（宇都宮大学大学院修士課程）　陶涛（目白大学）

　上海市閘北区は面積29平方キロメートル、八つの街道*1一つの鎮*2があって、定住人口は78万人、外来人口は10万人である。従来、経済と文化教育の基盤は弱かったが、社区教育のスタートは比較的早く、1988年3月には上海市閘北区新疆、彭浦の二つの街道が同時に「社区教育委員会」の創設を宣言した。これは街道事務所が主体となって、街道内の工場、商店、部隊、機関、学校、警察署などの参加した、最も早く「社区教育」と名付けられた地域の住民組織であった。翌年、このような「社区教育」と名付けられた組織が閘北区で普及し、これによって、閘北区人民政府は同年に区の社区教育委員会を創設した。
　20年近くの実践と研究を経て、社区教育は、一定の地域内で、様々な教育資源を十分に活用し、学習を通じて社区全体の素質と生活の質を高めることによって、地域の経済建設、社会の開発及び教育自身の発展を促進する教育活動となった。
　今や学習を生活習慣化することは閘北区社区教育の理念と目標となっている。

　一、 学習の生活習慣化への経緯

　学習の生活習慣化に向けてという提言は単に理論から導き出されたものではなく、20年間の実績から生み出された成果である。
　20世紀80年代後半、閘北区社区教育の理念は「教育を成すのは人民であり、成された良き教育は人民を造る」であった。主に社区を基盤にし、「道徳教育の社会化」を重点に、学校、家庭、社会の連携による教育図式であり、また社会の力を借り、学校運営条件の改善を支持していた。そしていくつかの学校が「社会に報い｣、社会に向けて教育資源を開放し、社区学校間が協力し合い、共同の利益を求め、日に日に密接な関係を築いてきた。また区長を始め、街道主任、鎮長が主要な責任者となった区と街道、鎮の社区教育委員会が設立された。これで社区教育は行政が主導する段階に入り、当時の社区教育の主な対象は在校生であった。
　1995年、閘北区は「教育を発展させ、全体を動かす」という構想を出し、1997年には「閘北区全体の素質教育を推進、一流の教育行動綱領を創設しよう」という理念を打ち出した。この段階で社区教育の内容と形式は大きな変化を表し、各街道は次から次へと「週末の学校」、「市民の学校｣を設立し、「生涯教育祭」を催し、社区教育を発展させることが市民の素質と社区文化を高める重要な決め手となった。社区教育においては教師を尊重し、教育を重視し、学校が社区の人々に対して多角的な教育を進めて行った。この段階の特徴は政府がすでに社区教育の視野を社区住民の教育へと広げ、社区教育自身の発展と社区住民の教育習慣の育成とを一体化したことである。
　2000年から、閘北区住民は社区教育への参加と影響のもとで、学習意欲が次第に強くなる一方、生涯教育・生涯学習は、多くの住民に受け入れられ、ますます生活や就職との関係を意識するようになっていった。閘北区は全区の4,806人の住民に対してアンケート調査を行った。調査結果を見ると、閘北区市民の教養レベルが低いことを発見した。高校以上の学歴は56.08%であり、職業訓練を受けてから就職したい人が42%で、95%以上の住民は学習型社区を創設することに賛成し、97%以上の住民は更に学び、更に深く極めることを望んでいた。政府は社区住民の要望に対し、学習型社区を建設目標に定め、ここに社区教育は根本的な変化を見ることとなり、学習の生活習慣化は社区教育の重要な柱となった。

　二 、学習の生活習慣化の実践

　学習の生活習慣化は社区教育の新しい内容と意義を持つ。それは社会の経済発展の全体目標に組み入れられ、市街区域の綜合競争力を強め、人民の生活の質を高め、社会の安定を維持し、社区教育を展開する根本的な要素である。

　1.体制の整備と管理強化。
　数年の探求と実践を経て、閘北区は初めにバランスの取れた計画と社区教育が持続発展しやすい管理体制と運営機構を打ち立てた。その特徴は「政府は計画案を策定し、教育部門が管理し、街道・鎮が主体となり、社会の各方面は連携して、市民は自主的に学ぶ」ことにあった。第一に機関を設立し、人員を配置した。2000年11月に、閘北区は社区教育実験グループを設立し、区長はグループ長になり、43の委員会・企業・国家機関で構成された。教育局の局長は社区教育実施委員会の主任を担当し、専任の要員を配置した。第二に系統的な思考 計画を制定した。調査研究の上で、2000年11月に《上海市閘北区社区教育実験方案》（閘府発[2000]54号）を制定し、今後10年間の社区教育発展の総目標と保障措置を確立した。第三に責任を明確にし、協力体制を築いた。区政府が29の構成各部門の責任者と学習型社区の建設を推進する目標管理責任書を取り交わした。これによって実験期間の任務を明確にし、各方面は協力体制を築いた。第四に制度を策定し、措置を明確にした。実験過程中に徐々に社区教育成員部門を設立し、専門家グループ、文化教育の幹部、社区学校の連絡員などにおける特別テーマの会議制度を設立した。また目標・責任の審査、表彰・奨励、評価の査定など一連の業務制度を順次改善し、そして重点的なに社区教育指導員の派遣、社区学校建設の規範化、学校教育資源の開放など業務内容管理のファイルを作成した。同時に、2000年から、閘北区の財政は毎年特定項目50万元資金を割り当てて、区の教育局は20万元の事務経費と200万の人件費を支出した。また、05年、区の政府は、社区教育関連予算を100万元まで増やし、社区教育の継続的な発展を保証した。

　2.研究の推進と新規事業の探求
　社区教育が発展する上で内在する法則性を把握するために、閘北区は学習の生活習慣化を進める過程で、科学的考察を重視し、区の情況と関連させ、一連の社区教育に応用した研究を展開してきた。次にいくつか重要な点を記す。
　第1、教育部、市の関連課題を受けた。2003年、閘北区は国家教育部の「第10カ五年計画」の重点課題《我が国の社区教育実験研究推進》に参与し、《上海市閘北区が社区教育実験研究推進》、《社区教育資源の開発、統合と相互利用研究》の課題を引き受けた。2004年には国家の「第10カ五年計画」の社会哲学課題《21世紀初我が国大都市中心の社区教育発展の研究》の課題を引き受けている。2006年に《上海生涯教育立法研究：閘北分課題研究報告》、《上海国家級の社区教育実験区運営形式の研究》の研究を完結させた。第2、社区教育課程と教材の研究を推進した。社区内の人々の様々な学習要求を満たすため、教育内容を科学的、有効的なものにする。閘北区は何度も市民素質と学習要求に対する調査研究を行い、市民に適した教育内容及び学習方法を研究してきた。また、大学の研究機関の力を借り、《社区教育課程の開発研究》の課題を完成した。この研究成果を生かし、社区教育の実践を指導した。現在、わが区はすでに《日常生活の指針》、《市民教養のテキスト》、《中高齢者心理健康の教育》の3冊の教材を編纂し、全区の社区学校の必修教材として使用してきた。そして、社区教育指導員養成講座を開き、教材の使用を指導している。第3、各街道・鎮の社区教育の現段階の成果に対して評価を行った。全面的に全区の各街道・鎮の社区教育整理調整し、社区教育が正常に展開することを保証するため、閘北区は2003年7月から教育評価事務所に依頼し、12人の理論と実践の専門家を招聘し、実施段階に応じて全区の八つの街道1つの鎮に対して社区教育実験業務の現時点での成果を評価した。専門家による採点、事務室の審査、社会への公示後に、社区教育の先進的な4部門、社区教育の成績がめざましい5部門が評定された。第4、評価による、10大プロジェクトの研究を展開した。2005年に閘北区が提出した社区教育10大プロジェクトは以下のものである。《閘北の学習型組織の創設成功事例集》、《閘北区社区教育特色課程の開発・実施プロジェクト》、《閘北区社区教育人材センターの設立》、《社区学校の管理ハンドブックの編集》、《外来者非識字者をなくす計画》、《市民の現代文明素質の育成計画の実施》、《閘北区2030人員に関する就業現状の分析と対策研究》、《閘北区青少年の徳育基地名簿》、《社区教育の教育統計ソフトウェアの開発》と《在職者の博思英語養成計画》である。社会への入札募集、専門家審議、落札と実施、全行程にわたる指導・検査などを通じて、大がかりな運用による価値有する成果を得た。第5、市レベルの実験プロジェクトの実施・推進。2006年に閘北区が市の教育委員会から命名した実験プロジェクトは21件、内容は弱者層の教育への配慮から、特殊な青少年の教育転化、社区教育サービス・プラットフォームの建設、マンパワーの各方面への調整など。2007年に、これらのプロジェクトに対し科学的管理を行い、重点を“育成訓練、分類指導、成果査収、表彰交流”の4項目におき、相応の政策を制定し、実験プロジェクトの準備、スタート、実施、完了までを推進し、「計画倒れ」に陥ることのないように全市を挙げて、高レベルの研究成果を達成している。

　3.組織の体制を整備し、要求に応じた教育の提供
　豊かな発想と優れた実践力を有する強固な団体組織は学習の生活習慣化の理念を実現する上で不可欠である。2001年の初めより、閘北区はこのような団体の育成に取り組み始めた。6年後、研究者団体、広報団体、実行団体とボランティア団体などの骨幹団体が出来上がってきた。研究者団体は主に10人の専門家からなる顧問団と5人の兼任研究員で組織され、定期的に閘北の学習型市街区域創建のため、情報伝達、方針作成、計画立案、難題解決などを行った。広報団体は閘北区社区17人の教育講師たちで構成され、教育、司法、医学、金融、文化、科学技術、社区などの様々の分野から集められ、定期的に各街道（鎮）や各中小学校で広報解説業務を担う；実行団体社区専任指導員と各職能部門の兼任実務員で構成され、主に企画、管理、組織、調整、指導、研究などの任務を行う；ボランティア団体は主に社区内の老幹部、退職教師、建設技術者と芸術家から構成され、現在4,876人が学習型市街区域の創建に積極的に活動している。今までの5年間で、この4団体は地域の中で3,506回の養成訓練講座を開催し、講座参加人数は延べ人数203万人に上った。
　2001年2月に、閘北区は教育関連から45名の専任社区教育指導員を選抜した。この45名の社区教育指導員は、街道･鎮ごとに学校の管理者1名と教師4人で構成され、全区すべての街道、鎮に派遣された。社区教育指導員団体を強化するため、閘北は規約文書を制定し、指導員の仕事内容、責任、選抜の条件および職務規則を明確にし、同時に、収入、休暇および資格の評定などの権益を保障した。競争制、招聘制、順番制、養成制などの制度を通じて、社区が教育指導員団体の良好な発展を促進し、社区教育指導員の専門能力を向上させ、閘北の全面的社区教育実験の進展のため堅固な基礎を築き、社区教育の貴重な資源と財産にした。

　4.オンラインの設置と学習の便利性の提供
　学習の生活習慣化のため、「学ぶ者には学ぶ学校があり、教育には教育ルートがある」というような状態を作り出さなければならない。閘北区が社区学院を頭に、社区学校を基盤に、成人学校、職業学校、各中小学校を補助とする縦と横の、全区をカバーする社区教育ネットワークを努力を重ねながら作りあげた。現在、全区には一つの社区学院、九つの社区学校、71の社区分校、242の教育施設がある。
　頭となる社区学院は2001年9月に、区政府が3.2億元を投資し、建設した。この学院は100畝の土地に、130室の多目的教室、20のコンピューター室、近代的な実験棟、会議センター、広報センターなどがあり、主に地域性のある高等職業技術の学歴教育と一般教育（研修教育）を行う。2002年4月、社区学院の中に閘北区社区教育研究センターと閘北区市民学習指導センターが創立され、主に理論研究、情報交流、教材開発、団体の育成と社区教育の展開を図っていた。2004年6月、正式にネットとサブネットの二つの部分からなる閘北区社区教育ウェブサイト（www.shzbsj.org）を立ち上げた。ネットは区レベルの社区教育を反映させ、サブネットは八つの街道と一つの鎮をつなげ、閘北地域全体をカバーし、1000余りのページ数を有した大容量で、広範囲の社区住民に親しまれるネットとなっている。
　街道（鎮）の社区学校は基盤の役割を果たしている。現在、閘北区の街道（鎮）のすべてに社区学校が創立されている。これは街道・鎮が設立し、教育行政部門が学校を主管し、民営教育機関の管理方法を取り入れ、社区学校の運営基準を確定した。また税は免除されている。全区は月一回の社区学校連絡会議制度を設け、定期的に学校運営に関する情報の交流、問題の解決、任務の確認などについて協議している。また社区学校へのネット上での応募と統計処理を実現し、さらに定期的に特色あるカリキュラムの研究討論と学習成果の発表を行っている。2006年末には、わが区の七つの社区学校が独立校舎を持ち(全区の78%を占める)、毎年百余りの新しいカリキュラムを出し、定期的に社区学校の「良い学生」、「良い教員」の評定をしている。
　社区内の各種の学校と文化施設は学習習慣化への補充作用を果たしている。教育局が2004年に《閘北区教育局がわが区の小中学校教育資源を社区に開放、実施の推進に関する意見》を制定し、96ヶ所の小中学校、職業高校（民間経営を含む）に毎日午前6時〜7時、夕方5時〜6時は社区住民へ運動場、図書館、閲覧室、コンピューター室と各種の専用教室を開放することと祝日と休日の開放時間の更なる延長を求めた。同時に、毎年夏期に政府は施設開放に対する総括評定と顕彰を行い、10ヶ所の模範地区、18ヶ所の先進学校を顕彰した。その他に、街道、鎮の学校を開放過程の中の安全問題を協議して、街鎮に住民のための保険をかけようと奨励している。

　5.形式の多様化と豊穣な収穫
　学習型組織は学習の生活習慣化の重要な推進体である。今世紀初頭から、閘北区には学習型組織のモデルが数多く創設されて、例えば、?江西路街道の王振柱の家庭は「第4期全国学習型模範家庭」に選ばれたが、全国では五つの家庭しかなく、彼は上海での唯一の家庭である。大寧路街道の朱家駿居住棟「全国文明居住棟」に選ばれ、それは上海市には2ヶ所しかない。教育関連部門の学習グループ、クラス担任グループなどが「上海市学習型グループの先進的クラス」に選ばれた。また、区財政局の在職訓練では、「職位精進」活動が数十年間持続しており、我が区の社区教育展開の輝く模範になっている。区総工会から提起され「五歩推進法」は学習型グループの創設に関して五種類のタイプに分類した。つまり：始動型、到達型、向上型、先進型と模範型である。創設を通して学習力を高め、凝集力を増強し、創造力を掘り起こした。各街道（鎮）は学習型社区を創設することを目標にして、各社区に適した方法を取り、それぞれ特色を持つ社区教育の活動を展開し、学習型家庭、居住棟、団地などの様々な「文化のオアシス」を生み出している。例えば天目西街道の「五手プロジェット」、?江西路街道の「生涯教育デー」、大寧路街道の「輝く居住棟群」、彭浦新村街道の「幸福家園」、北駅街道の「琴棋書画」、共和新路街道の「陶行知思想の社区定着」、宝山路街道の「赤色の宝山路」、臨汾路街道の「団体が特色を作る」、彭浦鎮の「文化が鎮を鋳造する」など、特色の鮮明な街道社区教育のブランドが形成された。
　閘北区はまた一連の社区教育展示交流活動を展開した：生涯教育学習デーの展示活動、社区教育現場展示会、社区教育の段階的成果展示会、学習型家庭の模範展示、社区教育指導員教育経験交流会、学校教育資源の社区開放大会、教育部評価歓迎動員大会、社区学校建設規範化表彰大会、学習型団体の展示交流、学習型社区設立の国際論壇、アジア開放大学18期の年次大会など、これらの活動が学習型グループの創設を効果的に推進した。

