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　　　　台湾訪問・記録−「南の風」記事より
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊（ぶ）は小林ぶんじん文責

南の風１４５０号（２００５年４月１０日）
■＜台湾訪問計画（ぶ）＞
　５月連休に台湾を訪問するスケジュールがほぼ確定しました。１日より６日までの日程、小林文人、内田純一（高知大学）、上地武昭（沖縄大学）、鷲尾真由美など５名のメンバー。台北を中心として、最近の台湾の社会教育・生涯学習の動きについて資料を収集し、関係の皆さんとの交流を深めよう（久しぶりに一杯飲もう）、「東アジア社会教育研究」第１０号編集にも反映させよう、という計画です。
　台湾の社会教育については、日本側には専門的な研究者がいないに等しい。台湾からの留学生たちが架け橋になってきたところがありますが、継続的な研究交流の蓄積があまりありません。私たちの「東アジア」研究の歩みでは、そういう空白を少しでも埋めていこうという思いあり。
　台湾社会教育との出会いを求めての、初めての訪台は1989年。1996年には台湾師範大学・台北市政府が共催して、日本（TOAFAEC ）との生涯教育をめぐる国際合同シンポが開かれた経過もあります。しかしその後の私たちの研究交流活動には間断あり。沖縄からも近いのに、台湾に行く機会をなかなかつくれない。それだけに、毎年の「東アジア社会教育研究」編集では、台湾についての報告・論説が欠落しないように出来るだけの努力をしてきたつもりです。この間には楊武勲さん（早大院・当時、現在は国立ChiNan大学）や鄭任智さん（早大院）たちが、双方をつなぐ役割を果たして頂きました。
　台湾には社会教育法（1953年）の歴史があり、その後の改正、さらに成人教育法草案の試み（1991年）や「邁向学習社会」（白書、1998年）等を経て、2002年に生涯学習（終身学習）法が成立・公布されました。それからの３年、どんな展開がみられるのか。また、大規模な地域づくり（社区総体営造）施策のその後の動きについても興味あるところ。

１４５２号（２００５年４月１３日）
■＜台湾滞在のスケジュール（ぶ）＞
　５月１日〜６日までの訪台日程は、当初案では台北から高雄に動く案でしたが、楊碧雲さん（台北市政府）などからの連絡では、台北だけにしたい（中央研究院の外国人宿舎を手配）という相談があり、「お任せします」と返事しました。この間、許銘欽さんや陳東園さん（いずれも東京学芸大学・院卒）などを含めて、台湾とのメールが飛び交い（ときどき文字化けで読めず）、嬉しい毎日です。楊碧雲さんからは「東アジア社会教育研究」全９冊をもってきてほしいと。これこそ、“嬉しい悲鳴”というべき。
　さきほど同行予定の鄭任智さん（早稲田大・院）からのメール（Wed, 13 Apr 05 12:03）。「…私は東京発着の飛行機に乗りますので、ご一行が台湾に到着する前日、４月３０日に台北に着きます。帰りの便のため同行できるのは５月１日〜４日（当日午後離脱予定）です。…泊まりについて今朝台北の楊碧雲さんに連絡を取り…中央研究院のほうに聞いてみないと分からないそうです。この宿舎が無理ならば、台北の友人のところに泊まる予定…（以下略）…」とのこと。
　先日の電話では、山城千秋さんは迷っている様子。疑わしきは罰せず、迷いあれば動く、ともいいます。行きましょうよ！　沖縄からは、東京より台北へ出る方が近いし安いし（那覇−台北往復、４万円）、昔のようにビザを用意する必要もないし・・・、これからも気軽に台北と往来する道を拓いていただきたいもの。
　今回は、とくに楊碧雲さんから「東アジア」９冊を持ってきてほしいとリクエストされたのが何より嬉しい。創刊号はもう在庫なし。なけなしの保存分から持参したいと思っています。石倉事務局長、ご了承を。

１４５５号（２００５年４月１９日）
■＜『東アジア社会教育研究』第１０号へむけて（ぶ）＞
　…略…
　今回の台湾訪問も、主な目的は第１０号編集に向けての資料収集。台湾との研究交流は学会レベルではほとんどなく、それだけに私たちの『研究』編集では、台湾を忘れないようにしよう、と語り合ってきました。とくに第１０号では、台湾の「社区総体営造」（地域づくり）施策の動きについて報告を掲載したいというのが一つのポイント。このテーマはまだ一度も『研究』に取りあげていないのです。
　関連して日本では、小泉内閣の構造改革特区や地域再生の施策があり、４月から「地域再生法」の施行、内閣府におかれれている地域再生本部は早々に「ＮＰＯ支援」を打ち出しています。これらをどう評価していくか、台湾との比較ではどうか、地域の社会教育や公民館との関わりは？など検討すべき課題でしょう。
　台湾スケジュールは、その後さらに具体化し、台北だけでなく高雄にも飛ぶことになりました。上記スケジュールをご覧下さい。


■５月３日の日程・楊碧雲氏（台北市政府教育局社会教育専員）より−Tue, 19 Apr 2005−
2005年教育局楊碧雲專員與日本學者訪南港社大

5月3日(二)
時間	内容	地點	負責人
09：00-09：30	自中研院出發至南港社區大學	中央研究院	楊碧雲 許乘慈
09：30-10：00	簡報1.後山生態健康新文化      2.南軟實擬虚境科技公共藝術	南港社大 師生休息室	林明志 口譯：許乘慈
10：00-11：40	參觀─後山生態健康新文化	後山次分區	林明志 口譯：許乘慈
	參觀─南軟實擬虚境科技公共藝術	南港軟體園區
11：40-14：00	美食饗宴	世新會館	黄榮護
14：00-16：30	畚箕湖茶郷桂花風情歩道體驗 1.畚箕湖桂花林古道 2.百年老樟古保甲歩道	南港茶山 舊庄畚箕湖	林明志 口譯：許乘慈
18：30-	中研院晩宴	中央研究院	張啓雄 （中央研究院研究員） 楊碧雲

※請自備輕便鞋至畚箕湖歩道體驗
◎訪問學者：
小林文人KOBAYASHI, FUMITO 日本公民館学会会長、東京学芸大学名誉教授
内田純一UCHIDA,JUNICHI        高知大学助教授
上地武昭UECHI, TAKEAKI        沖縄大学助教授
鷲尾真由美WASHIO,MAYUMI    沖縄大学学生
金京喜KIM, KYUNGHEE            沖縄大学、韓国留学生
鄭任智                         早稻田大學博士班研究生
◎基金會代表：駱傑雄   駐會董事
◎社大同仁：
黄榮護   南港社大主任         　　蘇舒蘋   南港社大關懷專員
陳慧君   南港社大主任秘書      周雨詩   南港社大教務專員
陳麗雪   南港社大社區執祕      王美惠   南港社大資訊專員
林明志   南港社大專案執祕      劉靜芳   南港社大學務專員
許乘慈   南港社大講師========================================================================

▼台北市南港社区大学関係者との記念撮影（５月３日）


関連写真→こちら■

▼右端・南港社区大学主任・黄栄護氏（世新大学副教授）とハーブ茶で（３日午後）


▼南港区社区大学（女性）関係者と。中央が楊碧雲女史（台北市政府、３日）



１４６２号（２００５年５月７日）
■＜台湾訪問から帰る（ぶ）＞
　６日昼過ぎ、東京学芸大学・院卒の陳東園くんや李暁青さんなどに見送られて台湾・高雄空港を出発。台北で乗り継ぎして那覇へ。さらに深夜便で東京へ帰ってきました。
　台湾も沖縄もすでに梅雨、同夜の那覇空港はしばし雷鳴轟き豪雨あり、出発便が大きく遅れて、羽田についたのはほとんど１２時近く。１０日間の旅、さすがに疲れました。那覇で別れた同行の皆さんもお疲れさまでした。おかげさまで、いい旅となりました。
　今回の旅ではパソコンを持参しましたが、連日の訪問調査、また夜の歓迎会等の台湾スケジュール、風を吹く余裕なく、結果的に「南の風」は１週間のご無沙汰となりました。おそらく昨年１２月の福州・北京の旅以来のことか。パソコンからまったく解放され、楽しく自由に過ごす毎夜のゆとり。この機会に、ふっと風を休止してしまいたくなる誘惑にもかられながら・・・、いつもの悲しき習性に戻って、いま気を取り直して、風本号の編集・送信を始めたところです。
　台湾は５年ぶりでした。この間の台湾（主に台北、高雄）の新しい動きに目をみはる思いでした。かっての東京学芸大学・研究室を巣立った人たちの心温まる歓迎、楊碧雲さん（台北市政府・専員）による詳細な訪問計画、新しく出会った社区営造（地域づくり）や社区大學関係者との交流、盛り沢山のスケジュールを存分に楽しんで帰ってきました。早稲田大学（院）の鄭任智さんは台北に飛んで通訳の任にあたってくれましたし、同院卒「東アジア社会教育研究」編集委員の楊武勲さんとも久しぶりに再会。第１０号へ向けての原稿依頼は活発に進みました。予定原稿は５本ほど。これからその日本語訳（うち２本）を鄭さんにお願いしなければなりません。どうぞよろしく。
　次号から何号かにわけて、台湾訪問メンバーによるレポートを予定しています。お楽しみに。