　三、 学習の生活習慣化への展望
　学習の生活習慣化は閘北社区の教育の目標であり、その本質は社区に適した生涯教育の体系を作ることである。過去20年間、特に最近5年間の努力と探求で、閘北区社区教育の進展は顕著で、先進的である。今後の仕事は地域生涯教育の体系の完備に向けて社区教育の発展を更に進めることである。
　学習環境を更に改善して、生涯学習の雰囲気を高めることが重要である。ネット、ラジオ、テレビ、看板、広告、パンフレットなど様々なメディアを充分に利用し、幅広く生涯学習の「知識は財産、知識は運命を変える」などの学習理念を宣伝し、大勢の市民を自覚的に学習することへ導き、社区教育に対する認識率と参画率を高め、またそれぞれ特色を持つ宣伝内容を改善していくべきである。各街道、鎮は自身の歴史文化基盤と結び付け、従来の社区教育活動を維持しながら、毎年の教師の日の「社区教育宣伝日」をきっかけとして、多彩で豊富な活動を計画し、多様な形式で、人々に歓迎される教育活動を展開していく。徐々に各街道、鎮の長所を生かし、共通する基盤の上に多用な活動を展開し、活力ある社区教育モデルを作りあげていかなければならない。
　市民の教育水準を一層高めなければならない。各類の教育養成を発展する上で重要なことは、社区教育が全員に、全行程を、全面的に行われると同時に、特に在職者、失職者、老人、外来者、未成年及びほかの社会的弱者にも配慮して進めるべきである。社区教育の特徴に適した教授方式を採用し、通信教育、研究サロンなどの個性的な通信教育活動を展開する。政府の提唱と市民の要求とを結び付け、各段階、各方面、多内容、多形式の教育訓練活動を行い、的確で有効な市民学習を展開すべきである。
　教育機関建設を一層規範化する必要がある。社区学院の指導的な役割を充分に発揮させる。閘北区社区教育研究センターは、ネットを利用して街道や住民のために社区教育発展の情勢や情報などを提供して、定期的に全区の社区教育幹部の養成をし、多種多様な養成活動の学習資料を提供し、8街1鎮の社区学校の設立・運営の管理指導を強化する。実践での問題点について研究すると同時に、市民の学習要求と結び付け、積極的に外部の力を借り、現代的な教育手段を利用し、授業内容のディスクを作って、市民に随時随所に学習できるようにして、閘北区社区教育サイトの利用率、クリック率と普及率を高める。社区学校建設の規範化を強化する必要がある。我が区の社区の発展計画によって、社区学校の運営条件を本格的に改善して、優れた管理団体にし、社区学校の管理制度を強化して良質な教育課程を開発し、教材、授業の準備、教師の人材、統計、応募などの教育管理から着手し、研究の重点を具体的なプロジェクトの形式で社会の各方面からの協力を得て、その成果を全区で広げるようにする。
　学習型組織を一層強化する必要がある。社区教育を媒体とし、学習型社区の基盤をしっかりと築く。各街道、鎮は学習型社区の創建を推進する指導機関を設立し、各関連部門と協調して、街道政府を主体に、職能部門が責任を持ち、社会団体の支持を得た住民が積極的に参加する、社区教育の持続的運営機関を作り上げる。各街道、鎮は従来からの創建基礎と文化基盤によって、地域の特色を持つ学習ブランドを絶えず作り出さなければならない。
　「学習の生活習慣化」は閘北区20年間の社区教育の結晶である。生涯教育体系への探求は閘北区社区教育の新しい追求であった。閘北区は引き続き社区に立脚し、社区に依拠し、社区にサービスし、ますます社区教育の全員化、規範化、現代化、均衡化、自主化と社区教育の品位と品質を高めることに力を入れて、市街区域の綜合競争力を強め、人民の生活の質を高め、社区の調和を保ち、地区と市民の総合的な資質の持続的な発展を促進していく。
　(謝辞：本論文の日本語訳にあたって、鈴木正雄氏をはじめ、久喜市漢日双語交流会の皆さんに校正・補訳をして頂き、心から感謝致します。黄丹青)

　参考文献：
1.閘北区人民政府 《大力発展社区教育 組織推進学習型社会建設》
　　　　上海学習型社会建設交流材料
2.閘北区教育局 《閘北区社区教育委員会関于対閘北区各街道（鎮）発展社区教育実験工作
　評估的意見》 閘社教委[2003]4号
3.閘北区人民政府関于批転区社教委 《関于深化閘北区社区教育工作的實施意見（2005年
　-2007年）》的通知》閘府発[2005]15号
4.聯合国教育科学組織教育双書 《学会生存》 教育科学出版社
5.聯合国教育科学組織教育双書 《从現在到2000年教育内容発展的全球展望》
　　　　　　教育科学出版社
6.聯合国教育科学組織教育双書 《教育ー財富蘊藏其中》 教育科学出版社
7.聯合国教育科学組織教育双書 《教育的使命》教育科学出版社
8.[美] 彼得・経吉 著 《第五項修煉》上海三聯書店
9.丁鋼 《創新--新世紀的教育使命》 北京教育科学科学出版社
10. 陳建翔等 《新教育：為学習服務》教育科学出版社
注：
１，街道：居住地域、区役所の出張所、末端行政単位
２，鎮：県の下部、行政単位




２，２００７年上海市徐匯区徐家匯街道・社区教育における実践報告
　　　　（「東アジア社会教育研究」第１３号、2008年）
　　顧 錫培・趙 信□（火偏に韋）・符 湘林（上海市徐家匯街道辨事処）
　　　訳：�･ 萍（江戸川大学准教授）

　2007年、徐家匯街道は社区教育の推進に関して、継続的に全国社区教育実践区の発展基準を指針にし、共産党の第16期第6回中央委員会全体会議の「中国共産党中央委員会による社会主義の下で調和の取れた社会を構築する上での重要な決定事項」、および徐匯区「社区教育の推進に関する実践的な意見書」を徹底的に実施した。また、区の教育局が打ち出した「社区教育の強化、学習型社区のモデル地域の創設、住民の生涯学習システムの構築により、地域住民の生活の質と総合的な素質を全般的に高める」という方針に従い、「2007年徐家匯街道における“教育法”の貫徹に関する目標責任書」を実施に移った。さらに、社区教育の体制を健全化し、教育基本施設の建設を強化し、文化・精神文明における社区教育の役割を発揮することで、調和のとれた社区の形成に強力なサポートを提供してきた

一、指導力の強化、機構の健全化および社区教育基礎条件の改善

１．制度をいっそう強化し、社区教育の構想を明確にする
　街道の党委員会と事務所は、「三つの代表」という重要な思想を基準にして、学習型社区創設の重要性と緊急性を十分に理解し、社区教育の目標を実現するため、長期的に効果の上がる管理体制を確立した。07年、徐家匯社区教育委員会は街道事務所主任の顧錫培を主任に兼任させ、管轄区域内の社区教育を全般的に指導管理し、社区教育を社区建設の重要な要素として街道経済社会発展計画に取り入れた。さらに、「党と政府の指導、教育部門の管理、関連部門の協力、社会の積極的な支持、社区による自主的な活動、住民の広い参加」という管理体系及び実施体制が形成されつつである。社区教育連合会議という制度を継続し、定期的に社区教育を研究する。この他、今年の上半期、専門家による諮問制度を強化し、社区教育の専門家を招聘した定期的な議論を通して、科学研究の課題、特別講座、教育に関する助言、特色のあるモデル課程などの活動の中で専門知識を活かし、社区教育の飛躍的な発展に役立ててもらった。これをもとに、今年街道が下部の拠点施設、実務者及び特色のある活動を中心とする社区教育の発展への構想を確立した。

２．四大資源を統合し、下部拠点施設を改善する
　資源の統合は、社区の改革と発展にとって必要であり、社区資源を十分に生かすことで、その効果を最大に発揮するのに重要な措置でもあり、それは社区教育を展開する上で重要な基礎である。社区教育を全面的に推進し、学習型社区の建設、生涯学習システムの構築、調和のとれた社会の形成、住民の学習ニーズの充足などを進めるために、徐家匯街道が各種の優れた資源を絶えず結集統合した。07年、徐家匯街道が資源の統合力を増大し、四大資源（つまり、学校資源、区域資源、人的資源、広場資源）を統合し、社区教育の総合力を形成した。それと同時に、予算を増やし、下部施設を重点的に改善することにより、社区資源と民間資源の共同発展および相互作用を図ることができた。
◆四大資源を継続的に統合する
　07年上半期、街道が社区の施設と学校の共同建設をさらに推進し、ともに活用することになった。例えば、美大と連携し、中国結び、ビーズづくり、編みもの、絹造花、切り紙細工、陶芸など7つの講座を開設し、学生数は延べ320人近くを数えた。また、董恒甫専門学校と連携し、投資と資産管理、コンピュータ、英語の三つの講座を立ち上げ、100名あまりの受講者を受け入れた。それと同時に、学校を社区に開放させ、住民の文化･スポーツ生活を豊かにした。また、学校との交流を活発にし、関係を強化した。
　さらに、街道が区域内の国公立施設、例えば、中国科学院天文台、上海市気象局、上海8万人スタジアムなどと連携し、施設の共同利用で社区教育をサポートする。それ以外に、各種の教育資源、例えば、高齢者教育、女性教育、人口教育、科学教育、法制教育などを社区学校に取り入れ、資源の最適化を実現した。
　それと同時に、社区内の著名人、技術者と特技を持つ青少年を活かし、人材データベースを充実させる。区域内の各広場の資源を統合させ、社区教育のための広大な基盤を提供した。四大資源の統合によって、分散した資源を集結し、その総合力を十分に発揮させ、各方面の連携プレーで多様な目標を達成することができた。
◆社区の下部施設を改善する
　各種の社会資源のさらなる統合以外に、街道が管轄内の資源の整備に取り組み、社区下部の拠点地域を大いに改善した。07年、社会開発科が下部施設の整備を計画に取り入れると同時に、各居住区に入り調査を行い、その実情と住民の要望を把握するように努めた。各住民委員会の幹部の全体会議、および各住民委員会のグループ会議を通して、施設の状況およびその要望の聞き取りを実施した。施設整備の申告制度をつくり、各住民委員会の申告により、総合的に考察した上、関連施設を整備した。現在、徐家匯街道30の住民委員会の活動室面積は3,375平方メートル（86室）に達し、必要に応じ、4月に各住民委員会に、黒板30枚、テープ・レコーダー30台、電子ピアノ30台、アコーデオン2台、卓球台11台などの設備を設置し、経費５万元を投入した。すべての住民委員会の活動室に新聞雑誌30部あまりの購読料として、経費10万元を投入した。それと同時に、徐家匯はまとまった資金で新しい徐家匯社区文化センターを建て、住民に快適な訓練環境を提供することができた。このように、豊かな教育資源が各種の文化教育活動の力強い支援となり、社区教育を向上させる基礎をつくった。

３．人材育成の規範を形成し、社区教育の向上を促進する
　徐家匯社区教育活動の広がり及び住民の学習熱意と要望の向上により、一定数の優れた指導者、教師と志願者チームの形成が切実な課題となった。そのため、2007年に街道が社区教育人材の育成に力をいれ、「文化教育幹部の育成制度」、「社区教育志願者協会」など多くの措置で、異なった面から社区教育の人材育成を強化した：
◆文化教育幹部の育成。2007年、街道は文化教育幹部の育成訓練を展開し、文化教育幹部を対象とした月一回の育成訓練と定例会を制度化した結果、訓練レベルを高め、街道と住民委員会の疎通を図る基盤を作り上げたと同時に、各住民委員会の文化教育幹部が学習と仕事上の体験を交流するための条件を提供した。その上、定例会を通して、現在の仕事の進捗状況および下部からの要求や提案などが直ちに伝達され、仕事の効率と質を高めた。文化教育幹部の定例会で出された黒板新聞の制作訓練を受けたいという要望に対して、街道が全面的に協力し、4期の訓練を実施したうえ、訓練の範囲を広げ、その人数を積極的に増やしていった。
◆志願者の組織化。社区の志願者は下部の文化教育幹部の補助として、上半期は、各住民委員会の文化教育関連においてすでに8人の志願者（科学、教育、文化、体育それぞれ2名）を確定し、一線の仕事に協力してもらった。2006−2007年度の街道社区教育志願者の交流・総括・表彰大会で、各分野で活躍していた個人と団体を表彰した。大会に参加した指導者と専門家が志願者の著しい成果および学校教育機能の社区への応用、ならびに学校と社区との連携に対して、高い評価を与えた。
　同時に、徐家匯街道の育成してきた各種の教師グループ、文化団体、スポーツ団体、特色のある団体がさらなる飛躍を遂げた。

二、要望を取り入れた特色のある社区教育活動の充実

　2007年、徐家匯街道が社区の調査研究、専門家の現場論証などを通して、住民の本来の要望を把握し、地区の特色と社区教育の現状を踏まえた上、社区教育を進めことにした。その結果、対象を明確にした多様で、個性的で、豊かな社会教育を実現した。

１．思想道徳教育を重視した夏休みの青少年活動
　2007年の夏休み、街道が多様な青少年の教育活動に取り組み、体験教室を20開設した。例えば光啓小学校のOM訓練教室、潘家宅住民委員会の科学普及不思議広場、殷家角住民委員会の絵画教室などがあります。また、上海国際児童劇団の公演と日曜コンサートもあった親子広場のイベントを4回催した。ほかには、社区学校が徐匯中学校と協力で親子水泳教室や、上海遊泳館と共同でこども水泳競技大会を主催した。7月8日に匯師小学校で徐家匯杯OM対抗戦があり、50余りの家庭が重力車部門に参加した。豊富な活動は青少年の心身の成長を促進し、子供と保護者に好評であった。

2．住民委員会の特色を生かした「一住一特」活動の展開
　住民委員会の活動室の機能をより有効に活用して住民にサービスを提供するため、街道が「一住一特」をベースとする方針を提案し、下部の活動を活発にした。07年、“一住一特”活動の項目の申告後、各住民委員会の特色項目に対応して、街道が積極的に支持した結果、各住民委員会はそれぞれの活動が展開できた。例えば虹二住民委員会は5月21日に「誰でも参加できるビーズ作品展」を催し、出品者が一同に会し、技術の交流をしながら作品展示のもたらす楽しみをみんなで分かち合った。5月16日、潘家宅住民委員会の文定天下苑科学普及活動室がオープンし、活動室の壁面や窓にそれぞれ「科学普及のまど」にし、ほかにも移動式の「不思議おもしろ展示箱」六つ、および「夢の工場」という小さな装置を配備した。これらの施設は知識、興味、体験を一体にし、子供たちが参加することで自分の知恵を十分に発揮し、科学の進歩がもたらす楽しみを経験することができた。このように、多くの青少年に科学知識を学ばせ、その実践能力を育成するための舞台を提供した。「一住一特」を通じて、各住民委員会は住民の科学普及と精神文化の構築への参加、社区内の調和を促進した。

３．パラリンピック理念と精神の発揚
　2007年の上半期、徐家匯街道が「パラリンピックを歓迎する」、「オリンピックとともに住民の運動を、調和のとれた社会で」をテーマに、一連の「オリンピックを歓迎する」活動を企画した。4月21日に、街道が上海リードスポーツ投資コンサルティング会社と協力して、「パラリンピックを迎え、社区で愛の輪を」というタイトルの青少年スケート体験活動を催した。40名の身体障害者、特別貧困家庭の子供たちが、ベテランのスケート監督の下で、この北国のスポーツを楽しんだ。この活動は公益性が主要な特徴であり、大衆の精神文化への要望を満たすことを主な目的とし、同時に青少年のスポーツ活動に参加する積極性も十分に引き出した。5月にはまた「オリンピックを迎え、調和のとれた社会を」というテーマに、第2回「健康と幸福の社区運動会」を催した。また、われわれは「私から見たパラリンピック」を題にして、美術展を催し、青少年に「平等と寛容」の精神を体得させ、パラリンピックがもたらす感動を体験できるようにした。さらに、子供たちにパラリンピック代表団の歓迎会に参加させ、国内外の子供たちに心の交流を通して国境を越えた友情が結ばれるようにした。

４．第2回徐家匯街道学習祭の開催に向けて
　2007年10月21日―27日、第2回徐家匯街道学習祭を催した。その期間中に、開幕式をはじめ、「私から見たパラリンピック」をテーマとした上海児童美術創作大会の授賞式、「児童文化と児童文化産業」を題とした第2回徐家匯社区文化シンポジウム、および国際女性編み物コンテスト開催を知らせる記者会見、最後に閉幕式が行われた。学習祭の活動を通じて、徐家匯街道の広場文化活動の効果をいっそう高めた。