▼別れの日・高雄空港にて、中央・李暁青さん、右から２人目・陳東園さん（５月６日）



南の風１４６３号（２００５年５月９日）
■＜台湾訪問による授受収集資料（ぶ）＞
　前号にも書いた通り、今回の台湾訪問では、とくに鄭任智さん（早稲田大・院）が台北まで同行してくれて、各訪問先で通訳の労をとって頂きました。ご苦労さまでした。各氏へのお礼状、繁体中国語への訳（ちかく案文を送ります）もお言葉に甘えます。どうぞよろしく。
　また５月27日の定例研究会への報告も期待しています。「台湾の社区営造、社区大學等をめぐる最近の動き−台湾訪問報告」というタイトルで如何でしょうか。もし別のタイトル案があればご提案下さい。鄭任智メインレポーター、ほんらいは他の５人も報告すべきところですが、高知・沖縄と離れていて参加は無理、ぶんじんが副報告をします。
　内田純一さんからは、早速に今回の台湾訪問で授受・収集した資料の一覧リスト（下記）。私たちの沖縄・東アジア社会教育研究では、これまで調査の記録や収集資料の一覧等を（私的資料にとどめるのでなく）できるだけ公開・共有する努力を重ねてきました。旧沖縄社会教育研究から（さらに遡れば故横山宏さんと取り組んだ社会教育法制研究から）の私たちの基本姿勢です。
　台湾側の各訪問先では、心のこもった歓迎の張り紙や横幕に感激しました。ぞれの主報告はすべてパワーポイントが用意され詳細なもの、そして抱えきれないほどの資料も。パソコンを駆使しながら、若いメンバーが熱心に報告する姿に接して、大きな時代の流れを実感した毎日。
　いただいた資料はついに持ちきれず、台北から別送するほど。内田さんは頑張って高知まで運び込び早々の諸資料一覧リスト作成という次第。ありがとう！
　高雄第一科技大學では「東京・沖縄・東アジア社会教育研究会歓迎」の真っ赤な横断幕が登場しました。記念に頂戴してきましたので、次回（５月27日）研究会に飾ることにします。当日の記念写真はいまTOAFAEC ホームページ表紙にアップしています。ご覧下さい。台湾訪問記録は随時ＨＰに掲載していきます。