５．住民の精神文化への要望を満たすことを目的とした社区文化活動
　文化は民族の伝統の魂であり、社会の発展の基である。徐家匯社区は先進的な文化形成を目指し、人を基本とする理念を堅持し、多彩な文化活動を通して住民の精神文化への要望を満たした。上半期、街道が文化団体の新春公演、「越劇の百年、芸術にふれる」越劇特別公演、各住民委員会の小正月を祝う会、第2回アマチュア芸術公演会、「音楽と心の対話」というテーマの音楽講座、社区映画祭、親子広場の開会式、第9回徐匯区社区文化祭、青年舞踏家黄豆豆の特別公演、芸術団体の団地での伝統芸能巡回公演会（陳家宅、柿子湾）、無形文化遺産巡回展、コレクションと鑑賞の講座など数十回の文化活動を催した。百万家庭マナー学習プロジェクトが順次に進めており、社区学校は区婦人連合会の要求によって、活動を学校、社区と仕事場の3ヶ所で進めた。07年に開催した10回の講座に延べ750人（そのうち外来就労者が延べ25人）が参加し、区婦人連合会の出した目標を完全に達成した。

６．住民の興味に合わせた社区学校の教育課程の改善
　07年、社区学校が2006年の課程統計表、教師統計表、2007年の予定課程表を完成した。今年上半期、街道の社区学校と下部の住民委員会の教育ステーションが合わせて120科目を開き、上海市の特色ある課程の申告も終了した。教育ステーションの課程を規範化するため、今年街道が教師の授業計画表を統一させ、事実に即した表を作るように求めた。3月に街道の高齢者学校を正式に引き継ぎ、現在高齢者学校が合わせて8科目を開き、受講者の延べ人数が220人を数えた。また、“華?杯”高齢者書画コンテスト、徐匯区高齢者教育芸術祭演劇特別公演、高齢者芸術教育作品展に相次ぎ参加した。ほかには徐家匯街道高齢者分校の教育年表資料の整理を完成した。およその統計によると、今年社区の住民が年間の教育訓練受講率が51%に達した。

三、現実を踏まえ、未来を展望し、社区教育の影響力を向上させる
　
　今年上半期、徐家匯社区の社区教育が比較的に大きな進歩が見られ、住民と社会の各方面から高い評価を得た。この半年間、50%近くの住民が社区の組織したさまざまな教育訓練に参加した。街道の社区学校が2006年に上海市百万家庭マナー学習の優良学校に選ばれ、宮令�ﾑ、楊人秀などが上海市の優秀な個人に選ばれました。高齢者学校の受講者が徐匯区の高齢者教育芸術祭の演劇特別公演に参加し、出演した滬劇、越劇と京劇はすべて梅花賞を得た。これは政府の強力な支援によるものであり、幅広い住民の積極的な参加と協力の成果でもある。
　来年、街道が社区教育の指導体制、管理方式と資源のネットワーク化に関する整理改善、専門家、教師、志願者の質の向上および形成の規範化、社区教育の知名度の向上と影響力の強化にさらに力を入れる。具体的には、学習型街道の構築を目標にし、絶えず質の高い教育活動や、特色のある教育活動に目指す。一つ目は工芸美大と共同で開催する講座により力をいれ、千人の民間手工芸を学ぶプロジェクトを立ち上げ、国の「民間工芸の故郷」を申請するための準備に取り組む。二つ目は個性の主張、多様な活動、特色の形成」という構想によって、実践と結びつけ、優れた社区教育の形成に努める。三つ目は社区の文化スポーツ活動を基盤に、思想性、教育性、芸術性を一体化にした特色のある社区教育活動を展開する。
　徐家匯街道が未来を展望し、認識を深め、衆知を集めて有益な意見を広く求め、より強力的に、より新しく社区教育を進める所存である。児童、青少年、有職者、定年退職者などの人々はすべて社区教育活動に参加し、活動の中で楽しみと満足感を得て、生涯にわたる学習により精神文化教養度を高め生活の質を改善し、調和のとれた徐家匯社区を作り上げ、生きる希望の満ちたメロディーを奏でていきたい。

（訳者付記：本文の日本訳の校正･補訳に関しては、久喜市漢日双語交流会の杉村雅子、鈴木正雄、飯塚早苗の三氏にご尽力していただき、最終的には黄丹青氏にチェックしていただきました。記してお礼を申し上げます。）

３，２１世紀初期における中国社区教育発展の目標、重点及び特色
　　　　　（「東アジア社会教育研究」第１３号、2008年）
　　　　　葉　忠海（華東師範大学教授）　　訳：呉 迪（筑波大学大学院）

　21世紀の初期において、中国の社区教育事業は歴史上最も重要な時期にある。社区教育の未来図を描き出すことは、これからの社区教育の発展にとって有益であり、中でも社区教育発展の目標、重点及び特色について検討することは大きな価値があると考える。
（キーワード：21世紀初期　中国社区教育　発展目標　発展重点　発展特色）

一．中国社区教育発展の目標

（一）発展目標の全体像
　2010年までの中国社区教育発展の目標は、社区教育発展領域の拡大、発展の深化及び高水準化の実現である。これらは、21世紀初期における各国の社区教育発展の背景に基づき、国際社会における社区教育の新理念、経験及び発展の趨勢を参照したうえで、中国の現状に鑑みて定められたものである。時代の特徴、中国の特色、社区教育の特性を体現する現代社区教育システムの構築のために基礎を定め、それによって中国終身教育システムの構築を促進し、さらに学習型社会の建設、人材の育成と発展を促すことも目標として立てられている。より具体的には以下3点になる。
１）今後５年間における社区教育発展の“三つの維度”を明確化にしたこと。“三つの維度”とは、“広度”（発展領域の拡大）、“深度”（発展の深化）及び“高度”（高水準）を発展させることである。
２）2010年までの社区教育発展の任務を明確にしたこと。すなわち、部分的に展開されている社区教育の実験段階から、全国に全面的な発展段階へと推進させ、時代の特徴、中国の特色、社区教育の特性を体現する現代社区教育システムの構築のために基礎を定めることである。
３）今後５年間における社区教育発展の目的が“三つの促進”にあることを明確化した。それらは、中国終身教育システムの構築、学習型社会の形成、人材の育成と発展を促進することである。

（二）発展目標の詳論
１）社区教育の発展領域の拡大
　中国の東部地区から中西部地区へ、都市の中心部から周辺地区へ、都市から農村へ、経済の発達した農村から遅れた農村へと拡大し、2010年まで全国に全面的に社区教育を展開する。これについては『社区教育の促進に関する教育部の意見』(1)において、次のような具体的な目標が述べられている。「2007年までに国家レベルの社区教育実験区は、各省（自治区、直轄市）まで広げ、省レベル、市レベルの実験区の範囲も拡大する」「経済、教育が発達している東部地区においては、社区教育は農村まで展開し、初歩経験を取得する。中西部地区においては、発達した農村地域で社区教育の実験を展開する。」これら社区教育の発展領域の拡大を通して、各地域住民の社区教育に対する参与率、認知率を向上させることができると考えられる。
２）社区教育の発展の深化
　この点については、筆者は2002年5月に香港大学で開催された「第二届亜太地区終身学習与継続教育検討会」において初めて言及した。その後も数回をわたって、社区教育実験区が「実験を通して社区教育を促進すべきである」ことを指摘した。これらは具体的に次のように現れる。�@社区教育資源開発の充分化、�A社区教育手段の情報化、�B社区における各種の学習型組織の普及化、�C社区教育ネットワークの成熟化、�D社区教育推進力の合力化、�E社区教育運営の法制化、�F社区教育における投資システムの多元化、�G社区教育理論研究の体系化と全面化などである(2)。
３）社区教育の高水準化
　社区教育の高水準化は、主に以下の三面から実現していく。
　第一は、発展目標のレベルアップ、すなわち学習化社区を目指すことである。具体的には、「社区教育実験区」→「社区教育模範区」→「初級学習化社区」→「高級学習化社区」の順番に沿って発展していく。前述の『社区教育の促進に関する教育部の意見』が示したように、2007年まで一部の高水準の省レベル・市レベルの社区教育実験区を形成し、社区教育模範区を設置する。
　第二は、評価基準の向上である。社区教育の発展に伴い、実験区、模範区、学習化社区の総体的な評価基準の向上のみならず、学習化社区を構成する各要素に対する評価の基準も高めなければならないのである。
　第三は、社区教育職員の水準向上である。社区教育が絶えず発展していくことは、社区教育職員に対する期待も高くなっていくことである。若者及び高学歴に対する期待があり、さらに職員の能力が専門化、グローバル化に向かって充実することも期待されている。
４）現代化の社区教育システム
　現代化の社区教育システムは、中国の終身教育システムにおける重要な構成部分となっている。ここでいう現代化とは、時代の特徴を反映する社区教育を指しており、具体的には、社区教育の発展が、情報化、知識化、グローバル化などの特徴を体現することを意味している。そのため、社区教育発展の外向性を拡大し、情報化・グローバル化の歩調を速めると同時に、社区教育における知識量も増やさなければならないのである。

二．中国社区教育発展の重点

　ここでは、以下の七つの面から社区教育発展の重点を論じたい。
（一）社区教育の対象は、現段階では不利な立場に置かれている社会的弱者である。不利な立場に置かれる弱い人というのは、一般的にグローバル化や社会経済システム改革の背景のもとで、ある種の原因で生存と発展の機会を失い、自らの事柄で精一杯であり、個人及び家族の最も基本的な生活の支えになりにくく、国家や社会の扶助を受けざるを得ない人々を指す。先行研究によると、このような人たちは、複雑性、多様性、動態性、分散性などの特徴を有する(3)。中国において、退職失業者、障害者、流入労働者、高齢者などは社会的弱者の代表である。これらの人びとは、社会秩序の安定を保つためのキーポイントであり、上述した人材育成を実現するための重要な対象となっている。したがって、現段階において、社区教育の重点を社会的弱者に置くことが、「教育配慮」であると同時に、「生存配慮」にもなっていると筆者は考えている。とくに「単位人」から「社会人」、「社区人」へと転換する今日、社区・社区教育は、社会の安定維持および社会の発展推進において、いっそう大きな役割を果たしている。もちろん、不利な立場に置かれる社会的弱者を社区教育の重点にすることが、社区教育対象の「全員性」を否定することではなく、彼らたちにいっそうの関心をもつべきであるということを意味する。

（二）社区教育は、社区の成人教育が重点である。
　社区教育は社区未成年人教育と社区成人教育の２種類に分けられる。確かに、時間や空間の転換によって教育の対象や重点は変わっていくものであり、その点には言及する必要があると思われるが、筆者は、社区教育の重点として社区の成人教育を位置づけたいと考える。成人は社区人口の多数を占めているにもかかわらず、教育を受ける機会や条件から考えると、青少年より成人、とりわけ退職失業の成人が教育を受ける機会は圧倒的に少ない。前述した社会的弱者の社区成人教育においても同様である。それゆえいっそうの「教育配慮」を必要とすると考えられる。

（三）「中国公民」と「世界公民」を兼ね備える新しい人材の育成が重点となっている。
　教育の目標は必ず時間、空間の条件の制約を受け、特定の時代の特徴を反映する。言い換えれば、時代の特徴は教育目標を決定し、社区教育も例外ではない。21世紀初期において、グローバル化の発展趨勢は全面的に拡大しつつあり、グローバルな意識や価値観もしだいに認められてきている。このような背景のもとで、ハイスピードで変革し発展している社会に適応していくためには、「中国公民」・「世界公民」の素質を兼備する新型の人材を育てていく必要があり、これは、中国社区教育にとっても重要な目標となる。
　まず「中国公民」としては、以下の素質を備えるべきであろう。�@中華民族の子孫であることに誇りを感じ、現代化の中国を建設する使命感を強める。�A三つの「面向」(4)意識及び改革、革新精神を有する。�B社会主義市場経済システムや全国文明活動の目標に適応する行動をとり、なごやかな人間関係を形成する。�C社会の変革や発展に適応した知識や能力を身につけ、とりわけ外国語を基礎とする基本的なコミュニケーション能力やコンピュータ、インターネットの運用能力を高める。�D心身ともに健全であり、自己管理能力を身につけている。
　「世界公民」の素質としては、前述したグローバル意識のほかに、人類・平和・生命に対する愛と尊重、寛容な精神、責任感などを持つべきであろう。総じて言えば、「世界公民」としての新しい道徳観、世界観を樹立し、それを日常生活のなかで表していくことが必要である。
　将来の中国社区教育は、存分に開放性、包括性、調和性及び自分の特色を体現すべきであり、これは、グローバル化の発展趨勢と中国社会との結びつきが、社区教育の目標においても大きく反映している一面であると考えられる。

（四）「内発的な動力開発」システムの形成が重点となっている。
　弁証的唯物論によると、物事の発展の根本的な原因は外部にあるのでなく、物事の内部、内部の矛盾性にある。社区教育も例外ではない。筆者は、社区教育の内部矛盾性を「社区住民の日増しに高まる学習ニーズとこれらのニーズに応えうる社区の可能性との矛盾」と定義づける。この矛盾が絶えず発生し解決されることによって、社区教育は絶え間なく発展することができる。
　では、どのように社区住民の学習の積極性を呼び起こすのか。実践によると、社区住民自身が自ら「文化迫力」を感じてこそ、学習の積極性が生まれるのである。ここでいう「文化迫力」とは、ある特定の社会背景の下で、人間の生存や発展に必要とする知能と、住民自身が有する知能との「文化位能差」を意味する。この「文化位能差」こそが、住民が感じる生存や発展への力を内在的な学習動力へと転換させるのである。
　さらに、「文化迫力」をどう強めるかにあたって、社区の外在動力を増強し、社区区域の現代化発展を速める必要もあるだろう。そして、社区区域経済の変化や発展を加速し、情報化および開放性、グローバル化との歩調を速めることも重要であると考える。

（五）学習型組織および社区教育機構の建設が重点となっている。
　社区における学習型組織は、社区教育の媒体でありながら、学習型社区の基礎でもある。学習型社区の建設は社区教育発展の最終の目的であり、学習型組織は社区教育の発展及び学習型社区建設の基礎となっている。
　また、社区教育機構―社区学院・学校の建設や発展も重視しなければならない。社区学院・学校が社区教育の必然の産物であるため、社区学院・学校の発展を促進することは、社区住民の日増しに高まる学習・生活ニーズを満足させ、学習型社会の建設に不可欠の要素となっている。社区学院・学校の重要な役割についての実証は、多種多様な実践がすでに物語っているが、全国的な状況から見ると、まだ多くの課題が残されている。例えば、管理システムや投資システムの不完備の問題、専門職員養成の問題などである。これらの問題は、今後の社区学院・学校、さらに社区教育の発展を考える際に、無視されてはならない問題であると考えられる。

（六）情報技術を中心とするeラーニングの発展が重点となっている。
　前述したように、社区教育の情報化は時代的必然であり、すでに具現化されている。したがって、社区教育の手段や形式から見ると、情報技術を中心とする現代eラーニングを重点的に展開し、それによって社区教育を促進すべきであろう。「現代eラーニングは、情報技術の発展に伴って誕生した新たな教育形式であり、知識経済時代における終身学習システムを構築する主要な手段である」(5)。コンピュータネットワークや多様な情報技術を用い、遠距離かつ高速で授業に関する音声や図像、データなどを伝送することによって、教育の目的を達することができる。たくさんの実践に証明されたように、eラーニングは以下のメリットを持っている。�@時間や空間の制約を受けないこと、�A両面性、交互性の問題を解決できること、�B教育資源の共有によって資源不足の問題を解決できること、�C自由性、自主性を持つ学習形式であることなど、である。これらのメリットに基づき、さらに中国における地域間格差による資源不足の問題を念頭に置き、eラーニング教育の展開を重要視しなければならないであろう。