▼５月２日、台北市北投社区大学訪問、フイールドワーク
　左端・洪徳仁氏（社区営造学会事務局長、耳鼻科医師）の説明



南の風１４６３号（２００５年５月９日）
■＜２００５年５月訪台・授受収集資料等一覧（内田純一）＞
★〈台北市政府教育局〉
台北市政府教育局『台北市政府教育局簡介』（2005.1）
台北市政府教育局、楊碧雲他編集『社大・手帳』（2004.12）
社区大学全国促進会「社大 開學」（全国社区大学的共同刊物）第25号（2005.3）
★〈台北市北投社区大学、北投文化基金会、北投区公所〉
『台北市北投社区大学　選課手冊　2005年度第一期』及び『同パンフ』
「台北市北投社区大学2005年度第一期『現代公民学程』講座学員選聴表」
北投社区大学『北投文化』第７号（2004.6）
北投社区大学『北投文化』第８号（2004.10）
北投社区大学『北投文化』第９号（2004.11）
北投社区大学『北投文化』第10号（2004.12）
北投社区大学『北投社大報』（月刊　第16号）（2005.4.15）
北投社区大学『北投社大報』（活動特刊）（2005.4.25）
北投社区大学『北投大富翁』（双六ゲーム）
台北北区社区医療群『社区　健康医療　専刊』創刊号（2004.11）
台北北区社区医療群『社区　健康医療　専刊』第２号（2005.3）
北投区公所「北投温泉之旅−歴史・文化・新北投」（2003.11）及び『同マップ』
北投区公所「貴子坑文化生態之旅−陶瓦・生態・貴子坑」（2003.11）及び『同マップ』
北投区公所『丹鳳山文化生態」（2004.4）及び『同マップ』
★〈台北市南港社区大学、致福感恩文教基金会〉
台北市南港社区大学「南港社大報」第２号（2003.12）
台北市南港社区大学「南港社大報」第３号（2004.4）
台北市南港社区大学「南港社大報」第４号（2004.9）
台北市南港社区大学「南港社大報」第５号（2004.12）
『後山?生態健康新文化系列　2004台北市社区大学第一回創意教学観摩研討会』
南港社区公所「南港人文采風導覧地図」
「南港軟體工業園区第二期新建工程公共芸術　ガイドブック」
「世新大学附設世新会館　パンフ」
★〈台北懸泰山郷学習型社区、泰山郷人形産業文化館、泰山郷地方文化生活館〉
泰山郷公所『終身学習　台北懸泰山郷学習型社区報導（二）』（2002.3）
泰山郷公所『終身学習　泰山郷学習型社区　簡介』及び『同 ﾊﾟﾜｰポイント』
泰山郷公所『泰山郷学習型社区 人才培訓進階班研習成果彙編』
泰山郷公所『泰山之美』（2004.12）郷の写真集
泰山郷公所『泰山郷 文化導覧』（2003.5）及び『同マップ』『同パンフ』
泰山郷公所『我的社区 我的家（学習型社区系列三）』（ＣＤ）
泰山郷公所『泰山人形郷』（ＣＤ）
〈國立高雄第一科技大学〉
『國立高雄第一科技大学2004-2005 簡介』『同英語版』『ﾊﾟﾜｰポイント資料』
『管理學院（学部別パンフ）』『外語學院（学部別パンフ）』同『工學院（学部別パンフ）』
応用日本語学科『応日系刊』第６号（2003年）
★〈高雄市立空中大学〉
『高雄空大校記』第八巻第四期（2005.3）
「高雄空大課程表2004年度第二學期」
★〈高雄市新興社区大学〉
高雄市新興社区大学「社大月記」2005.2,3,4
高雄市新興社区大学「紹介パンフ（課程特色、組織、経営戦略、未来展望）」
高雄市新興社区大学『社区大学』（ガイドブック）2005.3及び『ﾊﾟﾜｰポイント資料』

▼台北県泰山郷の中心施設「文化生活館」、右は古翠娥さん（学習型社区総幹事）、５月４日



南の風１４６５号（２００５年５月１２日）
■＜訪台レポート（１）−社区大学の新しい動き＞　内田純一
　1998年、台湾で最初の社区大学、「台北市文山社区大学」が開設されて以降、現在、台湾には81の社区大学（原住民・社大11。台北市では12の区にそれぞれ一つ設置）が展開する。今回の旅では、３つの社区大学を訪ねる機会を得た。台北市北投社区大学、台北市南港社区大学、高雄市新興社区大学である。
　社区大学の主なカリキュラムは『東アジア社会教育研究』第９号（黄富順著、鄭任智訳「台湾の生涯学習」）にもあるように、�@学術課程、�A社団課程（社区民の公共業務への参加による社会問題の発見・解決）、�B生活技能課程に分けられる。今回訪問した社区大学においても、とりわけ�Aに関して、自然、環境、生態、健康、医療、芸術といった分野の学習と活動が活発に行われているという印象を持った。
　またこれらは、1994年に行政院文化建設委員会が打ち出した「社区総体営造」方式と関連が深いことが分かった。「社区総体造営」の理念は、地域のすべての問題について、「社区住民が共に想像力を働かせ、考え方を提起し、知恵や行動で地域に貢献し、問題の解決に向かって協働し、共同意識を創り出す方法を学習するプロセスを通して、地域の建設や発展が住民自身の誇りとなり、自主的に永続性を持って活動を運営できる」ことを目指している（行政院文化建設委員会編、台湾まちづくり研究会訳『台湾 社区総体営造の軌跡』2004.3）。
　以上の点は、台北市における二つの社区大学において強く確認することができた点であるが、これらに加えて、高雄市新興社区大学の場合には、スペシャルコースとして、�@異文化間結婚に伴う課題、�A国際的人権保障の手だてに関する課題、を設置していたことが印象的であった。�Aのコースでは、アムネスティインターナショナルの協力を得るなどして、女性労働者の基本的権利、死刑の廃止、政治犯の釈放要求、市長選挙における人権教育促進公約などを実践、学習している。これは経営的な背景が大きいのかもしれないが、台北市における二つの社区大学（北投文化基金会、致福感恩文教基金会）が、市民と行政との調和的関係を保ちつつ実施されている感じに対して、高雄市新興社区大学の場合（基金会は無い）は、ある部分では、相当程度ラディカルに取り組んでいる印象を持った。