（七）政府主管から協同管理への転換が重点となっている。
　1980年代以降、世界各国において、政府主管から協同管理への転換は、都市管理体制の主流になってきている。協同管理というのは、一定の範囲において多元的主体が公共事業に対して協同の形で管理する過程である。言い換えれば、現代都市の協同管理は、政府の参与を除外するのでなく、政府主管型から政府と社会との連携を主張し、都市公共事業に対する住民の参与意識の向上を強調している。これは、都市の基礎組織である社区および社区教育にとって例外ではない。とりわけ中国都市社区自治という背景のもとでは、政府と社会との協同という視点がますます重要となってきている。
　今後度５年のうちに、政府参与と社区自治とを並行して進める管理体制や「五力合一」(6)の運営システムを整備していくことが社区教育管理体制の重点となる。

三．社区教育発展の特色

　最後に、社区教育発展の特色について以下５点から述べておきたい。
（一）「三つの代表」思想及び科学的発展観を社区教育行動の指針とする。
　「三つの代表」思想とは、中国共産党が時代の趨勢にしたがい、歴史唯物論の原理に依拠して提起したものである。この思想は「中華人民共和国憲法」に明記されており、社会主義現代化を建設する際に全国国民の指導思想となっている。一方で、科学的発展観は発展的世界観と方法論を体現するものであり、「新時代の新発展観」である。中国社区教育の発展を考えていくうえで、この両者を併せた指針を特色としていきたい。
（二）「二つの発展」を社区教育の発展方向とする。
　中国社区教育の目的は著しい特色を有する。「二つの発展」である。一つは、社区住民の全面的発展であり、需要の全面的発展、素質の全面的発展、本質の全面的発展などが含まれている。もう一つは、社区の継続的発展である。これは中国の国情によって決定した方策であり、社会利益、経済利益及び生態利益の調和を目指し、学習型社会を建設するために基礎を定めることである。
　（三）地区別による発展の段階性を社区教育の基本的な原則とする。
　前述のとおり、中国経済の発展や社会の発展は、顕著な不均衡状態を呈している。このような不均衡状態によって、現段階の社区教育は、段階性の原則を順守し、各地それぞれの実情にあわせて発展し推進すべきであり、「千篇一律」を避けねばならないのである。
（四）中華民族の文化を発揚することを社区教育の役割とする。
　中華民族の文化は悠久の文化である。社区教育において、中華民族文化の発揚は主に次の三つの面から表れている。第一に、社区教育史の経験や教訓を総括し、現代の社区教育の発展に役立たせ、社区教育における中国の特色を掘り起こすこと。第二に、中華民族の伝統的な美徳を継承し、社区教育活動の重要な内容とすること。第三に、例えば、江浙文化、斉魯文化、関東文化、中原文化、巴蜀文化など、各地区のそれぞれ独特の文化伝統を伝承し発展すること、である。
（五）政府の推進と社会の推進との並行を社区教育発展の方式とする。
　中国は人口が最も多い国である。社区教育の対象人口が非常に多いため、国民の公僕としての党や政府は、全力で協力しなければならない。同時に、中国は発展途上国として、経済的基礎が比較的弱く、社区教育に対する党や政府の投入にも限りがある。したがって、中国社区教育の発展を促進するには、党や政府の推進と社会の推進とを並行し実施する方式が重要であり、それが有効で実行できる方法である。

（注）
(1)教育部「教育部関於推進社区教育工作的若干意見」、2004年12月3日。
(2)詳しくは、拙著『21世紀初中国社区教育発展研究叢書』（1）巴蜀書社、2004年
　7月、pp.1-8、を参照されたい。
(3)社会弱者については、楊向群、項複民「教育関懐：弱勢群体的根本需求」（同上
　書）を参照のこと。
(4)三つの「面向」というのは、「面向現代化」（現代化に向かって）、「面向世界」（世界に向かって）、「面向未来」（未来に向かって）である。
(5)教育部「面向21世紀教育振興行動計画」、1999年1月13日。
(6)「五力」は、党や政府の推進力、市場運営力、社会参与力、社区自治力、社区成員　の主体力を指す。

（主要参考文献）
１．教育部「教育部関於推進社区教育工作的若干意見」、2004年12月3日。
２．葉忠海著『社区教育学基礎』上海大学出版社、2000年6月。
３．葉忠海著『創建学習型城市的理論和実践』上海三聯書店、2005年4月。
４．葉忠海主編『21世紀初中国社区教育発展研究叢書』（1）巴蜀書社、2004年7月。
５．黄?主編『面向21世紀中国成人教育発展研究』高等教育出版社、2002年1月。
６.?志輝著『教育全球化―中国的視点和問題』華東師範大学出版社、2004年1月。

４，上海市生涯教育推進の道筋とメカニズムに関する研究
　　　　　　　　　（「東アジア社会教育研究」第１３号、2008年）

              呉　遵民（中国・華東師範大学教授）
　　　　　　　訳：千野陽一（東京農工大学名誉教授）



〈要約〉上海市は国際的大都市であり、近年、生涯教育に関する理論研究と実践の両面で中国の最前線に立っている。生涯学習時代のなかで、上海市の生涯教育発展にはどのような特色があるのか。また、その現状と未来の発展方向にどのような問題と課題があるのか。この論文では、上海市における生涯教育発展の現状をくわしくとらえたうえで、市の将来的な生涯教育推進の道筋（路経）とそのあるべきメカニズム（機制）について深くたち入って検討してみたい。また、生涯教育行政の骨格の創設、教育資源の総体的整備方式の創造、生涯学習ネットワークの確立などの視角から、上海市の生涯教育推進のためにいくつかの具体策と建設的意見を総括的に提言する。
（キーワード　上海市　生涯教育　道筋とメカニズム）

一．問題提起
　現代生涯教育理念は40年にわたり発展し充実してきたが、その後も日に日に成熟に向かっている。理論の発展は社会的実践を導き推進するが、生涯教育理論の発展もその例外ではない。生涯教育理論は、積極的な実践活動に転化してはじめて大きな影響力を発揮できるのである。国際的視点からみて、生涯教育は世界大多数の国家における教育政策策定のよりどころとなり、その基礎となっている。中国においても、19世紀の80年代初頭に生涯教育理念が導入されたが、それ以来、生涯教育は政府の重視と民衆の支持によって国策の一環となり、人間の生涯発達の促進とともに調和的で発達した学習社会創設に重要な貢献をしている。改革開放の扉となった上海市は、21世紀に入りさらに新たな挑戦といっそう激しい競争に直面している。たとえば上海内部の発展がつくりだした新しい環境が、創造性豊かな人材の養成、新産業の発展と新たな知識技能への市民の適応、文化的教養と精神的充足の道を探る個々人の要請などを生みだしている。そこでは、これらを満たしてくれるさらに健全で力にあふれた生涯教育体系の確立が強く望まれている。また、市の外部的環境からみれば、市は、経済のグローバル化と一体化した国際的発展という要請にどうこたえ、さらに活力に満ちすぐれた学習的雰囲気を醸成できる「新機軸をうちだせる都市」（創新型都市）にどう発展していくかという課題に直面している。これらの課題解決のためには、人びとの生涯学習を基礎にして、生涯教育理念に導かれた構造的な政策的仕組みを創造し、市の改革・発展をさらにおしすすめなければならない。

二．上海市における生涯教育の現状と問題点
　上海市は、わが国ではもっとも早く1980年代初頭から生涯教育理念をうけいれた都市であり、実践過程ですでに数多くの試みと改革を進めてきた。20年余をこえる発展過程のなかで、市は単純な職場教育、あるいは成人教育というせまい範疇から抜けだし、その視野は広範な教育領域や都市発展、市民のモラルや資質向上の段階に達しようとしている。同時に、一連の関連政策の策定・実施を推進するなかで、生涯教育は、理念のレベルを越え、その生命力と影響力は実践段階にまでおよび、発展してきている。このような勢いをたもちながら、「学習型都市」創設の目標を達成するためには、いま述べた政策・制度の保障を完全なものにしなければならない。しかし、いっそう重要なことは、さらにふみこんだ行政組織機構と政策体系面の大胆な改革および重点的突破の必要性である。

（一）上海市における教育資源利用状況の現状と潜在する問題
　１．「正規教育」（学歴教育）―教育資源は豊かで普及率も高いが、閉鎖性の弊害克服が必要である。
　近年、上海市は正規教育の体系内では質・規模をともに重視する考えで、その発展に努力してきた。精力的に各段階における各種の学校間の構成と配置を調整し、そのなかで、教育条件が比較的恵まれない学校や社会経済の発展に適応できない学校に対しては調整と統廃合を進めてきた。このことで教育資源の配置はさらにすぐれたものになったし、学校規模も適切となり教育効果も向上した。市政府の大々的な資金投入と学校建設により、市は高い質を示す国民教育水準に達することができ、市民の資質向上にたしかな基礎固めをしただけでなく、総合的な能力をもつ人材の大量養成に大きく貢献してきた。市政府が行った仕組みづくりのすばらしさは明らかであり、市政府が後ろ盾になっていたために、財政や教育資源はすべて相対的に豊かで安定していた。しかし、生涯教育の視角からみると、伝統的な教育体制による硬直した管理方式は、かえってこれらのすぐれた教育資源を基本的にある種の閉鎖状態に閉じこめ、社会的にみてもさらに広範な市民の利用を妨げている。その閉鎖性と硬直性・画一性の弊害をどう突きくずし、有限の教育資源を幅広い民衆にどう充分利用可能なものにするかが、まさに、生涯教育体制づくりに際して、充分に考えぬき変革しなければならない重要課題である。
　２．民営教育―校数は豊かだが、質の向上とそのあり方に関する管理点検体制の強化が待たれる。
　教育市場のさらに進んだ開放にともない、民間が投入する教育資金が教育・訓練領域ではしだいに重要な力となってきている。この力は、生涯教育推進に不可欠で頼りがいのある資源であり、生涯教育発展の資源でもある。2002年段階で、上海市の民営教育組織（非学歴教育）数はすでに1,432ヵ所に達し、就学人数は198万8千人におよんでいる。専任・兼任教員は3万474人、専任・兼任職員も8,275人に達している。数のうえでは、市の各種民営教育訓練組織はすでに比較的発達しているだけでなく、民営教育が持つ特徴としての機敏性・多様性は、市の経済発展と経済構造の調整過程において市場の需要にぴったりマッチし、人材の需要にもたしかな形で応えられる力を発揮している。専門課程の開設は社会的要請と深い関係にあるため、そこでの人材養成は基本的に社会の需要と一致している。また、一部市民の職業拡充にもすぐれた教育サービスを提供している。しかし、さらに教育の質に関していえば、民営教育の多様性・機敏性には有利な点が少なくないが、それだけにまた、質に対する保障に欠けるため、管理点検体制の強化が必要という問題に直面している。つまり、どのようにして民営教育の市場配置にかかわる準拠を正式に決定し、その質的内容を向上させ、幅広い市民にさらにすぐれた教育サービスを提供するかが、当面、生涯教育発展過程で市が直面する課題のひとつとなっている。
　３．社会文化教育―教育資源活用の場は初歩的に用意されているが、資源開発と有効利用に関する問題解決がいっそう求められている。
　都市の社会文化資源には、文化施設（たとえば図書館、博物館、文化館、体育館など）、メディア教育資源、社会教育活動（講座、各種展覧会など）が含まれる。上海市は歴史的に文化的伝統を持つ国際的大都市であり、長い歴史的経緯のなかで豊かな社会文化資源もはぐくんできている。とくに近年では、「学習型都市」創建・生涯教育発展の政策のもとで、多様な文化資源が比較的巧みに開発され利用されている。民衆の間に多様に根をはった社区文化活動ははつらつとして展開され、上海風文化の華麗なビュースポット（高い質の社区芸術・文化・スポーツ活動グループが参加する各種イベント・フェスティバル…訳者注）を創りだしているだけでなく、都市における文化的雰囲気と学びの精神もぬきんでた形で示されている。しかし、次のような問題もまだ存在している。
　第一に、文化施設建設面では、上海図書館・博物館など大型資源が市中心部にすでに建設されているが、区・県段階における文化施設ネットワークの建設と利用はさらに進んだ整備充実が必要である。
　第二に、社会教育活動面では多様な公的講座がさかんに開設されているし、社会教育資源は有効に組織されて利用され、濃密な文化学習の雰囲気がつくりだされているが、その対象範囲のひろがりが期待される。
　第三に、メディア教育資源は豊かであり、そのネットワークも基本的に形成されているが、その教育効果をいっそう高めることが当面の主要な課題である。　
　総括的にいえば、上海市の文化施設の基礎は堅実で条件もすぐれ、市民の生涯学習における重要なルートとなり、またその出発点となっている。さらにふみこんで解決しなければならない問題は、施設利用率の向上とその影響範囲の拡大である。また、ひきつづき施設の教育資源とその機能発揮に有効な調整を行い、新たな資源を開発し利用をたかめることによって、施設配置と施設の内部構造に有効な調整を行うことである。
　４．社区教育―発展の勢いはすばらしいが地区間の格差は明らかであり、運営体制の保障をなお完全にする必要がある。
　上海市政府による推進と市民の積極的参加によって、市の社区教育はしだいに住民の生涯学習の重要な内容となってきた。全国22の社区教育実験区において、上海はその5ヵ所(1)を占めている。しかし、現在、適切な解決が求められている一連の問題がある。
　第一は、区域による発展の不均衡性である。市の一部の区・県、さらに街道社区は現在でも最低限度の文化教育活動すら未展開の状況にあり、いくつかの人口密集区域は住民の自主的学習や自主活動の場さえ提供できないでいる。その主な原因には、基礎組織としての社区における教育意識の極端な低さ以外にも、資金の欠乏、場の確保の困難さがある。
　第二は、教育資源管理の分散である。社区内の多様な教育資源には縦割り行政による分割という特徴が見られる。とくに学校では、いまだに社区との意思疎通や相互援助がみられず、学校外環境からの有効な支えが無いため、青少年の道徳水準向上を困難にしている。一方、社区住民も頼りになる教育資源にこと欠き、地区の特徴に根ざした下から上への生涯学習活動の展開は困難である。
　第三は、制度的裏付けの欠落である。社区教育の発展は、各段階の政府による大きな支持があるとはいえ、現在にいたるまで、ある種の自生自滅の状態にあるように思われる。いいかえれば、制度的裏付けの欠落により、住民自治や社区教育発展に対する内からのエネルギーが弱体化してくるのである。