▼ 高雄市新興社区大学訪問、交流のカラオケ、５月５日夜
　左・李賢華氏（同社区大学主任）、右・陳東園氏（空中大学主任）


▼左・楊碧雲氏（台北市政府）、右・林振春氏（台北師範大学教授、
　社区教育学会執行秘書）、泰山郷訪問、晩宴のあと（５月４日）



南の風１４６５号（２００５年５月１２日）
■＜台湾訪問の記録・写真（ぶ）＞
　鄭任智さん（早稲田大学・院）からの依頼、高雄・新興社区大学資料については、量は少ないけれど内容はなかなかのものと思われます。内田さんから送ってきたパワーポイント・ファイル（CD）と一緒に送ります。コピーして今度会う機会に返して下さい。
　台北市には各区に社区大学が始動していますが、高雄市（台湾第二の都市、人口は台北の半分、約１３０万人前後）では新興社区大学（HSIN-HSING Community University）の１例のみ。高雄でこれからどのような展開をみせることになるのか、興味あるところです。
　新興社区大学の主任（学長）は李賢華氏、海洋科学（工学）を専攻される大学教授です。陽気な人柄、今回が初見ですが、夜の歓迎宴に続くカラオケなどで、すっかり老朋友になった感じ。歓迎宴にかけつけていただいた同大学理事は、高雄市教師会理事長（中学教師）や文化出版事業の編集長など。一夜だけの同席で残念でした。時間があればもっともっと交流を深めたい人たち。次回は、高雄を中心に台湾南部をまわるスケジュールなど計画したいもの、と思いました。
　台湾の夜はカラオケが盛んです。今回は、５日の高雄だけでなく、その前日４日の泰山郷（町）歓迎夕食会のあともカラオケでした。町長さんが、まず「骨まで愛して」を熱唱したのには驚きました。日本側も上地武昭さん、内田純一さんなど次々とマイクへ。林振春さん（台北師範大学教授）も相当の歌い手、楊碧雲さん（台北市政府）も一緒にデュエット。これらの写真を１０枚ほどホームページ（５月台湾訪問記録ー本ページ）の文中に順不同で挿入しました。ご覧ください。もし掲載を控えるべきものがあれば、ご一報を。すぐに差し替えます。
　上地武昭さんからは、今回の台湾訪問・写真記録を約５００枚（CD）送っていただきました。いい出来映えです。しかしそれぞれに容量が大きく、ホームページに蓄えるには少々つらいところ。ご了承ください。

南の風１４６７号（２００５年５月１７日）
■＜訪台レポート（２）−開放大学法草案をめぐるその後の動き＞　内田純一
　　…承前（南の風１４６５号−訪台報告１）…
　2003年10月、台湾立法院（国会）の会議に「開放大学法 草案」が提出された（『東アジア社会教育研究』第９号　楊武勲論文）。この草案のその後、現場における受け止められ方などを知ることが、訪台のもう一つのテーマであった。
　まず、立法院における草案審議については、議会の解散などもあって、現在は審議が停止しており、今後、再提出の予定とのことであった。
　台湾では、高校生の大学進学率が90%近くにまで達するなど、高等教育の普遍化・多様化（加えて市場化）が大きな課題となっている。草案は、このような背景を持ちながら、空中大学及び社区開放大学そして新しいインターネット大学を統合した「開放大学」を設置していくことで、台湾における成人高等教育制度の新たな仕組みを提示しようとしているものである。
　しかし前述の楊論文にも指摘されているように、本草案は、高等教育と成人高等教育の概念上の違いや、単位互換、学位の「価値」などさらなる論議と研究が必要となっている。今回の訪問先でも、一般大学・科技大学（国立高雄第一科技大學）、放送大学（高雄市空中大学、国立空中大学）、社区大学（台北市北投社區大学、台北市南港社區大学、高雄新興社區大学）のそれぞれにおいて、本草案に対する受け止め方は異なっていた。社区大学、とりわけ台北市の社区大学においては、単位の互換性などの課題を克服し、高等教育としての可能性を大いに広げるものとして積極的な期待を示していた。これに対して、科技大学では、正規教育と非正規教育との違いを強調しつつ、また高等教育の市場化の中で高等教育の質を確保する意味からか、草案についてはほとんど眼中にないように見受けられた。さらに高雄市空中大学においては、一般大学化を目指しているということもあってか、こちらも受け止めはたいへん消極的であった。草案の主要な骨格に空中大学があげられているだけに、高雄市空中大学における反応からは、課題の複雑さを感じた。
　昨年、『東アジア社会教育研究』第９号で「開放大学法 草案」の存在を知ったとき、 とっさに「公民館は私の大学です」（『新しい公民館像をめざして』1974年）を思い浮 かべた。このテーゼには、既存大学の閉鎖性に対する批判が込められてはいたが、大学の大衆化に対する施策はこれといって進んではいない。台湾では本草案にみられるように、大学への「全入時代」を目前に、高等教育における量と質のジレンマが本格的に問われはじめている。草案のその後、詳細については、楊武勲氏の追跡調査から再度学びたい。

南の風１４６８号（２００５年５月１８日）
■＜台湾の動き−大まかなスケッチ（ぶ）＞
　今なぜ「台湾の社会教育」なのか。その歩みや現状をほとんど知らなかったことへの反省、すぐ隣りなのに！　政治的な「一つの中国」論に左右されて台湾研究の視点を失うようなことがあってはならない、研究交流のつながりをどう創っていくか、友人たちとの語らいをどう拡げていくか。この１０年、こんなことを考えてきました。
　台湾には「社会教育法」が制定（1953年）されていますが、国民党の厳しい政治的統制のなかで機能してきました。日本の社会教育法（1949年）が教育改革と民主化の志向のなかで定着してきたのと対照的なところがあるようです。台湾で戒厳令が解除されたのは、ようやく1987年のこと。日本にみられない統制的な政治的背景がありました。
　しかし、そういう政治構造のなかから「台湾的なもの」への社会的文化的な潮流が動いてきたのです。たとえば1960年代からの郷土文学の運動、言語や教育問題への取り組み、1980年代に盛んになる「文史工作室」(少人数での地域の歴史や文化についてのアトリエ的な活動)、1990年代以降の地域づくりや市民の運動など。台湾の「主体性再建」「本土化運動」と呼ばれる動き、いわば台湾のアイデンティティに関わる画期的な歴史潮流に注目しておく必要がありましょう。
　この間には、新しい政党・民進党の結成（1986年）があり、初の民選総統・李登輝の登場（1996年）もあります。行政側で、「文化建設委員会」（文建会、行政院の一部局）による「社区総体営造」施策が打ち出されるのが1994年。これが大きな契機となって各地のさまざまの地域づくり運動が独自の展開をみせてきました。
　この時期に胎動していく台湾の「学習社会」創建や「終身学習」（生涯学習）そして「社区大学」への取り組みは、このような台湾の新しい時代への潮流をバックグラウンドにもっているのではないか、というのが私の大まかなスケッチです。そして本格的に「終身学習法」が制定されるのが2002年。
　というのも、市民運動や地域づくり運動とは別の次元で、いわば上から降りてきた日本の生涯学習の流れとは、対照的に異なるところがあるのではないか、と思われるのです。

▼高雄の夜（2005/05/05） 後列左より内田純一、楊武勲、陳東園、鷲尾真由美、李暁青、金京喜、
　　前列左より上地武昭、小林文人、右は李賢華・新興社区大学主任、の皆さん　