（二）市民における生涯学習の意図とその現状分析
　上海市民が生涯学習の主体であり、市民の学習意図・現状・期待は疑いもなく市生涯教育体系の構築にあたりまず考慮しなければならない基礎的な要件である。市の30をこす街道の住民対象に実施したアンケートによる500件のサンプリング調査（郵送で実施…訳者注）によれば、次の八つの特徴が浮かんできている。
　１．生涯教育・生涯学習の理念は人びとの心に深く浸透している。
　近年、メディアと学術界の生涯教育・生涯学習に対する関心の高まりとともに、上海市民も個人・都市・国家・社会の発展に対して生涯教育が持つ意義を深く理解し、市民の生涯教育参加の要求も生まれてきている。生涯教育理解のルートをみると、78.8%の市民が新聞・定期刊行物・テレビ・放送などのメディアによってその知識と基本理念を身につけている。また8.8%の市民が職業講座・書籍から、さらに3.7%の市民が市政府の公文書によって生涯教育について理解を深めている。これをみるかぎり、市は生涯教育の社会的宣伝面ですでに大々的な活動を展開し、比較的すぐれた成果をあげていることが理解できる。とすれば、さらに必要なことは、政府公文書の公開度の改善であり、関連政策の決定・伝達の持続的強化である。
　２．市民の学習要求は旺盛で、生涯学習に一定の参加がみられている。
　上海市における社会経済発展の総体的水準が、市民における知識のリフレッシュに対する速度と職業競争の重圧度を決定する。時代の発展と自己完成の要求に適応するためには、積極的学習と向上の努力が市民の内在的エネルギーによってますます強く求められている。サンプリング調査によれば、現在市民は、毎月、学習に一定の時間と経費を振り当てている。0.9%の市民が「業余時間」（業務余暇の時間）でもほとんど学習していないとしているものの、86％の市民はみずから生涯学習者になりたいと答えている。サンプリング調査に示された問題点は、49.7%の市民が生涯学習実現の方法が分からないでいることである。事実、明確な学習計画を持っているのは19.6%にすぎず、37.5%の市民が「考えてはいるが明確なプランはない」と回答している。これとは別に42%の市民が、「業余学習は好きなようにできるので、特別の考えやプランはない」としている。同時に、一部の市民は、業余学習には有効な指導と学習相談が欠けるとし、公共メディアやその他のルートで学習関係情報をえるのは困難だと答えている。とくに青年は、生涯設計と生涯教育関係において社会的援助をえるのがむつかしいという反応を示している。
　３．学習自体の喜び、個人的精神修養の深まりや社会の急速な変化への適応は、市民が生涯学習を行う主な理由である。
　46.8%の市民が「学習が好きだし、学習は喜びと充実感をあたえてくれる」とし、45.6%の市民が「学習は、すばらしい憩いと楽しみの方法である」と答え、44%の市民が学習は自分で精神の修養ができるとし、52.2%の市民が「知識リフレッシュの速度はきわめて急速で、たえず新たな知識を学ばねばならない」と答えている。このことから、市民の生涯学習参加の主な要因は、学習自体の喜び、個人的教養の向上とともに、社会変化に適応し不断に自己を完成させてゆく内在的エネルギーであるといえよう。　　しかし、指摘しておかねばならないことは、世界各国が注目し重視もしている「人権としての学習権保障」という理念が、いまだに人びとにうけいれられていないことである。学習権保障は生涯教育体系構築におけるひとつの基本的原則であるから、学習権に対する自覚の強化が、きわめて重要なのではないか。　
　同時にこのサンプリング調査を整理した表をみて気付いたことは、職業競争からの要求はまだ市民の生涯学習の主要な要因となっていないことであり(2)、そこには生涯学習に経済的利益を求めようとしない上海市民の態度と価値観が反映されている。
　４．上海市生涯教育政策と総体的施策に対する満足度は「まあまあ」(普通)である。
　調査結果によれば、上海市政府が生涯教育推進と学習型都市創建の面で実施した具体的政策と総体的施策に対して市民の評価は高いとはいえない。28.3%の市民は身近で利用できる教育資源は比較的充足しているとしているが、48%の市民は「まあまあだ」と答えている。しかし、16.1%の市民が教育・学習資源は比較的少ないと答えている。とすれば、生涯学習資源提供の面では、市はすでに一定の成果をあげているとはいえ、なお拡充の余地があるものと思われる。とくに、社区教育施設の拡充が、問題解決の物的基礎となる。
　５．社区教育は市民の日常的学習の重要な方法である。
　すでに述べたとおり、社区教育に提供される学習の場と学習機会はいまでは上海市民の日常的学習の重要なルートとなっている。調査が示すように、市民の居住地周辺で利用できる場は、主として社区学院・社区学校・社区活動センター、あるいは区・県・街道立の図書館・図書室などの施設である。いいかえれば、市民居住区の集中地域に、一、二ヵ所の社区文化教育センター、あるいはなんらかの社区教育施設を設置すれば、わずかな努力で大きな効果をもたらす市民の生涯学習展開の出発点となる。　
　同時に調査は、市民の社区教育の現状認識と発展に対する期待として、以下の特徴を浮き彫りにしている。
(1)個人的な時間のやりくりが、市民の社区教育参加の成否をきめる第一要因である。(2)市民が社区で展開される教育活動を歓迎するか否かに関わる三つの重要な要因は、条件が整備された施設、施設の開放時間と文化的雰囲気にみちた環境である。
(3)社区が組織する体育・レクリエーション活動、興味中心の学習グループ活動、多様な知識がえられる講座には市民が比較的喜んで参加し、同時に、社区住民は芸術鑑賞、健康づくり運動、保健などの学習機会をえようとしている。しかし、図書館や資料センターの利用率は逆に低くなっている。このことは、社区教育においてその展開内容の決定や図書館施設建設などの際に、住民要求にしっかりと依拠し、行政の垣根を乗りこえた新機軸のうちだしがさらに求められていることを物語っている。
　６．各種の公共メディアをとおして知識を獲得し、教育訓練活動に参加することが、生涯学習推進の主要なルートである。
　調査が示すように、日常生活においては、定期刊行物・書籍・テレビ放送・インターネットが住民の生涯学習のルートである。67.7%の市民が新聞を読んで学習を進め、40.7%の市民が書籍をとおして学習している。また、67.1%の市民がテレビ放送によって知識を獲得し、さらに23.3%の市民がネットワークによって情報をえている。こうみてくると、きわめて多くの市民が公的情報メディアによって知識を手にしているので、民衆の情報メディアの教育機能の強化はきわめて重要だといわねばならない。　
　ついで、さらに21.6%の市民が教育訓練に参加して学習を進めていると答えている。これらの市民は仕事の暇をみて「自費」（買単）で職業に関して「充電」をし、積極的に職場の現職訓練に参加して職業的素養をたかめている。したがって、もしそうなら、教育訓練サービスと教育の質向上に対する管理点検能力の強化が、市民の生涯学習を促進させる重要な措置になる。
　７．公的な教育資源の開放は市民の関心の的である。
　都市の公的な教育資源には、社区教育施設以外にも、博物館、図書館、文化館、体育館、美術館、ないしは劇場とともに「映画館」（電影院）が含まれていて、この「五館一院」は生涯教育体系構築の重要な部分となっている。現在、上海市はこれらの公的な教育資源の建設と開発にすでに一定の成果をあげ、重要な教育資源の中心的施設も建設されている。しかし、いまふれた施設の開放度はたかいとはいえず、その教育機能も未開発で、まだ活用されていないその影響力についても深い理解がみられていない。
　調査がはっきり示しているように、生涯教育体系の構築と学習型都市創建に際して、政府がとるべき施策としては「図書館・劇場・映画館などの公共的な文化広場をさらにすぐれた形で市民に開放させる」ことを市民はもっとも強く希望している。
　しかし、現状は決して満足のゆくものではない。65.9%の市民がこれらの公共的な教育（文化）施設の利用料はきわめて高価だと感じ、児童・生徒・学生は多少優遇されているが、普通の市民には適切な措置がとられていないと答えている。そのほか、施設自体が少なく、交通が不便なことも、市民が指摘する共通の問題である。
　ところで、中央政府は、2008年1月23日、中央宣伝部・財政部・文化部・国家文物局に連合通知書によって、公共的博物館・記念館・愛国主義教育基地などの入館料無料化に踏みきった。これを機に、今ふれた問題の多い上海市の公共的教育（文化）施設の状況改善にはずみがつくものと期待される。
　８．情報ルートのせまさは市民の生涯学習活動参加の主要な障害である。
　40.6％の市民が、生涯教育活動推進過程で、「学習情報ルートのせまさ」が生涯学習展開をはばむ主な要因であり、「生涯教育理念が充分に普及せず」、「生涯学習の雰囲気がまだ醸成されていない」のも、現在の主要問題の一つとしている。このことから、情報公表センターの建設、あるいは情報伝達メカニズムの組織化が、生涯教育を深く発展させる過程で市政府が強化を求められている重要施策のひとつとなっている。

（三）上海市における生涯教育管理体制と政策の現状
１．教育管理体制の現状
　上海市の生涯教育推進過程において、行政管理体制面の現状と問題点については、現在、おおよそ次の四点をあげることができる。
　第一に、各段階の行政管理部門が、生涯教育推進について実践レベルでなお共通認識に達していない。
　ここ数年来の上海市政府指導部の重視によって、人びとの生涯教育思想に対する認識はすでに深まってきているが、管理段階での協力という点ではまだ認識が共有されていない。生涯教育実践の推進には、社会各方面の力のひきだしが必要である。教育管理部門だけでなく、同時に文化放送事業部門や、たとえばその他労働・人事・社会福祉、あるいは財政部門の積極的参加と協力が要求される。しかし、このことを実現するには、行政の各段階の管理部門が生涯教育の実際的意義と生涯教育が生みだす大きな効果をまず深く認識することが欠かせない。このことによってのみ、日常活動上での積極性と協力の必要性を話題に乗せることができるのである。現在の市の状況では、各段階の行政部門あるいは教育管理部門にはまだこのような強い意識は形成されていない。したがって、生涯教育と各部門の活動とのあいだに内在的関係があるにもかかわらず、具体的な計画や実施面では、生涯教育をいっそう発展させる主体性と自覚性が弱くなる。このことからまず、どのようにして生涯教育思想を各段階の行政部門の指導者、とりわけ現場部門の管理者の脳裏にしみとおらせ、生涯教育推進に対する自覚的行動を可能にするのかが重要な課題になる。そのためには、市段階の行政部門が統一して手筈を整え組織内部で生涯教育理論の学習を行い、じょじょに認識を共通にしながら強力な推進力を形成することが必要である。
　第二に、教育管理における縦わり行政が教育資源の充分な利用を不可能にする。　
　次の図のように、大都市の生涯教育資源とその管理はしばしば異なった教育単位と行政部門に属している。生涯教育推進には社会各方面の共同・協調と努力が要求されるのだが、現在の縦割り行政による資源の分割体制のもとでは、各方面に気くばりをしながら生涯教育資源を計画的に統一することはきわめて困難である。現在の行政体制では、各段階の基本組織は直接の上級組織にだけ責任をもつように決められているし、その他の行政部門もみずから直接担う活動任務があるため生涯教育は分担外のこととみなしている。また、はっきり自部門の利益だけを考えて主体的な参加を望まない組織もある。したがって、生涯教育は広い立場から総体的に推進されなければならないのだが、行政管理体制の改革が進んでいないので、一歩前にでることもなかなか困難である。

図：上海市教育行政管理機構図

　各段階における各種の教育は教育主管部門の管理を受けるが、それがかえってその他の部門との幅広い連携を生み出している。社会公共文化施設は別の部門の主管に属し、相対的に独立した利益集団が形成される。生涯教育の優れた環境と部門間の相互協力を形成するためには、各方面の教育資源を整合させ、利益の再分配が急がれる。
　第三に、すでに行われていた交流と協力は組織的保障や機構的保障に欠けていて、長期にわたる協力関係の維持が困難である。
　すでに述べたように、各種の教育文化資源は管理面で分割されているので、教育資源の有効で整合的な利用を困難にしている。上海市の関連部門はこのような情況をすでに意識していて、精力的な努力でその状況を変えてきている。たとえば、一連の部門では情報交換を強めているし、一連の管理部門では教育養成訓練計画の策定ないし組織化に際して、指導部段階で提携を強めている。しかし、総じていえば、このような交流と協力には、組織と機構上の保障に欠けるため、その成果もしばしば短期間に止まっている。長期的にみれば、組織的制度の縛りに欠け、盾となる関連法規も無いために、このような交流と協力も市における生涯教育の持続的発展という目標や生涯教育体系構築という重任を実現できないでいる。
　第四に、ひとつの政府業務に多くの部門がバラバラに関わる管理制度は、教育資源の統一的計画や共通の享受にとって不利である。　
　各段階の各種資源が異なる主管部門にそれぞれ帰属するために、市場経済体制に導かれ、異なった利益集団が形成される。各集団はみずからの立場に固執するので、生涯教育推進のための資源の統一的計画やその共通の享受は困難となる。いいかえれば、ひとつの政府業務に別々の責任者が数多くいる管理制度は、異なった利益集団によってそれぞれに業務が行われることとなり、資源を整合し統一的計画を立て、それをひとしく享受するのに大きな障害となり、生涯教育活動の全面的拡充にもマイナスに影響してくる。したがって、上海市生涯教育を発展させるためには、組織機構の制度刷新に関する行政機構面からの大胆でフレッシュな改革が、きわめて重要で必要なことは疑いもない。
２．上海市生涯教育政策の現状　
　上海市では、生涯教育の発展促進政策が、いま、しだいに形成されてきている。しかし、その政策内容には実質的な重点課題克服という性格がみられず系統性にも欠けている。近年、市政府は都市発展計画や関連公報において、生涯教育の発展・生涯教育体系の構築を強調し、市民に対する学習権保障の重要性と必要性を指摘している(3)。また、政策制定の実質的内容では、促進的で提唱型の規定が多くなっているにもかかわらず、しだいにその空虚さの弊害は克服され、具体化もでき活用も可能な方向に向かっている(4)。しかし、総じていえば、政策に系統性・総体性・継続性が欠けるという特徴は明らかである。つまり、適切な生涯教育政策づくりのためには、政府業務に多くの部門が関わり発展形式の非統一性をうみだす管理制度の克服が、主要な問題のひとつとなっている。生涯教育管理体制の改革と政策体系の形成は相互補完の関係にあるべきであるし、このために、体制改革が政策実施の進行と一体化しなければ、生涯教育推進は絵にかいた餅となる。上海市生涯教育資源の現状と市民の学習志向の考察を、現時点における市の生涯教育管理体制と政策にみられる問題点分析と結びつけてみると、市は生涯教育発展面ですでに一定の物質的基礎を持ち優位に立っているが、同時に比較的大きな改革と克服すべき空白部分をもっていると考えられる。