南の風１４６８号（２００５年５月１８日）
■＜第108回TOAFAEC定例研究会案内（石倉祐志）＞
　先の連休に小林文人、内田純一、鄭任智、上地武昭、金京喜、鷲尾真由美の各氏が台湾を訪問されました。当研究会の対象地域のなかで台湾はこれまで一つの課題でしたが、この調査・交流は大変大きな成果をもたらしたようです。
　今回は、参加者の一人でこれまで『東アジア社会教育研究』にも執筆されている早稲田大学博士課程の鄭任智さんに、「台湾の社区営造、社区大學をめぐる最近の動き」として、台湾訪問報告をしていただきます。
　訪問した３箇所をはじめとする台湾における社区大学の現状や、これと密接な関係を持つ「社区総体営造」について注目されるところです。現在進行形の台湾においては、民主主義あるいは地域社会の構築についての積極的な政策があり運動の拡がりが感じられますし、それがどのような質と具体化をもって展開しているのか。
　内田純一氏の感想では、「相当程度ラディカルに取り組んでいる」社区大学もあるとか（風1465号）。韓国と並んで民主化が加速度的に進行してきた台湾で今何が起こっているのか。台北や高雄で具体的にどんな動きなのか。今回の内容は、東アジアの社会教育を語る上で押えておくべき重要なポイントとなるものでしょう。みなさまのご来会をお待ち申し上げております。
にちじ：2005年５月２７日（金）18:30〜20:30
ばしょ：永福和泉地域区民センター　第二集会室（京王井の頭線永福町駅下車３分）
なかみ：台湾の社区営造、社区大學をめぐる最近の動き(台湾訪問報告)
おはなし：鄭任智（早稲田大学・院）　＊もし時間があれば副報告（小林ぶんじん）


南の風１４７２号（２００５年５月２５日）
■＜台湾へのお礼状＞
　私にとって台湾からの最初の留学生は陳東園さんでした。たしか1985年頃か。当時は中国テレビ（台北）記者、帰国した後は空中（放送）大学の仕事に就き、毎週、台北と高雄あるいは台東などを駆け回っている忙しい毎日。日本留学中に出会った葉淑華さん（当時、東京外国語大学院生、現在は高雄第一科技大学日本語学科主任）と結婚し、二人のお子さんも大きくなったそうです。いま高雄に新居を定めて建築中とか。
　先日、台湾訪問でお世話になった礼状をメールで送りました。
　「陳　東園　様
　 葉　淑華　様　
　台湾から帰って、もう２週間が過ぎました。御礼が遅くなり、たいへ失礼しました。お許しください。
　このたびは陳さん、葉さんはじめ皆様にたいへんお世話になりました。久しぶり（５年ぶり）の訪台でしたが、おかげさまで、５年の空白を感じることなく、旧知の方々、新しい友人と会うことが出来て、６日間まことに充実した毎日、有り難うございました。
　葉さんは新しい大学に就任、また陳さんは博士号を取得され、張り切って仕事をされている様子、お二人にあらためてお祝いを申しあげます。
　高雄第一科技大学の皆様、とくに許教授や王珠恵女史によろしく御礼をお伝え下さい。歓迎の赤い横断幕を頂き、東京に持ち帰りました。写真を一枚、小生たちのホームページの表紙に掲載しています。ご覧いただければ幸いです。
　→　http://www007.upp.so-net.ne.jp/bunjin-k/
　添付の一文は、訪問した機関・団体へのお礼状です。小生の拙文を早稲田大学に留学している鄭任智さんに訳してもらいました。意を尽くせませんが、御礼とさせていただきます。（中国文・礼状−略）
　葉清勇さんはじめご家族の皆様にどうぞよろしくお伝え下さい。またの再会を楽しみにしています。草々」（Sat, May 21, 2005 14:32 ）
　昨日届いた葉淑華さんからのメール。（Tue, 24 May 2005 09:15）
　「先生ますますご活躍のこととお喜び申し上げます。
　久しぶりに再会できまして、うれしく思っております。十分なご接待ができないところがございましたが、ぜひご諒承くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。これからも何とぞよろしくお願い申しあげます。では、失礼いたします。愚生　陳東園　葉淑華」
　TOAFAEC ＨＰ表紙の写真、右から二人目が葉淑華さん。台湾訪問記録サイトの写真数枚のうち、一番背が高い（いつも）吊りズボンの人が陳東園さんです。
　高雄第一科技大学からいただいた『歓迎！東京・沖縄・東アジア社会教育研究会』の真っ赤な横断幕は、昨夜（２４日）の第１０号編集会議で、初めて“風の部屋”いっぱいに張りめぐらしました。
▲高雄第一科技大学による訪問団歓迎会、右から２人目が葉さん（20050505）