三、上海市生涯教育推進対策と提言
　以上の分析をとおして、当面の上海市生涯教育発展戦略の決定にあたっては、現状に立脚しながら未来をみとおして、さらに進んで以下のいくつかの面における問題を重点的に解決しなければならないのではないか。
（一）上海市生涯教育の目標をととのった形で制定する。
　上海市の次段階における戦略的発展目標にもとづいて、市生涯教育はふたつの大きな使命に直面している。第一は、上海市の高レベルで専門的な創造性に富んだ人材養成に対応する問題である。第二は、「一流都市、一流市民」づくりのために、上海市民（もともとの市民および外来市民）の総体的な文化・道徳資質を向上させる問題である。前者については的をしぼりこみ、上海市戦略目標の実現を保障する現実的な人材養成を市生涯教育発展の短期目標にしなければならない。後者の問題は、市における都市の将来的な発展目標に着眼したものであり、また高素質の人材づくりの基礎づくりともなるもので、生涯教育発展の長期目標とみなされねばならない。とすれば、市生涯教育発展のためには、とうぜん市民の学習権保障という基本原則を確立し、創造性豊かな人材養成を重要内容としながら、長短期の目標を結びつけなければならない。
（二）生涯教育資源の統一的計画とその整合性を実現する。
　上海市が、もし「だれでも、どこでも、いつでも学べる」という目標を実現しようとすれば、市民一人ひとりに充分で便利なだけでなく、その人にふさわしい教育（学習）資源を提供しなければならない。そのためにはさらに新たな教育資源づくりに大きな力を注ぐべきである。しかし、さらに重要なことは、多様な手段を講じて市が現有している各種の教育（学習）資源の統一的整備を開始し、充分な整備とともにその生き生きとした利用が可能になるようにしなければならない。具体的にいえば、生涯教育資源の統一的計画と整合は、機能させる目標の統一、情報の整合、資源ルートの拡大という三つの面からの強化によって可能になる。つまり、従来まで発揮していた教育機能をもつ資源を、生涯教育体系のなかでさらにそれにふさわしい場に位置づけるとともに、教育機能がかくされていたり、かたよった機能しか発揮していなかったメカニズムを、それらの教育機能を新たに回復し発揮できるように変えさせるのである。さらに、「上海市生涯教育資源ネット」のウエッブサイトを立ち上げ、ゆくゆくはこのウエッブサイトを市民学習者の情報相談センターや各種の文化教育機関の情報公表センターにしたい。また、教育的側面をもつすべての機構を生涯教育の名のもとにとりかこみ、市民のための生涯学習の場を共同でつくりあげ、その力量を市民の生涯学習に寄与できるようにする。
（三）生涯教育協調機構をつくりあげる。
　生涯教育資源の整合のために、生涯学習のネットワークを組織すれば、それは必然的に政府の異なった部門だけでなく、多くの社会組織や企業・業種にも波及することになる。このためには、いまふれた部門に対して規制力と統一的計画力を持つ機構をさらに創設し、上海市全体の生涯教育発展を統一的に調和のとれたものにする。この機構は次の機能を果たすべきだと考えられる。１）生涯教育理念の普及、２）生涯教育資源の統一的計画、３）生涯教育資金の配分、４）生涯教育による養成訓練の組織化、５）生涯学習ネットの管理、６）各方面の利害関係の調整、７）学習成果に対する評価・奨励の推進。
　上海市は、目下、このような生涯教育協調機構の創立を計画し2007年9月20日には、上海市生涯教育行政機構整備の一環として、市教育委員会内に生涯教育処を設置している。この生涯教育処の設置は、生涯教育協調機構整備推進の上では全国的に見ても画期的なことがらといってよい。しかし、いまふれた7つの機能実現のためには、今後もその機構創設の意義と目標設定に対する子細な吟味が継続的に必要となるだろう。
（四）生涯学習に積極的な市民に対する奨励制度の創設　
　市民の生涯学習を促進できる評価・奨励制度の創設とその完成は、生涯教育推進を積極的に発展させる重要な措置のひとつである。国外の一連の都市ではすでによく似た制度や方法を実施している。たとえば、アメリカでは、大学専門課程が現職の成人学習者のために、単位銀行制(5)や互換性(6)を実施し、従業員が養成訓練に参加する企業に対して免税あるいは納税金還付という奨励措置がとられている。韓国もまた生涯学習による取得単位を承認するよく似た規定を持っている(7)わが国でも、生涯学習推進のために奨励・評価制度を試行している地区や都市もある。たとえば、北京市西城区が2004年から試行し始めた「生涯学習累計単位カード」(8)や台湾地区の「生涯学習カード」(9)などは、ともに学習成果をつみあげそれを公的に承認するものである。
　内外の国家と地区の経験に結びつけて、生涯学習における累計点数による奨励制度を、次の目標と指導によって確立しなければならないのではないか。第一は、市民の自主的学習の積極性であり、第二は、伝統的学習観をあらためることであり、第三は都市全体にわたる教育サービスの質的向上である。具体的にいえば、この奨励制度は、学習累積点数カードを情報・知識の伝達手段としながら、市民の生涯学習活動過程の記録と情報の保存・蓄積によって、学習者の生涯学習活動参加とその成果収録を実現する主な方法である。さらに、この制度は、それをよりどころに、一歩進んで学習者が必要とする教育資源を提供する優遇措置をとるとともに、ある種の社会的承認のもとに市民の生涯学習参加の積極性を奨励するものである。
（五）　基本組織である社区生涯教育の力を発揮する。
　社区は、一定程度家庭と社会をつなぐ靱帯といえる。生涯教育思想を具体的に一人ひとりに深くしみとおらせ、利益をえさせるためには、社区のはたらきを軽視することは許されない。とりわけ、社区内の学校教育資源の力とその他の文化資源の力をバランスのとれた形でを発揮させ、社区をじょじょに生涯教育体系の大きな支柱にしてゆかねばならない。上海市生涯教育発展の現状と長期的戦略にもとづいていえば、社区教育の発展は市民のもっとも基本的な日常的学習生活から生まれる要求と個人の資質向上に答えることを基本目的とすべきである。その点では、日本の地域社会教育発展を推進する方式(10)が参考になる。日本では、基礎組織とされるコミュニティに幅広く文化教育施設を設置して、住民の日常生活に密着した学習活動を展開している。そこでは市民全体の資質向上・都市の精神文化創造という視角から、地域社会教育活動の内容が考慮されているのである。このような目的にもとづいて、上海の社区教育を全市にわたる生涯教育体系のなかに位置づけることが、生涯教育にもつとも基礎的でもっとも大きな広がりをもたせていくに違いない。
（六）異なった市民層の学習要求を満足させる。　
　前に述べたように、上海市は、生涯教育の発展戦略において、それぞれ長短期の異なった発展目標を確立しなければならない。短期的戦略についていえば、その主要なものは、最近における市産業構造の調整と現代的サービス産業の新たな発展をめぐって、人材の職業・技能水準について提起されている新たな要求を中心にすえ、各種人材の養成によって市産業構造の変革と発展を促進することである。長期的発展目標からみれば、市民全体の精神生活に関わる要求を満足させ、自己の人格完成のために行われる学習の発展が重要な内容となる。ひとことでいえば、前者（短期）の目標は、人材養成と経済発展を重要な方向とし、したがって、その重点は、多様なレベルの職業に関する養成訓練になるし、各種人材の養成が主要な位置を占めてくる。後者（長期）の目標は長期にわたる見とおしにもとづいて、公民の学習権を保障しながら、全市民の文化的資質を向上させ、市民の精神生活上の要求を満足させることであり、それが、市生涯教育推進にとって基本的に価値あるものと思われる。
（七）「農村からの出稼ぎ労働者の教育」（民工教育）の障害を克服し、その教育を有効に実施する。
　国家的視点からいえば、「民工教育」の重要性と将来的な経済発展および社会的安定におよぼすその重要な意義は、すでに充分に意識されている。2003年9月、農業・労働保障・教育・科学技術・建設・財政等の6部門は、『2003-2010年全国「農民工」養成訓練プラン』を制定した。そのなかでは明確に、教育養成訓練資源を充分総合的に整備し、自発性をふまえたうえで、各種教育養成訓練の提携を指導・奨励し、養成訓練項目を増大するとともに、養成訓練の規模を拡大し、「農民工」養成訓練の質とその効果を高めなければならないと規定されている。上海市では、現在、労働保障部門と民生部門がともに、すでに一連の項目を指定して特定経費を「外来民工」の教育・学習に充当している。しかし、量的に見れば、このような学習機会を利用できる「民工」の範囲は比較的せまくなっている。また、内容面では、主に基礎的な職業技能訓練に限定され、教養向上面での学習機会には欠けている。しかも、教育・学習資源の開放度をみれば、これら「民工」に対する関心もとぼしく、法律上の救済措置にも欠け、さらに差別や隔離さえ存在している。したがって、社区および企業がまず手をつけながら「民工」に対する学習奨励の仕組みを広く導入し、政府主導、企業主体、その他民間組織・団体補佐という形態の「民工」生涯教育体系の創設が考えられる。たとえば、市全体で「民工」の進学許可制度をもうけ、一定の教育年限に達していないものには政府が率先し、教育・労働・企業等の部門が共同で、はたらきながら学習する計画（たとえば、半労半学学校・夜間学校・日曜学校）をつくる。さらに主としてその目的・方式・優遇措置・奨励政策などを中心に全市的に「民工教育」を宣伝し、広く企業および「民工」の意見を聴取する。『上海市外来人口生涯学習ハンドブック』を政府が交付し、そのなかに「民工」の学習に関するルート・政策規定および優遇措置に関する情報をかならず掲載する、などがそれである。
　生涯教育の組織管理メカニズムを刷新し、機構間の長期にわたる協調体制をつくりあげ、多元的な協調体制の形成と生涯学習奨励メカニズムの保障に力を入れ、上海市生涯教育の力を一段階たかめる。そうすれば、市生涯教育事業はさらに長期にわたる発展をとげ、市民の資質を向上させ創造性に富む人材を養成することになり、さらには都市発展目標達成のさらに進んだくりあげ実現も、疑いもなく可能になるのではないか。

（注）
(1)閘北区、嘉定区、浦東新区、静安区、徐匯区(2)このような数値と結論がでたのは、この研究がとりあげたサンプルと一定の関係がある。この研究ではサンプルの49%が60歳を越える高齢者であった。
(3)たとえば、『上海教育事業「第10次5か年」計画および2015年計画要綱』では、「発展目標は、基本的に開放的であり、各段階の各種教育の仕組みが合理的で、相互に連携し交流し合う現代的生涯教育体系の建設である」と指摘している。
（4）上海市では、市民の生涯学習への参加を激励する具体的政策の面ではすでに完成している部分もある。たとえば、各レベルにおける各種高等教育機関の間では交流と相互援助の政策がすでに形成されているし（科目の相互選択、単位の相互承認など）、いわゆる「三校生」（高級中学卒業生・高等職業学校卒業生・高等専門学校卒業生）のように、高級中学卒業生はみずからの意思で普通大学受験を申し出ることができ、高等職業学校や高等専門学校卒業生でも、同等の学力をもつとして普通大学の大学院受験を申し出ることができる。また、各レベル各種の養成訓練の管理・実施も法規によって保障されている。民営教育の標準化された管理政策も、初歩的段階とはいえすでに形づくられている。各種の学校外の非正規教育活動もしだいに承認・推進され、政策的に一体的措置が保障されている。さらにいえば、特定の人びとの継続教育政策も完全なものになっている。たとえば、『上海市専業技術人員継続教育暫定規定』、『上海職員労働者教育条例』（改正案）、『幹部養成訓練工作条例』の制定などで、これ以外にも公務員・企業業種管理人員教育・養成訓練規定なども制定されている。
(5)成人学習者はみずからの要求と実際状況にしたがって大学専門課程で学び、一定の単位を取得し、大学に登録しておく。その後再度別の専門課程での学習が必要になれば、それなりの単位を取得し、その大学に登録しておく。最後に、いくつかの課程の単位を加算しながら、「零存整取」（積立て預金）とし、規定に達した単位を取得すればそれにみあった学歴証書を手にすることができる。葉忠海『学習型都市創建の理論と実践』、上海三連出版社、2005年、p145。
(6)在職者は異なる大学で取得した単位が認められ互換可能である。葉忠海同前書、p145。
(7)韓国が1999年に制定した『平生教育法（生涯教育法）』第28条「単位等の認定」には次のような規定がある。1．関連法規の規定により、本法及びその他の法律が規定する生涯教育課程を終了した者は、その単位及び学歴を国が承認する。2．次の各号に該当する者には、関連法規の規定により国は単位及び学歴を認定する。1）各種の学校及び生涯教育施設において必修課程を終了した者。2）産業団体で一定の教育を受け単位取得資格を証明された者。3）国・地方自治体・各段階の学校あるいは産業団体の能力測定検査において資格を取得したと認定された者。4）文化財保護法の規定にもとづいて、専門訓練を受けた者。この点に関しては、本研究課題のサブテーマ報告『上海市生涯教育立法の可能性に関する研究』参照。
(8)西城区管内では、学習ニーズが高く、学習経歴を保管書類として長く保存しておきたい住民は、だれでも「学習カード」を受けとることができる。このカードは、累計学習時間単位制を採用している。一学習時間を45分とし、20学習時間を一単位とする。学習者は一年ごとに養成訓練部門が発行する学習証明書を入手し、居民委員会の市民学校に提出し、街道の市民中心校が統一的に単位登録事務を行っている。計画・講師陣・固定された学習会場がすべてこのカードに書きこまれ、標準的教室形式で行われる多彩な訓練養成課程が、学習累計単位カードに記録される。学習内容には学歴教育・非学歴教育・教養知識・政策法規・科学普及・レクリエーションなど多種多様なものが含まれている。年度末に区全体で単位取得数が上位10名の学習者には「10人の優れた学習者」（十佳学員）の称号が授与される。累積単位が5で学習時間100以上の学習者には当該年度の「優秀学員」、50単位以上の取得者には「学習型個人」の称号とともに奨学金があたえられ、100単位を満たした学習者には特別な奨励金が授与される。
(9)2002年制定の台湾地区『生涯学習法』第17条は、「学校・機関・組織及び団体は国民の生涯学習活動への参加を奨励するために、主管機関の審査を経て生涯学習カードを交付し、累積時間数を学習成果の根拠とする」と規定している。いまのところ、「生涯学習カード」は20歳以上の成人に交付されるが、学習者がいつでも・どこでも・どんな方式でも行う学習成果について記録され、関連規定によって社会的認知がえられている。その一部には単位形式によって学校教育に接続することが可能なものもある。前掲『上海市生涯教育立法の可能性に関する研究』参照。）
(10)日本では、地域社会教育の展開は民衆の余暇生活を豊かにし、基本的資質の向上を目的にしているが、ひろく公民館・地域文化センターを発展させるなどの施策を講じて地域社会教育発展を推進している。　

５，上海市閘北区「社区教育」関係資料（2001） -記録・翻訳− 黄丹青

　　　　　　　＊東京・沖縄・東アジア社会教育研究会（TOAFAEC） 発行
　　　　　　　　　　『中国上海・無錫・蘇州「社区教育」調査報告書』 （2002年11月、佐賀大学）　　　　　　　

＜目次＞
１，上海市閘北区・社区教育の実践と模索（上海市閘北区人民政府）
２，学習型社区の建設(抄訳)―上海市閘北区・し江西路街道の回顧と展望―
３，上海市閘北区・し江西路街道社区学校規約
４，上海市閘北区・し江西路街道社区教育の発展概況
５，上海市閘北区の社区実務従事者に対する職務資格訓練に関する意見


（１）上海市閘北区・社区教育の実践と模索（上海市閘北区人民政府）

　閘北区の面積は29k�uで、8の街道と1の鎮を管轄しており、常住人口が73万人に対して、外来人口が10万人である。我が区は新興開発区で、今までの経済と文化・教育の基盤は比較的に貧弱であるが、第15回の五カ年計画では、2010年までに、我が区が商業と工業の進んだ、交通の便利な、町並みのきれいな上海市の副都心として建設される予定である。長年の間に、専門家の指導のもと、我々は理論上の検討と実践を通じた模索により、社区教育及び社区教育と学習型都市の関係に対する認識を深めた。社区教育は一定の区域内で、各種の教育資源を利用し、社区住民全体の資質と生活の質を高め､社区の発展を推進するための一連の教育活動であると我々は認識している。社区教育は、全員、全過程、全方向の特徴を持ち、生涯教育システムを構築することを目標とする。また、生涯教育システムの構築は学習型都市、学習型社会を建設するための前提と基盤である。
　第九回五ヵ年計画の期間中、住民は生活のレベルが向上するに従い、学習を通じ、自分の資質を高め、精神生活を豊かにする要望が高まり、その要望を満たすと同時に､科学技術の進歩とともに経済建設の鍵である労働者の資質を高めるため、我が区が「教育興区」の戦略を立て、「資質教育の推進、一流の教育の創出に関する行動綱領」を制定し、1999年に｢学習型都市｣の建設という目標を打ち出した。2000年4月に教育部職業教育・成人教育司によって全国社区教育八大実験区の一つとして指定され、その11月に、区政府は｢上海市閘北区社区教育実験方案｣において、以下のような社区教育の総目標を打ち出した。
　社区教育の実験を通じ、住民の生涯教育システムの構築及び学習型市区の建設に対する認識とそれに参与する意識を高める；フォーマルな教育、インフォーマルな教育、ノンフォーマルな教育を含めた、縦に連結した、横に多様なレベルの、全方向の、開かれた社区生涯教育システムを構築する；学習型都市と生涯教育システムの管理体制、運営メカニズムを完成させる；最終的には誰でも、いつでも、どこでも学習できる閘北式学習型都市を形成する。その目標によって、20世紀80年代中期に始まった社区教育を社区全体に広げるようになった。実験方策を制定すると同時に、区内の人口資質調査を行い、5,000サンプルに対する分析の結果、95％以上の住民が学習型都市の建設に賛同し、97%以上の住民が学習や研修の機会を求めていることが明らかになった。従って、社区教育の発展及び生涯教育システムの構築が区政府の意思であると同時に、住民の願いでもある。
　以下、我が区の社区教育実践における方法及びその見解である。