■＜関係機関・各位への御礼＞　-2005年５月12日-
　台北市・台北県・高雄市 　　　　　　　　　　　　　　　　　
　社區大学、社區総体営造運動、社區学会、
　国父紀念館、世新大学（会館）、
　高雄第一科技大学、空中大学、ほか関係各位
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　東京・沖縄・東アジア社会教育研究会　（ＴＯＡＦＡＥＣ）台湾訪問団
　　　小林 文人 （TOAFAEC代表）
　　　内田 純一 （高知大学）、上地 武昭 （沖縄大学）、鷲尾 真由美（沖縄大学々生）
　　　金　京喜 （同、韓国留学生）　、鄭 任智 （早稲田大学・院）

　２００５台湾社區大学等訪問調査へのご協力御礼
　拝啓　その後皆様には益々ご壮健にご活躍のこととお慶び申しあげます。
このたび私たちの台湾訪問（５月１日〜６日）にあたっては、関係各位の周到なご配慮と心温まる歓迎を賜り、誠に有り難うございました。社區大学や社區総体運動についての貴重な証言とともに、多くの文献・資料等を頂戴し、一同深い感謝の念を抱いて帰国いたしました。
　今回の旅は、先回の訪問（２０００年）から５年ぶりでしたが、あらためて最近の台湾の社區大学や社區総体営造運動の新しい躍動的な展開を知ることができました。刺激を受けるところ少なくありませんでした。科技大学や空中大学の意欲的な取り組みについても教えられるところがありました。初めて台湾を訪問したものにとっても、この６日間の充実した訪問調査は鮮烈な印象があり、いつまでも思い出に残ることになりましょう。
　久しぶりに旧知の友人たちに出会うことができ、また同時に、新しい方々と交流をもつことができました。これを機会に、今後ともどうぞよろしくお願い申しあげます。　
　日本にお出かけになるときには、ぜひご連絡を下さい。日本の社会教育・生涯学習や地域活動について資料など必要な場合は、ご遠慮なくご一報下さい。歳月とともにお互いの交流と研究が新しい潮流になることを願っております。
　皆様のご健勝を祈り、社區大学・社區営造等の活動がますます発展していくことを祈念して、御礼といたします。 　　　　敬具

＜同中国文（鄭任智・訳）＞
２００５年協助台灣社區大學等訪問調査之感謝状　-2005年５月12日-
　　　台北市・台北縣・高雄市之社區大學、社區總體營造運動、社區學會、
　　 國父紀念館、世新大學（會館）、高雄第一科技大學、空中大學等諸位學友：
敬啓
　本次吾等有幸至台灣進行訪問，期間内（５月１日〜６日）承蒙諸位學友周到的招待及熱心的歡迎，著實令吾等深感窩心，在此致上最高的謝意。而吾等也因此而獲得了諸位對社區大學及社區總體運動等許多珍貴的意見及見解，加上許多有形的文獻與資料，此行可説是滿載而歸。
　本次的旅行雖距上一回（２０００年）有５年之久，但卻也因此得知台灣社區大學及社區總體營造運動的最新状況及蓬勃發展，可説是受到了不小的衝撃；加上科技大學及空中大學那充滿目標性的活力，對於此行初次造訪台灣的人來説，這６天來充實的訪問調査給他們留下了新鮮且強烈的印象，想必這也一定會成為他們永遠的回憶。
　此行的?一個收穫是，除了與久未謀面的老友再會外，也同時得以與新認識的學友們進行交流。見面即是有?，還希望今後多多指教。
　若是諸位學友們今後有機會到日本的話，還煩請不吝聯絡本人；而若有需要日本的社會教育、生涯學習、地域活動等的相關資料的話，也請千萬不要客氣，在下會盡力而為。在下希望以彼此的歳月來進行的交流與研究，在今後能成為一個新的潮流。
　最後，祈望諸位學友的社區大學及社區營造等活動的發展能更上一層樓，並敬祝各位身體康健，萬事順心。
　　　　　　　　　　東京・沖縄・東亞社會教育研究會（ＴＯＡＦＡＥＣ）台灣訪問団　
　　　　　　　　　　　　　　　小林 文人 （TOAFAEC代表）、内田 純一 （高知大學）
　　　　　　　　　　　　　　　上地 武昭 （沖縄大學）、鷲尾 真由美（沖縄大學學生）
                   　    　　 金京喜 （同上，韓國留學生）、鄭任智（早稲田大學院院生）　 敬上
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　ＴＯＰ