一、 社区教育の管理体制と運営メカニズムの完成
　模索と実践を通して、初歩的ではあるが、我が区が統合・協調に有利な社区教育管理体制と持続的な発展の可能な社区教育の運営メカニズムを形成してきた。以下は具体的な方法である。
１. 政府の強力な推進
　社区教育は多くの組織とかかわるもので､政府としてはいかにその統合､協調を図るのが鍵である。我々は以下の6つの措置をとるようにした。
(1) 社区教育を｢閘北区国民経済と社会発展第十回五カ年計画綱要｣の一項目として位置付け、同時に｢上海市閘北区社区教育実験方策｣を制定配布することによって、社区教育実験の目標と区の経済社会開発の目標と重ね合わせるようになった。
(2) 区政府の主要リーダーを長とする「社区教育実験リーダーチーム」を結成し､その下に事務局を設立すると同時に、各関連部門もリーダー一名を社区教育の担当として指定する。これによって､社区教育を推進する上の組織的な保証が得ることができた。
(3) 区政府が29の部門、街道、鎮及び企業・事業部門と学習型社区建設を推進することを目標として管理責任書を結んだ。
(4) 区政府と教育局が社区教育実験に70万元を支出した。
(5) 上海大学社会学部主任�ｹ偉志教授､華東師範大学呉鐸教授など10人の専門家を招聘し、諮問チームを組織した。
(6) 宣伝に力を入れる。閘北区社区教育推進大会を開き、2001年は｢社区教育宣伝年｣とし、今年の教師節を｢社区教育宣伝日｣とした。
２. 教育部門の管理
　社区教育が順調に展開できるように､社区教育実験事務局が教育局内に設置され、実験の組織､管理と指導の任務にあたる。教育局が｢上海閘北区社区教育実験の実施細則(2001年〜2003年)｣、｢2001年閘北区社区教育実験計画｣､及び｢閘北区社区教育指導員職責｣を制定した以外に、教育部門の管轄する学校を社区の住民に開放し、社区学院、社区学校、居(民)委(員会)学級の三段階教育ネットワークを形成した。45名の社区教育専任指導員が新たに組織され、研修を受けたあと、各街道や鎮で社区教育の指導にあたる。専任指導員が生涯教育の理念を宣伝することによって、住民の意識に働きかけ、学習型社区の建設においては､重要な役割を果たした。同時に､彼らは政府の教育政策を制定する上で、もっとも確実な情報を提供するルートでもある。ほかに、教育局が社区教育研究センターを設立し、理論的な研究や実践に対する指導を行う。
３. 街道、鎮での展開
　社区教育の管理に関しては、区と街道、鎮が別々にその責務を果たしているが、具体的な運営は主に街道､鎮にある。学習型都市の建設のポイントは、すべての住民がそれぞれの人生の段階において、学習する機会を与えられることにある。各街道や鎮に1989年にそれぞれ社区教育委員会が設立され、1997年以降､前後して学習型社区推進委員会が組織され、街道主任や、文(化)教(育)課長、専任指導員､居委幹部から構成される社区教育管理ネットワークが形成された。各街道に社区学校(9個所)や社区学級(70個所あまり)が設立され、それぞれユニークな活動が展開されており、学習型家庭、学習型居住棟、学習型小区が続々と生まれてきている。例えば、宝山街道が学習型企業、学習型学校と学習型家庭の建設に着手している。天目西街道においては、生徒が親に働きかけることによって、学習型家庭が多く誕生した。大寧街道上工団地が学習型居住棟の建設に力を入れ、読書棟、科学技術棟などそれぞれユニークな居住棟が生まれた。江西路街道が生涯教育祭りの形で学習型組織の建設を推進し､社区全体に好学の雰囲気をもたらした。
４. 社会各団体の参加
　我々が「21世紀が学習型社会である」、「生涯学習が21世紀を生きる概念である」などの理念を宣伝することによって、学習型社区の建設に対する区政府機関、区内の企業、事業部門のリーダーの認識が深まり、積極的に参加するようになった。区労働局の職業技術訓練センターでは、宝石の加工やOA事務、車輌修理など20近くのコースが設置され、毎年社区のための訓練に延べ3,000人が参加する。区経済委員会所轄の華日職業技術研修学校には、ホットカーペットの組み立てなど10 近くのコースがあるが、毎年社区のために、延べ1,040人を対象に、訓練を施す。区商業委員会所轄の商業人材訓練センターでは、経営管理など20近くのコースが開設されているが、毎年社区の住民延べ 2,000人を対象に、訓練を行う。多くの企業や事業部門が街道、鎮の活動に参加するとともに、自身の学習型組織の建設にも力を入れ、その目標を打ち出している。
５. 市民の自己学習
　社区住民の多様な学習ニーズを満たすために、区と街道、鎮が住民の資質および学習意識に関する調査を行い、できるだけ多様なレベル、多様な規模、多様な内容、多様な形式の学習活動を提供できるように努める。活動が完全に住民の自主選択、自主参加により展開される。我々は住民の要求に基づき、文化、職業技術、芸術、生活、法制の5種類のコースを開設した。またコンテスト、上演、展示、座談会、検討会、見学などの形で活動を展開してきた。

二、社区教育資源の最善の利用と社区教育ネットワークの設立
　閘北区が近年の社区教育実践の中で、｢学びたいものにその場があり、教えたいものにそのルートがある｣という考え方に従い、教育資源の最善の利用を図り、社区教育のネットワークを形成した。
１. 現有の教育資源の利用
　我々は少しずつ街道を単位とする学習データベースをつくり、多様な資源と情報を整理し、社区と学校の相互利用に必要なルートを整え、住民の参加意欲と向学心を高めた。統計によると、区内のすべての成人学校と職業学校が区に開放され、住民に知識や科学技術及び技能の習得に必要なサービスを提供している。小中学校、高校の70%が朝､夕と週末に社区に開放されている。社区に開放する企業、事業部門や政府部門も80あまりもある。資源の共同利用で、各街道、鎮の文化ステーション､図書館､老人活動室、書道絵画社､茶芸社なども｢壁のない学校｣となる。
２. 教育資源の改善
　 1997年に閘北区業余大学が社区学院として再出発し、朝5時から夜9時まで開放されるようになったが、当時の条件では社区教育の需要には満たせなかった。その後に2.6億元が投資され、新しい場所で再建された閘北社区学院が2001年9月に開校し、住民の学習センターとなった。その中には市民学習指導センターも設置され、各社区学校に情報や､コンサルティング､教師を提供している。また、社区教育の長期的な発展と良好な運営ができるように、社区学院自身も高等教育を含めた高いレベルでの教育訓練を行っている。それ以外に、情報技術を社区教育に導入し、ネット上の学習ができるように「閘北教育ネット」にて「社区教育欄」を開設した。
３. 教師の確保
　社区教育の教師は専任､兼任及びボランティアから構成される。教育局からそれぞれの街道、鎮に5名ずつの専任指導員が派遣される以外に、成人教育弁公室によって40人あまりの兼任教師からなる教育講師団が組織された。講師団には､研究所の専門家や、病院の院長､高級エンジニア､大学教授なども参加しており、講義内容が法律､教育､保健、生活､余暇にわたり、その中身が濃く、話もわかりやすく、住民に大いに歓迎されている。しかし教師の中で､最も多いのは区内在住の教師､定年退職した幹部、技術者､及び特技を持つ人々からなるボランティアである。例えば、鉄道大学病院130名の講師以上の職員が住民を対象に｢家庭医学｣に関するシリーズの講座を開く。海軍の某師(等級)政治部副主任李錫祥が社区党校の教師として招聘され、よく無報酬で党員や住民に授業をしたり､相談に乗ったりする。ボランティアの知識と技能が多様であるゆえ､社区教育の内容が一層多彩になる。

三、全員、全過程、全方向の訓練
　社区教育に対する理解を深め、生涯教育、生涯学習の理念が広く知れわたるにつれ、多彩な社区教育活動がますます活発になり、「全員、全過程、全方向」の特徴を呈した。
１. 全員
　社区教育の対象はすべての住民である。社区教育ができるだけ多くの住民のニーズを満たすために、区や街道、鎮が住民の学習需要に関する調査を行い、住民の学習条件を改善するように努めた。1999年に、和田居民委員会は旧市街地区の改造に取り組み、その結果、住民の居住条件が改善され、さらに、企業グループの北方集団、し江西路街道と住民の共同出資により、すべての家庭に本棚を配布した。この「本棚プロジェクト」が学習の雰囲気を醸し出し、住民の社区教育に参加する意欲を引き出した。ハンディを持つ人々に対しては、サポートするように心がけた。「新芸民工夜学校」が外来流入労働者（民工）を対象に、技能訓練や思想道徳教育を施す。?江西路街道が耳や言葉の不自由な人々のために、｢無声サロン｣を設立し、週末ともなると、社区内の障害者が多く訪れ、そこでの交流を楽しんでいる。
２. 全過程
　我々は生涯教育の理念に従い、住民が人生のそれぞれの段階に相応な教育を受けられるよ
うに、徐々に「学びたいものにその学校あり、教えたいものにそのルートあり」というよう
に社区教育の構造を構築していく。例えば、社区学校と各分校に妊婦クラス、母親学級及び
親子学級などを設け、0〜3歳の乳幼児に関連する教育を提供した。さらに就学前児童を対象とした芸術課程、青少年を対象とした社会実践活動、青年を対象とした技能訓練、成人を対象とした再就業訓練、老人を対象とした教養・スポーツ活動の提供が、上海の学校教育とともに、ほぼ人の一生にわたり、それぞれの段階において教育に対する需要を満たすことができた。
３. 全方向
　全方向というのは、フォーマルな教育、インフォーマルな教育、ノンフォーマルな教育にかかわらず、違う角度から、多様な教育需要を満たすことである。2000年の区成人教育に関しては、学歴取得のための教育と非学歴訓練を受けた人数においては、1996年と比べると、その増加率がそれぞれ320％以上と230％以上である。ノンフォーマルな教育の場合、情操教育に重点をおき､できるだけ多くの住民に参加してもらうように工夫した。90 年代の初めに経済的や学習の面にハンディを負う｢困難児童｣を助ける｢公僕ママ｣や90年代の末に始めた、老人に心理カウンセリングを提供する「夕焼け談話室」がそのよい例である。

　閘北区の社区教育が始まってからすでに10年以上が経過した。ある程度の実績をあげたが、まだ初級段階にあり、全国社区教育実験区としての責任を感じている。これからは、江沢民総書記の｢三つの代表｣の思想を導きに、新しい道を開拓するように努める。そのため、さらに江沢民同志の｢生涯教育システムを構築し、学習型社会を建設する｣という主張や、生涯教育理念の宣伝に力を入れ、学習型都市に関する研究を深める；さらに管理体制、指導体制、資源の共同利用体制及び奨励懲罰体制を改善する；さらに多様な学習需要をキャッチし､学習のルートを増やしていく。最近、我々が華東師範大学の専門家とともに、社区学校のカリキュラムに関する研究開発もしている。とにかく、我々は社区教育の実践と模索を通して、社区教育の管理体制を改善し、閘北区の学習型社区の建設及び第十回五カ年計画の目標の達成に貢献できるように努める。（上海市閘北区人民政府）


（２）学習型社区の建設―上海市閘北区・し江西路街道の回顧と展望―(抄訳)

一、社会的背景
＊閘北区の中心部にあり、典型的な旧市街地。
＊面積は1.64平方キロで、総戸数約3万に人口が8.6万人。
＊住宅状況としては新、旧団地と長屋が雑然と並ぶ状態。
＊住民に5種類の人間が多い。
　低収入戸――社会保障上最低収入ライン500人
　失業者――1万人あまり
　障害者――1,199人、その中重度無業者80人あまり
　精神病者――667人
　外来人口――29,000人
＊教育資源が豊かである。
教育関連施設：区余暇大学、高校、中学校、小学校、幼稚園、教育学院、少年宮、青少年科学ステーションなど22箇所
文化スポーツ施設、政府機関：文化館、科学技術センター、体育館、上海市体育場、映画館、中心病院、区立デパート、区経済委員会、商業委員会、商工業連合会、華僑連合会、民族宗教事務局

二、学習型社区建設の目的
＊社区の住民が時代に淘汰されないように。
＊青少年の資質教育だけに限定せず、個人の発達と社区発展の融合を目指す。
＊住民のますます強まる学習ニーズを満足させ、より多くの人に教育を受ける機会を与える。

三、学習型社区の構想
＊社区生涯教育システムと学習型組織を基礎とし、社区住民の学習という基本権利と生涯学習の需要を満たすことによって、住民の資質と生活の質を高め、持続的な発展が可能であるような社区にする。
＊生涯教育理念：教育が人間一生の伴侶である。
生涯教育システム：横を結び付け、縦をつなぎ合わせ、横と縦を統合する。

　四、具体的な措置
1. ハードウエアの建設
＊住環境の改善。5,000戸の危険住居及び規則違反の建築物の撤去、緑化地の造成の結果、７の市文明小区、8の区文明小区の建設に成功した。
＊学習場所の確保。街道図書館の改築に60万元あまりを投入し、本棚・机・椅子の更新、蔵書の増加、コンピューターの導入を図り、面積も120平方メートルから170平方メートルに拡大された。さらに、26の里弄（横丁）図書館の改築に巨費を投入した。
＊情報化の建設。90年代の初めに、街道弁事処(役所)にコンピューターを導入し、職員のすべてが操作の基礎訓練を受けた。また、余暇大学との連携で、余暇大学ネット上の情報を街道のネットに取り入れ、社区ネットの運用を推進した。現在、上演、教学、音響、テレビ中継などができるマルチメディアホールの形が一応整えたことによって、社区教育の近代化が一歩ハイテクへ進むことができた。
＊社区サービス施設の建設。近年ベット数 105の東風し江養老院、社会保障センター、社会救助センターを設立すると同時に、社区医療保健室（点）４つ、トレニングルーム11も設立した。
＊生涯学習コーナーの設立。街道弁事処が主な道路、小区、住宅棟の中に、さまざまな宣伝広告コーナーを作り、すべての家庭に新聞雑誌箱を配布した。
2. ソフトウエアの建設
＊リーダシップを発揮し、教育資源のネットワーク化を図る。街道党委員会、弁事処の管轄下に、社区内の教育資源を協調、指導、統合する学習型社区推進委員会が設立され、党学校、市民学校、老年学校、週末学校、職業技能訓練学校が一体になる?江西路街道社区学校が設立され、その下に若干の分校と特色学校を設けた。

　学習型社区の建設には、有力なチームの存在如何が大事である。�@街道弁事処各課が主力であり、それぞれの責務を果たす。婦人連合と計画出産事務室は婚前教育、優生優育の子育て教育、0〜３才の幼児教育を担当する；社区教育委員会が4〜14才の青少年を対象に、学校との連携で、資質教育や学校外道徳教育を担当する；共産主義青年団、組合、青少年保護事務室、武装部、司法科、総合管理事務室が15〜35才の青年を対象に、人生観、家庭内道徳、公共道徳、職業道徳、法制知識、新科学、新知識および外来人口の教育を担当する；労働力管理科と組合は36〜45才の中年を対象に、職業訓練、再就職指導、新科学、新知識、娯楽、家政、金融知識などを担当する；民政科が老人余暇教育を担当する。その内容としては健康保健、医療、体育、文化教養が多い。�A専門職の講師団とボランティアから構成される教師チーム。�B専門家の理論指導。政府職員、大学教授、研究者からなるコンサルティングチームを組織し、企画や実践に関する意見をうかがう。�C党員の力を発揮する。小学校以上の17の学校党支部がそれぞれ居住区の党支部と対になり、市民のモデルになりうるように、学習型党支部の建設に努める。
＊生涯教育(学習)の理念を広く宣伝する。97年に生涯教育(学習)活動を模索し始めたが、1998年に生涯教育(学習)祭りを創設し、毎回テーマを決め、今年ですでに4回を数えた。
＊計画を立て、規則・制度を制定する。「し江西路街道（1999年〜2004年）生涯教育(学習)シ
ステムの構築に関する計画」及び「し江西路街道生涯学習システムの構築に関する計画の段階
的実施策」を制定した。1999年〜2000年は開始期、2001年〜2004年は形成期とし、毎年具体的な実施計画も作った。又、下記のような余暇学習制度も制定した。
　 �@学習評価奨励制度；�A英語100句学習奨励制度；�B学習型家庭申告制度；�C学習型住居棟、学習型小区評価制度；�D市民生涯学習証
＊教育資源の統合利用で、多様な学習活動を展開する。街道の教育資源だけでは不十分なので、
学習型社区協調委員会を設立することによって、社区内にあるすべての教育資源の統合利用を
目指す。
　�@街道社区学校が観光職業学校内に；�A総合訓練クラスが少年宮、少年科学ステーション内に；�Bコンピューター訓練、英語学習コーナーは区余暇大学内に；�C和田小区の家族による12技法習得活動が和田小学校との連携で；�D康楽小区が環境保護局との連携で「家庭でできる環境保護」活動の展開。
　ほかに設立された学校は、�@和田路小学校内の科学学校；�A実験中学校内の芸術学校とし西実験芸術団；�Bし江西路小学校内の民族音楽学校；�C育英中学校内の美術学校；�D市北中学校内の体育学校；�E育嬰堂路小学校内の親学校。開設されたクラスが 198種類。地方劇クラス、健康発達クラス、科学知識クラス、再就職訓練クラス、経済管理訓練クラス、コンピューター訓練クラス、英語学習クラス、法律知識訓練クラス、老人を対象とした書道絵画クラス、保健クラス、心理学クラス、足底マサージクラス、社交ダンスクラスなど。聾唖者を対象とした週日喫茶文化サロンが94年に設立された時の 30人あまりから現在の200人あまりまで広がり、ほかの区の聾唖者も多く参加するようになった。
　80年代に展開された活動：�@技術訓練、職能訓練系列；�A家庭文化系列（ピアノ演奏コンテスト、カラOKコンテスト、家庭調理コンテスト、花卉盆栽展、絵画展等）；�Bコンピューターが家庭に入る；�C科学知識が家庭に入る；�D法律知識が家庭に入る；�E老人談話室。
90年代の活動：�@婦人談話室；�A公僕ママ；�B家庭本棚プロジェクト；�C英語会話コーナー；�D社区インターネット。

五、成果
　３年間の生涯教育(学習)祭りが市民の「自ら学びたい」という動機付けを強くした。今まで各種の学習に延べ３万人あまりが参加した。定年した陸さんがコンピューターと英語学習に参加し、現在コンピューター応用レベル試験の中級レベル証書と英語会話合格証書を獲得した。二人ともレイオフされた王さん夫婦がこの６年間、コンピューターの学習を通して、再就職ができた。障害者の王さんが自力で就職できただけではなく、社区学校や個人でレイオフされた人に経理を教え、その中の10人あまりが経理証書を獲得し、再就職できた、などなど。現在学習型家庭を申告した人が498戸に上る。

六、展望
　閘北区の目標は第10回五カ年計画中に学習型文明市区の建設を完成させることであり、われわれは新しい生涯学習行動方案を打ち出した。一つの目標（学習型文明社区の建設）を目指す；二つの積極性（政府機関内部の積極性と社区各層の積極性）を引きだす；三つの「でも」(どこでも学校であり、誰でも学習者であり、誰でも教師である)という雰囲気を醸し出す；四つの千（千言万語で宣伝し、千家万戸が参与し千法百計で資源を統合し、千姿百態の様式を呈示する）という状態を作り出す；五つの化（普及化、成層化、典型化、系列化、規範化）になるような体系を形成させる。
　今年第4回生涯教育祭りのテーマは「学習――私の生涯伴侶」である。具体的な実行方法は、以下の通りである。
1.３月の上旬に「社区教育工作会議」を開き、それをもって祭りの開幕とする。
2.モデルを立てる。３月の中旬に学習型家庭の報告会を開き、人々の「学びたい」という気持ちをいっそう強くする。
3.宣伝を強化する。３月の中旬に広く「4つのため」を宣伝する。つまり、自身の資質を高めるため、生活の質を高めるため、生活の環境を改善するため、社会の発展に適応するための生涯学習である、という目的をはっきりさせる。
4.学習型組織の推進。３月24日に第三回学習型家庭表彰会を開き、同時に学習型職場、学習型小区、学習型住居棟に学習型社区建設の実験基地という称号を与える。
5.検討会を開く。4月に学習型家庭の建設に関する検討会を行い、さらに生涯学習の意味を明確にする。
　その他に、いくつかの措置を強化していく。理論の研究を深める；施設、設備の建設を継続する；評価制度を改善する；学習カードの利用を広める；ボランティアの力を十分に発揮する；広告紙を編集出版する。
　我々は生涯教育祭りを区全体が繋がる絆に、区政府2000年54号文に出された要求を貫徹し、学習化社区の建設を推進する。 　　　　　　　　　　　　　　　　　2001年3月5日


（３）上海市閘北区・し江西路街道社区学校規約

第一条 学校の主旨
　し江西路街道社区学校は社区で市民教育を展開する公益教育機関である。学校が国家の教育方針に基づき､ますます強まる社区住民の学習ニーズを満足させることを主旨とする。
第二条 学校経営の原則
　人間を基本とし、地域の状況を合わせた多様な教育を展開し、相互交流をはかり、自我の発展を目指す。
　　第三条 基本任務
1.生涯教育、生涯学習の理念を宣伝する；
2.住民の学習ニーズ及び社区発展の需要に従い、教育計画を定め､教師と教材を選び､教学活動を組織する；
3.社区教育に関連する人的資源の開発､組織､使用及び管理をする；
4.社区学校及び分校の教学を管理し、居民委員会による弁学地点の教学活動を指導する；
5.学校経営の経験を総括し、社区教育の研究を行う；
6.「住民生涯学習証」の配布､登録及び書類の管理を担う；
第四条 学校の構成
1.学校は街道社区学校､社区分校（特色分校）と居民委員会弁学地点の三段階からなり、教育ネットワークを構成する。
2.街道社区学校本校は閘北区観光職業技術学校に設置する。
3.社区分校は市北中学校､永興路第二小学校、中興路小学校､思成科技研修学校に設置し、同時に若干の特色分校と親学校を設置する。
第五条 管理機構
1.し江西路街道社区学校校務委員会は社区学校の管理決定機関であり、街道弁事所(役所)の管轄下にあり、校務委員は街道弁事所の関連部門および社区内の主要な学校、企業、事業機構の責任者から構成される。
2.社区学校には校長一人、副校長若干を設け、校務委員会の管轄下に学校の業務を統括する；
　その下に教導所を設置し、教学活動の管理を担う。
第六条 教師
1.学校は専任を中核とし、兼任を主体とする教師チームを設立する。
2.学校は社区教育人材バンクを設立する。街道内外の政府リーダー、専門家及び社区内の学校、機関、企業、事業団体とシルバー人材のボランティアからなる社区教育講師団を招聘する。
第七条 開講時期
　社区学校は春と秋に開講する。春学期は３〜６月、秋学期は10〜1２月とする。
第八条 学科の設置
1.学校の学科は住民の学習ニーズと社区発展の需要にあわせて設置すべきである。
2.学校の基本学科は公民資質教育、職業技術教育、文化科学教養教育、婚姻家庭教育、現代経済生活教育、文化娯楽体育の指導などの類から構成される。
第九条 学員(学習者)の管理
1.社区内外の住民、定年退職者、企業・事業の職員、外来流入労働者のすべてが、社区学校各弁学点のコースに応募すれば、社区学校の学員となる。
2.社区学校学員の規則：教養を重んじ、礼儀正しく、七不規範を遵守する；教師、年配者を尊重し、規律を守り、公共の財産を大事に使う。
第十条 試験の方法
1.試験は単位制をとる；
2.学校が学員に「居民生涯学生証」を配布し、そこに学習した学科と成績を登録する；
3.教育、労働部門によって資格や免許が出される学科に関しては、指定の試験を受け、それに合格しなければならない。
第十一条　経費の出所
　学校経営の経費は街道の行政支出、社会からの寄付、個人の授業料からなる。
　　　　　　　　　　　　　　し江西路街道社区学校　　2001年4月修正案


（４）上海市閘北区し江西路街道社区教育の発展概況

　わが街道の社区教育は４つの段階に分けることができる。
　第一の段階は初級段階（1989年〜1993年）である。
1989年にし江西路街道社区教育委員会が設立された。その段階の社区教育の主な対象は小中高の子どもであり、重点は彼らに対する道徳教育であった。社会の各分野が協力して学校、家庭、社会を一体化した教育ネットワークを構築し、子どもに対して革命伝統教育、五愛教育、法制教育、労働教育および思春期教育を行い、そのための道徳教育基地を開設し、各種の講座、学習コースを開講した。これらによって、子どもの放課後生活が豊かになると同時に、社区の中で教師を尊重し、教育を重んじる良好な雰囲気が形成されるようになった。
　街道としては、小中高の教育改革を積極的に支持した。学校外の環境を整備することに努め、学校とともに道徳教育の新しい様式を作り上げ、道徳教育の社会化を目指した新しいルートを開拓した。同時に各分野において成果をあげ、閘北区の教育になすべき貢献をした。
　第二の段階は模索段階（1994年〜1997年）である。
　改革の深化及び近代化建設の発展とともに、街道の職能が大きく変化した。特に｢二級政府、三級管理｣の改革後、如何に住民の資質を高め、文明小区を建設することによって、社会が安定し、人民が安心して生活を楽しめるようにするのが街道の主要な仕事となった。
　街道党工委、弁事処及び社区教育委員会が討論によって、理論と実践の面で古いモデルを捨て、3つの転換を図った。
1.社区教育の対象は小中高の在校生だけではなく、すべての社区住民であるべき。
2.社区教育の内容は小中高在校生の思想道徳教育に限らず、全方位であるべき。
3.社区教育の主体は学校に留まらず、社区全体であるべき。
1994年にし江西路街道がまず社区教育訓練センターを設立し、その下に科学知識普及学校、芸術学校、民族音楽学校、美術学校、体育学校、親学校、週末学校、?西実験芸術団等を開設し、そこで科学知識クラス、老人書道絵画クラス、再就職訓練クラス、近代管理訓練クラス、コンピューター訓練クラス、英語学習クラス、法制クラス、地方劇クラス、健康発達クラスなどを開講し、聴覚障害者たちも読書クラスや無声サロンを組織した。同時に、学校の受験中心の教育から資質教育への転換に協力し、毎月一つのテーマで一回活動を行う「発達を援助する」シリーズの活動を、今まで52回を展開した。他に老人保健、老人心理学、足のマッサージ及び拳術、社交ダンスなどのクラスを開講した。不完全な統計によると、学習に参加した学習者が延39,600人であり、社区総人口の31.4%にのぼった。
　第三の段階は構築段階（1998年〜2000年）である。
　新しい世紀に向けて、社区教育に対する認識を新たにしなければならない。社区教育は社区住民を対象とする教育であり、全民、全方位、全生涯を特徴とする。だから、社区住民全員に開かれる道徳教育、法制教育、環境教育、人口教育、子育て教育、婦人教育、健康教育、文化教養･娯楽及び再就職訓練を充実しなければならない。
　 1998年3月に し江西路街道社区教育委員会が区社区教育委員会、閘北業余大学、閘北成人教育協会などの協力の下、「生涯教育節」を催し、成功裏に幕を閉じた。それから毎年の3月に街道生涯教育節を催すことを決め、それをきっかけに、生涯教育(学習)の理念を広く宣伝した。いままですでに３回を開催し、毎年テーマを決め、徐々に深く掘り下げていくようにしてきた。
　よりよく生涯教育(学習)を推進するために、我々は調査研究の結果に基づき、1999年の初頭に「し江西路街道生涯教育(学習)システム発展計画(1999年〜2004年)」を制定し、更に、「?江西路街道生涯教育(学習)システム発展計画の段階別実施企画」を制定した。1999年〜2000年は生涯教育システムを構築する初期段階であり、2001年〜2004年はその形成段階とする。その推進にあたって、我々が家庭から着手し、毎年の生涯教育節に10戸のモデル家庭を表彰する。広く住民の学習意欲を高めるために、学習型家庭の選出基準を決めた。2000年に学習型家庭を申請した家庭が661戸にのぼり、学習型家庭に選出された家庭には、小さい本棚を贈呈した。さらに学習型家庭を宣伝するために、10種類の家庭から構成される報告団が、住民を対象に講演をし、効果を収めた。
　街道が社区内の教育資源、人的資源を存分に活用することで、各種の教育訓練活動を開催した。区文化館、体育館、少年宮、観光職業学校及び小中高校が、昼間には在校生を対象に、夜あるいは週末には住民に開放し、施設のフル活用をすることができた。また、街道が60万元を支出し、街道図書館と居民委員会図書室を建て増しすることによって、横丁の中に学習の場を確保することができた。それが住環境の改善や宣伝コーナーの設置と相まって、学習型文明社区の建設にとって良好な社会的環境を創出した。
　第四段階（2001年〜2005年）。
　積極的に区政府（2000）54号文の精神を貫徹し、本街道の状況に基づき、学習型文明社区としてのし江西路街道の建設に努める。目下のところ、我々は学習型組織に関する活動を展開している。今年は管轄区内の企業･事業部門の中から、２〜３箇所を選出し、そこでまず試験的に活動を行い、その成果を生かしながら徐々に広めていく。
　住民に良好な学習環境を提供するために、社区学校を主要な施設とし、徐々に分校、居委会学習地点の三段階ネットワークを形成し、その規範化と科学化を図りながら、今後は主な仕事として社区学校のカリキュラム設置とそのアレンジを摸索していく。
　社会が常に発展しており、教育が経済発展の基本である。我々が近代化に向け、世界に向け、未来に向け、更に思想を解放し、事物を客観的に捉え、実践と発展に着眼し、外国の先進的な経験を大胆に吸収し、我が民族の優秀な伝統文化の発揚と人類の創造したすべての文明成果の学習とを結合することによって、?江西路街道特有の社区教育の道を歩もうと努める所存である。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　し江西路街道社区教育委員会　　　　2001年７月１２日


（５）上海市閘北区の社区実務従事者に対する職務資格訓練に関する意見

各街道、鎮：
　 1996年の市都市会議(城区工作会議)において社区の建設と管理を強化し、都市の近代的管理レベルを絶えず高める目標が打ち出された。以来３年の間に、我が区の社区建設が十分な発展を遂げ、街道、居民委員会の社区を管理する能力とレベルも大いに高まった。しかし、都市の社区建設の更なる発展とともに、特に新世紀を迎え、第一線の社区実務従事者が新しい状況や新しい問題に直面しているのが実情である。彼らは学習と訓練を通じ、社区実務の基本理論と科学的方法をマスターすることを切に願っている。その需要を満たすために、我々が第一線の社区実務従事者である居委会の幹部を対象に職務資格訓練を提供することを決定した。その訓練を通じ、第一線の社区実務従事者の思想と専門的資質をさらに高め、基準をクリアした社区建設の人材と中堅の管理者を養成する。それによって、社区の管理を更に強化し、社区の建設を促進する。
訓練実施方法は以下のとおりである。
一、訓練対象
1.各街道(鎮)居委会専任職幹部･居委会主任
2.社区実務従事者
二、訓練時間（1999年〜2000年）
2000年末までに、上記人員の訓練を終え、以降需要に応じ開講する。
週日と週末の両方にて開講する。週２回、１回半日の４コマを利用する。１期84コマとなり、1999年5月に開始する。（具体的な時間は別紙で通知）
三、訓練方式
対面指導と独学の結合、授業と独学の結合、講義と考察の結合、試験と審査の結合。
四、訓練内容
一線の社区実務及び居委会の職務に従い、訓練の指導要領と学習内容を制定する。詳しくは訓練計画を参照されたい。
五、組織と指導
1.区人事局、民政局、成教弁（成人教育弁公室）から構成される訓練事務協調チームが、訓練の組織及び協調を担当する。区人事局が訓練幹部の人事管理を、区民政局が受講者の組織、募集、管理及びカリキュラムの設置に関する指導を、区成教弁が指導要領の実施、教学、試験及び証書の配布を、それぞれ担当する。
2.協調チームの下に弁公室を新設し、その日常事務を担当する。弁公室は民政局基政課に設置される。
3.訓練の実施は閘北社区学院に委託する。
六、試験と証書
1.試験と審査：訓練の成績を総合的に評定する。試験と審査との両方の方法で、成績を優秀、合格、不合格の三段階で評定する。
2.合格者には社区実務従事者職務資格証書を与える。
七、賞罰措置1.訓練が終了する度に、一定数の優秀な受講者を選出し、適切な精神的かつ物的な奨励を与える。
2.成績が不合格になった受講者が訓練費用を個人負担にし、職場の公費で賄ってはならない。更に合格するまで訓練を受け続ける。
3.職務資格証書が社区実務従事者にとって、就業資格と職務に従事する根拠となる。
　　　　　　　　（葉忠海著『社区教育基礎』、上海大学出版社、2000年6月 所収）

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